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環境変化編 第八章:走狗煮らるる
引っ越しまでの…… 店主の思う通りの日常
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「あ、テンシュさんかい? ニィナ建具屋のニィナ=バナーだよ。久しぶりだね」
この世界の電話に該当する遠話機をセレナから受け取った店主は、セレナからは一切伝わってこない相手の声を耳に入れる。
ややハスキーな声には聞き覚えはあるが、それ以上に建具屋の単語で相手が誰かを理解した。
「建築の件なんだけどさ、そっちから引っ越すんだろ? 一度に荷物全部運べないと思ってさ。先に倉庫完成させといたよ。店の在庫とか運び込めるから、そのこと知らせようと思ってね」
倉庫とは言うが、簡単に言えば職場用の物置である。
天井近くまで品物を置くことが出来るならば、照明さえ行き届いていればそれで十分。内装に拘る必要はない。
住まいや店舗とは違い、暴風雨や暴風雪に耐えられればそれだけで用は足りる。
それでも半月も経ってない短期間で一棟を完成させるのは、店主の想像以上に速い。
「あぁ、それはわざわざ……。はい、そのままでいいんですね? はい、では、はい」
店主はあやふやな言葉のみで返事をして話を終えた。
セレナもシエラも一階にいて、二階の遠話機での通話の声は聞かれないが、店主はそれでも念のため小さめの声で話す。
こそこそした声でもなかったので、シエラからは特に怪しまれることはなかった。
何食わぬ顔をして作業を再開する。
しかし作業中に誰かから連絡が店主に来るというのは珍しい。そこからの質問は避けられない。
「誰からだったんです? テンシュさん宛って珍しいですよね」
「仕入れ先の管理人からだ。こっから先は企業秘密」
口をつぐんだ店主に、さらにシエラが話しかける。
「……でもテンシュさんってすごいですよねぇ」
何に感心しているのかは知らないが、その感心したことにも無関心の店主は目の前の仕事以外に目もくれない。
「だってこんな風に仕事に夢中で、それなのにこっちの言葉もしっかり覚えて、勉強家なんですね」
「あぁ、それは違うのよ」
カウンターにいたセレナが反応する。聞かれた本人はシエラに無反応。
「巨塊討伐のことはシエラちゃんでも分かるでしょ?」
冒険者になって間もない頃とは言え、店主が巨塊討伐を終息させた立役者であることは、シエラも噂で耳にしていた。
「隠れたヒーローってとこですよね! 話は聞いてました」
「そのときの……まぁ功労賞ってとこかな。こちらの世界でも自由に活動できるように計らってくれたのよ」
へえぇ、と目を輝かせてセレナの話を聞いている。
しかしその直後、あれ? と熱から冷めたような目になる。
「功労賞……もらったってことは、あげた人もいるってことですよね? それって……」
「法王ウルヴェス猊下よ」
シエラは座っていた椅子を派手に鳴らしながら倒し、自分は直立不動になる。
どうやらその話は聞いたことはなかったらしい。
しかし今まで腑に落ちなかったことがようやく解決した。
法王をジジィ呼ばわりしたことといい、皇居、そして秘宝庫に案内してもらったことといい、その時にはすでに巨塊の件で店主は法王と会っていたことを、シエラは初めて知ることとなった。
「テ、テンシュについて知らないこと、多すぎる……」
「もう二十年前の事だもんねぇ。それに聞かれなきゃ答えないことだってあるしね」
「テ、テンシュの話、いろいろ聞きたいですっ」
「……シエラちゃん。あなた、テンシュの下で勉強しに来たんじゃないの? まずはそれでしょ?」
シエラの顔は再び熱を帯びたものとなる。セレナからの注意をそのまま素直に聞き、素直に返事をした後店主の仕事を熱心に観察し始めた。
この世界の電話に該当する遠話機をセレナから受け取った店主は、セレナからは一切伝わってこない相手の声を耳に入れる。
ややハスキーな声には聞き覚えはあるが、それ以上に建具屋の単語で相手が誰かを理解した。
「建築の件なんだけどさ、そっちから引っ越すんだろ? 一度に荷物全部運べないと思ってさ。先に倉庫完成させといたよ。店の在庫とか運び込めるから、そのこと知らせようと思ってね」
倉庫とは言うが、簡単に言えば職場用の物置である。
天井近くまで品物を置くことが出来るならば、照明さえ行き届いていればそれで十分。内装に拘る必要はない。
住まいや店舗とは違い、暴風雨や暴風雪に耐えられればそれだけで用は足りる。
それでも半月も経ってない短期間で一棟を完成させるのは、店主の想像以上に速い。
「あぁ、それはわざわざ……。はい、そのままでいいんですね? はい、では、はい」
店主はあやふやな言葉のみで返事をして話を終えた。
セレナもシエラも一階にいて、二階の遠話機での通話の声は聞かれないが、店主はそれでも念のため小さめの声で話す。
こそこそした声でもなかったので、シエラからは特に怪しまれることはなかった。
何食わぬ顔をして作業を再開する。
しかし作業中に誰かから連絡が店主に来るというのは珍しい。そこからの質問は避けられない。
「誰からだったんです? テンシュさん宛って珍しいですよね」
「仕入れ先の管理人からだ。こっから先は企業秘密」
口をつぐんだ店主に、さらにシエラが話しかける。
「……でもテンシュさんってすごいですよねぇ」
何に感心しているのかは知らないが、その感心したことにも無関心の店主は目の前の仕事以外に目もくれない。
「だってこんな風に仕事に夢中で、それなのにこっちの言葉もしっかり覚えて、勉強家なんですね」
「あぁ、それは違うのよ」
カウンターにいたセレナが反応する。聞かれた本人はシエラに無反応。
「巨塊討伐のことはシエラちゃんでも分かるでしょ?」
冒険者になって間もない頃とは言え、店主が巨塊討伐を終息させた立役者であることは、シエラも噂で耳にしていた。
「隠れたヒーローってとこですよね! 話は聞いてました」
「そのときの……まぁ功労賞ってとこかな。こちらの世界でも自由に活動できるように計らってくれたのよ」
へえぇ、と目を輝かせてセレナの話を聞いている。
しかしその直後、あれ? と熱から冷めたような目になる。
「功労賞……もらったってことは、あげた人もいるってことですよね? それって……」
「法王ウルヴェス猊下よ」
シエラは座っていた椅子を派手に鳴らしながら倒し、自分は直立不動になる。
どうやらその話は聞いたことはなかったらしい。
しかし今まで腑に落ちなかったことがようやく解決した。
法王をジジィ呼ばわりしたことといい、皇居、そして秘宝庫に案内してもらったことといい、その時にはすでに巨塊の件で店主は法王と会っていたことを、シエラは初めて知ることとなった。
「テ、テンシュについて知らないこと、多すぎる……」
「もう二十年前の事だもんねぇ。それに聞かれなきゃ答えないことだってあるしね」
「テ、テンシュの話、いろいろ聞きたいですっ」
「……シエラちゃん。あなた、テンシュの下で勉強しに来たんじゃないの? まずはそれでしょ?」
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