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巨塊討伐編 第三章:セレナの役目、店主の役目
法具店アマミ 嵐の前 2
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店主が依頼を受けた後、セレナが『クロムハード』のメンバーの体の寸法を測る。
どの部位に付ける防具が作りやすいかはまだ検討がつかない。
スウォードの時のように同じ物を別の素材で作るというような条件はまったくないため、その自由度は高い。そのためどの部分の防具でも作れるように、体のあちこちのサイズを図る必要がある。
だからと言って決して楽な仕事とは言い切れない。
セレナが彼らの体の寸法を測っている間、彼らの動きや姿を凝視する。
宝石を見るときのように、一目見ただけでどんな力があるかすぐ分かるわけではない。
周りから話しかけられていたような気がするが、今の店主は彼らの力を見極めることに集中している。
それでもセレナの作業よりも早く終わる。しかしいつもと同じように、額から汗が流れ落ちる。
『クロムハード』のメンバーから心配されるが全く気に掛けない。
寸法の測定が一通り終わった後、店主に昨日の模擬戦の報告をして『ホットライン』と『クロムハード』は引き上げた。もっともその内容は店主の予想通りだったため、彼らの話をまともに聞く気はなかった。
「開店前に客が来て用事を済ませて帰るってどういうことなんだろうな……」
まぁまぁ、となだめるセレナの表情は、店主から見てなんとなくすっきりしている。
「私ね、決めたんだ」
「ふーん。俺の知ったこっちゃねぇな」
「……聞いてくれてもいいじゃない」
店主はすっかり普段の態度。セレナを適当にあしらって作業に入る。
「いい加減あいつらの依頼全員分揃えねぇと俺の腕の沽券と信頼に関わる。この店が立ち行かなくなっても構やしねぇがな」
「セレナ=ミッフィールはいますか」
店主が言い終わるのを見計らったかのようなタイミングで、入店してくる男が二人。
こないだ顔を見せた調査委員会の二人だった。
「はい。今行きます。テンシュ、私、巨塊討伐の調査に協力することにしたから。だから今日も一日いないから、店番よろしくね」
店主には、セレナは腹を決めたように見えた。
何かに目が眩んでなきゃ、目的がぶれなきゃ、そして最後までやり遂げられればそれでいいさ。
だがしかし。
「それはいいがよ、言っとくが俺が会計知らねぇのは変わってねぇからな」
店主の問題点は相変わらずだった。
調査に協力していくうちにつらそうになっていったセレナを見た時には、じきに休みの日を何日かもらえるだろうから、店の方にも顔を出せるだろうと予想していた。
しかしあんな顔でそんなことを言われたら、『法具店アマミ』の経営にも本腰を入れてもらうようなことを言われかねない。
物の価値はおろか金の単位も知らない店主が、こっちの世界での経営をこなせるわけがない。
何より真剣に覚える気がない。やる気がない限り覚える必要もないのだが。
「大丈夫。今日はこないだより遅くなるとは思うけど必ず来るから。じゃ、行ってきます」
セレナはそう言って、迎えに来た者達と出発した。
しかし店主には一抹の不安を感じる。
セレナにではなく、店にである。
必ず来る?
必ず帰って来る、の間違いじゃないのか?
会計できなくても大丈夫と言うなら、こっちはこっちの仕事に専念しても文句は言われることはない。
にしても、ものの言い方がおかしくないか?
言葉が通じるようにした魔法の効力薄らぐのは困るぞ。
まぁ困っても向こうに帰る方法がなくならない限り、最悪の事態にはならない。
誰かが来たらすぐ逃げればいいか。
店主は考えをまとめて仕事にかかる。
開店するにはまだ早めの時間。だが出入り口のドアは動く。
人の出入りが自由なら、いつぞやみたいに鍵をかけたまま仕事をして怒られるということはない。
今日の『法具店アマミ』の開店はこうして始まり、店主は『ホットライン』からの依頼のラストスパートをかけた。
─────────────────
チリンチリン
カウンターの呼び鈴が鳴る。
「「テーーンシュッ」」
「うわあっ!」
続いて店主に呼びかける声は、当人の耳元から。
仕事に集中している最中にそのようなことをされれば誰でも驚くし、怒る者も中に入る。
しかし仕事の邪魔ももちろんだが、無断でカウンターを越えて作業場の傍まで誰かに来られるのも店主の気分を害する。
しかしそこにいたのは見も知らない間柄ではなかった。
「てめぇら……って、双子じゃねぇか。えーと、名前はまあいいか。で、何勝手にここまで来てんだ!」
名前をまだ覚えてもらっていないことに、どこまで関心がないのかと呆れる二人。
「ウィーナ」
「ミール」
「「ですっ」」
「って……聞いてないの?」
ウィーナの言葉を理解しかねる店主は怪訝な顔をする。
「セレナさん、今日からまた調査とか何とかに協力するから依頼の仕事見つからなかったらバイトに来てくれって、店の応援の要請が来たんだよ。聞いてないの」
「バイト……って……もう九時半じゃねぇか。バイトしに来る時間……って、あ……」
セレナが出かける前に言っていた。
こないだより来る時間が遅くなるけど必ず来る、と。
セレナが帰って来る時間の事ではなく、バイトのこの二人のことを言っていたのだ。
言葉が通じる魔法の効果が弱まったということではなく、言葉の解釈がすれ違っただけのことに店主は安心するものの。
「勝手に向こうに帰る言い訳が減っちまった……。魔法にミスがあったらこっちの好きに出来たんだがなぁ……」
そんな店主の呟きを前にした双子。
「またなんか勝手なこと言ってるし」
「テンシュぅ……こどもじゃないんだからさぁ……」
二人の顔から呆れる表情は消えない。
どの部位に付ける防具が作りやすいかはまだ検討がつかない。
スウォードの時のように同じ物を別の素材で作るというような条件はまったくないため、その自由度は高い。そのためどの部分の防具でも作れるように、体のあちこちのサイズを図る必要がある。
だからと言って決して楽な仕事とは言い切れない。
セレナが彼らの体の寸法を測っている間、彼らの動きや姿を凝視する。
宝石を見るときのように、一目見ただけでどんな力があるかすぐ分かるわけではない。
周りから話しかけられていたような気がするが、今の店主は彼らの力を見極めることに集中している。
それでもセレナの作業よりも早く終わる。しかしいつもと同じように、額から汗が流れ落ちる。
『クロムハード』のメンバーから心配されるが全く気に掛けない。
寸法の測定が一通り終わった後、店主に昨日の模擬戦の報告をして『ホットライン』と『クロムハード』は引き上げた。もっともその内容は店主の予想通りだったため、彼らの話をまともに聞く気はなかった。
「開店前に客が来て用事を済ませて帰るってどういうことなんだろうな……」
まぁまぁ、となだめるセレナの表情は、店主から見てなんとなくすっきりしている。
「私ね、決めたんだ」
「ふーん。俺の知ったこっちゃねぇな」
「……聞いてくれてもいいじゃない」
店主はすっかり普段の態度。セレナを適当にあしらって作業に入る。
「いい加減あいつらの依頼全員分揃えねぇと俺の腕の沽券と信頼に関わる。この店が立ち行かなくなっても構やしねぇがな」
「セレナ=ミッフィールはいますか」
店主が言い終わるのを見計らったかのようなタイミングで、入店してくる男が二人。
こないだ顔を見せた調査委員会の二人だった。
「はい。今行きます。テンシュ、私、巨塊討伐の調査に協力することにしたから。だから今日も一日いないから、店番よろしくね」
店主には、セレナは腹を決めたように見えた。
何かに目が眩んでなきゃ、目的がぶれなきゃ、そして最後までやり遂げられればそれでいいさ。
だがしかし。
「それはいいがよ、言っとくが俺が会計知らねぇのは変わってねぇからな」
店主の問題点は相変わらずだった。
調査に協力していくうちにつらそうになっていったセレナを見た時には、じきに休みの日を何日かもらえるだろうから、店の方にも顔を出せるだろうと予想していた。
しかしあんな顔でそんなことを言われたら、『法具店アマミ』の経営にも本腰を入れてもらうようなことを言われかねない。
物の価値はおろか金の単位も知らない店主が、こっちの世界での経営をこなせるわけがない。
何より真剣に覚える気がない。やる気がない限り覚える必要もないのだが。
「大丈夫。今日はこないだより遅くなるとは思うけど必ず来るから。じゃ、行ってきます」
セレナはそう言って、迎えに来た者達と出発した。
しかし店主には一抹の不安を感じる。
セレナにではなく、店にである。
必ず来る?
必ず帰って来る、の間違いじゃないのか?
会計できなくても大丈夫と言うなら、こっちはこっちの仕事に専念しても文句は言われることはない。
にしても、ものの言い方がおかしくないか?
言葉が通じるようにした魔法の効力薄らぐのは困るぞ。
まぁ困っても向こうに帰る方法がなくならない限り、最悪の事態にはならない。
誰かが来たらすぐ逃げればいいか。
店主は考えをまとめて仕事にかかる。
開店するにはまだ早めの時間。だが出入り口のドアは動く。
人の出入りが自由なら、いつぞやみたいに鍵をかけたまま仕事をして怒られるということはない。
今日の『法具店アマミ』の開店はこうして始まり、店主は『ホットライン』からの依頼のラストスパートをかけた。
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チリンチリン
カウンターの呼び鈴が鳴る。
「「テーーンシュッ」」
「うわあっ!」
続いて店主に呼びかける声は、当人の耳元から。
仕事に集中している最中にそのようなことをされれば誰でも驚くし、怒る者も中に入る。
しかし仕事の邪魔ももちろんだが、無断でカウンターを越えて作業場の傍まで誰かに来られるのも店主の気分を害する。
しかしそこにいたのは見も知らない間柄ではなかった。
「てめぇら……って、双子じゃねぇか。えーと、名前はまあいいか。で、何勝手にここまで来てんだ!」
名前をまだ覚えてもらっていないことに、どこまで関心がないのかと呆れる二人。
「ウィーナ」
「ミール」
「「ですっ」」
「って……聞いてないの?」
ウィーナの言葉を理解しかねる店主は怪訝な顔をする。
「セレナさん、今日からまた調査とか何とかに協力するから依頼の仕事見つからなかったらバイトに来てくれって、店の応援の要請が来たんだよ。聞いてないの」
「バイト……って……もう九時半じゃねぇか。バイトしに来る時間……って、あ……」
セレナが出かける前に言っていた。
こないだより来る時間が遅くなるけど必ず来る、と。
セレナが帰って来る時間の事ではなく、バイトのこの二人のことを言っていたのだ。
言葉が通じる魔法の効果が弱まったということではなく、言葉の解釈がすれ違っただけのことに店主は安心するものの。
「勝手に向こうに帰る言い訳が減っちまった……。魔法にミスがあったらこっちの好きに出来たんだがなぁ……」
そんな店主の呟きを前にした双子。
「またなんか勝手なこと言ってるし」
「テンシュぅ……こどもじゃないんだからさぁ……」
二人の顔から呆れる表情は消えない。
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