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法王依頼編 第七章 製作開始
再会・玉座の間にて 1
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法王ウルヴェスが、『闘石』と呼ばれる碁に似た知的競技の、タイトル戦に該当する大賞戦の賞品の公募を国内に通知した。
店主がウルヴェスから受けた依頼との違いは、公式のものか非公式のものかということと、その期限が半年か一年かの二点。
店主には期限は一年という非公式の依頼。
しかし店主はウルヴェスの心意気に感銘を受け、彼の本音である半年を期限として製作に取り掛かった。
ところが作業を初めて間もなく、製作の途中で盗難に遭ってしまった。
それでも何とか完成させ、店主とセレナ、そして弟子入りと称して押し掛けたシエラの三人は依頼の品である碁盤を運び込むため玉座の間に入室した。
玉座でのウルヴェスは妖艶な女性の姿をしている。
セレナは相変わらず震えているが、何とか体面を保つ。
シエラは、最初に玉座の間に入ったセレナよりも畏敬の念が強すぎて体を強張らせている。
そして店主は台車を押しながら、玉座の前に横並びで佇む五人とその前にある物体に視線をとどめている。
彼らの前にあるのは碁盤。
ちょうど公募した献上品の目通しをするところのようだった。
先に並んでいた五人から睨まれながら、五人のさらに横の位置に着く店主。
「そなたは何者じゃ?」
ウルヴェスの言葉に驚くセレナとシエラ。
姿は違えども、店に何度も顔を出し、その姿を見せたではないか。
店主は表情一つ変えない。
「うろたえてんじゃねぇ。横の五人とは初対面だろ。ジジィも俺達とは初対面のように口利かなきゃ立場悪くなるだろ。俺とジジィに合わせろよ」
店主は顔を前に向けたまま、小声でそのように二人に告げる。
二人は生唾を飲み込み頷くことしかできなかった。
「法王に献上する品をお持ちしましたー。碁盤を所望とのことで、この台車の上に乗せて持ってまいりましたー」
店主にしては、公式の場にふさわしい言葉遣いではあるが相変わらず棒読みである。
「ほう」
ウルヴェスは片方の眉を少し釣り上げる。
店主はそんな妖女の様子を見て、演技を続けることにする。
「えー、私は……」
「貴様、異世界から来たとか言う道具屋の主だな? 先の巨塊討伐に余計な知恵を出してしゃしゃり出た……」
「控えよ! あの件のことを今持ち出すか? 妾が市井の声に耳を傾けて、その方針を選び取ったのだ。避難されるべきは妾にある。そなたにも申したな? 異論があるなら申し出よと。そしてこの座に妾の代わりに座るがよいと。言葉や行動に責任を持てぬまま、事が済んでから異議の申し立てをするなど、人の上に立つ者がすることではないっ」
非公式の場で依頼されたのだから、非公式の場で品物を引き渡すのが筋だっただろう。
しかし店主にとって最悪なことは、盗まれた未完成の品物が献上品となってしまうこと。
更に加工が必要なのに完成されたものと見なされ、製作者が判明された時に、果たして盗みに遭ったという事実を受け入れてもらえるかどうか。
始めからこの世界の住人だったらば聞き入れてもらえるかもしれないが、異世界から来た人物であることはおそらく周知の事実。
そして異端の者は除外すべしという考え方が存在する可能性もある。
献上品候補から外すにはこのタイミングしかない。
玉座の間に来た店主にとって、このタイミングは絶好であり、最悪でもあった。
「道具屋の主とやら、話を続けるがよい」
話を聞いてくれる。つまり何をしに来たのかという理由を聞いてくれる機会をもらえた店主。
難関の一つを切り抜けた。
この後果たしていくつ難関が待ち受けているか。まずはこの機会を有効に生かす。
「……公募の話を聞き、私も作製に取り掛かりました。いくつか作ってその中で一番献上品としてふさわしいと思える物を持ち込む予定でした。しかし盗難に遭ってしまいました」
「ほほう。それで?」
「しかしその盗難に遭った物は作りかけの物。もしも盗まれた物がこの場にありましたらば、私は自分で首を切らねばならないほどの罪を背負うことになるかもしれないと思い、それを押しとどめようと参りましたが幸い完成しました一品をその代わりにと持ってまいりました。ぜひお目通しを」
「そんなものあるわけないだろう! 貴様一体どういうつもりだ!」
「控えよと言ったのが聞こえなかったか?」
凛とした声で、最初に怒鳴った者の隣から出た声をウルヴェスが制する。
しかし店主はその抗議を聞いて、心配事が一つ減った。
ここにいる者達の中にセレナと面識があった場合、ウルヴェスの立場がまずくなるかもしれないと考えていた。
だがそのことに気付いたのは玉座の間に入ってから。
針のむしろから降ろされた気分になる店主。
「しかしこの玉座の間に持ち込めるほどの物を献上するとはどのような物か、我々も見てみたい物であります、猊下」
五人のうちの真ん中の者が発言する。
「ふむ。その箱の中に入っているのであろう? 無論見せに来たのであろう。苦しゅうない。取り出して見せて見よ」
ここでさらに難関を越えた確信を得た。
公募の内容を詳しく知らない店主は、一般公募と思い込んでいた。
特殊な役職に就いている物限定であれば、やはりウルヴェスの立場を危うくするところだった。
しかし気は緩めない。手順は何事も重要なのである。
「その前にぜひともお耳に入れたいことがあります」
店主ははっきりとした言葉遣いにさらに力を入れた。
店主がウルヴェスから受けた依頼との違いは、公式のものか非公式のものかということと、その期限が半年か一年かの二点。
店主には期限は一年という非公式の依頼。
しかし店主はウルヴェスの心意気に感銘を受け、彼の本音である半年を期限として製作に取り掛かった。
ところが作業を初めて間もなく、製作の途中で盗難に遭ってしまった。
それでも何とか完成させ、店主とセレナ、そして弟子入りと称して押し掛けたシエラの三人は依頼の品である碁盤を運び込むため玉座の間に入室した。
玉座でのウルヴェスは妖艶な女性の姿をしている。
セレナは相変わらず震えているが、何とか体面を保つ。
シエラは、最初に玉座の間に入ったセレナよりも畏敬の念が強すぎて体を強張らせている。
そして店主は台車を押しながら、玉座の前に横並びで佇む五人とその前にある物体に視線をとどめている。
彼らの前にあるのは碁盤。
ちょうど公募した献上品の目通しをするところのようだった。
先に並んでいた五人から睨まれながら、五人のさらに横の位置に着く店主。
「そなたは何者じゃ?」
ウルヴェスの言葉に驚くセレナとシエラ。
姿は違えども、店に何度も顔を出し、その姿を見せたではないか。
店主は表情一つ変えない。
「うろたえてんじゃねぇ。横の五人とは初対面だろ。ジジィも俺達とは初対面のように口利かなきゃ立場悪くなるだろ。俺とジジィに合わせろよ」
店主は顔を前に向けたまま、小声でそのように二人に告げる。
二人は生唾を飲み込み頷くことしかできなかった。
「法王に献上する品をお持ちしましたー。碁盤を所望とのことで、この台車の上に乗せて持ってまいりましたー」
店主にしては、公式の場にふさわしい言葉遣いではあるが相変わらず棒読みである。
「ほう」
ウルヴェスは片方の眉を少し釣り上げる。
店主はそんな妖女の様子を見て、演技を続けることにする。
「えー、私は……」
「貴様、異世界から来たとか言う道具屋の主だな? 先の巨塊討伐に余計な知恵を出してしゃしゃり出た……」
「控えよ! あの件のことを今持ち出すか? 妾が市井の声に耳を傾けて、その方針を選び取ったのだ。避難されるべきは妾にある。そなたにも申したな? 異論があるなら申し出よと。そしてこの座に妾の代わりに座るがよいと。言葉や行動に責任を持てぬまま、事が済んでから異議の申し立てをするなど、人の上に立つ者がすることではないっ」
非公式の場で依頼されたのだから、非公式の場で品物を引き渡すのが筋だっただろう。
しかし店主にとって最悪なことは、盗まれた未完成の品物が献上品となってしまうこと。
更に加工が必要なのに完成されたものと見なされ、製作者が判明された時に、果たして盗みに遭ったという事実を受け入れてもらえるかどうか。
始めからこの世界の住人だったらば聞き入れてもらえるかもしれないが、異世界から来た人物であることはおそらく周知の事実。
そして異端の者は除外すべしという考え方が存在する可能性もある。
献上品候補から外すにはこのタイミングしかない。
玉座の間に来た店主にとって、このタイミングは絶好であり、最悪でもあった。
「道具屋の主とやら、話を続けるがよい」
話を聞いてくれる。つまり何をしに来たのかという理由を聞いてくれる機会をもらえた店主。
難関の一つを切り抜けた。
この後果たしていくつ難関が待ち受けているか。まずはこの機会を有効に生かす。
「……公募の話を聞き、私も作製に取り掛かりました。いくつか作ってその中で一番献上品としてふさわしいと思える物を持ち込む予定でした。しかし盗難に遭ってしまいました」
「ほほう。それで?」
「しかしその盗難に遭った物は作りかけの物。もしも盗まれた物がこの場にありましたらば、私は自分で首を切らねばならないほどの罪を背負うことになるかもしれないと思い、それを押しとどめようと参りましたが幸い完成しました一品をその代わりにと持ってまいりました。ぜひお目通しを」
「そんなものあるわけないだろう! 貴様一体どういうつもりだ!」
「控えよと言ったのが聞こえなかったか?」
凛とした声で、最初に怒鳴った者の隣から出た声をウルヴェスが制する。
しかし店主はその抗議を聞いて、心配事が一つ減った。
ここにいる者達の中にセレナと面識があった場合、ウルヴェスの立場がまずくなるかもしれないと考えていた。
だがそのことに気付いたのは玉座の間に入ってから。
針のむしろから降ろされた気分になる店主。
「しかしこの玉座の間に持ち込めるほどの物を献上するとはどのような物か、我々も見てみたい物であります、猊下」
五人のうちの真ん中の者が発言する。
「ふむ。その箱の中に入っているのであろう? 無論見せに来たのであろう。苦しゅうない。取り出して見せて見よ」
ここでさらに難関を越えた確信を得た。
公募の内容を詳しく知らない店主は、一般公募と思い込んでいた。
特殊な役職に就いている物限定であれば、やはりウルヴェスの立場を危うくするところだった。
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店主ははっきりとした言葉遣いにさらに力を入れた。
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