美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ

文字の大きさ
49 / 290
巨塊討伐編 第一章:「天美法具店」店主、未知の世界と遭遇

幕間 一:近所の客が昔話 を終えたようです

しおりを挟む
 この国の昔話の会場を、一階から二階、そしてまた一階で、新たに『風刃隊』の五人も加わって再開する。

「俺らも詳しい話は聞いたことねーよな。このお爺さん、聞かせてくれるんすか? お願いします」
「そうかそうか。若もんからせがまれるとうれしいもんじゃのぉ。さて、どこまで話したかのぉ。国王がやせ衰えてっちゅう話までだったかの」

 店主は頷く。

「うん。皇太子は……巨塊に変わったと言っても差し障りないじゃろ。巨塊の体いっぱいに皇太子の顔が浮かぶことがあるっちゅう噂も聞いたしの」
「不気味ですね。悪政を強いた皇太子が、そんな魔物に変化して……。そんな運命だったのかもしれないわね」
「欲深い気持ちが体を超越した。そんなイメージよね」

 途中から話を聞いた双子姉妹が口を挟む。冒険者の生活が浅い彼らでも、日常生活の中での悪政については十分経験済み。

「うむ。さもあらん。そしてその悪政は後継者の有無の問題にも発展した」
「悪評を挽回するのはなかなか難しい事です。ましてやその評価を下した者が国民全員ともなると……」
「悪りぃ、テンシュ。まともな会話がすげー違和感で気になるんだが」

「チェリムさんがわざわざこうして話してくれてんだ。話の腰折るっつーなら、話が終わるまで出入り禁止にすんぞ」

 店主の低い声で脅すと、素直な感想を口にしたギースをはじめ全員が素直に言うことを聞く。

 失礼しました。続けてください。
 そう店主が告げるとこくんと頷いでチェリムは話を続ける。

「国王には子供は皇太子一人だけ。王妃も国王の看病疲れもあって心労で病に伏した。王の兄弟は、王が国王に即位してからは貴族の地位に就いた。後継者争いしようにも、徳王の二つ名の跡を継ぐんじゃ。貴族のままでいいと思ったんじゃろう。ましてや悪政の後じゃから、王家一族から王になろうとする者はおらんかった」

 再度ギースが口を挟むが、それはチェリムの語りのアシストになった。

「あれ? 王政を支えていた司教様が舵取りをどうのって聞いたことが……」
「知っておったか。お主もエルフか?」
「あ、あぁ。ギースって言います」

 風刃隊からは、ギースが意外に物を知ってることに感嘆の声が出る。

「うむ。天の流れに身を任すっちゅうことから名付けられた天流教っちゅう宗教の……大司教じゃったかな? 国王の補佐をしておった人物での。代理で王政を仕切り始めた。じゃが巨塊討伐後は身を引くっちゅう条件を踏まえた上の。で、法王と名乗っとるな」

「すると、その法王はまだその立場に在籍中と」

「その通りじゃ。で、第二次討伐が計画される。で、テンシュのお待ちかねの話に繋がるんじゃな」
「ひょっとして魔力の爆発の話っすか? あれも相当やばかったって話……」
「ちょっと! ワイアット!」

 ウィーナが制し、しまったという顔でワイアットが両手で自分の口をふさぐ。

「どうした。ワイアット。ウィーナ」
「「い、いや……」」

 ワイアットとウィーナは店主からの問いかけに口ごもる。
 チェリムはそれっきり黙る二人を見て話を続ける。

「……とにかくオルデン王国は法王就任した時点で終了じゃ。天流法国と名前を変え、法王が指揮して最初の討伐にとりかかったんじゃが……」
「そういう情勢の変化って、あまり気にしないですね。国から俺達冒険者への……通達っつーんですか? そんなのが頻繁にない限りは……」
「それも致し方あるまい。こんな大事件になるまでは放置された町じゃからな」

「「ってことは、魔導師の住まいはひょっとして……」」
 双子が互いに視線を合わせる。

「ここではない。隣町じゃが、魔導師への対応と似たようなもんじゃったかの」
 魔導師の住まいの話は既に聞いていたが、この五人には初耳だったらしい。驚いてお互い見合わせている。
 チェリムには罪はないだろう。だが、住民たちの魔導師への対応を抑えることが出来なかったことに悔いを感じている様子に、店主は今気が付く。

「……それで、第二次討伐は法国が行ったということですね」
「うむ……。それがついこの間実行されたというわけじゃ」

「セレナが俺のところに来たのはその時か……」
「さっきのお主の話を聞いたが、おそらくそうじゃな」
 店主の身の上に起きた出来事とようやく繋がった。

「爆発って話きいたぜ? けどそんな様子がなかったからさ。大方逃げ帰ってきた奴が、自分の恥を目立たせねーための言い逃れとか、尾ひれはひれ付けた話だと思ってたけど……」
「何も火などが出る物だけが爆発ではないでな。火とは無縁の魔力の爆発っちゅうこともある。現に……」
「セレナさん、ですよね」
 確認するミュール。

「次元を超えた爆発。俺にはそう説明してた。理屈とかは分からんが」
「普通の爆発なら、巻き込まれて死亡する者が多い。じゃが死亡者よりも行方不明者が多かった。巨塊の体の周囲で起きたもんじゃ。つくづく店主の読みは鋭いの」

「巨塊の体の中心から遠い、石化した部位に魔力が籠って飽和……ですか」
 チェリムの話を聞き、推理した店主が口にする。

「討伐のタイミングが遅かったら、巻き込まれる者もいなかったろうがな。運が悪かったんかもしれん」

「じゃあ同じ規模の爆発が起きるとしたら、割と期間を必要としますね」
 ミュールの推測もチェリムの意見と一致する。

「恐らくはな。じゃがいつそんなことが起きるかは誰にも予想できん。そして行方不明の者達は今のところ発見されることは数少ない。今後は分からんが」
「セレナさんは運が良かったんですね……」

 どこかで聞いた覚えがあった。セレナの「この人のおかげで助かったのよ」と言う言葉。
 大げさではなかったのだ。店主をこの世界に巻き込み何を企んで何をしようとしているかは知らない。だがそれだけは本音だったのだ。
 そして帰ってきてから、どこかから呼び出されておそらく経過報告をし、知らない事実を聞かされたのだろう。
 さらにここ数日、詳しい事情を聞かされたに違いない。
 ひょっとして、多くの知り合いの消息も不明ということがそれで分かったのか。
 元気がないのも当たり前の話。

 チェリムから言われた一言。
『……嬢ちゃんも辛かろうのう。差し障りない程度に大事にしてあげなさい』
 店主の胸に少し痛く突き刺さる。

 上から目線で見下したのは気に食わなかったが、キューリアのセレナを案ずる態度もこの話を聞けばわかる。
 戻ってくるはずがない者が戻って来た。馴染みの店は変わったけれど、どれほどうれしかったか。

「そして、おそらくは今度は調査隊が組まれるんじゃないかとか、そんな話もあるとかないとか」
「爺さん……チェリムって言ったっけ? 詳しいな」
「長生きのおかげでいろいろ知恵も回るもんでなぁ。ひゃっひゃっ」

 ワイアットを煙に巻いた後、頃合いとばかりに腰を上げる。

「国の昔話はこんなとこじゃな。他に知りたいことがあったら気軽に声をかけるがいいわ。散歩しとるか、帽子屋で若旦那をからかってるかのどっちかじゃ。ひゃっひゃっ」

「帽子屋さんのおじいさんだったのね」
「お姉さん、知ってたの?」

「いつもの場所にいてもらわなきゃ、どこの誰だっけって忘れられること、多いよな」

 ギースの呟きに四人が同意する。

「それにしてもお前ら」
「何? テンシュさん」

「お前ら、どこの誰だっけ」

「「「「「ちょっと待て」」」」」

 あいつが帰ってきたら……下手に労わるより、いつもの調子の方が無難だろ。
 その前にまずはこいつらからの雑用を片付けてからか?
 いや、こいつらはどうでもいいか。まずは別のあのチームの依頼を終わらせてからだ。

 そう思いながら立ち上がる店主の顔にはいつものめんどくさそうな表情が帰って来た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

処理中です...