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第七章 人間界侵略回避
結界が破られる
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俺とキースの前に魔王とメレディスが現れた。
「キース、すぐ退けるね」
俺がキースの上から退くと、キースも立ち上がって片手に短剣を構えた。
「ああ、そっか」
魔王が現れた事で思考が停止していた。俺も落とした聖剣を拾って構えようとすれば。
「キース?」
キースに空いた左腕でギュッと抱き寄せられた。
「オリヴァーは連れて行かせないからな!」
それを見た魔王とメレディスが、怒りを露わにした。
「貴様、我を拒んでおきながら其奴とは抱き合えるのだな。流石に初日から魔物の数が多すぎたかと思って減らしに来たらこれだ」
「私の嫁に手を出す奴は許さん。せっかく陛下の目を盗んで手伝ってやろうとしたのに……って、陛下、今何と?」
「メレディス、お前こそなんだ。嫁の手助けは禁止だと言ったであろう。王命に背く気か?」
「いえ、いつものように深い深い口付けでもすれば嫁のやる気になるかと」
「え……口付け?」
咄嗟に吐いたメレディスの嘘だとは思うが、メレディスからの愛を綴った手紙に書かれていたことを思い出してしまった。
そこには、キスを始めそれ以上の行為について、メレディスが俺をどうしたいかが、まるで官能小説のように書き記されていたのだ。
それを思い出して一人赤面していると、キースの鼓動がやや早くなったのが分かった。
「キース? 大丈夫?」
見上げれば、キースも俺を見た。
「男同士ってどんな感じなんだ? 良いのか? あ、いや、今聞く事じゃないか」
何故かキースが動揺している。メレディスと俺のキスシーンを想像してしまったのかもしれない。
そういえば、結局キースにはノエルの絵を見られて男色の趣味があると勘違いされたままだった。そこで俺はハッと気がついた。
もしやキースから見た俺は、かなり性に対してだらしのない男に見えているのではなかろうか。
ジェラルドやリアム、エドワードの三人を侍らせて、メレディスともちゃっかり夫婦としてやるべき事はやっている。そんな風に勘違いされているのでは?
「キース、俺に男色の趣味は無……」
キースの誤解を解こうとすれば、結界が破られたのが分かった。
同時に魔王もニヤリと笑った。
「さて、どうする?」
「オリヴァー? まさか……」
「破られた。ジェラルドの結界が無事なら良いけど」
魔王の口振りからすると、ジェラルドの結界も同時に破られた可能性が高い。
「破られた箇所は修復してみたけど」
「侵入しちまったか」
ここにいる魔物は騎士団に任せて中に行くべきか。ただ、問題は魔王だ。俺が結界内に入っている間に何をしでかすか分からない。
ダメだ……。俺の頭じゃ最善の判断が出来ない。
そんな時、メレディスが溜め息を吐きながら闇の球を作り出した。
「おい、メレディス。嫁の手助けはするなと言っただろう」
「いつまでも嫁にくっ付いている奴が気に食わないのでこの機会に始末しようかと。ついでにあっちの方にいる騎士も倒して参りますので」
「そんなこと言って……」
メレディスはピシッとキースを指差した。
「オリヴァー、其奴を連れて転移なんてするなよ」
「メレディス?」
「あの結界、悪魔は入れないのだろう? あの中に逃げられたら其奴を始末出来んからな。絶対に二人で転移なんてするなよ」
メレディスは俺達に向かって闇の球を投げて来た。咄嗟に避けると近くにいた魔物が二十体近く消滅した。
「威力凄すぎッ。どんだけ魔力込めてんの! 死んじゃうじゃん」
それからもメレディスの攻撃を避ける度に魔物が大量に倒れていく。
「メレディスは何がしたいんだろ。キースを置いてなんていける訳ないのにね」
小声でキースに聞くと、呆れた顔をされた。
「それ、本気で言ってんのか?」
「何が?」
「まぁ、そうだよな。分かってたら今すぐにでも転移してるよな」
さっきからメレディスもキースも言いたい事があるならはっきり言えば良いのに。ムッとしていると魔王に笑われた。
「メレディス、嫁と上手くいっていないのか? 全然通じていないぞ」
「陛下、そんな馬鹿な所が可愛いのが分からないのですか?」
「馬鹿って……」
メレディスのフォローになっていないフォローに慰められていると、アーサーの声が聞こえてきた。
『おい、オリヴァー! 中が大変なことになってるぞ。結界ちゃんと効果あるんだろうな?』
「ごめん、破られたみたい。一応修復はしたけど、どんな魔物が入って来たの?」
『飛行タイプが十四……いや十五体かな。ワイバーンのように火は吹かないが、ブレットの弓しか当たらない』
ブレット、ブレット……ああ、メガネのことか。名前で言われるとピンとこない。
『領地の奴らは無事だが、何故かリアムばかりが狙われてるぞ』
「またか。アーサー、早くリアムのマントを脱がせて、頭隠して」
鳥は赤い色を好む。餌だと思い込むようだ。リアムは分かっていてわざと囮になっているのだろう。
早くリアムを助けに行きたいのに、キースがメレディスに狙われているこの状況をどうしたら良いか分からない。困っていると、いつの間にか魔王が近くにいた。
「もう少し楽しみたいからな。我はもう帰る」
「え?」
魔王は悪戯な笑みを浮かべて、俺の顔を覗き込んできた。
「何だ? 寂しいのか?」
「違ッ」
「見てみろ、メレディスのせいで魔物がほぼいなくなってしまった」
言われてみれば魔物の数がぐんと減っている。
「残りも汝の仲間と騎士らに倒されてしまうだろうしな。では、次は来週だな。メレディス! もうそれくらいで良かろう。行くぞ」
「御意」
メレディスは攻撃を止めると、俺にニッコリ笑って魔王と共に黒い翼を羽ばたかせながら遠くに飛んで行った。
「行っちゃった……」
「メレディスのおかげで助かったな」
「どういうこと?」
「わざとオレを攻撃して、魔物を倒してたんだよ。オレとオリヴァーが結界内に転移すれば、次は騎士に攻撃するフリして魔物を倒す予定だったんだろ」
「なるほど……」
魔王が何か仕掛けても何かと対処してくれたのかもしれない。
「だから、さっさと転移するぞ。ここは騎士に任せよう」
「うん」
「キース、すぐ退けるね」
俺がキースの上から退くと、キースも立ち上がって片手に短剣を構えた。
「ああ、そっか」
魔王が現れた事で思考が停止していた。俺も落とした聖剣を拾って構えようとすれば。
「キース?」
キースに空いた左腕でギュッと抱き寄せられた。
「オリヴァーは連れて行かせないからな!」
それを見た魔王とメレディスが、怒りを露わにした。
「貴様、我を拒んでおきながら其奴とは抱き合えるのだな。流石に初日から魔物の数が多すぎたかと思って減らしに来たらこれだ」
「私の嫁に手を出す奴は許さん。せっかく陛下の目を盗んで手伝ってやろうとしたのに……って、陛下、今何と?」
「メレディス、お前こそなんだ。嫁の手助けは禁止だと言ったであろう。王命に背く気か?」
「いえ、いつものように深い深い口付けでもすれば嫁のやる気になるかと」
「え……口付け?」
咄嗟に吐いたメレディスの嘘だとは思うが、メレディスからの愛を綴った手紙に書かれていたことを思い出してしまった。
そこには、キスを始めそれ以上の行為について、メレディスが俺をどうしたいかが、まるで官能小説のように書き記されていたのだ。
それを思い出して一人赤面していると、キースの鼓動がやや早くなったのが分かった。
「キース? 大丈夫?」
見上げれば、キースも俺を見た。
「男同士ってどんな感じなんだ? 良いのか? あ、いや、今聞く事じゃないか」
何故かキースが動揺している。メレディスと俺のキスシーンを想像してしまったのかもしれない。
そういえば、結局キースにはノエルの絵を見られて男色の趣味があると勘違いされたままだった。そこで俺はハッと気がついた。
もしやキースから見た俺は、かなり性に対してだらしのない男に見えているのではなかろうか。
ジェラルドやリアム、エドワードの三人を侍らせて、メレディスともちゃっかり夫婦としてやるべき事はやっている。そんな風に勘違いされているのでは?
「キース、俺に男色の趣味は無……」
キースの誤解を解こうとすれば、結界が破られたのが分かった。
同時に魔王もニヤリと笑った。
「さて、どうする?」
「オリヴァー? まさか……」
「破られた。ジェラルドの結界が無事なら良いけど」
魔王の口振りからすると、ジェラルドの結界も同時に破られた可能性が高い。
「破られた箇所は修復してみたけど」
「侵入しちまったか」
ここにいる魔物は騎士団に任せて中に行くべきか。ただ、問題は魔王だ。俺が結界内に入っている間に何をしでかすか分からない。
ダメだ……。俺の頭じゃ最善の判断が出来ない。
そんな時、メレディスが溜め息を吐きながら闇の球を作り出した。
「おい、メレディス。嫁の手助けはするなと言っただろう」
「いつまでも嫁にくっ付いている奴が気に食わないのでこの機会に始末しようかと。ついでにあっちの方にいる騎士も倒して参りますので」
「そんなこと言って……」
メレディスはピシッとキースを指差した。
「オリヴァー、其奴を連れて転移なんてするなよ」
「メレディス?」
「あの結界、悪魔は入れないのだろう? あの中に逃げられたら其奴を始末出来んからな。絶対に二人で転移なんてするなよ」
メレディスは俺達に向かって闇の球を投げて来た。咄嗟に避けると近くにいた魔物が二十体近く消滅した。
「威力凄すぎッ。どんだけ魔力込めてんの! 死んじゃうじゃん」
それからもメレディスの攻撃を避ける度に魔物が大量に倒れていく。
「メレディスは何がしたいんだろ。キースを置いてなんていける訳ないのにね」
小声でキースに聞くと、呆れた顔をされた。
「それ、本気で言ってんのか?」
「何が?」
「まぁ、そうだよな。分かってたら今すぐにでも転移してるよな」
さっきからメレディスもキースも言いたい事があるならはっきり言えば良いのに。ムッとしていると魔王に笑われた。
「メレディス、嫁と上手くいっていないのか? 全然通じていないぞ」
「陛下、そんな馬鹿な所が可愛いのが分からないのですか?」
「馬鹿って……」
メレディスのフォローになっていないフォローに慰められていると、アーサーの声が聞こえてきた。
『おい、オリヴァー! 中が大変なことになってるぞ。結界ちゃんと効果あるんだろうな?』
「ごめん、破られたみたい。一応修復はしたけど、どんな魔物が入って来たの?」
『飛行タイプが十四……いや十五体かな。ワイバーンのように火は吹かないが、ブレットの弓しか当たらない』
ブレット、ブレット……ああ、メガネのことか。名前で言われるとピンとこない。
『領地の奴らは無事だが、何故かリアムばかりが狙われてるぞ』
「またか。アーサー、早くリアムのマントを脱がせて、頭隠して」
鳥は赤い色を好む。餌だと思い込むようだ。リアムは分かっていてわざと囮になっているのだろう。
早くリアムを助けに行きたいのに、キースがメレディスに狙われているこの状況をどうしたら良いか分からない。困っていると、いつの間にか魔王が近くにいた。
「もう少し楽しみたいからな。我はもう帰る」
「え?」
魔王は悪戯な笑みを浮かべて、俺の顔を覗き込んできた。
「何だ? 寂しいのか?」
「違ッ」
「見てみろ、メレディスのせいで魔物がほぼいなくなってしまった」
言われてみれば魔物の数がぐんと減っている。
「残りも汝の仲間と騎士らに倒されてしまうだろうしな。では、次は来週だな。メレディス! もうそれくらいで良かろう。行くぞ」
「御意」
メレディスは攻撃を止めると、俺にニッコリ笑って魔王と共に黒い翼を羽ばたかせながら遠くに飛んで行った。
「行っちゃった……」
「メレディスのおかげで助かったな」
「どういうこと?」
「わざとオレを攻撃して、魔物を倒してたんだよ。オレとオリヴァーが結界内に転移すれば、次は騎士に攻撃するフリして魔物を倒す予定だったんだろ」
「なるほど……」
魔王が何か仕掛けても何かと対処してくれたのかもしれない。
「だから、さっさと転移するぞ。ここは騎士に任せよう」
「うん」
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