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第五章 うっかり魔界へ
アデル再登場
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ベッドの上には上半身裸のメレディスが眠っている。それを眺めながら俺は自身のシャツのボタンを一つ一つ掛け直した。
身なりを整えた俺は剣を背負い、部屋を出た。
「うわ、広ッ!」
王城ほどではないが、メレディスの屋敷も随分と大きかった。
廊下には執事が歩いていたが、俺の顔を見ても怪訝な顔すら見せず、お辞儀した。
「行ってらっしゃいませ」
「ご苦労様」
そのまま堂々と屋敷の玄関を目指し、堂々と侍従に見送られながら門を出た。
「夫婦の刻印って凄いな」
メレディスに仕える者は、メレディスに絶対の忠誠を誓っている。そして、メレディスの嫁である俺も忠誠の対象なんだとか。
「こっちこっち」
手招きされ、俺は呼ばれた方へ駆けた。
「助かったよ。アデル」
「私という者がありながら、メレディスと夫婦になるなんて考えられないわ」
ムッとしているアデルに、苦笑を向ける。
「でもまさかアデルがメレディスの従兄妹だったなんて知らなかったよ」
アデルは女悪魔のサキュバスだ。そして今回、俺の貞操を守ってくれたのがアデルなのだ。
——俺はメレディスに服を脱がされ、優しく頬を撫でられた。
『やはり顔は可愛いな』
そのままメレディスの顔がゆっくりと近付いてきた。
『メレディス……怖いよ』
涙目になりながら正直な気持ちを伝えると、メレディスは優しい眼差しを向けて言った。
『案ずるな。優しくするから』
『……うん』
『陛下にやるのが惜しくなってきたな』
刻印も疼きっぱなしで半ば諦めていると、扉がバンッと開いた。
『メレディス、遊びに来てあげたわよ!』
アデルがメレディスと俺を交互に見て、そっと扉を閉めた。
『今のってアデル?』
『知っているのか? まぁ、あいつは放っておこう』
続きが再開されようとしたその時、再び扉が開いた。先程とは違って怒りを露わにさせながら、アデルが入ってきた。
『ちょっと、私のオリヴァーに何してるのよ?』
『私のって、これは私の嫁だ』
アデルは刻印を見て、更に頭に血がのぼったようだ。次は俺に怒ってきた。
『あなたはこんなオッサンがタイプなの? 私に求愛したわよね?』
『えっと……』
『オッサンは言い過ぎだ。アデルとも百二十しか違わんだろう』
悪魔の年齢の感覚は良くわからないのでスルーするにして、俺はアデルに言った。
『アデルお願い。メレディス眠らせて!』
『メレディスを?』
『なッ、今良いところだろう。それに、陛下に汝を逃すなと言われているんだ。魔眼を使わせる訳にはいかん』
そう、アデルは魔眼の持ち主だ。アデルの魔眼を見れば、たちまち眠りに落ちる。
メレディスはアデルの目を見ないよう、俺の首元に顔を埋めた。
『メレディス、ちょ、ちょっとそんなとこ舐めないでよ』
『何か事情がありそうね。メレディスを眠らせれば良いのね』
俺は必死で首を縦に振ると、アデルがメレディスを俺から引き剥がした。
『くそ、相変わらず怪力な奴だ。アデルに攻撃は出来んしな。まぁ、目さえ見なければ』
メレディスは目をギュッと瞑って、闇魔法で俺を縛った。目を瞑っている間に俺が逃げないようにだろう。
それにしても、アデルは華奢な体つきなのに、いとも簡単にメレディスを引き剥がすとは……怪力は、サキュバスの特性なのだろうか。
『あなた、このままずっと目を瞑っておく気?』
『アデルが何処か行かない限りはな。刻印が疼いてどうしようもないんだ。早く出てってくれ』
メレディスが乱暴に言えば、アデルはムッとしてメレディスをくすぐり始めた。
『や、やめろ……ふッ……ふはは……』
必死に笑いを堪えるメレディス。見ていると可哀想だが面白い。しかし、それでもメレディスは目を開けない。
アデルは何か思いついたようだ。ニヤリと笑って机の方を見た。
『メレディス、あなたの引き出しに入ってる物、オリヴァーに見せて良い?』
『なッ、ダメに決まってるだろう』
メレディスが慌てて目を開くと、アデルと目が合った。その瞬間、メレディスは眠りに落ちた。そして、俺を縛っていたものもパッと消えた。
『あ、まずい』
アデルは急いで窓から飛び出した。
刻印から龍が飛び出して来たのだ。メレディスを眠らせたことによって、ある意味アデルと二人きりになったからだろう。
『オリヴァー、私、外で待ってるから』
『でも、どうやって出たら……』
『大丈夫よ。刻印のおかげで、あなたはこの屋敷の主人みたいなものだから』
——と、いうわけでアデルによって俺の貞操は守られた。そして、魔王からも逃げるのを手伝ってくれるようだ。
「私は転移出来ないから人間界の入り口目指していくしかないけど、ここからそう遠くないから安心して」
「ありがとう。でも反逆罪とかにならない?」
「私は命令されてないから大丈夫よ。メレディスは……魔王様と仲良いから大丈夫でしょ」
「それなら良いけど」
「それにしても厄介なことになってるわね」
「ごめん」
「とりあえず、その格好じゃ目立つから、ここで服買ってから行きましょう」
そう、ここは人里離れた森の中でもなんでもない、魔王都の中心部。そんな所を俺は勇者の衣装を着て歩いているのだ。目立ってしょうがない。
ただ、メレディスの血が混じっているおかげで、人間……あれ? やっぱり魔族? みたいな目で見られているらしい。
このまま何事もなく人間界に戻れることを祈るばかりだ。
身なりを整えた俺は剣を背負い、部屋を出た。
「うわ、広ッ!」
王城ほどではないが、メレディスの屋敷も随分と大きかった。
廊下には執事が歩いていたが、俺の顔を見ても怪訝な顔すら見せず、お辞儀した。
「行ってらっしゃいませ」
「ご苦労様」
そのまま堂々と屋敷の玄関を目指し、堂々と侍従に見送られながら門を出た。
「夫婦の刻印って凄いな」
メレディスに仕える者は、メレディスに絶対の忠誠を誓っている。そして、メレディスの嫁である俺も忠誠の対象なんだとか。
「こっちこっち」
手招きされ、俺は呼ばれた方へ駆けた。
「助かったよ。アデル」
「私という者がありながら、メレディスと夫婦になるなんて考えられないわ」
ムッとしているアデルに、苦笑を向ける。
「でもまさかアデルがメレディスの従兄妹だったなんて知らなかったよ」
アデルは女悪魔のサキュバスだ。そして今回、俺の貞操を守ってくれたのがアデルなのだ。
——俺はメレディスに服を脱がされ、優しく頬を撫でられた。
『やはり顔は可愛いな』
そのままメレディスの顔がゆっくりと近付いてきた。
『メレディス……怖いよ』
涙目になりながら正直な気持ちを伝えると、メレディスは優しい眼差しを向けて言った。
『案ずるな。優しくするから』
『……うん』
『陛下にやるのが惜しくなってきたな』
刻印も疼きっぱなしで半ば諦めていると、扉がバンッと開いた。
『メレディス、遊びに来てあげたわよ!』
アデルがメレディスと俺を交互に見て、そっと扉を閉めた。
『今のってアデル?』
『知っているのか? まぁ、あいつは放っておこう』
続きが再開されようとしたその時、再び扉が開いた。先程とは違って怒りを露わにさせながら、アデルが入ってきた。
『ちょっと、私のオリヴァーに何してるのよ?』
『私のって、これは私の嫁だ』
アデルは刻印を見て、更に頭に血がのぼったようだ。次は俺に怒ってきた。
『あなたはこんなオッサンがタイプなの? 私に求愛したわよね?』
『えっと……』
『オッサンは言い過ぎだ。アデルとも百二十しか違わんだろう』
悪魔の年齢の感覚は良くわからないのでスルーするにして、俺はアデルに言った。
『アデルお願い。メレディス眠らせて!』
『メレディスを?』
『なッ、今良いところだろう。それに、陛下に汝を逃すなと言われているんだ。魔眼を使わせる訳にはいかん』
そう、アデルは魔眼の持ち主だ。アデルの魔眼を見れば、たちまち眠りに落ちる。
メレディスはアデルの目を見ないよう、俺の首元に顔を埋めた。
『メレディス、ちょ、ちょっとそんなとこ舐めないでよ』
『何か事情がありそうね。メレディスを眠らせれば良いのね』
俺は必死で首を縦に振ると、アデルがメレディスを俺から引き剥がした。
『くそ、相変わらず怪力な奴だ。アデルに攻撃は出来んしな。まぁ、目さえ見なければ』
メレディスは目をギュッと瞑って、闇魔法で俺を縛った。目を瞑っている間に俺が逃げないようにだろう。
それにしても、アデルは華奢な体つきなのに、いとも簡単にメレディスを引き剥がすとは……怪力は、サキュバスの特性なのだろうか。
『あなた、このままずっと目を瞑っておく気?』
『アデルが何処か行かない限りはな。刻印が疼いてどうしようもないんだ。早く出てってくれ』
メレディスが乱暴に言えば、アデルはムッとしてメレディスをくすぐり始めた。
『や、やめろ……ふッ……ふはは……』
必死に笑いを堪えるメレディス。見ていると可哀想だが面白い。しかし、それでもメレディスは目を開けない。
アデルは何か思いついたようだ。ニヤリと笑って机の方を見た。
『メレディス、あなたの引き出しに入ってる物、オリヴァーに見せて良い?』
『なッ、ダメに決まってるだろう』
メレディスが慌てて目を開くと、アデルと目が合った。その瞬間、メレディスは眠りに落ちた。そして、俺を縛っていたものもパッと消えた。
『あ、まずい』
アデルは急いで窓から飛び出した。
刻印から龍が飛び出して来たのだ。メレディスを眠らせたことによって、ある意味アデルと二人きりになったからだろう。
『オリヴァー、私、外で待ってるから』
『でも、どうやって出たら……』
『大丈夫よ。刻印のおかげで、あなたはこの屋敷の主人みたいなものだから』
——と、いうわけでアデルによって俺の貞操は守られた。そして、魔王からも逃げるのを手伝ってくれるようだ。
「私は転移出来ないから人間界の入り口目指していくしかないけど、ここからそう遠くないから安心して」
「ありがとう。でも反逆罪とかにならない?」
「私は命令されてないから大丈夫よ。メレディスは……魔王様と仲良いから大丈夫でしょ」
「それなら良いけど」
「それにしても厄介なことになってるわね」
「ごめん」
「とりあえず、その格好じゃ目立つから、ここで服買ってから行きましょう」
そう、ここは人里離れた森の中でもなんでもない、魔王都の中心部。そんな所を俺は勇者の衣装を着て歩いているのだ。目立ってしょうがない。
ただ、メレディスの血が混じっているおかげで、人間……あれ? やっぱり魔族? みたいな目で見られているらしい。
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