俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵

文字の大きさ
72 / 144
第五章 うっかり魔界へ

魔王の提案

しおりを挟む
 グレースは魔王の娘の魔王女だった。そんな魔王女が何故か俺とメレディスの夫婦の刻印を消すよう魔王に働きかけてくれている。

「お父上様、この者らの刻印を消して下さいませ」

 魔王は足を組み、肘をつきながら観察するように俺とメレディスを交互に見て、悪戯な笑みを浮かべた。

「グレース、夫婦の刻印は相思相愛の証。二人の愛を引き裂くのは無粋というものだぞ。なぁ、二人とも?」

「いや、俺は……メレディス?」

 刻印を消して欲しいと口を開きかけたが、メレディスに肩を抱き寄せられた。

「いくら魔王女殿下の頼みでも、この刻印だけは消すわけにはいきません。私達は愛し合っているのですから」

「え……あ、愛!?」

 俺が顔を赤くさせながら戸惑いを隠せないでいると、グレースはムッとして俺の手を引っ張った。

「メレディス、お前は男であろう? 男同士が何を言うておる」

 メレディスも俺を離さない。

「男同士の何が悪いのですか? 愛するのに男も女も関係ありません。私は真実の愛を知ったのです」

 メレディスが変だ。メレディスは俺の顔が好みかもしれないが、男と分かってからは完全に恋愛対象外。刻印も消したがっている。

 そこで俺はハッと気が付いた。以前メレディスが言っていた。意地の悪い魔王は俺とメレディスの関係を面白がって絶対に刻印は消してくれないと。

 つまり、反対に俺達が刻印を絶対に消して欲しくないと言い張れば、刻印を消した方が面白いのでは? と、思ってくれるはず。更に、魔王は可愛い娘の願いを叶えることができて一石二鳥。

 しかし、魔王はまだ疑いの目で見ている。

「メレディス、汝は可愛らしい女が好みだっただろう? いつからそっちの趣味に走ったのだ?」
 
「私は可愛らしい顔が好きなだけです。見て下さい、この顔。何とも愛らしいでしょう?」

「まぁ、女の子みたいな顔はしておるが」

「そんな物欲しそうな顔で見ても陛下には絶対に渡しませんよ」

「も、物欲しそうになどしておらんわ」

 魔王がやや動揺している。メレディスのペースになってきているようだ。

「まさか、お父上様まで? こやつは勇者なのじゃ。勇者は姫を救って結婚するのじゃ。わらわと結婚するのじゃ!」

「「「は……?」」」

 グレースの言葉にそこにいる誰もが驚いた。特に魔王が驚いた。

「何を言っておるのだ。グレースの婚約者は人間なんぞではなく、もっと強い魔族から選ばねばならん」

「嫌じゃ嫌じゃ。わらわは勇者と結婚するのじゃ。お姫様は勇者と結婚する運命なのじゃ」

 グレースが駄々っ子のように言うと、メレディスがチャンスとばかりに言った。

「我が嫁は人間界では相当な強者。私も一度気絶させられた経験があります。魔王女殿下の刻印に変えて、殿下の力を手に入れればそれはもう最強でしょう」

「ほら、やはり勇者は強いのじゃ! わらわと結婚……」

「ですが、絶対に渡しませんよ。既に私と夫婦なのですから。なぁ、オリヴァー?」

「わらわを救い出してくれると言ったよのぉ?」

「う……」

 メレディスとグレースに言い寄られて、言葉に詰まっていると、メレディスが俺の肩に置いてある手の力を緩めて残念そうに言った。

「ですが、これが陛下や殿下の命とあらば致し方ないこと。諦めざる終えない」

 メレディスは演技が上手いな。上手く刻印を消す方向に持っていっている。

「つまり、この勇者はわらわのモノということか? では、早速刻印をわらわのものに変えよう」

 グレースはにっこり微笑み、魔王に向き直った。

「お父上様、そういうことじゃ。刻印を早く消して下さいませ」

 もしここで魔王の許可がおりれば刻印が消える。しかし、代わりにグレースの刻印をつけられるのか?

 考えている間にも話は進む。

「可愛い娘の頼みだ。二人の刻印は消してやろう……ただし、結婚は許さん」

「何故じゃ」

「まぁ聞け。グレース」

 魔王はグレースを宥めるように言った。

「グレースは本当にそんな子供が好きなのか? ただの遊び相手が欲しいだけではないのか?」

 グレースは俺をチラリと見た。

「まぁ、もう少し大人の方が良いがのぉ。今いくつじゃ?」

「十……もうすぐ十五」

 いつも子供扱いされるので、少し背伸びをしてみた。すると、魔王に鼻で笑われた。

「ハッ、まるで赤子ではないか。グレースはそれでも良いのか?」

 背伸びをしたはずなのに、子供以下になってしまった。それより、グレースの方が歳下だと思うのだが……。

「わらわと百三十六も違うのか」

「は?」

 百三十六? つまり、俺はまだ十四歳なので、グレースは百五十歳?

 俺が若干引いていると、魔王は足を組み替えて言った。

「そこで、グレースに提案がある」

「提案?」

 魔王は怪しい笑みを浮かべて俺を見た。

「そやつは我らのペットにしよう」
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。

春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。  新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。  ___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。  ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。  しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。  常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___ 「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」  ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。  寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。  髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?    

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

処理中です...