3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい

エヌ

文字の大きさ
2 / 6

その2(オモテ)

しおりを挟む
「王太子殿下が亡くなられたそうだ」


朝。
いつの間にか寝てしまっていたのか、慌しい騒音に目が覚めた。

まだ顔も洗わぬうちに、父親が部屋に入ってくる。
その顔はなんとも重々しい。

公爵令嬢として、身なりが整わないうちに人に会うのは父親とて恥ずかしいものがある。これは一言言ってやらねばならない。
そう思って口を開きかけたとき、その前に父親が口を開いた。


王子が、亡くなった...?


「お父様?なんのご冗談ですの?」

「冗談ではない。今朝方王太子殿下が亡くなられた姿で発見されたらしい。」

ええ?メインヒーローのあの腹黒イケメン王子が?イケメンなだけで私のタイプではないのに俺のこと追いかけるのはやめてくれオーラを常に私に向けて放っていたあの王子が?とっても優秀らしくて腹黒くて抜け目がないから王子目掛けて爆弾を投下したとしてもなんか策を考えて回避して死なさそうなあの王子が!?

「亡くなられた原因は捜査中だが、お忍びで出かけられていた最中に何かしらの事故があったらしい」

え?もしかしてそれってヒロインとの出会い用の?
学園入学前日に出会ったイケメンが次の日入学式で生徒代表やっちゃってる展開用の初顔合わせのお忍びで!?
まさかの!?


「国葬を執り行う予定だが取り急ぎ沙汰があるまでは自宅で待機するように。本日の入学式は中止するとのことだ」


「は、い。わかりましたわ。」

おっと、いけない。
貴族たるもの、常に動揺を悟られないようにしなくてはならないのにとっても動揺してしまった。

急展開すぎてついていけないけどとりあえずここはどこの世界なの?
時間が巻き戻ってると思ってたけどもしかして違う世界線にワープしてるだけ?
え?
乙女ゲームの世界に転生したと思ってたけど違う系なの?似て非なるもの?急に怖くなってキマシタヨー



心の中は現在進行形で落ち着くことなく慌しいが、とりあえず平静を装ってメイドに顔洗う用の湯を持ってくるよう指示をする。

平静に....
平静に........




--------------



「リズ、聞いたよ。王太子殿下が亡くなられたって。」

「アシュフォード様.........」


午後。衝撃的な訃報を聞いてから約5時間とちょっと。
来客があったという知らせを聞いて、応接室に入ると、開口一番客人がそう口を開いた。

青みがかった銀髪に、右耳に長めのピアスをしている背の高い男性。
私と同い年で、幼い頃に共に我が領地で過ごした仲である。
現時点では、幼少以来交流はないはずなのに、まるでずっと交流があるかのように親しげに語りかけてくるこの男は、次期魔塔主と呼ばれるほど魔力を保有している乙女ゲーム内の攻略対象者であり、私の想い人でもある。

というかどうして愛称呼びなの、仮にも王太子の婚約者にこんな親しげにしてはダメだと思う。王太子の婚約者だった、が正しいのだろうけど。


「そんな堅苦しい呼び方はやめて、昔のようにアッシュって呼んで?リズ...」

コテン、と首を傾けると右耳のイヤリングがユラユラと揺れる。

いや、現時点でそんなに親しくないのに愛称呼びできるわけないよ!と思うも親しくないからダメだなんて言葉にできない。こちらは親しくしたいのだ。断る理由が正直ない。

「....アッシュ...」
「リズ!」
「!!?」

しばし思案した上で昔のように愛称で呼んだ瞬間、花が綻ぶように満面の笑みで近づかれて抱きしめられた。
流石にこれは動揺しかない!

「アシュフォード様!?や、やめてくださいまし」

顔が赤くなる。
貴族たるもの、顔に動揺を出してはダメなのに!
思わずアッシュの胸に手を置いて拒否すると、肩に手を置かれて顔を覗き込まれる。近すぎる!

「リズ、照れないで?それに呼び名が戻ってるよ」

「あ、アッシュ!とりあえず離れてくださいまし!それに我が家にはどういったご用件でいらしたのかまだ聞いてませんわ」

バッと顔を逸らしながらさらに胸を突っぱると、案外すんなり離れてくれた。

「どういうご用件って...
それはもちろん」


ふんわりと笑うアッシュが眩しい
眩しすぎて、次に聞こえて来た言葉がうまく理解できなかった。


「リズを迎えにきたんだよ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼はヒロインを選んだ——けれど最後に“愛した”のは私だった

みゅー
恋愛
前世の記憶を思い出した瞬間、悟った。 この世界では、彼は“ヒロイン”を選ぶ――わたくしではない。 けれど、運命になんて屈しない。 “選ばれなかった令嬢”として終わるくらいなら、強く生きてみせる。 ……そう決めたのに。 彼が初めて追いかけてきた——「行かないでくれ!」 涙で結ばれる、運命を越えた恋の物語。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~

tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。 ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。

ずっと温めてきた恋心が一瞬で砕け散った話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレのリハビリ。 小説家になろう様でも投稿しています。

2回目の逃亡

158
恋愛
エラは王子の婚約者になりたくなくて1度目の人生で思い切りよく逃亡し、その後幸福な生活を送った。だが目覚めるとまた同じ人生が始まっていて・・・

ヒロインが私の婚約者を攻略しようと狙ってきますが、彼は私を溺愛しているためフラグをことごとく叩き破ります

奏音 美都
恋愛
 ナルノニア公爵の爵士であるライアン様は、幼い頃に契りを交わした私のご婚約者です。整った容姿で、利発で、勇ましくありながらもお優しいライアン様を、私はご婚約者として紹介されたその日から好きになり、ずっとお慕いし、彼の妻として恥ずかしくないよう精進してまいりました。  そんなライアン様に大切にされ、お隣を歩き、会話を交わす幸せに満ちた日々。  それが、転入生の登場により、嵐の予感がしたのでした。

姉の引き立て役の私は

ぴぴみ
恋愛
 アリアには完璧な姉がいる。姉は美人で頭も良くてみんなに好かれてる。 「どうしたら、お姉様のようになれるの?」 「ならなくていいのよ。あなたは、そのままでいいの」  姉は優しい。でもあるとき気づいて─

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~

桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」 ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言? ◆本編◆ 婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。 物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。 そして攻略者達の後日談の三部作です。 ◆番外編◆ 番外編を随時更新しています。 全てタイトルの人物が主役となっています。 ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。 なろう様にも掲載中です。

処理中です...