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第二章 冒険の始まり
流行病
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アンの家にて。
アンの母はボロボロの布団に横たわり、今にも事切れてしまいそうな程に顔はやつれ、青白かった。
「お母さん、お薬とって来たよ! これで良くなるよ! お兄ちゃん早く」
「うん……」
アンに手を引かれながら、アンの母の枕元に膝をついた。
「お兄ちゃん。早く早く!」
「ごめんね。この薬はそのままじゃダメなんだ」
「え? すぐ治らないの? どうしたら良いの?」
「ちょっと待ってね。薬が出来上がるまでの応急処置しとくから」
俺は立て続けに二つ詠唱した。
「大地に宿る小さな命よ、我に力を、汝の病を癒せ、治癒。大地に満ちたる生命の息吹よ、汝に精気を、再生」
青白い光がアンの母を包み込んだ。
二つ目の魔法は、生命力や活気を取り戻す効果がある魔法だ。魔法同時掛けで効果倍増してくれたら良いなという淡い期待を込めたのだが、どうだろうか。
「お母さん……?」
アンの母はゆっくりと起き上がって、その場に座った。
「アン。身体が動くよ。あたし、どうしたんだろう」
「お母さん!」
アンは母に抱きついて、母もしっかりとアンを受け止めた。
「治ったの? お兄ちゃんが治してくれたの?」
俺自身驚いている。完治していたら良いなと思ってアンの母を見つめた。すると、困惑した顔でアンの母は応えた。
「さっきよりは動くけど、身体のあちこちが痺れて、立ち上がったりは難しそうだよ」
「そうですか……」
「そんな……お兄ちゃん、薬は? 薬はどのくらいで出来上がるの?」
そうだ、毒草を治療薬だと偽った人を見つけなければ。
何の為に毒薬を治療薬と偽るのか……しかも、アンの母は俺が魔法をかけなければ今にも死にそうなのに。そんなに急いで殺す理由……殺す?
「聞きにくいのですが……命を狙われてたりは?」
「まさか。そんな覚えは無いよ」
「そうですか。アンは誰からこれが薬になるって聞いたの?」
「知らないオジサン。私がお母さんの看病してたら家にやってきたの」
「家に……?」
わざわざ家まで来て教えるということは、その男はアンの母が流行病にかかったことを知っている人物だ。
「お母さんが病気になったのを知ってるのは誰がいる?」
「近所の人はお母さんより先に病気になってたから、私が伝えたのは、お医者さんとお母さんの職場の人だよ」
「お母さん働いていたんですか?」
アンの母は困った顔で頷いた。
「父親が早くに亡くなってね。あたしが一人でアンを育ててるんだよ」
「そうだったんですね」
「金属を加工する工場が最近出来てね、働き手を大量募集してたんだ。あたしも賃金が良いからと思って、この間転職したところだったんだ」
「お兄様、その工場……」
「やっぱその工場怪しいな」
「ジェラルド! それに二人も、調査もう終わったの?」
流行病について情報収集しに行った三人がやってきた。皆で押しかけたら迷惑だから、みたいな事を言っていた割に堂々と入ってきたから尚のこと驚いた。アンの母なんて声も出ない程に驚いている。
「それより、ジェラルド。工場が怪しいってどういうこと?」
「何とな、この病気は人間から人間には感染しないらしいぞ」
「え? 流行病なのに?」
通常、流行病と聞けば飛沫感染や空気感染、接触感染等を想像する。だからアンの母と接する時も念の為ハンカチを口元に当てていたのだ。
「アンだって、母ちゃんとずっと一緒にいるのに何とも無かっただろ?」
「うん」
「それでも病人は次々と出て、治療法がないときた。で、この病気が出始めたのが、その工場ができてからなんだ」
「お兄様、これはもしや……日本四大公害病では?」
「え? 何?」
「中毒症の一種ですわ。とにかく、工場に潜入してみましょう」
「潜入って……良いのかな」
不安気に言えば、エドワードが言った。
「これを解決しないことにはオリヴァーだってここから動けないでしょ? 調べてみようよ」
アンの母が命を狙われている可能性が出てきたので、俺はそばから離れられないでいたのだ。
リアムも補足するように言った。
「僕もノエルの言うように何らかの中毒症だと思うんだ。そして、これはきっと……」
「きっと?」
「君が解決出来るよ」
「え? 俺?」
アンの母はボロボロの布団に横たわり、今にも事切れてしまいそうな程に顔はやつれ、青白かった。
「お母さん、お薬とって来たよ! これで良くなるよ! お兄ちゃん早く」
「うん……」
アンに手を引かれながら、アンの母の枕元に膝をついた。
「お兄ちゃん。早く早く!」
「ごめんね。この薬はそのままじゃダメなんだ」
「え? すぐ治らないの? どうしたら良いの?」
「ちょっと待ってね。薬が出来上がるまでの応急処置しとくから」
俺は立て続けに二つ詠唱した。
「大地に宿る小さな命よ、我に力を、汝の病を癒せ、治癒。大地に満ちたる生命の息吹よ、汝に精気を、再生」
青白い光がアンの母を包み込んだ。
二つ目の魔法は、生命力や活気を取り戻す効果がある魔法だ。魔法同時掛けで効果倍増してくれたら良いなという淡い期待を込めたのだが、どうだろうか。
「お母さん……?」
アンの母はゆっくりと起き上がって、その場に座った。
「アン。身体が動くよ。あたし、どうしたんだろう」
「お母さん!」
アンは母に抱きついて、母もしっかりとアンを受け止めた。
「治ったの? お兄ちゃんが治してくれたの?」
俺自身驚いている。完治していたら良いなと思ってアンの母を見つめた。すると、困惑した顔でアンの母は応えた。
「さっきよりは動くけど、身体のあちこちが痺れて、立ち上がったりは難しそうだよ」
「そうですか……」
「そんな……お兄ちゃん、薬は? 薬はどのくらいで出来上がるの?」
そうだ、毒草を治療薬だと偽った人を見つけなければ。
何の為に毒薬を治療薬と偽るのか……しかも、アンの母は俺が魔法をかけなければ今にも死にそうなのに。そんなに急いで殺す理由……殺す?
「聞きにくいのですが……命を狙われてたりは?」
「まさか。そんな覚えは無いよ」
「そうですか。アンは誰からこれが薬になるって聞いたの?」
「知らないオジサン。私がお母さんの看病してたら家にやってきたの」
「家に……?」
わざわざ家まで来て教えるということは、その男はアンの母が流行病にかかったことを知っている人物だ。
「お母さんが病気になったのを知ってるのは誰がいる?」
「近所の人はお母さんより先に病気になってたから、私が伝えたのは、お医者さんとお母さんの職場の人だよ」
「お母さん働いていたんですか?」
アンの母は困った顔で頷いた。
「父親が早くに亡くなってね。あたしが一人でアンを育ててるんだよ」
「そうだったんですね」
「金属を加工する工場が最近出来てね、働き手を大量募集してたんだ。あたしも賃金が良いからと思って、この間転職したところだったんだ」
「お兄様、その工場……」
「やっぱその工場怪しいな」
「ジェラルド! それに二人も、調査もう終わったの?」
流行病について情報収集しに行った三人がやってきた。皆で押しかけたら迷惑だから、みたいな事を言っていた割に堂々と入ってきたから尚のこと驚いた。アンの母なんて声も出ない程に驚いている。
「それより、ジェラルド。工場が怪しいってどういうこと?」
「何とな、この病気は人間から人間には感染しないらしいぞ」
「え? 流行病なのに?」
通常、流行病と聞けば飛沫感染や空気感染、接触感染等を想像する。だからアンの母と接する時も念の為ハンカチを口元に当てていたのだ。
「アンだって、母ちゃんとずっと一緒にいるのに何とも無かっただろ?」
「うん」
「それでも病人は次々と出て、治療法がないときた。で、この病気が出始めたのが、その工場ができてからなんだ」
「お兄様、これはもしや……日本四大公害病では?」
「え? 何?」
「中毒症の一種ですわ。とにかく、工場に潜入してみましょう」
「潜入って……良いのかな」
不安気に言えば、エドワードが言った。
「これを解決しないことにはオリヴァーだってここから動けないでしょ? 調べてみようよ」
アンの母が命を狙われている可能性が出てきたので、俺はそばから離れられないでいたのだ。
リアムも補足するように言った。
「僕もノエルの言うように何らかの中毒症だと思うんだ。そして、これはきっと……」
「きっと?」
「君が解決出来るよ」
「え? 俺?」
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