俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵

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第二章 冒険の始まり

サキュバス退治① 魔界行きをかけて

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「と、いうわけで今回手を組むことになったサキュバスの……」

「アデルよ」

「アデルさんです」

 ざっくりと仲間になった経緯と紹介を終えると、皆唖然としていた。シンとした空気をジェラルドが破った。

「嫌だ。俺はお化けと手を取り合いたくない!」

「お化けじゃないから、悪魔だから」

「もっと嫌だ!」

 リアムは心底呆れた顔で言った。

「ギルドの依頼はあくまでも『すすり泣く声について』だから。それ以上する必要ないから」

 エドワードも補足して言った。

「それにサキュバスなんてAかSランク級の依頼だよ。僕たちまだEだよ」

 こんなに反対されるとは思ってもみなかった。やや俯き加減にアデルに謝罪した。

「分かったよ。アデル、ごめんね」

「人間にも色々事情があるのね。じゃあ、オリヴァー行くわよ」

「どこに?」

「魔界に決まってるでしょ」

「「「は?」」」

 魔王を倒しに行く予定ではあるがランクEだ。早すぎる。しかもその件はアデルには話していない。

「えっと、何しに行くの?」

「だって、あの遺跡にはもう居座れないでしょ。魔界に戻ろうかなって」

 いやいや、説明になってないから。なんでそこで俺が出てくる。

「何で俺も一緒に?」

「だって愛し合う二人は一緒に住むのが普通でしょ?」

「は?」

 愛し合う二人? 誰と誰が? この流れで行くとアデルと俺か?

 ノエルは頬を赤く染めながら言った。

「わたくしとエドワード様が眠っている隙に愛し合っていたのですね」

「だから中々起こしてくれなかったのか」

「いや、違うから」

 ジェラルドとリアムが立ち上がって迫ってきたので、俺も咄嗟に立ち上がって後退した。

「誤解だって」

「何が誤解なんだ?」

 後退していると、壁にぶち当たってしまった。もう逃げ場はない。蛇に睨まれた蛙状態だ。

「わ、修羅場ですわ! ジェラルド様の壁ドンにリアム殿下の足ドン。なんて素晴らしいのかしら」

「ノエル……」

 絵を描いてないで助けてよ。

「一人だけ抜け駆けか? 俺に内緒で恋人作るなって言っただろ? 俺達、親友じゃなかったのか?」

「僕には秘密はなしって言ったよね。僕だってジェラルド程じゃなくても親友になれたと思ったのに……」

「二人共親友だよ。でも、そんなこと言ってたっけ?」

「「言った」」

 仮に言っていたとしても、俺の秘密なんてノエルが転生者だと言い張ってることくらいなのだが。

「それに、僕らをこんなことに巻き込んでおいて一人で魔界? 酷くない?」

「だよな。俺達は運命共同体だと思ってたのに。そう思ってたのは俺だけか?」

 俺が萎縮していると、アデルも近くまでやってきた。

「オリヴァー、何故この二人は怒ってるの?」

「それはですね。こういうことですわ」

 ノエルがいつも持っている本を開いてアデルに見せた。

「あら……そういうことだったのね」

 言わずもがな、ノエルは俺とジェラルド、そして俺とリアムが互いに愛し合っているように見える絵を見せたに違いない。だが、それでアデルが俺を魔界に連れて行くという話がなくなるのであれば……。

「でも今は私のことが好きなのよね? あなた達の出る幕はないわ」

「何だと?」

 アデルとジェラルドが睨み合っていると、ノエルが何か閃いたようだ。

「アデル様、勝負を致しませんこと?」

「勝負ですって?」

「例の村を騒がせているサキュバスをアデル様が捕まえたら、お兄様は魔界に。ジェラルド様達が先に捕まえることが出来たらこちらに残る。というのは」

「良いでしょう」

「ノエルもたまには良いこと言うな」

「いや、でも依頼外だし……ランクEだし」

 俺が萎縮しながら言うと、リアムがにっこり笑顔で言った。

「そんなの、たまたま僕らの前にサキュバスが現れて、たまたまサキュバスを捕まえたなら仕方ないんじゃない?」

「さっきと言ってることが違……」

「何? オリヴァーは村の人が困ってても知らん顔するの? 勇者なのに?」

 にっこり笑うリアムが怖い。

「いえ……たまたまサキュバス捕まえます」

「では、お兄様はどちらにつきますか? アデル様? それともジェラルド様方?」

「うーん」

 魔界には行きたくない。アデルに対して恋愛感情もない。けれど、アデルは一人。悩んでいるとアデルが言った。

「そっちについて良いわよ」

「え、良いの?」

「あの女……ベラをおびき寄せるのを手伝ってくれたらそれで良いわ。ただし、オリヴァーじゃなくてそこの三人の誰かよ」
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