74 / 144
第五章 うっかり魔界へ
刻印の疼き
しおりを挟む
俺は今、真っ逆さまに落ちている。
あまりにも高所から落ちているせいか、死ぬ間際だからか分からないが、落ちるスピードは思いの外ゆっくりに感じる。ただ、普通に恐い。
俺は両手を下に向けて、光魔法を出す準備をした。
「……?」
俺の横を二つの黒い何かが通り過ぎた。そして、その何かは下の方でピタッと止まった。
地上に近付くにつれ、その正体が分かった。メレディスと魔王だ。
何であんなところに……。
俺は手の位置を真下から、斜め下に変えた。
ドガーンッ!
光魔法を発動し、俺の体は反動で宙に浮いた。後は、下にある木が衝撃を緩和させて……くれなかった。
「ッたく、お転婆にも程がある」
「陛下、助かりました。まさか軌道を変えるとは」
俺は魔王の腕の中にいた。
何故こうなってしまったのか。魔王の書斎にいた時より状況が悪い。何せ、言葉通り敵の手中なのだから。
魔王はメレディスに指示を出し始めた。
「城の全ての窓に鉄格子を付けるよう手配をしてくれ」
「御意」
隔離されてしまうのか。今の内に逃げ出さないと非常にまずい。
「それから、人間界への侵略を本格的に進めて行こう」
「は!?」
驚きのあまり魔王の腕から滑り落ちそうになったが、魔王は俺を抱え直した。
「帰る場所が無ければ、汝は魔界にいる他無くなるだろう」
「そんなことで人間界侵略なんて……」
「グレースは思った以上に汝を気に入っておるからな。それに、我を拒む者など汝が初めてだ。拒絶されればされる程、燃えるというものだ」
「そりゃ、男だし……魔王だし……」
「メレディスは受け入れたではないか」
「いや、受け入れては……」
「とにかく、汝が逃げ出したいなどという考えに至らぬよう、とろっとろに甘やかしてやるから安心しろ」
そんな色っぽい顔で言われても、不安しか生まれない。そして、何故か魔王の顔がどんどん近付いているのは気のせいか?
「えっと……そろそろおりたいなぁ」
「刻印を消してからな」
「ちょ、近い近い。刻印消すのに何で顔が……」
魔王が顔を近づけてくるので、俺は必死に体をのけ反らせている。
「汝の光魔法のせいで普通に消せないんだ。吸い出すしかない」
「え、吸い出すって? もしかして……」
「口からだ。メレディスと何度もやったのだろう? 我ともこれから毎晩するのだ」
「無理無理無理無理」
魔王の唇が俺の唇に触れる寸前、どうでも良い事が口からポロッと出た。
「メレディスも魔王に口付けされながら刻印を消すのか」
「……」
魔王がメレディスと目を合わせて黙ってしまった。
メレディスも若干嫌そうな顔を見せたが、魔王に言った。
「王命なら致し方ありません」
「いや、他の方法があったかもしれん。調べてくるから二人とも待っておれ。メレディス、絶対に此奴を逃すなよ」
「御意」
俺は魔王からメレディスに受け渡された。そして、魔王は上空に羽ばたいて書斎に入っていった——。
「た、助かった」
ひとまず夫婦の刻印と俺のファーストキスは無事なようだ。
「チッ、もう少しだったのに」
「ねぇ、メレディス。このまま逃がしてくれたりなんて……」
「するわけないだろう」
「だよね」
完全な魔力切れではないが、落ちる時に魔力を放出し過ぎてしまった。ここで戦っても勝ち目はゼロだ。
そこで俺はふと思い出した。メレディスは翼が弱いことを。
俺はメレディスに思い切り抱きついた。
「な、何をしている?」
「メレディスと抱き合えるのも最後だなと思って」
そう言いながら、俺はメレディスの大きな翼の一部を手探りで触った。
「んんッ、羽はやめんか」
やはり、翼が弱点なのかもしれない。メレディスの力が抜けたのが分かった。
次は、翼を思い切り引っ張ってみた。
「ぁあ……やめろ」
引っこ抜くのは難しそうだが、メレディスの力が更に抜けていくのが分かった。どんどん地面におりている。
よし、もう少し刺激したら、メレディスの手からは脱することが出来そうだ。そう思って、さっきより強い力で翼を引っ張った。
「ハァ……ハァ……んんッ……ハァ」
メレディスの息遣いが荒くなっている。思った以上に効いているようだ。メレディスの力が……強まってしまった。
「何で?」
「陛下には逃すなと言われただけだからな。とにかく、場所を変えよう」
シュッ。
転移したのだろう。外から室内に変わった。そして、ベッドの上に押し倒された。
「メレディス……ここは?」
「私の寝室だ」
「え、メレディスの? 何で?」
「刻印が消される前に、私とやりたかったのだろう?」
「えっと……何を?」
メレディスの寝室。そしてベッドの上。まさかとは思うが……。
「夜伽に決まっているだろう。先程から性感帯ばかりを刺激しおって、今更嫌だとは言わせんぞ」
「せ、性感帯!?」
メレディスが翼が弱いと言っていたのはそういう意味の弱いだったのか……。
「刻印も疼いてしょうがないんだ。オリヴァー、汝も疼いているのではないのか?」
メレディスの言う通り、俺の刻印も先程からずっと疼いている。
「それは求め合ってる証拠だ。逆らえない」
「ひゃッ」
メレディスが俺の首筋にキスをした。そのまま吸い付くようなキスをしながら、メレディスは俺のシャツのボタンを器用に一つ一つ外していく。
「ちょ、ちょっと待って」
「ああ、私も脱がないとな」
「いや、違ッ」
俺の言葉も虚しく、メレディスは自身のシャツを脱いだ。しっかりと鍛えあげられた肢体を見ると、更に刻印の疼きを感じた。
あまりにも高所から落ちているせいか、死ぬ間際だからか分からないが、落ちるスピードは思いの外ゆっくりに感じる。ただ、普通に恐い。
俺は両手を下に向けて、光魔法を出す準備をした。
「……?」
俺の横を二つの黒い何かが通り過ぎた。そして、その何かは下の方でピタッと止まった。
地上に近付くにつれ、その正体が分かった。メレディスと魔王だ。
何であんなところに……。
俺は手の位置を真下から、斜め下に変えた。
ドガーンッ!
光魔法を発動し、俺の体は反動で宙に浮いた。後は、下にある木が衝撃を緩和させて……くれなかった。
「ッたく、お転婆にも程がある」
「陛下、助かりました。まさか軌道を変えるとは」
俺は魔王の腕の中にいた。
何故こうなってしまったのか。魔王の書斎にいた時より状況が悪い。何せ、言葉通り敵の手中なのだから。
魔王はメレディスに指示を出し始めた。
「城の全ての窓に鉄格子を付けるよう手配をしてくれ」
「御意」
隔離されてしまうのか。今の内に逃げ出さないと非常にまずい。
「それから、人間界への侵略を本格的に進めて行こう」
「は!?」
驚きのあまり魔王の腕から滑り落ちそうになったが、魔王は俺を抱え直した。
「帰る場所が無ければ、汝は魔界にいる他無くなるだろう」
「そんなことで人間界侵略なんて……」
「グレースは思った以上に汝を気に入っておるからな。それに、我を拒む者など汝が初めてだ。拒絶されればされる程、燃えるというものだ」
「そりゃ、男だし……魔王だし……」
「メレディスは受け入れたではないか」
「いや、受け入れては……」
「とにかく、汝が逃げ出したいなどという考えに至らぬよう、とろっとろに甘やかしてやるから安心しろ」
そんな色っぽい顔で言われても、不安しか生まれない。そして、何故か魔王の顔がどんどん近付いているのは気のせいか?
「えっと……そろそろおりたいなぁ」
「刻印を消してからな」
「ちょ、近い近い。刻印消すのに何で顔が……」
魔王が顔を近づけてくるので、俺は必死に体をのけ反らせている。
「汝の光魔法のせいで普通に消せないんだ。吸い出すしかない」
「え、吸い出すって? もしかして……」
「口からだ。メレディスと何度もやったのだろう? 我ともこれから毎晩するのだ」
「無理無理無理無理」
魔王の唇が俺の唇に触れる寸前、どうでも良い事が口からポロッと出た。
「メレディスも魔王に口付けされながら刻印を消すのか」
「……」
魔王がメレディスと目を合わせて黙ってしまった。
メレディスも若干嫌そうな顔を見せたが、魔王に言った。
「王命なら致し方ありません」
「いや、他の方法があったかもしれん。調べてくるから二人とも待っておれ。メレディス、絶対に此奴を逃すなよ」
「御意」
俺は魔王からメレディスに受け渡された。そして、魔王は上空に羽ばたいて書斎に入っていった——。
「た、助かった」
ひとまず夫婦の刻印と俺のファーストキスは無事なようだ。
「チッ、もう少しだったのに」
「ねぇ、メレディス。このまま逃がしてくれたりなんて……」
「するわけないだろう」
「だよね」
完全な魔力切れではないが、落ちる時に魔力を放出し過ぎてしまった。ここで戦っても勝ち目はゼロだ。
そこで俺はふと思い出した。メレディスは翼が弱いことを。
俺はメレディスに思い切り抱きついた。
「な、何をしている?」
「メレディスと抱き合えるのも最後だなと思って」
そう言いながら、俺はメレディスの大きな翼の一部を手探りで触った。
「んんッ、羽はやめんか」
やはり、翼が弱点なのかもしれない。メレディスの力が抜けたのが分かった。
次は、翼を思い切り引っ張ってみた。
「ぁあ……やめろ」
引っこ抜くのは難しそうだが、メレディスの力が更に抜けていくのが分かった。どんどん地面におりている。
よし、もう少し刺激したら、メレディスの手からは脱することが出来そうだ。そう思って、さっきより強い力で翼を引っ張った。
「ハァ……ハァ……んんッ……ハァ」
メレディスの息遣いが荒くなっている。思った以上に効いているようだ。メレディスの力が……強まってしまった。
「何で?」
「陛下には逃すなと言われただけだからな。とにかく、場所を変えよう」
シュッ。
転移したのだろう。外から室内に変わった。そして、ベッドの上に押し倒された。
「メレディス……ここは?」
「私の寝室だ」
「え、メレディスの? 何で?」
「刻印が消される前に、私とやりたかったのだろう?」
「えっと……何を?」
メレディスの寝室。そしてベッドの上。まさかとは思うが……。
「夜伽に決まっているだろう。先程から性感帯ばかりを刺激しおって、今更嫌だとは言わせんぞ」
「せ、性感帯!?」
メレディスが翼が弱いと言っていたのはそういう意味の弱いだったのか……。
「刻印も疼いてしょうがないんだ。オリヴァー、汝も疼いているのではないのか?」
メレディスの言う通り、俺の刻印も先程からずっと疼いている。
「それは求め合ってる証拠だ。逆らえない」
「ひゃッ」
メレディスが俺の首筋にキスをした。そのまま吸い付くようなキスをしながら、メレディスは俺のシャツのボタンを器用に一つ一つ外していく。
「ちょ、ちょっと待って」
「ああ、私も脱がないとな」
「いや、違ッ」
俺の言葉も虚しく、メレディスは自身のシャツを脱いだ。しっかりと鍛えあげられた肢体を見ると、更に刻印の疼きを感じた。
100
あなたにおすすめの小説
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。
春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。
新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。
___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。
ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。
しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。
常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___
「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」
ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。
寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。
髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる