俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵

文字の大きさ
66 / 144
第四章 光魔法と闇魔法

鑑定士を探そう

しおりを挟む
「ッたく、また歩きかよ」

「仕方ないじゃん。急いでたんだから。それに元はと言えばジェラルドが……」

「悪かったって言ってんだろ。しつこいな」

 ——俺達はノエルが読み聞かせをしている教会に転移した。運良く宿にあった荷物も一緒に転移していた為、俺は皆を連れて逃げるように教会を出てララル村を後にした。

 絵本を描いて読み聞かせたノエルにも怒ったが、元はと言えばジェラルドとリアムが誘拐された時の格好のまま、孤児を助けに行こうと言ったのが事の始まりだ。

 女装さえしていなければ、村人にと崇められることは無かったはず。そして何より、メレディスに夫婦の刻印をつけられることも無かったのだ。

 あの時、着替えてさえ行っていたなら……後悔だけが押し寄せる。

 なので、ことあるごとにジェラルドとリアムに文句を言いながら歩いている——。

 エドワードが俺とジェラルドのやり取りを苦笑しながら聞いて来た。

「これからどこ行く? 強くなる為に冒険するしかない訳だけど」

「強くなるったってなぁ」

「ランクにこだわらなければ、前みたいに魔物が出る山みたいな所でみっちり修行すれば良いけど」

 俺はノエルをチラリと見た。

「強くなるのはもちろんですが、冒険が終わるまでにはSSランクになっていませんと、主人公と言えませんわ」

「SSって……俺らまだDなんだけど。依頼だって大したの受けられないし」

 ギルドの依頼外の事が多すぎて、今の調子では中々ランクが上がらない。SSなんて夢のまた夢だ。

 そんな時、キースが言った。

「お前ら知らないのか? パーティー内にランクの高い奴がいたら、それに見合った依頼が受けられるんだぞ」

「そうなの?」

 キースはランクA。つまり、一つ上のランクの依頼も受けられるから、ランクSの依頼も受けられるのか。

「だとしても、キースもA止まりで中々Sには上がらないって言ってたじゃん」

「そうなんだよなぁ。そっから上が中々なぁ」

「リアム? どうしたの?」

「オレ、何か付いてるか?」

 リアムは立ち止まって、キースを上から下までまじまじと見ている。

「鑑定士を探そう」

「鑑定士?」

「恐らくギルドのランク上げの基準は、どんな依頼をどれだけ受けたかで決めてるだけなんだ」

「うん。だから……」

「でも、それはきっとAまで」

 リアムが再び歩き始めたので、俺達も横に並んで歩いた。

「冒険前に確認しておいたんだけど、この国にランクAは数百人いたけど、Sはたったの五人しかいないんだ。SSなんて一人もいなかったよ。おかしいと思わない?」

「おかしい?」

「数さえこなしてランクが上がるならSなんてゴロゴロいるはずなんだよ」

「確かに」

「きっと鑑定士がいるギルドがあるはずだよ。そこで見てもらえば、君達に見合ったランク付けをしてくれると思うよ」

「じゃあ、俺達がやってたことって無駄だったってこと?」

「無駄ではないよ。何事も経験値は必要だからね。能力だけあって経験が無かったら、それはそれでランクは低いと思うよ」

「ランク下がったらどうしよ……」

「勇者様がネガティブすぎだろ」

 キースが冗談ぽく笑えば、リアムは平然と言った。

「今のオリヴァーならあり得るかもね。闇魔法を自分のものに出来ないと害でしかないし。まずはその力を使いこなせるようになって。その間、僕は鑑定士の情報収集するから」


 ◇


 というわけで、俺達は海に来た。

「やはり、恋愛には海が一番ですわね」

 もちろん愛情を深め合う為ではない。闇魔法を使いこなせるようになる為に。

 アイリス先生が言っていた。

『魔法は何かの力を借りて発動させる』

 治癒の為には大地の力、聖なる光はそこら辺にある光、つまり、闇も何かしらの闇っぽいものを利用すれば出来るはず!

 海なら深海の辺りが闇っぽいし、夜になれば空も海も闇だ。

 キースとエドワードは早速、剣を交えている。

「よし、俺も闇の球を出してみよう」

 闇、闇、深海の闇……。

「駄目か」

 光の球が出た。

「やっぱ深海の闇をイメージするだけじゃ甘いんじゃね? アイリス先生は体感しろって感じだったじゃん?」

「でも、深海まで潜るわけにもいかないし」

「視界に光が入るから駄目なのでは? ジェラルド様、こちらを」

 ノエルがジェラルドに長めの布切れを手渡した。

「確かにな。ちょっとあっち向いてろ」

 ジェラルドに目隠しされた。

「どうだ?」

「うん、光は入ってこないよ」

「では、魔法を発動させるのは闇になれてからということで、今日一日これで過ごしてみましょう」

「え、一日?」

 闇に慣れた方が良いのは分かるが、さすがに目隠しされたまま海の近くで一人ウロウロ歩くのは危険だ。今も、何処に何があるのか分からない。

「オリヴァー、そっちは海だ」

「じゃあこっち?」

「ほぼ向き変わってねーぞ」

「もう、分かんないよ」 

 俺が嘆いていると、そっと両手を引かれた。

「ッたく、こっちだよ」

「ジェラルド、ありがとう」

「目隠ししてる間は俺が近くにいてやるから」

 シャッ、シャッ。

 この音は……ノエルが絵を描いている音だ。

 まさか、この目隠しは闇に慣れるという目的ではなく、ジェラルドと手を繋いだりスキンシップをさせる為?

 しかし、闇に慣れるという意味では必要なこと。魔法が使えなくて困っている兄に対して、そんなふざけたことはしないはず。

 自分自身に納得させながら、俺はジェラルドに手を引かれながら歩く一日を過ごすのだった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。

春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。  新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。  ___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。  ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。  しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。  常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___ 「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」  ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。  寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。  髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?    

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

処理中です...