美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ

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巨塊討伐編 第一章:「天美法具店」店主、未知の世界と遭遇

幕間 二:店主が仕事以外の話をしてくるんだけど…… 6

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「さて……あいつはモフモフとやらをしてるのか?」

 そう呟きながら、店主は『法具店アマミ』のカウンターへ向かう。

 休憩時間や閉店後の片づけや戸締りなどをしている間、勤務中の緊張がやや解ける従業員の間で交わされる会話に店主は巻き込まれた。

 これまでのそんな時間は、彼らの会話はただ聞き流すか話しかけられた時には生返事程度でやり過ごしてきた店主だったが、ぬいぐるみトークでよほど親近感を持たれたらしい。
 サブカルチャー発祥の日本語のスラングをいろいろと聞かされた。
 とは言っても店主にとって聞かされたたくさんの言葉は、来店する客や取引先も普通の会話の中で何度も耳にしている。
 聞いたことがあるというレベルから、実用できるというレベルに引き上がっただけの事。
 ただそれらの言葉を使うには、抵抗はないがまだ照れはあるようだ。

 従業員が今日すべての業務を終えて帰宅した後、店主は『法具店アマミ』に移動した。
 『法具店アマミ』も閉店のプレートがドアにかけられている。
 『天美法具店』同様鍵をかけて戸締りも済ませているはずだが、世界間を行き来できる店主とセレナはどんな時でも入店可能になっている。
 理屈は店主にとってはやはり理解不能。そういうものだと考えるしかない。

「セレナ、今来たぞ」

 何も言わないで店に入るのも心苦しい。
 かと言ってわざわざ知らせるように声をかけるのも、店主は彼女に気があるという誤解を招きかねない。
 一階にいる者にしか聞こえない声量でそう言いながら入る。

「ま、当然二階にいるよな。飯は済ませたかな?」

 店主の世界に来たくなるほど気落ちしている昨日の今日。ぬいぐるみを買ってやったところで早々元気になるとは考えられない。

 階段を上り二階での様子を見に行く店主だが、さらに考えられない事態に遭遇してしまった。

「お……お前……ら? なんだこれ……」

「あ……えっと……」

「あ、お邪魔してます……」
「えーっと、ご、ごめんなさいっ」

 そこにはセレナのほかに、『ホットライン』のリメイクことリメリアとキューリアの二人。

 そして床にはほぼ二階前面にわたって綿が散らばっている。
 三人の前には買ったばかりのぬいぐるみが、見るも無残な屍をさらしていた。
 しかし店主には、それを見て即座にその現実を受け入れることは出来なかった。

「ま……まず、説明聞かせて……もらえるか……?」
 店主が辛うじて口から出た声には、だらりと下げた腕の先の拳同様、怒りの感情が静かに込められていた。

 ▽   ▽    ▽    ▽

 連日の聞き取り調査で一方的に質問攻めにあい疲労困憊だったセレナは、第二次巨塊討伐の結果をようやく聞かされ、仲のいい者達や知り合いの多くが死亡もしくは行方不明であることを知った。
 確かめに行こう、会いに行ってみよう。討伐の戦場で亡骸がまだそのままなら、自分の目で確かめに行こう。
 そんな決心をするが、戦場は絶対に止めるように国の政治家や最高顧問から止められた。
 友人の家々を回ることしかできなかったが、取り調べ中に聞かされたその話は事実であることを知る。

 いつもそばにいてくれた、あるいは楽しい時間を共に過ごしてきた友人たち、小さい頃から一緒に遊んでいた幼馴染達が一斉に自分のそばから離れてしまい、再び会うことが出来なくなってしまった。

 永遠の別れの時は、生きている者同士なら必ずやって来る。

 特に他種族よりも寿命が長いエルフ族である。他の種族と混じっていても、エルフ種が少ししか混じっていなくても、エルフ種と繋がっている者ならばそんな意識は誰にでも強く根付いている。

 セレナとて分かっていた。だからこそそんな別れの時を突然迎えても、立ち直るために要する時間は決して長くない。
 だが流石に一斉に友人を失う現実はセレナにはあまりに堪えた。
 その悲しみのあまり、誰かに縋りたい思いに駆られる。思い浮かんだその相手とも、もう会えないと知る。
 セレナばかりではなくエルフという種族自体あまり動揺することがない特徴を有しているのだが、取り調べの途中でその経緯を聞き号泣する。聞き取りを担当する第二次巨塊討伐の調査委員もその取り乱しようを見て、流石に毎日連続して尋ねることは酷と判断。
 三日ほど休養期間とし、その後の様子次第では期間の延長や聞き取り調査の時間を、これまでの一日のあたりの時間から半分以上減らす予定にした。

 その休養の一日目が昨日の事。

 溺れる者は藁をもつかむ。
 縋りたい第一候補や第二候補などではなく、縋りたい相手をさんざん探してようやく思い当たった藁が自分であることを知った店主は、セレナの理性がまだ残っていたことに安心する。

 見知った人物である店主がいるとは言え、突然見知らぬ世界に連れ出され、何をするのか不安な思いもあったが、まさか自分に慰めになるようなプレゼントを買ってくれるなどと夢にも思わなかった。
 しかもその買い物の行先は、この世界には存在しない、触り心地抱き心地がいい、しかも可愛い物がたくさん並んでいるぬいぐるみの売り場である。

 店主はそこまでの彼女の話を聞いて、ぬいぐるみを手にした時の喜びように納得した。

 △   △    △    △

「うむ。理解できた。大変だったなセレナ。で、それがこの有様なんだが?」

 店主の問い詰めに即座に反応したのはリメリアとキューリア。

「「ごめんなさいっ!」」
 二人が同時に頭を下げる。

 それを見た店主の怒りは少しだけ鎮まる。
 セレナがやらかしたとしたらさらにもっと激しい怒りが込み上げてきただろう。

「……二人から説明聞いた方が分かりやすいかな?」
「え……えっと……そ、それはこんなことがありまして……」
 二人からの説明が始まる。
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