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第二章 冒険の始まり
サキュバス退治② 囮
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宿の一室で真昼間からエドワードが眠っている。
「こんなので本当に来るのか?」
「アデルが言ってたじゃん。ベラは顔の良い男を狙うって」
サキュバスのベラを捕まえるにしても探すところから始まる。そこで囮役に選ばれたのが俺以外の三人だ。
『サキュバスも無作為に男を選んでるわけじゃないのよ。特にベラはね、顔の良い男が何よりの好物。オリヴァーは申し訳ないけど……』
子供と言いたいのだろう。顔以前に対象外だ。そして、俺はアデルのその言葉で納得した。ノエルも然り。
『では、ここで寝ていれば宜しいのですね』
だが、当の本人達はキョトンとした顔で口々に言った。
『何で俺らなんだ?』
『寝てたら時間の無駄だよ』
『顔の整った人の目星をつけに行こう』
『三人共それ本気で言ってんの?』
自分の顔を鏡で見たことがないのだろうか。その容姿を鼻にかけないところは素晴らしいと思うが、少しは自覚した方が良いと思う。
——まずは、エドワードが囮役としてアデルの魔眼で睡眠中。
そして今、ワードローブを借りて、俺はジェラルドと共にその中で待機中。
「ジェラルドもリアム達と隣の部屋で待ってても良かったのに」
「ノエルが一緒に入れってうるさいんだよ」
「ノエル……」
「それより、どうしてお前だけ囮しないんだよ。ずるいだろ」
「小さいから……。それにほら、顔の作りも三人と全然違うでしょ」
外が明るいので、ワードローブの中は隙間から光が入って相手の顔は見える。
ただ、ワードローブの中は狭い。ジェラルドが座り、その上に俺が座っている。自然とジェラルドの腕は俺のお腹に回り、まるで後ろから抱きしめられているようなそんな状態だ。
そんな状態で顔を見ろと言ったのが間違いだった。顔だけ振り返れば、顎をクイッと持ちあげられ、顔を覗き込まれた。
物凄い至近距離で見つめ合うこと十秒。顎に置かれたジェラルドの手から解放され、前を向いた。
恋に落ちるかと思った……。
「可愛い顔してたぞ」
「ば、馬鹿ッ! 耳元で囁かないでよ」
耳元で囁かれ、体がゾワッとして顔が耳まで真っ赤になった。
「ほら、静かにしないとサキュバス来ないぞ」
「誰のせいだと……」
この調子で夕暮れ時まで、ベラが現れることはなかった——。
休憩を挟んで次はリアムが囮役。ワードローブは狭いので俺と誰かしか入れない。故に、俺とエドワードが中で待機。
「長時間疲れたでしょ? ベラが来たら起こしてあげるから少し仮眠したら?」
「いや、でも……」
有無を言わさず、エドワードは俺の頭を自身の胸板にくっつけた。そして、髪を梳くように撫でられた。
「カリーヌはこうやって撫でてやるとすぐに寝るんだ」
確かに心地良い。このままずっとこの手に撫でられていたいようなそんな心地良さだ。目を瞑っていると、あっという間に眠気が襲ってきた。
◇
「んん……」
良く寝た。目の前は真っ暗なのでまだ夜中かと思って再び寝ようと目を瞑った。
「起きた?」
「え?」
頭上からエドワードの声が聞こえて驚いた。そういえば、ベラが来るのを待っているところだった。
コツコツ……コツコツ……。
ヒールの音が聞こえてきた。同時にエドワードの体も強張ったのが分かった。
暗くて隙間からは何も見えないが、ベラに違いない。
「まだこんな子が残っていたのね。今日は良い夢が見られそうね」
ガコン、バタン。
「な、何?」
なんてこった、ワードローブから格好良く出ようとしたが上手く扉が開かない。
「後で弁償しよう」
エドワードがそう言って、片手で思い切り扉を叩き割った。
「さ、流石」
爽やかな見た目に似合わず、ヒューゴの特訓の成果で腕力は人一倍あるエドワード。訓練場でエドワードに腕相撲で勝てる奴はいない。
近くにあった照明をパッとつけると、そこにはアデルとは違った角の大きなサキュバスがいた。しかも下着姿のような格好で、露出部分が多い。エロすぎる。
「エドワード、大丈夫?」
エドワードが鼻から血を流している。
「あら、こっちにも良い男。でも、眠ってないからまた今度ね。今日の獲物はこっちの男よ」
ベラが眠っているリアムに向き直ったので、素早くリアムとサキュバスの間に入った。
「これ以上近づくな!」
「子供に用はないのよ。あっちに行ってなさい」
「なっ」
また子供扱い。いや、子供だけどさ。リアムも同い年なんだけど。
軽く凹んでいると、隣の部屋にいた三人が入ってきた。
「ベラ、そこまでよ」
「アデル? あなたもこの子を狙いに来たの? いや、まさかね。あなたにはこの子を満足させてあげられないものね」
「な、そんなこと……それよりも、こんなところで戦闘になったらサキュバスの沽券に関わるでしょ? 外に行きましょう」
サキュバスは己の存在に気付かれぬよう精気を奪うことを美としているらしい。故に村の中、ましてや建物の中での戦闘を嫌う。
「分かったわ。だけど、果たしてその子は持つかしらね」
ベラが妖艶な笑みを浮かべた。リアムを見ると黒いモヤが全身を覆っていた。
「まさか既に夢を?」
「あたしくらいになれば、近付かなくても大丈夫なのよ。せいぜい頑張って起こすことね」
ベラは窓から飛び立った。アデルもそれに続き、振り向き様に言った。
「その子には悪いことしたわね。私は先に行ってるからあなた達は後から来なさい。とどめは刺さずに待っといてあげるから」
「俺がリアム治しとくから、ジェラルドとエドワードは二人を追って!」
「おう」
「頼んだよ」
ここまでは計画通り。違うのはリアムがベラに夢を見せられていることだ。
「こんなので本当に来るのか?」
「アデルが言ってたじゃん。ベラは顔の良い男を狙うって」
サキュバスのベラを捕まえるにしても探すところから始まる。そこで囮役に選ばれたのが俺以外の三人だ。
『サキュバスも無作為に男を選んでるわけじゃないのよ。特にベラはね、顔の良い男が何よりの好物。オリヴァーは申し訳ないけど……』
子供と言いたいのだろう。顔以前に対象外だ。そして、俺はアデルのその言葉で納得した。ノエルも然り。
『では、ここで寝ていれば宜しいのですね』
だが、当の本人達はキョトンとした顔で口々に言った。
『何で俺らなんだ?』
『寝てたら時間の無駄だよ』
『顔の整った人の目星をつけに行こう』
『三人共それ本気で言ってんの?』
自分の顔を鏡で見たことがないのだろうか。その容姿を鼻にかけないところは素晴らしいと思うが、少しは自覚した方が良いと思う。
——まずは、エドワードが囮役としてアデルの魔眼で睡眠中。
そして今、ワードローブを借りて、俺はジェラルドと共にその中で待機中。
「ジェラルドもリアム達と隣の部屋で待ってても良かったのに」
「ノエルが一緒に入れってうるさいんだよ」
「ノエル……」
「それより、どうしてお前だけ囮しないんだよ。ずるいだろ」
「小さいから……。それにほら、顔の作りも三人と全然違うでしょ」
外が明るいので、ワードローブの中は隙間から光が入って相手の顔は見える。
ただ、ワードローブの中は狭い。ジェラルドが座り、その上に俺が座っている。自然とジェラルドの腕は俺のお腹に回り、まるで後ろから抱きしめられているようなそんな状態だ。
そんな状態で顔を見ろと言ったのが間違いだった。顔だけ振り返れば、顎をクイッと持ちあげられ、顔を覗き込まれた。
物凄い至近距離で見つめ合うこと十秒。顎に置かれたジェラルドの手から解放され、前を向いた。
恋に落ちるかと思った……。
「可愛い顔してたぞ」
「ば、馬鹿ッ! 耳元で囁かないでよ」
耳元で囁かれ、体がゾワッとして顔が耳まで真っ赤になった。
「ほら、静かにしないとサキュバス来ないぞ」
「誰のせいだと……」
この調子で夕暮れ時まで、ベラが現れることはなかった——。
休憩を挟んで次はリアムが囮役。ワードローブは狭いので俺と誰かしか入れない。故に、俺とエドワードが中で待機。
「長時間疲れたでしょ? ベラが来たら起こしてあげるから少し仮眠したら?」
「いや、でも……」
有無を言わさず、エドワードは俺の頭を自身の胸板にくっつけた。そして、髪を梳くように撫でられた。
「カリーヌはこうやって撫でてやるとすぐに寝るんだ」
確かに心地良い。このままずっとこの手に撫でられていたいようなそんな心地良さだ。目を瞑っていると、あっという間に眠気が襲ってきた。
◇
「んん……」
良く寝た。目の前は真っ暗なのでまだ夜中かと思って再び寝ようと目を瞑った。
「起きた?」
「え?」
頭上からエドワードの声が聞こえて驚いた。そういえば、ベラが来るのを待っているところだった。
コツコツ……コツコツ……。
ヒールの音が聞こえてきた。同時にエドワードの体も強張ったのが分かった。
暗くて隙間からは何も見えないが、ベラに違いない。
「まだこんな子が残っていたのね。今日は良い夢が見られそうね」
ガコン、バタン。
「な、何?」
なんてこった、ワードローブから格好良く出ようとしたが上手く扉が開かない。
「後で弁償しよう」
エドワードがそう言って、片手で思い切り扉を叩き割った。
「さ、流石」
爽やかな見た目に似合わず、ヒューゴの特訓の成果で腕力は人一倍あるエドワード。訓練場でエドワードに腕相撲で勝てる奴はいない。
近くにあった照明をパッとつけると、そこにはアデルとは違った角の大きなサキュバスがいた。しかも下着姿のような格好で、露出部分が多い。エロすぎる。
「エドワード、大丈夫?」
エドワードが鼻から血を流している。
「あら、こっちにも良い男。でも、眠ってないからまた今度ね。今日の獲物はこっちの男よ」
ベラが眠っているリアムに向き直ったので、素早くリアムとサキュバスの間に入った。
「これ以上近づくな!」
「子供に用はないのよ。あっちに行ってなさい」
「なっ」
また子供扱い。いや、子供だけどさ。リアムも同い年なんだけど。
軽く凹んでいると、隣の部屋にいた三人が入ってきた。
「ベラ、そこまでよ」
「アデル? あなたもこの子を狙いに来たの? いや、まさかね。あなたにはこの子を満足させてあげられないものね」
「な、そんなこと……それよりも、こんなところで戦闘になったらサキュバスの沽券に関わるでしょ? 外に行きましょう」
サキュバスは己の存在に気付かれぬよう精気を奪うことを美としているらしい。故に村の中、ましてや建物の中での戦闘を嫌う。
「分かったわ。だけど、果たしてその子は持つかしらね」
ベラが妖艶な笑みを浮かべた。リアムを見ると黒いモヤが全身を覆っていた。
「まさか既に夢を?」
「あたしくらいになれば、近付かなくても大丈夫なのよ。せいぜい頑張って起こすことね」
ベラは窓から飛び立った。アデルもそれに続き、振り向き様に言った。
「その子には悪いことしたわね。私は先に行ってるからあなた達は後から来なさい。とどめは刺さずに待っといてあげるから」
「俺がリアム治しとくから、ジェラルドとエドワードは二人を追って!」
「おう」
「頼んだよ」
ここまでは計画通り。違うのはリアムがベラに夢を見せられていることだ。
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