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第四章 光魔法と闇魔法
まさか本当に?
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俺は今、ノエルの言う事が正しいのではないかと錯覚し始めている。この世界が『俺が主人公のBLの世界』ではないかと。
「ほら、あーん」
「自分で食べられるから……」
ジェラルドが左から、リアムが右から朝食を食べさせてくるのだ。
「ふふ、お兄様、両手に蜂蜜ですわね」
「兄ちゃんも見てるだけじゃ二人に先越されるよ。次はサラダだって」
「確かに、野菜は大事だからな。ほら、あーん」
ショーンに言われて、正面で傍観していたキースまで手ずから食べさせてきた。
「もう、みんな良い加減にしてよ。自分で食べられるから。それに、何でまだこんな格好を……」
俺は頭に付いている黒いカツラに手をかけた。
「ダメだ、それを取ったら俺の楽しみが!」
「そうだよ。このパーティーには華が欠けてるんだから」
「いや、華って、ノエルがいるじゃん」
俺はベンの屋敷から抜け出したにも関わらず、仲間から女装を強要されている。
やや乱れたカツラをジェラルドが整えながら言った。
「俺だって可愛い妹が欲しかったんだよ」
「妹って、二人とも俺と同い年じゃん」
「ふっ……」
ジェラルドが怪しい笑みを浮かべた。
「俺はこの間、誕生日を迎えたんだ。つまりお前より一つ上だ」
「僕も。だから、お兄ちゃんだよ」
リアムまで……。
「数ヶ月の違いでマウントとらないでよ……それに、妹ならノエルがいるじゃん」
「ノエルは見た目は可愛いけど……なぁ、リアム」
「うん。ちょっと違うよね」
「二人とも……」
目の前にノエル本人がいるというのに失礼極まりない。ただ、ノエル自身、気にもしていないようだ。
「兄妹プレイも良いですわね。まだまだ可能性は広がりますわ」
「広がらなくて良いから」
「宿から出られなくて暇だしよ、今日一日くらい良いじゃん」
「まぁ、暇ではあるけど……」
ベンの屋敷から抜け出した俺は早急に村からも立ち去ろう。そう思っていたのに、鍛冶屋にキースが短剣に魔石を取り付けるよう依頼していたのだ。
武器が完成するのが明日。キースが誘拐犯のような構図でベンの屋敷を去ったので、明日まではこの部屋から出ないことにしている。だから、暇つぶしに俺はオモチャにされているのだ。
ちなみに、リアムはベンが孤児を虐待していないと分かってからは、自分の杞憂だったと気持ちをリセットしたようだ。元気になったので、そこは良かった。
「一回で良いからさ、俺のことジェラルドお兄様って呼んでみてよ」
「あ、ズルい。僕のこともリアムお兄様って呼んでみて」
そんな期待の籠った瞳で見つめられると断りづらい。
「ジェ、ジェラルドお兄様……リアムお兄様……?」
恥じらいながら言えば、ジェラルドとリアムはそれぞれ自身の口元を手で覆った。
「リアム、思った以上に威力が半端ないぞ」
「この上目遣いは反則だよ」
「もう、自分達が言えって言ったんじゃん。早くエドワード帰ってこないかな」
エドワードはベンの様子を見に行ってくれている。そんなエドワードは好きな子もいるし妹もいる。この二人のようにオモチャにはしてこないはず。
「とにかく、この冒険にも付き合ってあげてるんだから、今日一日は僕らの妹ってことで、ね?」
「リアム、前に冒険は自分の意思って……」
「なに?」
リアムの笑顔が怖い。
「何でもないです」
こうして、ジェラルドとリアムのオモチャ……妹として愛でられる一日が始まった。
◇
朝食を終えた俺達は、ただただ椅子に座っている。
「兄妹って何するんだ?」
「さぁ、オリヴァーとノエルは何して遊んでたの?」
リアムに言われて、昔を思い返してみる。
「えっと、小さい頃は花冠作ったり」
「外に出られねーからな。却下だ。他は?」
他に、他には『転生者ごっこ』これしか思いつかない。
「ごっこ遊びとか」
「既にこれがごっこ遊びだもんね」
もしやこれは早速チャンスなのでは……?
「ほら、思いつかないなら兄妹ごっこやめようよ」
そう言って頭に付いているカツラを取ろうとしたその時、ノエルが挙手をした。
「わたくし、お兄様に寝かしつけてもらっておりましたわ」
「お、それなら出来るな」
「うん、早速しよう」
俺はジェラルドとリアムに両側から手を引かれてベッドに寝かされた。
「さっき起きたばっかじゃん」
ジェラルドとリアムに見下ろされながら、一応目を瞑ってみる。
あ、これは逆に良いかもしれない。寝てるだけで一日が終わりそうだ。
「昔はよく添い寝で寝かしつけて下さいましたの。それはもうぴったりくっ付いて。お兄様の温もりに安心感を抱いておりましたわ」
俺は閉じていた目を開いて、二人を見上げた。
「まさかしないよね?」
「お前がやってたんだろ」
「いつも一緒に寝てるじゃん」
「いや、いつもちょっと離れてるじゃん。ほら、男が三人くっ付いて寝る様を想像してみてよ」
二人は黙ってしまった。きっと、想像しているのだろう。男三人がくっ付いて寝ている様を。
「今はどっからどう見ても女の子だからな」
「うん。それに、本物の淑女と添い寝なんて出来ないけど、相手オリヴァーだし。問題ないよ」
「いや、そういう問題じゃ……」
俺の言葉は虚しく、ジェラルドとリアムがベッドに寝転がってきた。二人は両側から肩肘を付きながら、俺を見下ろしている。
「キース……」
この中では一番まともなキースに助けを求めてみた。しかし、キースは勘違いしたようだ。
「ああ、悪い。見られてちゃ寝れないよな。オレ隣の部屋にいるよ」
「兄ちゃんも一緒にすれば良いのに。妹欲しいって言ってたじゃん」
「いや、オレが入ると野暮ってもんだろ。なぁ、オリヴァー」
そうだった……キースはキースでノエルの絵を見て、俺に男色の趣味があると勘違いされたままだった。
「これ以上、スペースもありませんし、キース様はまた今度ということで。では、お兄様、ごゆっくり」
二人と一匹は部屋から出て行った——。
「これで兄妹水入らずだな」
「いっそこのまま兄妹になっちゃう?」
「お、それ良いな。親父も喜ぶぞ」
「はは……俺の体一つしかないんだけど」
リアムが俺の頭を撫でながらニコッと笑った。
「ジェラルドの妹になって、僕のお嫁さんになるって手もあるよ。僕は世継ぎ関係ないし」
「いや……俺、男だから」
「知ってる?」
リアムが言おうとしていることは、まさか……。
「この国ではね、国王の許可があれば男同士でも結婚出来るんだよ」
「……」
「そうなのか? じゃあ、帰ったら早速養子の手続きして」
「ちょっと、勝手に二人で話進めないでよ」
やはりここはノエルの言うBLの世界なのかもしれない。
「ほら、あーん」
「自分で食べられるから……」
ジェラルドが左から、リアムが右から朝食を食べさせてくるのだ。
「ふふ、お兄様、両手に蜂蜜ですわね」
「兄ちゃんも見てるだけじゃ二人に先越されるよ。次はサラダだって」
「確かに、野菜は大事だからな。ほら、あーん」
ショーンに言われて、正面で傍観していたキースまで手ずから食べさせてきた。
「もう、みんな良い加減にしてよ。自分で食べられるから。それに、何でまだこんな格好を……」
俺は頭に付いている黒いカツラに手をかけた。
「ダメだ、それを取ったら俺の楽しみが!」
「そうだよ。このパーティーには華が欠けてるんだから」
「いや、華って、ノエルがいるじゃん」
俺はベンの屋敷から抜け出したにも関わらず、仲間から女装を強要されている。
やや乱れたカツラをジェラルドが整えながら言った。
「俺だって可愛い妹が欲しかったんだよ」
「妹って、二人とも俺と同い年じゃん」
「ふっ……」
ジェラルドが怪しい笑みを浮かべた。
「俺はこの間、誕生日を迎えたんだ。つまりお前より一つ上だ」
「僕も。だから、お兄ちゃんだよ」
リアムまで……。
「数ヶ月の違いでマウントとらないでよ……それに、妹ならノエルがいるじゃん」
「ノエルは見た目は可愛いけど……なぁ、リアム」
「うん。ちょっと違うよね」
「二人とも……」
目の前にノエル本人がいるというのに失礼極まりない。ただ、ノエル自身、気にもしていないようだ。
「兄妹プレイも良いですわね。まだまだ可能性は広がりますわ」
「広がらなくて良いから」
「宿から出られなくて暇だしよ、今日一日くらい良いじゃん」
「まぁ、暇ではあるけど……」
ベンの屋敷から抜け出した俺は早急に村からも立ち去ろう。そう思っていたのに、鍛冶屋にキースが短剣に魔石を取り付けるよう依頼していたのだ。
武器が完成するのが明日。キースが誘拐犯のような構図でベンの屋敷を去ったので、明日まではこの部屋から出ないことにしている。だから、暇つぶしに俺はオモチャにされているのだ。
ちなみに、リアムはベンが孤児を虐待していないと分かってからは、自分の杞憂だったと気持ちをリセットしたようだ。元気になったので、そこは良かった。
「一回で良いからさ、俺のことジェラルドお兄様って呼んでみてよ」
「あ、ズルい。僕のこともリアムお兄様って呼んでみて」
そんな期待の籠った瞳で見つめられると断りづらい。
「ジェ、ジェラルドお兄様……リアムお兄様……?」
恥じらいながら言えば、ジェラルドとリアムはそれぞれ自身の口元を手で覆った。
「リアム、思った以上に威力が半端ないぞ」
「この上目遣いは反則だよ」
「もう、自分達が言えって言ったんじゃん。早くエドワード帰ってこないかな」
エドワードはベンの様子を見に行ってくれている。そんなエドワードは好きな子もいるし妹もいる。この二人のようにオモチャにはしてこないはず。
「とにかく、この冒険にも付き合ってあげてるんだから、今日一日は僕らの妹ってことで、ね?」
「リアム、前に冒険は自分の意思って……」
「なに?」
リアムの笑顔が怖い。
「何でもないです」
こうして、ジェラルドとリアムのオモチャ……妹として愛でられる一日が始まった。
◇
朝食を終えた俺達は、ただただ椅子に座っている。
「兄妹って何するんだ?」
「さぁ、オリヴァーとノエルは何して遊んでたの?」
リアムに言われて、昔を思い返してみる。
「えっと、小さい頃は花冠作ったり」
「外に出られねーからな。却下だ。他は?」
他に、他には『転生者ごっこ』これしか思いつかない。
「ごっこ遊びとか」
「既にこれがごっこ遊びだもんね」
もしやこれは早速チャンスなのでは……?
「ほら、思いつかないなら兄妹ごっこやめようよ」
そう言って頭に付いているカツラを取ろうとしたその時、ノエルが挙手をした。
「わたくし、お兄様に寝かしつけてもらっておりましたわ」
「お、それなら出来るな」
「うん、早速しよう」
俺はジェラルドとリアムに両側から手を引かれてベッドに寝かされた。
「さっき起きたばっかじゃん」
ジェラルドとリアムに見下ろされながら、一応目を瞑ってみる。
あ、これは逆に良いかもしれない。寝てるだけで一日が終わりそうだ。
「昔はよく添い寝で寝かしつけて下さいましたの。それはもうぴったりくっ付いて。お兄様の温もりに安心感を抱いておりましたわ」
俺は閉じていた目を開いて、二人を見上げた。
「まさかしないよね?」
「お前がやってたんだろ」
「いつも一緒に寝てるじゃん」
「いや、いつもちょっと離れてるじゃん。ほら、男が三人くっ付いて寝る様を想像してみてよ」
二人は黙ってしまった。きっと、想像しているのだろう。男三人がくっ付いて寝ている様を。
「今はどっからどう見ても女の子だからな」
「うん。それに、本物の淑女と添い寝なんて出来ないけど、相手オリヴァーだし。問題ないよ」
「いや、そういう問題じゃ……」
俺の言葉は虚しく、ジェラルドとリアムがベッドに寝転がってきた。二人は両側から肩肘を付きながら、俺を見下ろしている。
「キース……」
この中では一番まともなキースに助けを求めてみた。しかし、キースは勘違いしたようだ。
「ああ、悪い。見られてちゃ寝れないよな。オレ隣の部屋にいるよ」
「兄ちゃんも一緒にすれば良いのに。妹欲しいって言ってたじゃん」
「いや、オレが入ると野暮ってもんだろ。なぁ、オリヴァー」
そうだった……キースはキースでノエルの絵を見て、俺に男色の趣味があると勘違いされたままだった。
「これ以上、スペースもありませんし、キース様はまた今度ということで。では、お兄様、ごゆっくり」
二人と一匹は部屋から出て行った——。
「これで兄妹水入らずだな」
「いっそこのまま兄妹になっちゃう?」
「お、それ良いな。親父も喜ぶぞ」
「はは……俺の体一つしかないんだけど」
リアムが俺の頭を撫でながらニコッと笑った。
「ジェラルドの妹になって、僕のお嫁さんになるって手もあるよ。僕は世継ぎ関係ないし」
「いや……俺、男だから」
「知ってる?」
リアムが言おうとしていることは、まさか……。
「この国ではね、国王の許可があれば男同士でも結婚出来るんだよ」
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