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巨塊討伐編 第三章:セレナの役目、店主の役目
法具店アマミ 嵐の前 3
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この日の法具店アマミは、依頼客はゼロ。買い物客とふらりと立ち寄った客が四人ほど。
開店して二か月ほどになるが、のどかな町の風景に溶け込んでいる。
業務には何の問題もなく一日が終わり、セレナも思いつめたような暗い表情からようやく解放された雰囲気で帰宅する。
「いいのいいの。こっちも突然お願いしたことだし、晩ご飯食べてって。テンシュも食べるよね? と言うか、食べていきなさい」
「夫婦って感じしてたんだけど」
「母親と子供って感じだよね」
「年齢差を考えると母親どころかおばあ……ぅあん? ぅあ?」
店主の後ろからセレナが口の両端をつまんで両側に引っ張っている。
「なんて言おうとしたのかしらねぇ、この口は?」
((孫を躾けるお祖母ちゃんの図だっ!))
期せずして同じことを思う双子。
しかしそれは口に出来ない。この場ではあまりに危険すぎる言葉。
「え、えと、晩ご飯の準備、手伝いますよっ」
「そ、そうそう。何しましょっか」
「え? いいよいいよ。久々の接客業で疲れたでしょ? 準備終わるまでのんびりしてて。そのぬいぐるみにしがみついてたりしていいから」
ぬいぐるみって何?
そう言ってきょろきょろする二人は、セレナから「ベッドの上にあるよ」と言われてそっちの方に目をやると……。
「な、何これ!」
「か、可愛いっ!!」
しがみついてたりしていい。
セレナのその言葉に甘える二人。
「ふかふかする~」
「あったか~いっ」
「狐にしがみつくトカゲ……」
「ん? 何か言った? テンシュ」
「いや、別に何も……」
セレナと店主のやり取りは、二人の耳には全く入らない。
夕食の準備が整うまでだが、一瞬にしてぬいぐるみの虜になってしまった。
────────────────
双子が名残惜しそうにしてぬいぐるみから離れ、夕食の時間が始まる。
「あんな可愛いの、初めて見た!」
「道具屋なんですから、ここでも販売したらどうですか? 絶対売れますよ!」
双子の攻勢にタジタジのセレナ。
「で、でもウチはほら、冒険者のための道具屋だから。それに一応装備品を中心にしてるから、インテリアとかは扱ってないのよ」
「あれはどちらかと言うと裁縫だろ。店で扱わなくても材料がありゃ誰でも作れるはずだ。そんな物ここで販売したって買う奴はせいぜい二人か三人。マネして作ろうと思えば作れるもんだよ」
シビアな見解の店主に双子はなおも食い下がる。
「出来上がるまで時間がかかるし、完成したら後片付けとか必要でしょ?」
「命が危険に晒される仕事から解放されて、自分の部屋に着いたらこのぬいぐるみが出迎えてくれる! 幸せなひと時じゃないですか!」
「彼氏、つくったらどうだよ」
「みつかんないもん」
「どこにいるかわかんないもん」
店主の一言に一気に沈む二人。
「んなもん、魅力が増えれば勝手に出来る。お前らが伸ばせる魅力っつったら、冒険者としての実力が一番手っ取り早えぇ。誰かと比べて優劣を競うもんじゃねぇ。人を惹きつける力を持つ個性的な冒険者ってことだ」
「依頼、まだ増えないもん」
「斡旋所、なかなか紹介してくれないです……」
『ホットライン』との縁はできたものの、彼らも決して暇ではない。
時間が空けば使用料金はそっちもちで特訓に付き合ってもらえるが、開いている時間は『風刃隊』の訓練に付き合うことを優先するわけではない。
それでも、実力を伸ばす機会は増えたことには違いない。しかし斡旋所の待遇はやや良くなった程度。
目立って良くなったわけではない。
しかし店主の反応は。
「斡旋所が彼氏紹介してくれるわけねぇだろうが!」
「「紹介の話は依頼の件です!」」
良くも悪くも、この人はホントぶれないよねぇ、とセレナは大きくため息一つ。
「そういやお前らに付きまとわれてうんざりしてる連中は、今日はこの町にいるのか? 依頼受けてどっかにいってないだろうな?」
「普通に聞いたら嫌味だろうけど、テンシュさんが言うといつもの調子にしか聞こえないのが不思議!」
「『ホットライン』の人達? 今日はいると思うけど、いるからといって私達の特訓に毎回付き合ってもらえるわけじゃないからね。依頼は斡旋所から名指しでくるのは上位二十の中でも上位に定着してるチームくらいだし」
「ならバイト代少し増やす。代わりにあいつらに伝言。明日朝一で受け取りに来いってな。ようやく六人分完成した。つくづく自分でも思うよ。かなり期間かかったってな」
「じゃあこれ食べ終わったら行ってきます。明日朝早く依頼受けに行くこともあったりするから」
双子とは言え、姉の方がしっかりした性格。
姉に促されて妹も食事を急ぐ。
「食休みとかしなくていい? いいなら後片付けとかも私一人でやるから。あ、喉つっかえちゃだめよ?」
セレナが気遣うが、二人はここに食事に招かれたのではなくバイトに来たついで。
仕事を言いつけられたら、その仕事を全うする。冒険者の依頼の心構えがバイト先でも活かされる。
「だが連れて来るのは明日がいいな。今日は伝えるだけ。でないと、時間的にいろいろとめんどくせぇ。いいな?」
口の中に物を入れたら返事は出来ない。
双子は頷いて了解した。
開店して二か月ほどになるが、のどかな町の風景に溶け込んでいる。
業務には何の問題もなく一日が終わり、セレナも思いつめたような暗い表情からようやく解放された雰囲気で帰宅する。
「いいのいいの。こっちも突然お願いしたことだし、晩ご飯食べてって。テンシュも食べるよね? と言うか、食べていきなさい」
「夫婦って感じしてたんだけど」
「母親と子供って感じだよね」
「年齢差を考えると母親どころかおばあ……ぅあん? ぅあ?」
店主の後ろからセレナが口の両端をつまんで両側に引っ張っている。
「なんて言おうとしたのかしらねぇ、この口は?」
((孫を躾けるお祖母ちゃんの図だっ!))
期せずして同じことを思う双子。
しかしそれは口に出来ない。この場ではあまりに危険すぎる言葉。
「え、えと、晩ご飯の準備、手伝いますよっ」
「そ、そうそう。何しましょっか」
「え? いいよいいよ。久々の接客業で疲れたでしょ? 準備終わるまでのんびりしてて。そのぬいぐるみにしがみついてたりしていいから」
ぬいぐるみって何?
そう言ってきょろきょろする二人は、セレナから「ベッドの上にあるよ」と言われてそっちの方に目をやると……。
「な、何これ!」
「か、可愛いっ!!」
しがみついてたりしていい。
セレナのその言葉に甘える二人。
「ふかふかする~」
「あったか~いっ」
「狐にしがみつくトカゲ……」
「ん? 何か言った? テンシュ」
「いや、別に何も……」
セレナと店主のやり取りは、二人の耳には全く入らない。
夕食の準備が整うまでだが、一瞬にしてぬいぐるみの虜になってしまった。
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双子が名残惜しそうにしてぬいぐるみから離れ、夕食の時間が始まる。
「あんな可愛いの、初めて見た!」
「道具屋なんですから、ここでも販売したらどうですか? 絶対売れますよ!」
双子の攻勢にタジタジのセレナ。
「で、でもウチはほら、冒険者のための道具屋だから。それに一応装備品を中心にしてるから、インテリアとかは扱ってないのよ」
「あれはどちらかと言うと裁縫だろ。店で扱わなくても材料がありゃ誰でも作れるはずだ。そんな物ここで販売したって買う奴はせいぜい二人か三人。マネして作ろうと思えば作れるもんだよ」
シビアな見解の店主に双子はなおも食い下がる。
「出来上がるまで時間がかかるし、完成したら後片付けとか必要でしょ?」
「命が危険に晒される仕事から解放されて、自分の部屋に着いたらこのぬいぐるみが出迎えてくれる! 幸せなひと時じゃないですか!」
「彼氏、つくったらどうだよ」
「みつかんないもん」
「どこにいるかわかんないもん」
店主の一言に一気に沈む二人。
「んなもん、魅力が増えれば勝手に出来る。お前らが伸ばせる魅力っつったら、冒険者としての実力が一番手っ取り早えぇ。誰かと比べて優劣を競うもんじゃねぇ。人を惹きつける力を持つ個性的な冒険者ってことだ」
「依頼、まだ増えないもん」
「斡旋所、なかなか紹介してくれないです……」
『ホットライン』との縁はできたものの、彼らも決して暇ではない。
時間が空けば使用料金はそっちもちで特訓に付き合ってもらえるが、開いている時間は『風刃隊』の訓練に付き合うことを優先するわけではない。
それでも、実力を伸ばす機会は増えたことには違いない。しかし斡旋所の待遇はやや良くなった程度。
目立って良くなったわけではない。
しかし店主の反応は。
「斡旋所が彼氏紹介してくれるわけねぇだろうが!」
「「紹介の話は依頼の件です!」」
良くも悪くも、この人はホントぶれないよねぇ、とセレナは大きくため息一つ。
「そういやお前らに付きまとわれてうんざりしてる連中は、今日はこの町にいるのか? 依頼受けてどっかにいってないだろうな?」
「普通に聞いたら嫌味だろうけど、テンシュさんが言うといつもの調子にしか聞こえないのが不思議!」
「『ホットライン』の人達? 今日はいると思うけど、いるからといって私達の特訓に毎回付き合ってもらえるわけじゃないからね。依頼は斡旋所から名指しでくるのは上位二十の中でも上位に定着してるチームくらいだし」
「ならバイト代少し増やす。代わりにあいつらに伝言。明日朝一で受け取りに来いってな。ようやく六人分完成した。つくづく自分でも思うよ。かなり期間かかったってな」
「じゃあこれ食べ終わったら行ってきます。明日朝早く依頼受けに行くこともあったりするから」
双子とは言え、姉の方がしっかりした性格。
姉に促されて妹も食事を急ぐ。
「食休みとかしなくていい? いいなら後片付けとかも私一人でやるから。あ、喉つっかえちゃだめよ?」
セレナが気遣うが、二人はここに食事に招かれたのではなくバイトに来たついで。
仕事を言いつけられたら、その仕事を全うする。冒険者の依頼の心構えがバイト先でも活かされる。
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