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巨塊討伐編 第四章:遅れてきた者
隣町の来客より得たる 店長、撤退
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チェリムも自宅に戻り、夕日がさしてくる頃。
「テンシュ、大丈夫? 無理してない? ベスト作りに根詰め過ぎじゃない?」
やや青ざめた顔の店主は、セレナの的外れな心配に安堵する。
起こさずに済むトラブルなら起きない方がいい。
ある諍いを心配する心の内に触れられない限り、店主はその諍いの引き金になることもない。
「あぁ。何の問題もない。ちょっと休めば治るさ。ほら、客が来たぞ」
「お、セレナ、ようやく会えたぜ。久しぶりだな。元気だったかよ?」
馴れ馴れしい口調で店に入って来たのは、ウィーナとミールのバイト期間中にも何度か顔を見せた、黒い体毛に覆われたホビット族の男。
「あ、えっと、ギスモさん、でしたっけ? いらっしゃい……」
「おうおう、さん付けなんてよそよそしい呼び方してんじゃねぇよ、セレナ。せっかくわざわざ隣町から来てやったってぇのによぉ。それより店の名前変えたんだな。初めて知ってからほぼ毎日足運んだんだけどさ、なかなか会えなかったよな。オイラ心配したんだぜぇ?」
セレナの笑顔が固まっている。
「何だよ、あのカウンターの男。あんな奴よりもオイラの方が役に立つぜぇ? なんでオイラに声かけなかったんだよ。オイラとお前の仲じゃねぇか」
「買い物一つもしないじゃないですか。今日は何かお買い求めですか?」
「バカ言うなや。オイラぁ、セレナに会いに来たんだぜ? 新装開店のお祝いだ。何よりうれしい事だろ? セレナにとってはよ」
「生憎こちらも時間が空いているわけではありませんので、特に用件がなければなるべく呼び出しはご遠慮くださ……」
「堅ッ苦しいんだよ、セレナ。もっとフランクに行こうぜ。いつも言ってるだろうが」
直立してその場から去ろうとするセレナの腰を軽く何度か叩くギスモ。背が小さいため手をまっすぐに伸ばすとセレナのその辺りの高さになる。
我が物顔でカウンターに向かって歩くその男は、店主にも何の気兼ねもなく話しかける。
「まぁ俺としちゃ、店を変えることを俺に事前に話通してもらわなきゃちと困ったりするんでなぁ……よ、にーちゃん。お前、何でここにいるのよ? 俺から許可もらってないだろ?」
「……何か用か? 俺はセレナから」
「ちょっと待った。俺が知らねぇお前が何でセレナを呼び捨てにすんのよ? お前何なんだよ」
「ちょっと、ギスモさん。訳の分からないこと言わないでちょうだい。ここは私のお店で私の一存……」
「ぱぁか言うなよ。俺とお前の店だろ? いや、俺がそう決めたんだ。だからお前は俺に任せりゃいいの。で、お前は何なんだ? 俺とセレナの邪魔すんじゃねぇよ」
セレナに向けた笑顔は、店主に向けた時には消え、敵意むき出しの顔つきになる。
「……セレナ、何この生き物?」
「あぁ? ぶっとばされてえか?」
「あんたが俺をぶっ飛ばすのは別に構わんが、そっからこっちに来るんじゃねぇ。俺の作る道具の材料があるんでな。扱いにむず……」
店主が話をしている間にずかずかと作業机に向かうギスモ。
ため息一つだけでも飛んでいってしまう粉末がまだそのまま残っている。
「おい! 何も知らねぇ奴がそこに行くんじゃ」
「何だよこの粉。変なモン置いとくんじゃねぇよ!」
椅子の上に土足で上がる。その粉の山の前で深く息を吸い込んだと思ったら勢いよく口から息を吹き出す。
粉が舞い、ギスモの鼻や口に入りこむ。
バキィッ!
咳き込むギスモの頬に店主の拳骨が突き刺さった音。
背が小さい分体重も軽い。奥の壁際に吹き飛ぶが、ダメージはそれほどでもない。むしろ粉によるダメージが大きい様子。
「テメェ……道具の材料簡単に吹き飛ばしゃあがって!」
百戦錬磨のセレナですら、初めて見る店主の形相に一瞬震えあがる。
店主は襟首を掴もうとするが、それでもギスモはその手を避ける。
「ってえなぁオイ。てめぇ、空気読めよ。今のは笑うとこだろぉ? バカじゃね?」
「ギスモさん。お帰りはこちらです。どうかお帰りください」
店主も聞いたことがない冷たく低く沈んだセレナの声。
出口の方を示した彼女の左手がぼうっと光が浮かんでいる。
「んだよ、セレナよぉ。こんな奴にマジになってんじゃねぇよ。オイラならこんな男の代わりなんか簡単に出来ちまうぜぇ? セレナのためなら無料奉仕だって構やしねぇよ。ちょいと考えりゃ……」
「お・か・え・り・く・だ・さ・い」
セレナの言葉と同時に手のひらの光が次第に鮮やかになる。
「ったくしょおがねぇなぁ。ま、そんなわがままなセレナも嫌いじゃねぇぜ。おう、そこの男。次来るときゃいなくなってろよな、じゃあな」
ギスモが去ったあとの作業場では、溜めた粉末の半分以上が吹き飛ばされ、回収が難しくなってしまった。
「ご、ごめん、テンシュ。変な奴が……」
「テメェで何とかしろっつったはずだな。店内が汚れる。これは別に構わねぇよ。だが俺が選別した石の細工を足蹴にされて黙ってるほど人好しじゃねぇ。だがこの店をあいつの店にするんなら話は別だ。俺に詫びる必要もねぇしな」
「テンシュ! 私そういうつもりじゃ……」
「ねぇだろうな。だがこの粉作り出せるか? 溜めた分かそれ以上の粉を作れりゃ許すも何もねぇよ。この世界がどうなろうと俺には関係のねぇ事だしな。あいつなら何とかできるんじゃねぇの? 」
出来るはずがない。出来るわけがない。
セレナはそうは答えたかったが、口先だけで納得してくれる店主ではないことも知っている。
セレナは疫病神としか言いようがない男に、再度付きまとわれる。
双子のバイト中の話に出て来たその男のことを聞いて軽くめまいに見舞われるほど、セレナが拒絶感を持つ相手。
しかし店主にとってはそんな二人の間柄は全くどうでもいい話。
「何とか出来るまでここには来ない。作業の邪魔をされては困るし何の為にもならない。あいつの店とするなら俺に出番はない。頃合いだ。俺はもうここには来ないだろうよ」
セレナに何も言い返す時間を与えず、言いたいことを言い終わると店主は『法具店アマミ』を後にした。
「テンシュ、大丈夫? 無理してない? ベスト作りに根詰め過ぎじゃない?」
やや青ざめた顔の店主は、セレナの的外れな心配に安堵する。
起こさずに済むトラブルなら起きない方がいい。
ある諍いを心配する心の内に触れられない限り、店主はその諍いの引き金になることもない。
「あぁ。何の問題もない。ちょっと休めば治るさ。ほら、客が来たぞ」
「お、セレナ、ようやく会えたぜ。久しぶりだな。元気だったかよ?」
馴れ馴れしい口調で店に入って来たのは、ウィーナとミールのバイト期間中にも何度か顔を見せた、黒い体毛に覆われたホビット族の男。
「あ、えっと、ギスモさん、でしたっけ? いらっしゃい……」
「おうおう、さん付けなんてよそよそしい呼び方してんじゃねぇよ、セレナ。せっかくわざわざ隣町から来てやったってぇのによぉ。それより店の名前変えたんだな。初めて知ってからほぼ毎日足運んだんだけどさ、なかなか会えなかったよな。オイラ心配したんだぜぇ?」
セレナの笑顔が固まっている。
「何だよ、あのカウンターの男。あんな奴よりもオイラの方が役に立つぜぇ? なんでオイラに声かけなかったんだよ。オイラとお前の仲じゃねぇか」
「買い物一つもしないじゃないですか。今日は何かお買い求めですか?」
「バカ言うなや。オイラぁ、セレナに会いに来たんだぜ? 新装開店のお祝いだ。何よりうれしい事だろ? セレナにとってはよ」
「生憎こちらも時間が空いているわけではありませんので、特に用件がなければなるべく呼び出しはご遠慮くださ……」
「堅ッ苦しいんだよ、セレナ。もっとフランクに行こうぜ。いつも言ってるだろうが」
直立してその場から去ろうとするセレナの腰を軽く何度か叩くギスモ。背が小さいため手をまっすぐに伸ばすとセレナのその辺りの高さになる。
我が物顔でカウンターに向かって歩くその男は、店主にも何の気兼ねもなく話しかける。
「まぁ俺としちゃ、店を変えることを俺に事前に話通してもらわなきゃちと困ったりするんでなぁ……よ、にーちゃん。お前、何でここにいるのよ? 俺から許可もらってないだろ?」
「……何か用か? 俺はセレナから」
「ちょっと待った。俺が知らねぇお前が何でセレナを呼び捨てにすんのよ? お前何なんだよ」
「ちょっと、ギスモさん。訳の分からないこと言わないでちょうだい。ここは私のお店で私の一存……」
「ぱぁか言うなよ。俺とお前の店だろ? いや、俺がそう決めたんだ。だからお前は俺に任せりゃいいの。で、お前は何なんだ? 俺とセレナの邪魔すんじゃねぇよ」
セレナに向けた笑顔は、店主に向けた時には消え、敵意むき出しの顔つきになる。
「……セレナ、何この生き物?」
「あぁ? ぶっとばされてえか?」
「あんたが俺をぶっ飛ばすのは別に構わんが、そっからこっちに来るんじゃねぇ。俺の作る道具の材料があるんでな。扱いにむず……」
店主が話をしている間にずかずかと作業机に向かうギスモ。
ため息一つだけでも飛んでいってしまう粉末がまだそのまま残っている。
「おい! 何も知らねぇ奴がそこに行くんじゃ」
「何だよこの粉。変なモン置いとくんじゃねぇよ!」
椅子の上に土足で上がる。その粉の山の前で深く息を吸い込んだと思ったら勢いよく口から息を吹き出す。
粉が舞い、ギスモの鼻や口に入りこむ。
バキィッ!
咳き込むギスモの頬に店主の拳骨が突き刺さった音。
背が小さい分体重も軽い。奥の壁際に吹き飛ぶが、ダメージはそれほどでもない。むしろ粉によるダメージが大きい様子。
「テメェ……道具の材料簡単に吹き飛ばしゃあがって!」
百戦錬磨のセレナですら、初めて見る店主の形相に一瞬震えあがる。
店主は襟首を掴もうとするが、それでもギスモはその手を避ける。
「ってえなぁオイ。てめぇ、空気読めよ。今のは笑うとこだろぉ? バカじゃね?」
「ギスモさん。お帰りはこちらです。どうかお帰りください」
店主も聞いたことがない冷たく低く沈んだセレナの声。
出口の方を示した彼女の左手がぼうっと光が浮かんでいる。
「んだよ、セレナよぉ。こんな奴にマジになってんじゃねぇよ。オイラならこんな男の代わりなんか簡単に出来ちまうぜぇ? セレナのためなら無料奉仕だって構やしねぇよ。ちょいと考えりゃ……」
「お・か・え・り・く・だ・さ・い」
セレナの言葉と同時に手のひらの光が次第に鮮やかになる。
「ったくしょおがねぇなぁ。ま、そんなわがままなセレナも嫌いじゃねぇぜ。おう、そこの男。次来るときゃいなくなってろよな、じゃあな」
ギスモが去ったあとの作業場では、溜めた粉末の半分以上が吹き飛ばされ、回収が難しくなってしまった。
「ご、ごめん、テンシュ。変な奴が……」
「テメェで何とかしろっつったはずだな。店内が汚れる。これは別に構わねぇよ。だが俺が選別した石の細工を足蹴にされて黙ってるほど人好しじゃねぇ。だがこの店をあいつの店にするんなら話は別だ。俺に詫びる必要もねぇしな」
「テンシュ! 私そういうつもりじゃ……」
「ねぇだろうな。だがこの粉作り出せるか? 溜めた分かそれ以上の粉を作れりゃ許すも何もねぇよ。この世界がどうなろうと俺には関係のねぇ事だしな。あいつなら何とかできるんじゃねぇの? 」
出来るはずがない。出来るわけがない。
セレナはそうは答えたかったが、口先だけで納得してくれる店主ではないことも知っている。
セレナは疫病神としか言いようがない男に、再度付きまとわれる。
双子のバイト中の話に出て来たその男のことを聞いて軽くめまいに見舞われるほど、セレナが拒絶感を持つ相手。
しかし店主にとってはそんな二人の間柄は全くどうでもいい話。
「何とか出来るまでここには来ない。作業の邪魔をされては困るし何の為にもならない。あいつの店とするなら俺に出番はない。頃合いだ。俺はもうここには来ないだろうよ」
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