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本編
閑話・クラーラ
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私、クラーラ・バルテルは前世の記憶を持って生まれてきた。
前世の私は地味な女子高生だった。
アニメ、ゲーム、小説などの物語に浸るのが好きな所謂オタクだ。
そんなオタクな私は異世界でファンタジックな世界に転生した。
私は転生系の小説が大好きだった。
だから、この世界も私の好きだった作品の世界の中なのかと思っていた。
しかし、どう思い出してみてもこのような世界も登場人物も思い出せない。
この世界は私の知っているものではなかったが、楽しくはあった。
前世にはなかった魔法や見たこともない幻想的な景色。
そして、なによりも私が出会えて良かったと思っているのは大好きな婚約者だ。
彼と出会ったのは第三王子と歳が近い友人候補、婚約者候補が集められるお茶会だった。
私は彼に一目惚れをしてしまったのだ。
それはお茶会の隅でお菓子をもそもそと食べている時だった。
両親は私を第三王子の婚約者にするような野心はなかった。
そのために私は隅の方で友人候補や婚約者候補に囲まれている第三王子を見ているだけだった。
すると、話しかけられたのだ。
「君は行かなくても良いのかい?」
横を向くと、琥珀色に輝く瞳と目が合う。
白銀の髪がサラサラと揺れるたびに鼓動が早くなる。
前世を含めても初めての感覚だった。
全身が衝撃に打たれ痺れる。
この人と共にありたいと願ってしまうほどの衝動だった。
「い、いえ、私のような者は、王子の婚約者にはふさわしくはないので」
「そんな事はないよ。菫色の髪も、漆黒の瞳も、とても美しい。君ほど美しい人が相応しくないはずがないだろう」
「そ、そんなことは……あ、ありがとうございます」
「そうだ、自己紹介が遅れたね。僕は、フランツ・アベール。君の名を教えてもらっても良いかい?」
「は、はい。申し遅れました。クラーラ・バルテルと申します」
「その花素敵だね」
「ありがとうございます。私のお気に入りのお花なんです。」
私はお花が好きで、今日のドレスにも生花を使っていた。
フランツ様はお花について詳しく、たくさんお花のお話をしてくれた。
私たち二人は候補者としてお茶会に来ていることも忘れ、お茶会が終わるまで楽しく話していた。
時間が早く感じてしまうほどに楽しい時間。
これで会えなくなるのは嫌だと思うほど、私はフランツ様にこの短時間で恋をした。
フランツ様は私を最後までエスコートしてくれた。
馬車に向かう道もたくさんお話をした。
後ろ髪を引かれる思いで馬車に乗り込む。
「また会おうね、クラーラ」
フランツ様はニコニコと私に笑いかけた。
その翌日、アベール公爵家から使いが来て、その日のうちに私はフランツ様の婚約者となった。
その日はいつになく気分が高揚していた。
私は喜びのあまり、くるくると踊り回ってしまった。
今思えば、恥ずかしくて仕方がないが、私にとって一番大切な日なのだ。
前世の私は地味な女子高生だった。
アニメ、ゲーム、小説などの物語に浸るのが好きな所謂オタクだ。
そんなオタクな私は異世界でファンタジックな世界に転生した。
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だから、この世界も私の好きだった作品の世界の中なのかと思っていた。
しかし、どう思い出してみてもこのような世界も登場人物も思い出せない。
この世界は私の知っているものではなかったが、楽しくはあった。
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そして、なによりも私が出会えて良かったと思っているのは大好きな婚約者だ。
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私は彼に一目惚れをしてしまったのだ。
それはお茶会の隅でお菓子をもそもそと食べている時だった。
両親は私を第三王子の婚約者にするような野心はなかった。
そのために私は隅の方で友人候補や婚約者候補に囲まれている第三王子を見ているだけだった。
すると、話しかけられたのだ。
「君は行かなくても良いのかい?」
横を向くと、琥珀色に輝く瞳と目が合う。
白銀の髪がサラサラと揺れるたびに鼓動が早くなる。
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「い、いえ、私のような者は、王子の婚約者にはふさわしくはないので」
「そんな事はないよ。菫色の髪も、漆黒の瞳も、とても美しい。君ほど美しい人が相応しくないはずがないだろう」
「そ、そんなことは……あ、ありがとうございます」
「そうだ、自己紹介が遅れたね。僕は、フランツ・アベール。君の名を教えてもらっても良いかい?」
「は、はい。申し遅れました。クラーラ・バルテルと申します」
「その花素敵だね」
「ありがとうございます。私のお気に入りのお花なんです。」
私はお花が好きで、今日のドレスにも生花を使っていた。
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時間が早く感じてしまうほどに楽しい時間。
これで会えなくなるのは嫌だと思うほど、私はフランツ様にこの短時間で恋をした。
フランツ様は私を最後までエスコートしてくれた。
馬車に向かう道もたくさんお話をした。
後ろ髪を引かれる思いで馬車に乗り込む。
「また会おうね、クラーラ」
フランツ様はニコニコと私に笑いかけた。
その翌日、アベール公爵家から使いが来て、その日のうちに私はフランツ様の婚約者となった。
その日はいつになく気分が高揚していた。
私は喜びのあまり、くるくると踊り回ってしまった。
今思えば、恥ずかしくて仕方がないが、私にとって一番大切な日なのだ。
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