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「魔法の模擬戦の時に……」
ララさんが話し出したところで、騎士団長の息子であるダミアンが教室へと入ってきた。ダミアンとは幼馴染だ。
教室内のよくない雰囲気に表情が固くなる。そしてダミアンの後ろにはリカルド様が……。
「あぁ! ちょうどよかったです、ダミアン様っ!」
教室へと入っていきなり声をかけられてダミアンの表情が訝しげになる。まぁ、声をかけてきたのがララさんなので当然の反応ではありますが。
「ダミアン様っ、模擬戦のこと覚えていますか?」
あぁ、やめて。
それはクラスメイト全員が思ったことだろう。
もちろん、ダミアンの表情も……もう見なくても分かる。
「グレイス様がダミアン様に勝つなんておかしいですよね? だってダミアン様は騎士団長の息子なんですもの! 未来の騎士団長が女の子に負けるなんてありえないです!」
ダミアン、怒ってる。すごく怒ってるよ。
私はこの茶番を止めて欲しくてリカルド様に視線で合図を送る。すると、リカルド様に思いが伝わったらしく、ウインクで返してきた。
あぁ、よかった。これでこの場も……。
「それで? それがどうしたんだい?」
それはリカルド様だった。
違う、違う! 違います、リカルド様! この場を止めていただきたかったのです!
リカルド様の言葉にララさんは気を良くしたのか、またぺらぺらと話し出した。
「ですので、きっとグレイス様がダミアン様にわざと負けるように言ったんだと思うんです! だってグレイス様は未来の王子妃じゃないですか? 傷を付けるわけにもいかないですし、そういうことなんですよね? リカルド様っ」
「ほぉ」
「だ、だめです、リカルド様……落ち着いてください」
いつもにこにことしていたリカルド様が急に笑わなくなり、クラスメイトたちの表情は引き攣ってある。あぁ、これはやばいんだな、と。
ダミアンに至っては怒っていた顔から泣きそうな顔になっている。そうですよね、あんなことを言われては……。
プライドを傷付けられてしまったのだから。
あの時の模擬戦が真剣なものだったとララさん以外の人たちはみんな知っている。
真剣に勝負をして、ダミアンは負けたのだ。本気の勝負に負けて、それをわざと負けたんだと言われては。
けれど、あの時の模擬戦は魔法を使った試合だったから私が勝てたのだ。実際、他の模擬戦で一度も勝てたことはない。負けず嫌いの私にはとても悔しいことだけれど。
「ということは、ララ嬢が言いたいのはこういうことか? ダミアンとグレイスが八百長をしたと」
「え? や、お……?」
「そういうことなんだろう? ダミアンがわざと負けるよう、私の婚約者の立場を利用してグレイスが指示をしたと」
「えっと、」
「騎士団長の息子であるダミアンと、聖騎士団長の娘であるグレイスが八百長か。それが本当なら大変なことだ」
「いえ、えっと、リカルド様、あの……」
ララさんはいつもと違う雰囲気のリカルド様に圧倒されてしまい、言葉が出てこないようだ。
「ちなみにララ嬢、私はその呼び方を許可した覚えもないし、グレイス以外に許可するつもりもない」
「え、で、でもっ! 学園内ではみんな平等のはずですっ! だから、」
「平等であっても、立場というものは弁えてもらわねば困る。君は何度もグレイスに注意されていたはずだ」
「す、すみません……」
「さて話を戻すが、このことは陛下に伝えて調べてもらった方がいいだろう。騎士団長の後継者がそんなことをしていたなんて、あってはならないことだからね。そして証人はもちろん、君だ。あぁ、君の家門にもぜひ協力を頼もう」
君だ、と言われてやっと気が付いたようだ。自分がしでかしてしまった事の大きさを。
「いや、その……」
「どうしたんだい? 君が言い出したんだろう」
「ご、ごめんなさい……」
「何が?」
「証拠なんて、ありません。私が勝手にそう思っただけで……」
ララさんは一歩、また一歩と後ろへ下がっていく。決してリカルド様が近寄っていっているわけでもないのに、その圧の恐ろしさに後ろへと下がってしまっている。
「では君は、証拠もないのに自分の思い込みだけでなんとか二人を陥れようとしたのか」
「違いますっ、陥れようだなんて思っていませんっ!」
「じゃぁ、なんだと言うんだい?」
「えっと、そ、そうだ! リカルドさ……いえ、リカルド殿下っ。私の教科書をグレイス様が破いたんですっ! これは本当です! だって証人がちゃんといるんですもの!」
この場の全員が「まだ懲りないのか」と思ったに違いない。リカルド様の前でその婚約者である私に罪を着せようとしているのだから。
ララさんが話し出したところで、騎士団長の息子であるダミアンが教室へと入ってきた。ダミアンとは幼馴染だ。
教室内のよくない雰囲気に表情が固くなる。そしてダミアンの後ろにはリカルド様が……。
「あぁ! ちょうどよかったです、ダミアン様っ!」
教室へと入っていきなり声をかけられてダミアンの表情が訝しげになる。まぁ、声をかけてきたのがララさんなので当然の反応ではありますが。
「ダミアン様っ、模擬戦のこと覚えていますか?」
あぁ、やめて。
それはクラスメイト全員が思ったことだろう。
もちろん、ダミアンの表情も……もう見なくても分かる。
「グレイス様がダミアン様に勝つなんておかしいですよね? だってダミアン様は騎士団長の息子なんですもの! 未来の騎士団長が女の子に負けるなんてありえないです!」
ダミアン、怒ってる。すごく怒ってるよ。
私はこの茶番を止めて欲しくてリカルド様に視線で合図を送る。すると、リカルド様に思いが伝わったらしく、ウインクで返してきた。
あぁ、よかった。これでこの場も……。
「それで? それがどうしたんだい?」
それはリカルド様だった。
違う、違う! 違います、リカルド様! この場を止めていただきたかったのです!
リカルド様の言葉にララさんは気を良くしたのか、またぺらぺらと話し出した。
「ですので、きっとグレイス様がダミアン様にわざと負けるように言ったんだと思うんです! だってグレイス様は未来の王子妃じゃないですか? 傷を付けるわけにもいかないですし、そういうことなんですよね? リカルド様っ」
「ほぉ」
「だ、だめです、リカルド様……落ち着いてください」
いつもにこにことしていたリカルド様が急に笑わなくなり、クラスメイトたちの表情は引き攣ってある。あぁ、これはやばいんだな、と。
ダミアンに至っては怒っていた顔から泣きそうな顔になっている。そうですよね、あんなことを言われては……。
プライドを傷付けられてしまったのだから。
あの時の模擬戦が真剣なものだったとララさん以外の人たちはみんな知っている。
真剣に勝負をして、ダミアンは負けたのだ。本気の勝負に負けて、それをわざと負けたんだと言われては。
けれど、あの時の模擬戦は魔法を使った試合だったから私が勝てたのだ。実際、他の模擬戦で一度も勝てたことはない。負けず嫌いの私にはとても悔しいことだけれど。
「ということは、ララ嬢が言いたいのはこういうことか? ダミアンとグレイスが八百長をしたと」
「え? や、お……?」
「そういうことなんだろう? ダミアンがわざと負けるよう、私の婚約者の立場を利用してグレイスが指示をしたと」
「えっと、」
「騎士団長の息子であるダミアンと、聖騎士団長の娘であるグレイスが八百長か。それが本当なら大変なことだ」
「いえ、えっと、リカルド様、あの……」
ララさんはいつもと違う雰囲気のリカルド様に圧倒されてしまい、言葉が出てこないようだ。
「ちなみにララ嬢、私はその呼び方を許可した覚えもないし、グレイス以外に許可するつもりもない」
「え、で、でもっ! 学園内ではみんな平等のはずですっ! だから、」
「平等であっても、立場というものは弁えてもらわねば困る。君は何度もグレイスに注意されていたはずだ」
「す、すみません……」
「さて話を戻すが、このことは陛下に伝えて調べてもらった方がいいだろう。騎士団長の後継者がそんなことをしていたなんて、あってはならないことだからね。そして証人はもちろん、君だ。あぁ、君の家門にもぜひ協力を頼もう」
君だ、と言われてやっと気が付いたようだ。自分がしでかしてしまった事の大きさを。
「いや、その……」
「どうしたんだい? 君が言い出したんだろう」
「ご、ごめんなさい……」
「何が?」
「証拠なんて、ありません。私が勝手にそう思っただけで……」
ララさんは一歩、また一歩と後ろへ下がっていく。決してリカルド様が近寄っていっているわけでもないのに、その圧の恐ろしさに後ろへと下がってしまっている。
「では君は、証拠もないのに自分の思い込みだけでなんとか二人を陥れようとしたのか」
「違いますっ、陥れようだなんて思っていませんっ!」
「じゃぁ、なんだと言うんだい?」
「えっと、そ、そうだ! リカルドさ……いえ、リカルド殿下っ。私の教科書をグレイス様が破いたんですっ! これは本当です! だって証人がちゃんといるんですもの!」
この場の全員が「まだ懲りないのか」と思ったに違いない。リカルド様の前でその婚約者である私に罪を着せようとしているのだから。
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