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第五章 うっかり魔界へ
魔王の提案
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グレースは魔王の娘の魔王女だった。そんな魔王女が何故か俺とメレディスの夫婦の刻印を消すよう魔王に働きかけてくれている。
「お父上様、この者らの刻印を消して下さいませ」
魔王は足を組み、肘をつきながら観察するように俺とメレディスを交互に見て、悪戯な笑みを浮かべた。
「グレース、夫婦の刻印は相思相愛の証。二人の愛を引き裂くのは無粋というものだぞ。なぁ、二人とも?」
「いや、俺は……メレディス?」
刻印を消して欲しいと口を開きかけたが、メレディスに肩を抱き寄せられた。
「いくら魔王女殿下の頼みでも、この刻印だけは消すわけにはいきません。私達は愛し合っているのですから」
「え……あ、愛!?」
俺が顔を赤くさせながら戸惑いを隠せないでいると、グレースはムッとして俺の手を引っ張った。
「メレディス、お前は男であろう? 男同士が何を言うておる」
メレディスも俺を離さない。
「男同士の何が悪いのですか? 愛するのに男も女も関係ありません。私は真実の愛を知ったのです」
メレディスが変だ。メレディスは俺の顔が好みかもしれないが、男と分かってからは完全に恋愛対象外。刻印も消したがっている。
そこで俺はハッと気が付いた。以前メレディスが言っていた。意地の悪い魔王は俺とメレディスの関係を面白がって絶対に刻印は消してくれないと。
つまり、反対に俺達が刻印を絶対に消して欲しくないと言い張れば、刻印を消した方が面白いのでは? と、思ってくれるはず。更に、魔王は可愛い娘の願いを叶えることができて一石二鳥。
しかし、魔王はまだ疑いの目で見ている。
「メレディス、汝は可愛らしい女が好みだっただろう? いつからそっちの趣味に走ったのだ?」
「私は可愛らしい顔が好きなだけです。見て下さい、この顔。何とも愛らしいでしょう?」
「まぁ、女の子みたいな顔はしておるが」
「そんな物欲しそうな顔で見ても陛下には絶対に渡しませんよ」
「も、物欲しそうになどしておらんわ」
魔王がやや動揺している。メレディスのペースになってきているようだ。
「まさか、お父上様まで? こやつは勇者なのじゃ。勇者は姫を救って結婚するのじゃ。わらわと結婚するのじゃ!」
「「「は……?」」」
グレースの言葉にそこにいる誰もが驚いた。特に魔王が驚いた。
「何を言っておるのだ。グレースの婚約者は人間なんぞではなく、もっと強い魔族から選ばねばならん」
「嫌じゃ嫌じゃ。わらわは勇者と結婚するのじゃ。お姫様は勇者と結婚する運命なのじゃ」
グレースが駄々っ子のように言うと、メレディスがチャンスとばかりに言った。
「我が嫁は人間界では相当な強者。私も一度気絶させられた経験があります。魔王女殿下の刻印に変えて、殿下の力を手に入れればそれはもう最強でしょう」
「ほら、やはり勇者は強いのじゃ! わらわと結婚……」
「ですが、絶対に渡しませんよ。既に私と夫婦なのですから。なぁ、オリヴァー?」
「わらわを救い出してくれると言ったよのぉ?」
「う……」
メレディスとグレースに言い寄られて、言葉に詰まっていると、メレディスが俺の肩に置いてある手の力を緩めて残念そうに言った。
「ですが、これが陛下や殿下の命とあらば致し方ないこと。諦めざる終えない」
メレディスは演技が上手いな。上手く刻印を消す方向に持っていっている。
「つまり、この勇者はわらわのモノということか? では、早速刻印をわらわのものに変えよう」
グレースはにっこり微笑み、魔王に向き直った。
「お父上様、そういうことじゃ。刻印を早く消して下さいませ」
もしここで魔王の許可がおりれば刻印が消える。しかし、代わりにグレースの刻印をつけられるのか?
考えている間にも話は進む。
「可愛い娘の頼みだ。二人の刻印は消してやろう……ただし、結婚は許さん」
「何故じゃ」
「まぁ聞け。グレース」
魔王はグレースを宥めるように言った。
「グレースは本当にそんな子供が好きなのか? ただの遊び相手が欲しいだけではないのか?」
グレースは俺をチラリと見た。
「まぁ、もう少し大人の方が良いがのぉ。今いくつじゃ?」
「十……もうすぐ十五」
いつも子供扱いされるので、少し背伸びをしてみた。すると、魔王に鼻で笑われた。
「ハッ、まるで赤子ではないか。グレースはそれでも良いのか?」
背伸びをしたはずなのに、子供以下になってしまった。それより、グレースの方が歳下だと思うのだが……。
「わらわと百三十六も違うのか」
「は?」
百三十六? つまり、俺はまだ十四歳なので、グレースは百五十歳?
俺が若干引いていると、魔王は足を組み替えて言った。
「そこで、グレースに提案がある」
「提案?」
魔王は怪しい笑みを浮かべて俺を見た。
「そやつは我らのペットにしよう」
「お父上様、この者らの刻印を消して下さいませ」
魔王は足を組み、肘をつきながら観察するように俺とメレディスを交互に見て、悪戯な笑みを浮かべた。
「グレース、夫婦の刻印は相思相愛の証。二人の愛を引き裂くのは無粋というものだぞ。なぁ、二人とも?」
「いや、俺は……メレディス?」
刻印を消して欲しいと口を開きかけたが、メレディスに肩を抱き寄せられた。
「いくら魔王女殿下の頼みでも、この刻印だけは消すわけにはいきません。私達は愛し合っているのですから」
「え……あ、愛!?」
俺が顔を赤くさせながら戸惑いを隠せないでいると、グレースはムッとして俺の手を引っ張った。
「メレディス、お前は男であろう? 男同士が何を言うておる」
メレディスも俺を離さない。
「男同士の何が悪いのですか? 愛するのに男も女も関係ありません。私は真実の愛を知ったのです」
メレディスが変だ。メレディスは俺の顔が好みかもしれないが、男と分かってからは完全に恋愛対象外。刻印も消したがっている。
そこで俺はハッと気が付いた。以前メレディスが言っていた。意地の悪い魔王は俺とメレディスの関係を面白がって絶対に刻印は消してくれないと。
つまり、反対に俺達が刻印を絶対に消して欲しくないと言い張れば、刻印を消した方が面白いのでは? と、思ってくれるはず。更に、魔王は可愛い娘の願いを叶えることができて一石二鳥。
しかし、魔王はまだ疑いの目で見ている。
「メレディス、汝は可愛らしい女が好みだっただろう? いつからそっちの趣味に走ったのだ?」
「私は可愛らしい顔が好きなだけです。見て下さい、この顔。何とも愛らしいでしょう?」
「まぁ、女の子みたいな顔はしておるが」
「そんな物欲しそうな顔で見ても陛下には絶対に渡しませんよ」
「も、物欲しそうになどしておらんわ」
魔王がやや動揺している。メレディスのペースになってきているようだ。
「まさか、お父上様まで? こやつは勇者なのじゃ。勇者は姫を救って結婚するのじゃ。わらわと結婚するのじゃ!」
「「「は……?」」」
グレースの言葉にそこにいる誰もが驚いた。特に魔王が驚いた。
「何を言っておるのだ。グレースの婚約者は人間なんぞではなく、もっと強い魔族から選ばねばならん」
「嫌じゃ嫌じゃ。わらわは勇者と結婚するのじゃ。お姫様は勇者と結婚する運命なのじゃ」
グレースが駄々っ子のように言うと、メレディスがチャンスとばかりに言った。
「我が嫁は人間界では相当な強者。私も一度気絶させられた経験があります。魔王女殿下の刻印に変えて、殿下の力を手に入れればそれはもう最強でしょう」
「ほら、やはり勇者は強いのじゃ! わらわと結婚……」
「ですが、絶対に渡しませんよ。既に私と夫婦なのですから。なぁ、オリヴァー?」
「わらわを救い出してくれると言ったよのぉ?」
「う……」
メレディスとグレースに言い寄られて、言葉に詰まっていると、メレディスが俺の肩に置いてある手の力を緩めて残念そうに言った。
「ですが、これが陛下や殿下の命とあらば致し方ないこと。諦めざる終えない」
メレディスは演技が上手いな。上手く刻印を消す方向に持っていっている。
「つまり、この勇者はわらわのモノということか? では、早速刻印をわらわのものに変えよう」
グレースはにっこり微笑み、魔王に向き直った。
「お父上様、そういうことじゃ。刻印を早く消して下さいませ」
もしここで魔王の許可がおりれば刻印が消える。しかし、代わりにグレースの刻印をつけられるのか?
考えている間にも話は進む。
「可愛い娘の頼みだ。二人の刻印は消してやろう……ただし、結婚は許さん」
「何故じゃ」
「まぁ聞け。グレース」
魔王はグレースを宥めるように言った。
「グレースは本当にそんな子供が好きなのか? ただの遊び相手が欲しいだけではないのか?」
グレースは俺をチラリと見た。
「まぁ、もう少し大人の方が良いがのぉ。今いくつじゃ?」
「十……もうすぐ十五」
いつも子供扱いされるので、少し背伸びをしてみた。すると、魔王に鼻で笑われた。
「ハッ、まるで赤子ではないか。グレースはそれでも良いのか?」
背伸びをしたはずなのに、子供以下になってしまった。それより、グレースの方が歳下だと思うのだが……。
「わらわと百三十六も違うのか」
「は?」
百三十六? つまり、俺はまだ十四歳なので、グレースは百五十歳?
俺が若干引いていると、魔王は足を組み替えて言った。
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