その「好き」はどこまで本気ですか？

恋人ごっこの夜

初めての夜

嬉しい、と彼は言った。
私がずっと恐れていた告白は、彼にとって、喜びでしかなかったらしい。その事実に、張り詰めていた心の糸がぷつりと切れ、私の目からは、安堵の涙が、ぽろぽろと零れ落ちていた。

彼は、その涙を優しく指で拭うと、まるで宝物に触れるかのように、私の身体をゆっくりと抱きしめた。

「大丈夫。絶対に、傷つけたりしないから」

その言葉通り、彼はどこまでも優しかった。初めての痛みは、少しして、蕩けるような快感に塗り替えられていく。
彼のたくましい腕に抱かれ、何度も角度を変え、深く求められた。度に、私の耳元で、彼が愛の言葉を囁いた。

「……かわいい、朱音」
「好きだ。大好きだ」
「君だけだよ。君だけが、俺をこんなにおかしくさせる」

その熱のこもった言葉の一つ一つが、私の身体だけでなく、心の奥深くまでも満たしていく。
私たちは、どちらかが果てるまで、何度も求め合った。

全てが終わった後も、彼は私を離さなかった。汗で湿った髪を優しく梳き、労わるように全身を撫でる。その腕の中で、私は心地よい疲労感に、ただ、うっとりと身を委ねていた。

「シャワー、浴びようか」

そう言って、サイラスは私を軽々と抱き上げる。バスルームでも、彼は私を甘やかし続けた。背中にキスを落とし、うなじを食み、温かいお湯の中で、私たちはまた、何度も唇を重ねる。

綺麗になった身体で、二人、同じベッドに潜り込む。サイラスは、私を腕の中に閉じ込めるように、背後から抱きしめた。首筋に、彼の穏やかな寝息がかかる。

もう、何も考えられなかった。
ただ、彼の体温と、匂いと、私を包む腕の力強さだけが、世界の全てだった。
もし、これが一夜限りの夢なのだとしても。
今は、このままで。この腕の中で、もう少しだけ。
私は生まれて初めて感じるほどの幸福感に包まれ、深い眠りへと落ちていった。