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最終章
175,決戦 Part,4
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周囲をよく見渡さなくてもここが先ほどまでいた150階層ではないのはわかっている。
まず他のメンバーがいないし、どうみても150階層とは違った材質で壁や床が出来ている。ところどころに点在している巨大な柱も150階層よりもずいぶん数が多い。
何よりも一際目立つ存在があり、そのせいでここがどこなのかわかってしまった。
「最下層……か」
オークロードが黒い炎を撒き散らしている場所から左側に進んだところに壁をくりぬいたような場所があり、そこは祭壇のようになっていた。
そして深い深い真紅の光を放つ巨大な結晶体が宙に浮いている。
話に聞いていたよりもずっと大きい。だが間違いなくあれが迷宮の核となる魔石だろう。
つまりオレが攻撃を仕掛けた時点でヤツはこの最下層まで転移した。
オレの攻撃に巻き込まれないように皆が引いた一瞬を狙っていたとしか思えないタイミングのよさだ。
今まで転移を使わなかったのもあのタイミングを狙っていたからだろう。
個別に撃破するためにタイミングを狙っていたのなら最初にドリルさんを連れて転移していたはずだ。
つまり最初から狙いはオレだったということになる。
そういえばオークロードと初めて会ったときにしっかりと攻撃を当てたのはオレだけだった。あれで恨まれてたのかな? まぁ腕飛ばしたしな。
恨んでいようがいまいがどちらにしても好都合だ。
ここなら他のメンバーへの被害を考えずに戦える。
ちなみに帰り道に関してはあまり気にしていない。
鬼刃の時のような転移対策として苦肉の策として考えた作戦が一応ある。
アルが帰還用魔道具の本体を持ち、1つ増えたアンカーともう1つのアンカーを1つずつ分けて持つことで帰還用魔道具で迎えに来てもらえるようになるのだ。
ただ正直アンカーは貴重なので鬼刃のような強力な敵がいるところには設置しづらい。
認識阻害と強固な結界機能を有しているとはいっても鬼刃クラスになると全力で攻撃されたら簡単に壊される。
今回は特に今設置するのは危険だ。
オークロードの魔道具無効化のスキルで認識阻害と結界が無効化されたら余波だけで壊されてしまう。
そうすると最悪自力で帰らないといけなくなる。
まぁでも自力でも帰れるとは思う。ここが最下層なら入り口あたりに戻れる転移装置がありそうなものだからだ。まぁパッと見はなさそうなんだけど。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
視界の半分近くが黒で占められ始めてきた。
魔道具を無効化するスキルは継続して発動したまま来るだろう。そうなるとオレの防御は紙と変わらない。障壁なんかも全て機能しなくなるので1発も攻撃はもらえない。
しかし先ほどやってわかったが当たらなくてもあの程度の勢いならば消し飛ばせる。
1発でも貰ってやる義理はないので全て叩き潰してやろう。
魔道具無効化で使い物にならない紫電の大槌は定位置に戻し、売り物として作っておいた武器の中でも大型の鈍器を2つ取り出す。
片方でも小柄なオレの重量の倍はありそうなほどぎっちり中身の詰まった超重量兵器だ。
ただグレートコーンよりは軽い。アレがどれほど異質な重量兵器だったかがよくわかる。
火力特化構成のオレにとってはどちらも羽根の様に軽く感じる。
片手でくるっと回して感触を確かめ、おもむろに1歩を踏み出して一直線に投擲した。
頑強で知られる迷宮の床にヒビが入り、先の空振りで大きく亀裂が入っていたために合わせて砕ける。
射出された鈍器が空気の壁を突破して大きく厚く広がった黒い炎を一瞬にして消し飛ばし、オークロードに激突して壁を大きく崩壊させる。
だが止まらない。
もう片方の鈍器をさらに1歩踏み出して床を破壊しながら投擲し、続けざまにどんどんアイテムボックスの武器を投げつけていく。
1歩1歩踏み出すごとにかなり遠くにある迷宮の壁が凄まじい音を立てて崩壊していく。
すでに視界の半分を埋め尽くそうとしていた黒い炎よりも壁から立ち上る粉塵の方が多い。
しかし思ったよりも攻撃力が出ていない。
火力特化構成といえど鬼刃戦のような制御を無視した極振りではなく、ある程度制御できるように器用を調整しているため攻撃力が減るのは仕方ない。
しかしそれでも投擲したのと自分で叩きつけるのではずいぶん威力が変わるようだ。
この辺はスキルとして投擲系があるためだろうか。
まぁそれでも迷宮の壁を崩壊させる程度には高火力だし、まだ弾もある。
しかしこれで終わるとは思っていない。
この程度ただの肩慣らしだ。
……その証拠に、ほら。
黒い殺気が莫大に膨れ上がり、後方に突如出現した。
だがわかりやすすぎる。まるで今から攻撃しますよ、と宣言しているかのような稚拙さだ。
すでに取り出しているオレの身長以上に長い剣――オレの背が低いのでこれで普通の長剣サイズ――を瞬時に投擲。
刹那のタイミングで迫った黒い炎を消し飛ばし、オークロードの肩に突き刺さり貫通する。
返す刀でもう1本アンダースローで投擲すれば腹部に直撃し、上半身と下半身が生き別れになるがすぐさま霧となって回避に成功したようだ。
だが甘い。
霧状になっているときは魔法攻撃がよく効く事はすでにわかっていることだ。
今まで投擲したのは魔道具ではない物理的な武器ばかりだ。魔法攻撃が追加で発動する類の武器は大抵魔道具だが、そうではない武器というのも一応ある。
もちろんそういった武器というのは魔結晶が仕込まれた武器だ。
つまりはそういった武器は持ってきた武器の大半を占めるのだ。
取り出した魔法攻撃が可能な武器を霧になったオークロードに次々投擲していく。
霧を貫通し、その度に魔法攻撃が凄まじい威力を持って炸裂する。
4発目が炸裂した時点で霧状態を維持できなくなったオークロードがその身を実体化させた。
その瞬間を見逃さず、今度は投擲ではなく必殺の威力を秘めた一撃が炸裂する。
体の芯を確実に捉えた一撃は火力特化構成に於ける自身への被害は軽微だがもっとも攻撃力が高く調整された一撃。
故に――。
瞬時に防御に回すために出現した黒い炎を完全に消滅させ、末端となる四肢を引きちぎり迷宮の強固な床を粉砕した。
肉が潰れ、骨がひしゃげる。
そんな感触など感じる暇すらないほどの一瞬で直撃した箇所が消滅するのを確信し、感じた感触は迷宮の床をぶち抜く堅い感触。
だがこれで終わらせるつもりは毛頭ない。
すでに魔道具無効化のスキルが途切れているのは直感的に確信している。
だがアイテムボックスからさらに2本の超重量鈍器を取り出し、叩きつける。
かなりの面積を誇る最下層の床全てをひっくりかえしたかのような衝撃を2発追加で叩き込み、王族の不文律を発動させ瞬時に紫電の大槌を最大レベルで起動させる。
重々陣の超重量を加算された紫電の大槌が振り下ろされ、王族の不文律が切れる前に連続転移してその場を離れる。
鬼刃戦で学んだ自身の超火力の被害には自身の超火力で対抗する。
十分に離れてはいても刹那の差で迫る衝撃を紫電の大槌を振るうことで相殺を試み……若干相殺し切れなかったがあの時よりはずっとマシな結果に終わってくれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アイテムボックスからスタミナ回復ポーションを思考だけで使用し、王族の不文律を使い、折れた両腕と体中に出来た擦り傷を瞬時に初級魔法:体力回復で癒す。
鬼刃戦の時よりはずっとマシとはいえ、なかなか痛かった。
相殺し切れなかった衝撃波でかなりぼろぼろになったドレス装備も膨大なMPを吸って再生したおかげで今回は着替える必要もなかったが、やはり目の前に広がる惨状は凄まじい。
鬼刃戦の時よりは制御できていたがそれでも紫電の大槌と重々陣の全力コンボは思った以上の破壊力を生み出した。
次の機会がないとはいえないのだし、もう少し制御できるように練習しておこう。
これだけの威力ならばさすがに倒せただろうとは思うのだが、念のため構成を変えずにスタミナ回復ポーションを再度使用して爆心地へと移動を開始する。
爆心地から放射状に衝撃波が広がっていて、爆心地はかなり深くなっているのか近づくに連れてどんどん傾斜がきつくなっていく。
迷宮の床は波打ち、爆心地に近づくに連れてどんどん破片が細かくなっていく
爆心地付近はさらさらの砂浜のように細かくなり、最早破片らしい破片もないほどだ。
鬼刃の時の爆心地とはずいぶん違った風景に少し不思議に思いつつもさらさらの地面を踏みしめて爆心地へと降りていった。
「これは……」
爆心地のさらに中心。
さらさらの砂の中に半ば以上埋まっていたものはあのオークションでエリア姫が競り落とした魔結晶の塊だった。
あの時は鑑定しなかったが、今になって思えばなぜ鑑定しなかったのか不思議だ。
確かに鑑定は普段使っていないスキルだから存在自体を忘れていても不思議ではないかもしれないが。
だが今現在は鑑定するべきだろうとはっきりと思っている。
他の魔結晶では人工的に融合させることはできなかったと言っていたし、この魔結晶にはきっと何かある。
半ば以上埋まった魔結晶の塊に鑑定を使おうとした瞬間だった。
魔結晶の塊全てを覆い尽くすほどの闇が噴出してその身の全てを隠す。
鑑定は見えていなければ使えない。
……だが鑑定が使えない以上にこれは明らかに異常事態だ。
まだオークロードが生きていた、というよりはこの魔結晶の塊が元凶だと思った方がわかりやすい。
瞬時にそう判断し、王族の不文律を使用して紫電の大槌を最大レベルで展開し重々陣を起動して振り下ろす。
オークロードを消滅させ、迷宮の頑強な床を文字通り粉々にするほどの破壊力を秘めた一撃は信じ難い事に魔結晶の塊を覆う闇によって受け止められた。
余波として発生する衝撃波だけでもとんでもない威力になる一撃のエネルギーを全て――拡散するように発生する衝撃波まで全て――闇が受け止めているのだ。
しかしそれだけのエネルギーを簡単に受け止めれたわけではないらしい。
魔結晶の塊を覆っていた闇の一部を消し飛ばし、ほんの少しだが魔結晶の塊に接触している。
だが接触してはいてもそれは本当に触っているだけという程度でしかない。
……無効化系のスキルか? ……だが。
破壊することは叶わなかったが闇は一部分だが消し飛ばす事に成功している。
ここは1つコレだけでもよしとしよう。闇への対抗策はごり押しで十分だとわかったのだし。
こいつはもうオークロードでもなんでもない別個の敵として認識した方がいいだろう。
故に今は新種の敵の情報収集へと切り替える。
鑑定は見えていなければ使えないが、ある程度の部分が見えてさえいれば使える。
今度こそ鑑定を発動させ、ウィンドウを出したまま距離を取る。
「はぁ……?」
再び闇に覆われた魔結晶の塊を視界に入れたまま鑑定結果のウィンドウの文字をチラ見する。
そしてそこに表示されている名前に思わず口から呆れにも似た疑問符が零れ落ちた。
まず他のメンバーがいないし、どうみても150階層とは違った材質で壁や床が出来ている。ところどころに点在している巨大な柱も150階層よりもずいぶん数が多い。
何よりも一際目立つ存在があり、そのせいでここがどこなのかわかってしまった。
「最下層……か」
オークロードが黒い炎を撒き散らしている場所から左側に進んだところに壁をくりぬいたような場所があり、そこは祭壇のようになっていた。
そして深い深い真紅の光を放つ巨大な結晶体が宙に浮いている。
話に聞いていたよりもずっと大きい。だが間違いなくあれが迷宮の核となる魔石だろう。
つまりオレが攻撃を仕掛けた時点でヤツはこの最下層まで転移した。
オレの攻撃に巻き込まれないように皆が引いた一瞬を狙っていたとしか思えないタイミングのよさだ。
今まで転移を使わなかったのもあのタイミングを狙っていたからだろう。
個別に撃破するためにタイミングを狙っていたのなら最初にドリルさんを連れて転移していたはずだ。
つまり最初から狙いはオレだったということになる。
そういえばオークロードと初めて会ったときにしっかりと攻撃を当てたのはオレだけだった。あれで恨まれてたのかな? まぁ腕飛ばしたしな。
恨んでいようがいまいがどちらにしても好都合だ。
ここなら他のメンバーへの被害を考えずに戦える。
ちなみに帰り道に関してはあまり気にしていない。
鬼刃の時のような転移対策として苦肉の策として考えた作戦が一応ある。
アルが帰還用魔道具の本体を持ち、1つ増えたアンカーともう1つのアンカーを1つずつ分けて持つことで帰還用魔道具で迎えに来てもらえるようになるのだ。
ただ正直アンカーは貴重なので鬼刃のような強力な敵がいるところには設置しづらい。
認識阻害と強固な結界機能を有しているとはいっても鬼刃クラスになると全力で攻撃されたら簡単に壊される。
今回は特に今設置するのは危険だ。
オークロードの魔道具無効化のスキルで認識阻害と結界が無効化されたら余波だけで壊されてしまう。
そうすると最悪自力で帰らないといけなくなる。
まぁでも自力でも帰れるとは思う。ここが最下層なら入り口あたりに戻れる転移装置がありそうなものだからだ。まぁパッと見はなさそうなんだけど。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
視界の半分近くが黒で占められ始めてきた。
魔道具を無効化するスキルは継続して発動したまま来るだろう。そうなるとオレの防御は紙と変わらない。障壁なんかも全て機能しなくなるので1発も攻撃はもらえない。
しかし先ほどやってわかったが当たらなくてもあの程度の勢いならば消し飛ばせる。
1発でも貰ってやる義理はないので全て叩き潰してやろう。
魔道具無効化で使い物にならない紫電の大槌は定位置に戻し、売り物として作っておいた武器の中でも大型の鈍器を2つ取り出す。
片方でも小柄なオレの重量の倍はありそうなほどぎっちり中身の詰まった超重量兵器だ。
ただグレートコーンよりは軽い。アレがどれほど異質な重量兵器だったかがよくわかる。
火力特化構成のオレにとってはどちらも羽根の様に軽く感じる。
片手でくるっと回して感触を確かめ、おもむろに1歩を踏み出して一直線に投擲した。
頑強で知られる迷宮の床にヒビが入り、先の空振りで大きく亀裂が入っていたために合わせて砕ける。
射出された鈍器が空気の壁を突破して大きく厚く広がった黒い炎を一瞬にして消し飛ばし、オークロードに激突して壁を大きく崩壊させる。
だが止まらない。
もう片方の鈍器をさらに1歩踏み出して床を破壊しながら投擲し、続けざまにどんどんアイテムボックスの武器を投げつけていく。
1歩1歩踏み出すごとにかなり遠くにある迷宮の壁が凄まじい音を立てて崩壊していく。
すでに視界の半分を埋め尽くそうとしていた黒い炎よりも壁から立ち上る粉塵の方が多い。
しかし思ったよりも攻撃力が出ていない。
火力特化構成といえど鬼刃戦のような制御を無視した極振りではなく、ある程度制御できるように器用を調整しているため攻撃力が減るのは仕方ない。
しかしそれでも投擲したのと自分で叩きつけるのではずいぶん威力が変わるようだ。
この辺はスキルとして投擲系があるためだろうか。
まぁそれでも迷宮の壁を崩壊させる程度には高火力だし、まだ弾もある。
しかしこれで終わるとは思っていない。
この程度ただの肩慣らしだ。
……その証拠に、ほら。
黒い殺気が莫大に膨れ上がり、後方に突如出現した。
だがわかりやすすぎる。まるで今から攻撃しますよ、と宣言しているかのような稚拙さだ。
すでに取り出しているオレの身長以上に長い剣――オレの背が低いのでこれで普通の長剣サイズ――を瞬時に投擲。
刹那のタイミングで迫った黒い炎を消し飛ばし、オークロードの肩に突き刺さり貫通する。
返す刀でもう1本アンダースローで投擲すれば腹部に直撃し、上半身と下半身が生き別れになるがすぐさま霧となって回避に成功したようだ。
だが甘い。
霧状になっているときは魔法攻撃がよく効く事はすでにわかっていることだ。
今まで投擲したのは魔道具ではない物理的な武器ばかりだ。魔法攻撃が追加で発動する類の武器は大抵魔道具だが、そうではない武器というのも一応ある。
もちろんそういった武器というのは魔結晶が仕込まれた武器だ。
つまりはそういった武器は持ってきた武器の大半を占めるのだ。
取り出した魔法攻撃が可能な武器を霧になったオークロードに次々投擲していく。
霧を貫通し、その度に魔法攻撃が凄まじい威力を持って炸裂する。
4発目が炸裂した時点で霧状態を維持できなくなったオークロードがその身を実体化させた。
その瞬間を見逃さず、今度は投擲ではなく必殺の威力を秘めた一撃が炸裂する。
体の芯を確実に捉えた一撃は火力特化構成に於ける自身への被害は軽微だがもっとも攻撃力が高く調整された一撃。
故に――。
瞬時に防御に回すために出現した黒い炎を完全に消滅させ、末端となる四肢を引きちぎり迷宮の強固な床を粉砕した。
肉が潰れ、骨がひしゃげる。
そんな感触など感じる暇すらないほどの一瞬で直撃した箇所が消滅するのを確信し、感じた感触は迷宮の床をぶち抜く堅い感触。
だがこれで終わらせるつもりは毛頭ない。
すでに魔道具無効化のスキルが途切れているのは直感的に確信している。
だがアイテムボックスからさらに2本の超重量鈍器を取り出し、叩きつける。
かなりの面積を誇る最下層の床全てをひっくりかえしたかのような衝撃を2発追加で叩き込み、王族の不文律を発動させ瞬時に紫電の大槌を最大レベルで起動させる。
重々陣の超重量を加算された紫電の大槌が振り下ろされ、王族の不文律が切れる前に連続転移してその場を離れる。
鬼刃戦で学んだ自身の超火力の被害には自身の超火力で対抗する。
十分に離れてはいても刹那の差で迫る衝撃を紫電の大槌を振るうことで相殺を試み……若干相殺し切れなかったがあの時よりはずっとマシな結果に終わってくれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アイテムボックスからスタミナ回復ポーションを思考だけで使用し、王族の不文律を使い、折れた両腕と体中に出来た擦り傷を瞬時に初級魔法:体力回復で癒す。
鬼刃戦の時よりはずっとマシとはいえ、なかなか痛かった。
相殺し切れなかった衝撃波でかなりぼろぼろになったドレス装備も膨大なMPを吸って再生したおかげで今回は着替える必要もなかったが、やはり目の前に広がる惨状は凄まじい。
鬼刃戦の時よりは制御できていたがそれでも紫電の大槌と重々陣の全力コンボは思った以上の破壊力を生み出した。
次の機会がないとはいえないのだし、もう少し制御できるように練習しておこう。
これだけの威力ならばさすがに倒せただろうとは思うのだが、念のため構成を変えずにスタミナ回復ポーションを再度使用して爆心地へと移動を開始する。
爆心地から放射状に衝撃波が広がっていて、爆心地はかなり深くなっているのか近づくに連れてどんどん傾斜がきつくなっていく。
迷宮の床は波打ち、爆心地に近づくに連れてどんどん破片が細かくなっていく
爆心地付近はさらさらの砂浜のように細かくなり、最早破片らしい破片もないほどだ。
鬼刃の時の爆心地とはずいぶん違った風景に少し不思議に思いつつもさらさらの地面を踏みしめて爆心地へと降りていった。
「これは……」
爆心地のさらに中心。
さらさらの砂の中に半ば以上埋まっていたものはあのオークションでエリア姫が競り落とした魔結晶の塊だった。
あの時は鑑定しなかったが、今になって思えばなぜ鑑定しなかったのか不思議だ。
確かに鑑定は普段使っていないスキルだから存在自体を忘れていても不思議ではないかもしれないが。
だが今現在は鑑定するべきだろうとはっきりと思っている。
他の魔結晶では人工的に融合させることはできなかったと言っていたし、この魔結晶にはきっと何かある。
半ば以上埋まった魔結晶の塊に鑑定を使おうとした瞬間だった。
魔結晶の塊全てを覆い尽くすほどの闇が噴出してその身の全てを隠す。
鑑定は見えていなければ使えない。
……だが鑑定が使えない以上にこれは明らかに異常事態だ。
まだオークロードが生きていた、というよりはこの魔結晶の塊が元凶だと思った方がわかりやすい。
瞬時にそう判断し、王族の不文律を使用して紫電の大槌を最大レベルで展開し重々陣を起動して振り下ろす。
オークロードを消滅させ、迷宮の頑強な床を文字通り粉々にするほどの破壊力を秘めた一撃は信じ難い事に魔結晶の塊を覆う闇によって受け止められた。
余波として発生する衝撃波だけでもとんでもない威力になる一撃のエネルギーを全て――拡散するように発生する衝撃波まで全て――闇が受け止めているのだ。
しかしそれだけのエネルギーを簡単に受け止めれたわけではないらしい。
魔結晶の塊を覆っていた闇の一部を消し飛ばし、ほんの少しだが魔結晶の塊に接触している。
だが接触してはいてもそれは本当に触っているだけという程度でしかない。
……無効化系のスキルか? ……だが。
破壊することは叶わなかったが闇は一部分だが消し飛ばす事に成功している。
ここは1つコレだけでもよしとしよう。闇への対抗策はごり押しで十分だとわかったのだし。
こいつはもうオークロードでもなんでもない別個の敵として認識した方がいいだろう。
故に今は新種の敵の情報収集へと切り替える。
鑑定は見えていなければ使えないが、ある程度の部分が見えてさえいれば使える。
今度こそ鑑定を発動させ、ウィンドウを出したまま距離を取る。
「はぁ……?」
再び闇に覆われた魔結晶の塊を視界に入れたまま鑑定結果のウィンドウの文字をチラ見する。
そしてそこに表示されている名前に思わず口から呆れにも似た疑問符が零れ落ちた。
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