2 / 144
第一章 幼少期
ご機嫌よう
しおりを挟む
翌朝、俺はノエルの部屋にやってきた。朝食前にノエルの『転生者ごっこ』が未だ継続中なのかを確認するために。終わっていればそれで良い。
「お兄様。ご機嫌よう」
「ノエル、どうしたの?」
ノエルは『ご機嫌よう』なんて言わない。元気溌剌に『おはよー』と挨拶をしてくる。
「せっかくお嬢様に生まれ変わったんですもの。わたくし、これからはお嬢様口調でいきますわ」
「……」
悪化している。ノエルのごっこ遊びがエスカレートしている。昨日の今日だ。終わるとも思っていなかった。
「本日の午後カリーヌ様が遊びに来ますの。お兄様もご一緒にいかがですか?」
カリーヌはノエルの友人のアルベール伯爵令嬢。ノエルと同じ五歳にしては上品でお淑やかな令嬢だ。
「俺も同席して良いの?」
「是非! お兄様、お友達はジェラルド様だけでしょう? 物語の主人公は人脈が大事ですからね。少しずつ増やしていきましょう」
「そうだね」
主人公云々は置いておいて将来的に人脈は多い方が良い。身近なところから広めていくのは良い案だ。
「ノエル、朝食食べに行こう」
「うん、行く行……オホンッ、さぁ、お兄様参りましょう」
転生者ごっこも中々面白いかもしれない。
◇
そして、カリーヌとのお茶会。
「ノエル様の言葉遣いが変わっていて驚きましたが、言葉遣い一つでこうも印象が変わるものなのですね」
「そうかしら? 自分では分かりませんが、お嬢様になった気分ですわ」
「ふふ。面白いのは変わらないのですね」
ノエルが遠回しに馬鹿にされている。しかし、カリーヌも悪気はなさそうだ。ノエルが気にしていないので良いけれど。
俺は二人の話を聞きつつ、薔薇の香りのする紅茶を嗜んでいる。会話は一切していない。女子同士の会話はとどまることなく、どのタイミングで入れば良いのか分からない。
「そうですわ。カリーヌ様のお兄様はお元気ですか?」
「はい。少し前から騎士になる為に訓練を始めたのですよ」
「へぇ」
騎士なんて大変だなと他人事のように聞いていたら、ノエルが嬉しそうに言った。
「カリーヌ様、わたくしのお兄様は勇者を目指していますの」
「ノ、ノエル!?」
思い切りお茶を吹き出しそうになってしまった。カリーヌも目が点になっている。
「勇者……ですか? 勇者とはあの……?」
「はは……気にしないで」
笑ってこの場をやり過ごそうとすれば、カリーヌは優しく微笑んで言った。
「夢は誰にだってありますものね。そうだ、良かったら兄と一緒に訓練に参加してみるのは如何ですか?」
「は?」
他人の突飛な夢を否定しない様は正に女神だが、問題はそこではない。俺は勇者どころか騎士も目指していない。そんな俺が本格的なハードな剣術訓練に耐えられるはずもない。
「いや、本当に気にしないで」
「お兄様! 是非お兄様も訓練に参加致しましょう! 勇者といっても何から始めれば良いのか思い悩んでいたところだったので丁度良かったですわね」
「ノエル、俺は……」
「それは良かったです。帰ったら早速兄に聞いてみますね」
「だから、俺は……」
「宜しくお願いしますわ」
女子の話の間に入るのは難しい。あれよあれよと俺が剣術の訓練に参加することに決まってしまった。
転生者ごっこが面白いなんて一瞬でも感じた俺が馬鹿だった。ノエルのごっこ遊びが終われば早急にリタイアしよう。
「お兄様。ご機嫌よう」
「ノエル、どうしたの?」
ノエルは『ご機嫌よう』なんて言わない。元気溌剌に『おはよー』と挨拶をしてくる。
「せっかくお嬢様に生まれ変わったんですもの。わたくし、これからはお嬢様口調でいきますわ」
「……」
悪化している。ノエルのごっこ遊びがエスカレートしている。昨日の今日だ。終わるとも思っていなかった。
「本日の午後カリーヌ様が遊びに来ますの。お兄様もご一緒にいかがですか?」
カリーヌはノエルの友人のアルベール伯爵令嬢。ノエルと同じ五歳にしては上品でお淑やかな令嬢だ。
「俺も同席して良いの?」
「是非! お兄様、お友達はジェラルド様だけでしょう? 物語の主人公は人脈が大事ですからね。少しずつ増やしていきましょう」
「そうだね」
主人公云々は置いておいて将来的に人脈は多い方が良い。身近なところから広めていくのは良い案だ。
「ノエル、朝食食べに行こう」
「うん、行く行……オホンッ、さぁ、お兄様参りましょう」
転生者ごっこも中々面白いかもしれない。
◇
そして、カリーヌとのお茶会。
「ノエル様の言葉遣いが変わっていて驚きましたが、言葉遣い一つでこうも印象が変わるものなのですね」
「そうかしら? 自分では分かりませんが、お嬢様になった気分ですわ」
「ふふ。面白いのは変わらないのですね」
ノエルが遠回しに馬鹿にされている。しかし、カリーヌも悪気はなさそうだ。ノエルが気にしていないので良いけれど。
俺は二人の話を聞きつつ、薔薇の香りのする紅茶を嗜んでいる。会話は一切していない。女子同士の会話はとどまることなく、どのタイミングで入れば良いのか分からない。
「そうですわ。カリーヌ様のお兄様はお元気ですか?」
「はい。少し前から騎士になる為に訓練を始めたのですよ」
「へぇ」
騎士なんて大変だなと他人事のように聞いていたら、ノエルが嬉しそうに言った。
「カリーヌ様、わたくしのお兄様は勇者を目指していますの」
「ノ、ノエル!?」
思い切りお茶を吹き出しそうになってしまった。カリーヌも目が点になっている。
「勇者……ですか? 勇者とはあの……?」
「はは……気にしないで」
笑ってこの場をやり過ごそうとすれば、カリーヌは優しく微笑んで言った。
「夢は誰にだってありますものね。そうだ、良かったら兄と一緒に訓練に参加してみるのは如何ですか?」
「は?」
他人の突飛な夢を否定しない様は正に女神だが、問題はそこではない。俺は勇者どころか騎士も目指していない。そんな俺が本格的なハードな剣術訓練に耐えられるはずもない。
「いや、本当に気にしないで」
「お兄様! 是非お兄様も訓練に参加致しましょう! 勇者といっても何から始めれば良いのか思い悩んでいたところだったので丁度良かったですわね」
「ノエル、俺は……」
「それは良かったです。帰ったら早速兄に聞いてみますね」
「だから、俺は……」
「宜しくお願いしますわ」
女子の話の間に入るのは難しい。あれよあれよと俺が剣術の訓練に参加することに決まってしまった。
転生者ごっこが面白いなんて一瞬でも感じた俺が馬鹿だった。ノエルのごっこ遊びが終われば早急にリタイアしよう。
211
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる