異世界きしものがたり ~魔力体力なくても知力で勝負~

網野ホウ

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プロローグ

プロローグ:生と生の狭間

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 気付けば暗い場所にいた。
 一人きりだった。
 どこからともなく声が聞こえる。

「命半ばで、自らの意志で命を落としたようだな。名は何という?」

 名? 僕に向かってしゃべってるのだろうか?
 えっと、僕の名前は……。

 ……。

 ……あれ?

 ……思い出せない。

「ふむ。無理もない。齢(よわい)十二、か。心に刻むには短すぎよう。お前は、アツミ・ナイトと呼ばれていたようだな」

 アツミ・ナイト……。

 そう言えば誰かから言われた気がする。
 強い人になって、たくさんの人から頼りにされる、そんな人になりますようにって。
 誰かからそんな願いを託されたような気がする。

 ナイトって強い人の意味なのかな。

「命尽きて、そして今お前はここにいる。次の生を受けることになるのだが、どんな生き方をしたいと思っているかね?」

「あ、あの、えっと、ここはどこなんですか? 僕はどうなるんですか?」

 気持ちが落ち着いていないのに、その声は次々と話を進めていってしまう。
 僕はなぜここにいるのかも分からないし、ここに来る前はどこにいたのかも分からない。何も覚えていないのに、そんな不安をほったらかしにされている。

「言っただろう? お前は自ら死を選んだ。そしてその魂は次の生に移りゆく。ここはその間。生と生の隙間ということだ」

 何となく覚えている。
 死んだら、生きている間の行いによって天国とか地獄に行くんだよ。
 そんな話を聞いたことがある。
 でもその声の話をまとめると、死んだ後は天国や地獄に行かないで、また別の生を受けるということみたいだ。

「どの世界にも、そのような話がいきわたっているようだな。だが本当はそうではない。今までの生の中でどんな気持ちを育ててきたか。育てた気持ちを携えながら次の生を受けるのだ。その気持ちや感情と次の生の世界では噛み合わないことがあるだろう。それが地獄の苦しみというものだと思うぞ? 逆にその気持ちが通用する世界に生まれたならば、住みやすい世界、つまり天国のような世界ということだろうな」

「ぼ、僕はどうなるんでしょう……」

 次の生の世界は変わらない。天国か地獄かを決めるのは僕の気持ち次第ということらしい。
 そうだ、だんだん思い出してきた。
 同じ年代の人達から、苦しい思いをさせられ続けてきたことを思い出した。

 そうか。

 きっと僕は、その苦しみから逃げたんだ。逃げ出せたんだ。

 でも次の生ではもっと苦しい思いをするかもしれない。

 何をされたかは思い出せない。でも二度とあんな苦しい思いはしたくない。

「苦しい思いは誰だってしたくはないものだ。だが、次の生ではどんな思いが付きまとうか、それはワシでも分からんよ。分かる者がいるとしたら、ここに来る前のお前だけかもしれん。いずれ苦しい思いをしたくないのは誰でも同じこと。だからこそ今ここで、次の生ではどんな生き方をしたいのかを宣言するのだよ。さぁ、お前はどんな生き方をしたい? どんな者になりたいのだ?」

 僕は……。
 僕は…………。

 思い出した。
 こんなことを僕に言ってくれた人がいた。


 強い子になってもらいたいな。
 騎士、キシと書いてナイトと呼ばせよう。
 渥美アツミ騎士ナイト。どうだ?

 騎士ってのは、強い正義のみかたなんだぞ。


 誰かがそう言いながら、僕に笑顔を見せてくれた。
 誰だか分からないけど、そうなろう。
 強くなろう。騎士ってどんな人なのか分からないけど、強くなろう。

「強くなりたいです。騎士になりたいですっ!」

「……ふむ、良かろう。だがなれるかどうかは己次第。ワシはそうなる環境を用意するしか出来ん。だからそのように宣言させるのだ。それはただの希望ではなく、誓いでもある。今度こそ人生を全うするのだぞ?」

 声はそれきり、いや、あらゆる音も聞こえなくなった。
 そして僕は……。

 僕は……。
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