58 / 144
第四章 光魔法と闇魔法
無詠唱
しおりを挟む
日は完全に沈み、満天の星が輝き、とてもロマンティックだ。ここが墓場でなければ。
「さぁ、悪魔様。妻を、妻を生き返らせて下さい」
「引き換えに何をくれる?」
「あそこにいる子供達の命を。十一人おります」
ベンが俺達の後ろにいる孤児をさした。
「この子達に手は出させない」
俺は光のシールドで孤児を覆い、その前に立ちはだかった。キースとエドワードも前に出てきて言った。
「生き返らせるのは勝手だが、自分の命を使ってやってくれ」
「そうだ。子供達は関係ない」
ジェラルドは……。
「こっち見んなよ。いざとなったら出てやるから」
死体が生き返るところを間近で見たくないのだろう。離れた場所にいるリアムとノエルの間に立っていた。
「いや、良いけどさ……わッ」
前に向き直った瞬間、目の前に悪魔がいた。しかも鼻と鼻が触れ合うのではと思うくらい至近距離に。
「オリヴァー、逃げて!」
キースとエドワードも突然のことで、反応が遅れた。二人同時に悪魔に剣で斬りかかったが、悪魔が片手を上げると、闇のシールドが現れて二人は弾き飛ばされた。
悪魔は俺の首からぶら下がっている鎖を手に取って言った。
「汝が欲しい」
「汝って……俺?」
つまり、俺の命と引き換えにベンの妻を生き返らせると……?
「悪魔様、それは我が娘のリリーです。それだけはお許し下さい! 子供ならこちらに沢山いますから」
ベンが悪魔に縋り付こうとしたが、悪魔は鎖を持っていない方の手をベンに向けると、闇の球がベンを襲った。
「うッ……悪魔様、リリーだけは駄目です」
「うるさい。私の自由だ」
無表情だった悪魔がニヤリと笑った。
「特別サービスだ」
悪魔が指をパチンと鳴らすと、地響きがし始めた。ベンが掘り起こした棺桶も、カタカタと音を鳴らして揺れている。
俺は冷や汗を流しながら、恐る恐る悪魔に聞いてみた。
「何をしたんだ?」
「気分が良いからな。ここに眠る者全てに魂を吹き込んでやっただけだ」
「全て?」
「まぁ、肉体までは元に戻らんがな。ついでに自我もないぞ」
「なっ、それってただのゾン……」
棺桶の前にいたベンが歓喜の声を上げた。
「リュシー? リュシーなのか?」
そう言ってベンは、棺桶から出てきたリュシーと呼ばれるゾンビの手を取った。
「リュシー、会いたかったぞ。リリーもいるんだ。そうかそうか、リュシーも嬉しいか」
ベンは喜びの声を上げるが、どう見てもゾンビに頭を齧られている。
ジェラルドは身震いしながら言った。
「あいつ、とうとう狂っちまったな……て、何だよ、この数のゾンビは!」
地面から手がニョキっと出てきては、ゆっくりと這い上がってくる。中には、ゾンビ同士で土から引き上げ合ったりしている者もいる。その数、ニ百……いや、三百体は有に超えている。
エドワードがゾンビを剣で斬りながら叫んだ。
「大変だ、村の中心部に流れて行ってる」
「だが今はオリヴァーだ。仲間も救えない奴が村人なんて救えるか!」
纏わりついていたゾンビにキースは思い切り短剣を振るうと、短剣からボワッと炎が吹き出した。
「わ、これすげぇ」
レア魔石の効果だろう。斬られたゾンビは火だるまになり、その隣にいるゾンビにも引火した。そして、その周囲は勝手に自滅していった。
リアムとノエルは、ジェラルドが近くにいたおかげで氷のシールドの中にいた。ひとまず安全そうだ。怖がりなのも、たまには役に立つものだ。
参戦したい所だが、今はそれどころではない。どうにかしてこの悪魔から離れなければ。
悪魔の顔を見ていると、ふと思い出したことがある。
『誰よ、こんなの出すのは』『その攻撃は通用しないわ』
俺が魔法でただ光を出した時にアデルに言われたセリフ。サキュバスのアデルも悪魔だ。つまりこの悪魔にも光魔法は有効なはず。
ただ、詠唱の時間は与えてくれないだろう。俺は手元にポゥっと光の玉を出した。
悪魔は顔を歪めた。そして、そのまま俺から離れ……ない。
「何をしている?」
「えっと……」
まさか、何ともない? アデルはあんなに苦しがっていたのに。
細やかな抵抗ではあるが、俺は手にある光の玉を空中に浮かべて、悪魔の上でパチンと弾けさせた。すると、悪魔の身体にキラキラと光の粒子が舞い降りた。
それが悪魔の皮膚にくっつくと、ジュッと一瞬焼かれたような音がなり、皮膚が爛れた。
見ていて痛々しいが、効果はあるようだ。ただ、この後どうするか何も考えていなかった。
悪魔は怒っているのだろう、俺をじっと見据えている。
「汝……」
「あの、ごめんなさい……そんなつもりはなくて」
このまま死ぬのかと思ったら、つい言い訳が口から出てしまう。
謝るくらいなら詠唱すれば良いのに、と言われるかもしれないが、ピンチに直面すると冷静な判断と行動が出来ないのが人間だ。
「汝……そんなに嬉しいのか?」
嬉しい? そんな訳あるはずがない。魂を悪魔に捧げるなんて死んでも嫌だ。
俺は涙目になりながら、プルプルと首を小さく横に振った。
「その顔堪らんな。王に横取りされる前に付けておくか」
悪魔の牙が俺の首筋に近付いてきた。
殺される、殺される、殺される——。
「夫婦の刻印」
「死にたくない!」
そう叫んだ瞬間、眩い光が俺の手から放たれた。悪魔は雷に打たれたようにピタリと止まった。同時にパッと闇のシールドも消えた。
「あれ? 詠唱してないのに魔法が」
「さぁ、悪魔様。妻を、妻を生き返らせて下さい」
「引き換えに何をくれる?」
「あそこにいる子供達の命を。十一人おります」
ベンが俺達の後ろにいる孤児をさした。
「この子達に手は出させない」
俺は光のシールドで孤児を覆い、その前に立ちはだかった。キースとエドワードも前に出てきて言った。
「生き返らせるのは勝手だが、自分の命を使ってやってくれ」
「そうだ。子供達は関係ない」
ジェラルドは……。
「こっち見んなよ。いざとなったら出てやるから」
死体が生き返るところを間近で見たくないのだろう。離れた場所にいるリアムとノエルの間に立っていた。
「いや、良いけどさ……わッ」
前に向き直った瞬間、目の前に悪魔がいた。しかも鼻と鼻が触れ合うのではと思うくらい至近距離に。
「オリヴァー、逃げて!」
キースとエドワードも突然のことで、反応が遅れた。二人同時に悪魔に剣で斬りかかったが、悪魔が片手を上げると、闇のシールドが現れて二人は弾き飛ばされた。
悪魔は俺の首からぶら下がっている鎖を手に取って言った。
「汝が欲しい」
「汝って……俺?」
つまり、俺の命と引き換えにベンの妻を生き返らせると……?
「悪魔様、それは我が娘のリリーです。それだけはお許し下さい! 子供ならこちらに沢山いますから」
ベンが悪魔に縋り付こうとしたが、悪魔は鎖を持っていない方の手をベンに向けると、闇の球がベンを襲った。
「うッ……悪魔様、リリーだけは駄目です」
「うるさい。私の自由だ」
無表情だった悪魔がニヤリと笑った。
「特別サービスだ」
悪魔が指をパチンと鳴らすと、地響きがし始めた。ベンが掘り起こした棺桶も、カタカタと音を鳴らして揺れている。
俺は冷や汗を流しながら、恐る恐る悪魔に聞いてみた。
「何をしたんだ?」
「気分が良いからな。ここに眠る者全てに魂を吹き込んでやっただけだ」
「全て?」
「まぁ、肉体までは元に戻らんがな。ついでに自我もないぞ」
「なっ、それってただのゾン……」
棺桶の前にいたベンが歓喜の声を上げた。
「リュシー? リュシーなのか?」
そう言ってベンは、棺桶から出てきたリュシーと呼ばれるゾンビの手を取った。
「リュシー、会いたかったぞ。リリーもいるんだ。そうかそうか、リュシーも嬉しいか」
ベンは喜びの声を上げるが、どう見てもゾンビに頭を齧られている。
ジェラルドは身震いしながら言った。
「あいつ、とうとう狂っちまったな……て、何だよ、この数のゾンビは!」
地面から手がニョキっと出てきては、ゆっくりと這い上がってくる。中には、ゾンビ同士で土から引き上げ合ったりしている者もいる。その数、ニ百……いや、三百体は有に超えている。
エドワードがゾンビを剣で斬りながら叫んだ。
「大変だ、村の中心部に流れて行ってる」
「だが今はオリヴァーだ。仲間も救えない奴が村人なんて救えるか!」
纏わりついていたゾンビにキースは思い切り短剣を振るうと、短剣からボワッと炎が吹き出した。
「わ、これすげぇ」
レア魔石の効果だろう。斬られたゾンビは火だるまになり、その隣にいるゾンビにも引火した。そして、その周囲は勝手に自滅していった。
リアムとノエルは、ジェラルドが近くにいたおかげで氷のシールドの中にいた。ひとまず安全そうだ。怖がりなのも、たまには役に立つものだ。
参戦したい所だが、今はそれどころではない。どうにかしてこの悪魔から離れなければ。
悪魔の顔を見ていると、ふと思い出したことがある。
『誰よ、こんなの出すのは』『その攻撃は通用しないわ』
俺が魔法でただ光を出した時にアデルに言われたセリフ。サキュバスのアデルも悪魔だ。つまりこの悪魔にも光魔法は有効なはず。
ただ、詠唱の時間は与えてくれないだろう。俺は手元にポゥっと光の玉を出した。
悪魔は顔を歪めた。そして、そのまま俺から離れ……ない。
「何をしている?」
「えっと……」
まさか、何ともない? アデルはあんなに苦しがっていたのに。
細やかな抵抗ではあるが、俺は手にある光の玉を空中に浮かべて、悪魔の上でパチンと弾けさせた。すると、悪魔の身体にキラキラと光の粒子が舞い降りた。
それが悪魔の皮膚にくっつくと、ジュッと一瞬焼かれたような音がなり、皮膚が爛れた。
見ていて痛々しいが、効果はあるようだ。ただ、この後どうするか何も考えていなかった。
悪魔は怒っているのだろう、俺をじっと見据えている。
「汝……」
「あの、ごめんなさい……そんなつもりはなくて」
このまま死ぬのかと思ったら、つい言い訳が口から出てしまう。
謝るくらいなら詠唱すれば良いのに、と言われるかもしれないが、ピンチに直面すると冷静な判断と行動が出来ないのが人間だ。
「汝……そんなに嬉しいのか?」
嬉しい? そんな訳あるはずがない。魂を悪魔に捧げるなんて死んでも嫌だ。
俺は涙目になりながら、プルプルと首を小さく横に振った。
「その顔堪らんな。王に横取りされる前に付けておくか」
悪魔の牙が俺の首筋に近付いてきた。
殺される、殺される、殺される——。
「夫婦の刻印」
「死にたくない!」
そう叫んだ瞬間、眩い光が俺の手から放たれた。悪魔は雷に打たれたようにピタリと止まった。同時にパッと闇のシールドも消えた。
「あれ? 詠唱してないのに魔法が」
101
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる