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環境変化編 第八章:走狗煮らるる
店と村 二人の帰宅
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首都からの帰り道も三日間。ベルナット村に戻って来た二人。
停留所から降りて、首都滞在一日もいれて七日ぶりの『法具店アマミ』は新鮮に見える。
店の入り口には客と思われる者達が、その入り口が見えなくなるくらいの人数の人だかり。
不在の札を見て困惑している様子で、それぞれが思い思いの会話を繰り広げているようだ。
「誰かと思えば、見覚えのない奴らばかりじゃねぇか。初めまして。何をやってんだ人の店の前で」
「いきなりそう言う悪い冗談は止めなよ、テンシュ。こっちはシャレにならない話聞いて心配したんだよ?」
「嘴がないからって口とがらすなよ、鳥さん」
遠目では誰か分からなかった店主は、店に近づくにつれどんな者がいるかが見えてくる。そして言うことはやはりいつもの調子。
店の入り口にたむろしていたのはいくつかの冒険者チーム。
真っ先に声をかけ、まともに会話をしない店主に半ば本気で腹を立てるのは『クロムハード』のニードル。
「あのねぇ……はぁ。この店なくなるって噂聞いたんだけど? 入り口の札、しばらく休みますってかかってあるしさ。噂を鵜呑みにするほど頭悪くはないけど、ヘンなことがいろいろ揃ったら勘繰りたくもなる気持ちくらい分かるでしょ?」
「お前らが隣の……名前忘れたが巨塊から出た宝石がわんさか採るもんだから、入荷するいい素材もどんどん減ってってるんだよ。新しい仕入先とか調べに行くのも当然だろ? 日帰りで帰って来れるわけねーじゃねーか」
店主の言い分はもっともである。
冒険者からすればノーリスクハイリターンの仕事を選びたくなるのは道理。しかし斡旋所では楽な仕事はレベルの低い冒険者達に回す。
ところが斡旋所の依頼にならない仕事もある。
冒険者達が自分で見つけてくる場合がその一つ。
こればかりは斡旋所も制限はかけられない。
「だからって何も言わず休業なんて……」
「水臭いとか言うなよ? 店はお前らの仕事の手助けをする商売をしている。だからといってお前らの助けを受けるのとは筋が違う。だって商売なんだから。相応のお代は受け取ったらそこで貸し借りはなしになる」
「それはちょっとドライ過ぎないか? そんなテンシュでも世話になり続けりゃ心配もするさ」
「貸し借りなしでの心配なら、すまんなと言っておくか。だがセレナと一緒だし、セレナの手に負えなけりゃお前らだって手に負えねぇだろ。この先二十年もその札がかかったまんまで店内に埃被るようになったら、心配しながらもお前らは別の店でいろいろ調達するんだろ?」
それもそうだがとその場にいた冒険者達は、この騒ぎを好ましく思わない店主に言いくるめられる。
「頼りにされるのは正直うれしいさ。だが依存されるのはごめんだな。あなただけのお店ですってわけじゃねぇからな。困った人のための店であって、困った人のため『だけ』の店じゃねぇ。セレナの場合はプライベートの付き合いもあるだろうからそれは直接こいつに言えばいいことだし、俺とプライベートで付き合ってた奴はいねぇからな。もっとも純粋に心配してくれたことには、まあありがたいとは思うかな、うん」
店主はドアの前に進んで鍵を開け、中に入る。セレナが後に続き、入り口の前で待っていた者達がぞろぞろとついてくる。
「だが依頼を受けてる仕事もあるだろう? 依頼人は落ち着かないだろうよ」
依頼を頼むことを禁じられたスウォードが、他人の事をまるで我が事のように心配する。
店主は荷物を作業台に置いた後、長らく留守にしていたため積もった埃を取り払う掃除を始める。
「住所氏名は記録している。その記録を見りゃ俺の記憶がなくたって平気だよ。むしろその逆が危ない。まぁいずれ仕事はするし、完成品はその人物の下に送り届けられる。問題ねぇよ」
ほらほら、どいたどいた。埃被るぞ。
そんなことを言いながら冒険者達に向かって埃を追い立てるように箒で床を払う店主。
「そればかりじゃねぇよ、テンシュ。この店閉めるって話も聞いたぜ? バイトのあの娘……シエラっつったか? 一か月くらい休むって言われたとか言っていたし、引っ越しの準備でもするんじゃないかって近所の人達の話耳に入ったし」
『クロムハード』のエンビーが、彼らが一番心配している話を口にする。
それに釣られて全員が詰め寄るように店主に近づく。
「誰が喋ってたんだ? そんな話俺は聞いたことがねぇな」
そんな彼らは店主の一言で互いに見合わせる。
噂は、話をしていた近所の者達の妄想のレベルだったのか、あるいはデマだったのか。
いずれ、大山鳴動して鼠一匹といったところか。
全員が安心して力が抜けた表情。
「でもセレナだんまりだね。何かあった?」
「え? ううん。何でもない」
「なんかまだ巨塊の坑道に思うところがあるっぽいようでな。まぁ仕方ねぇだろ。あれだけ宝石が掘り出されたら、あそこ空洞になりかねねぇな」
店主からの愚痴は宝石絡みになっていく。
いつもの店主の姿と口調を聞いて、全員が次第に落ち着く。
「で、これだけいて買い物客はゼロってのはもう慣れた。お前らとっとと仕事しろ」
その一言で全員が店を出る。
騒ぎが収まり二人もようやく落ち着く。
「ウソは言ってねぇだろ? この村が出て行ってほしいって話は直接耳にしてねぇし、素材がありそうなところを見に行ったことも事実だ。事実をすべて知ろうとしないあいつらの手落ち。こっちには別に悪い所もなし」
セレナは何となく気が重い。
村から追い出される立場。そして常連客達から正直にすべてを離さなかった事。
しかし、客に依存する姿勢はよくないという店主の主張の正しさも感じてはいた。
停留所から降りて、首都滞在一日もいれて七日ぶりの『法具店アマミ』は新鮮に見える。
店の入り口には客と思われる者達が、その入り口が見えなくなるくらいの人数の人だかり。
不在の札を見て困惑している様子で、それぞれが思い思いの会話を繰り広げているようだ。
「誰かと思えば、見覚えのない奴らばかりじゃねぇか。初めまして。何をやってんだ人の店の前で」
「いきなりそう言う悪い冗談は止めなよ、テンシュ。こっちはシャレにならない話聞いて心配したんだよ?」
「嘴がないからって口とがらすなよ、鳥さん」
遠目では誰か分からなかった店主は、店に近づくにつれどんな者がいるかが見えてくる。そして言うことはやはりいつもの調子。
店の入り口にたむろしていたのはいくつかの冒険者チーム。
真っ先に声をかけ、まともに会話をしない店主に半ば本気で腹を立てるのは『クロムハード』のニードル。
「あのねぇ……はぁ。この店なくなるって噂聞いたんだけど? 入り口の札、しばらく休みますってかかってあるしさ。噂を鵜呑みにするほど頭悪くはないけど、ヘンなことがいろいろ揃ったら勘繰りたくもなる気持ちくらい分かるでしょ?」
「お前らが隣の……名前忘れたが巨塊から出た宝石がわんさか採るもんだから、入荷するいい素材もどんどん減ってってるんだよ。新しい仕入先とか調べに行くのも当然だろ? 日帰りで帰って来れるわけねーじゃねーか」
店主の言い分はもっともである。
冒険者からすればノーリスクハイリターンの仕事を選びたくなるのは道理。しかし斡旋所では楽な仕事はレベルの低い冒険者達に回す。
ところが斡旋所の依頼にならない仕事もある。
冒険者達が自分で見つけてくる場合がその一つ。
こればかりは斡旋所も制限はかけられない。
「だからって何も言わず休業なんて……」
「水臭いとか言うなよ? 店はお前らの仕事の手助けをする商売をしている。だからといってお前らの助けを受けるのとは筋が違う。だって商売なんだから。相応のお代は受け取ったらそこで貸し借りはなしになる」
「それはちょっとドライ過ぎないか? そんなテンシュでも世話になり続けりゃ心配もするさ」
「貸し借りなしでの心配なら、すまんなと言っておくか。だがセレナと一緒だし、セレナの手に負えなけりゃお前らだって手に負えねぇだろ。この先二十年もその札がかかったまんまで店内に埃被るようになったら、心配しながらもお前らは別の店でいろいろ調達するんだろ?」
それもそうだがとその場にいた冒険者達は、この騒ぎを好ましく思わない店主に言いくるめられる。
「頼りにされるのは正直うれしいさ。だが依存されるのはごめんだな。あなただけのお店ですってわけじゃねぇからな。困った人のための店であって、困った人のため『だけ』の店じゃねぇ。セレナの場合はプライベートの付き合いもあるだろうからそれは直接こいつに言えばいいことだし、俺とプライベートで付き合ってた奴はいねぇからな。もっとも純粋に心配してくれたことには、まあありがたいとは思うかな、うん」
店主はドアの前に進んで鍵を開け、中に入る。セレナが後に続き、入り口の前で待っていた者達がぞろぞろとついてくる。
「だが依頼を受けてる仕事もあるだろう? 依頼人は落ち着かないだろうよ」
依頼を頼むことを禁じられたスウォードが、他人の事をまるで我が事のように心配する。
店主は荷物を作業台に置いた後、長らく留守にしていたため積もった埃を取り払う掃除を始める。
「住所氏名は記録している。その記録を見りゃ俺の記憶がなくたって平気だよ。むしろその逆が危ない。まぁいずれ仕事はするし、完成品はその人物の下に送り届けられる。問題ねぇよ」
ほらほら、どいたどいた。埃被るぞ。
そんなことを言いながら冒険者達に向かって埃を追い立てるように箒で床を払う店主。
「そればかりじゃねぇよ、テンシュ。この店閉めるって話も聞いたぜ? バイトのあの娘……シエラっつったか? 一か月くらい休むって言われたとか言っていたし、引っ越しの準備でもするんじゃないかって近所の人達の話耳に入ったし」
『クロムハード』のエンビーが、彼らが一番心配している話を口にする。
それに釣られて全員が詰め寄るように店主に近づく。
「誰が喋ってたんだ? そんな話俺は聞いたことがねぇな」
そんな彼らは店主の一言で互いに見合わせる。
噂は、話をしていた近所の者達の妄想のレベルだったのか、あるいはデマだったのか。
いずれ、大山鳴動して鼠一匹といったところか。
全員が安心して力が抜けた表情。
「でもセレナだんまりだね。何かあった?」
「え? ううん。何でもない」
「なんかまだ巨塊の坑道に思うところがあるっぽいようでな。まぁ仕方ねぇだろ。あれだけ宝石が掘り出されたら、あそこ空洞になりかねねぇな」
店主からの愚痴は宝石絡みになっていく。
いつもの店主の姿と口調を聞いて、全員が次第に落ち着く。
「で、これだけいて買い物客はゼロってのはもう慣れた。お前らとっとと仕事しろ」
その一言で全員が店を出る。
騒ぎが収まり二人もようやく落ち着く。
「ウソは言ってねぇだろ? この村が出て行ってほしいって話は直接耳にしてねぇし、素材がありそうなところを見に行ったことも事実だ。事実をすべて知ろうとしないあいつらの手落ち。こっちには別に悪い所もなし」
セレナは何となく気が重い。
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