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第七章 人間界侵略回避
時を操る魔法
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街中の操られた人を片っ端から浄化し精気を与えて回った。その後ろからジェラルド、エドワード、キースの三人がニンニクと十字架を配りながら口々に言った。
「これ本当に効果あんのか?」
「でも、これ身につけた人はヴァンパイアに襲われていないのは確かだよね」
「ただ、本体が見当たんねーな」
そう、ヴァンパイア自身が見つからないのだ。ヴァンパイアを倒さないことにはこの作業は一時凌ぎにしかならないというのに。
「十字架ならともかく、よくこんな臭ぇもん嫌がらずに受け取ってくれるな」
「ジェラルド……自覚ないんだ」
「何がだ?」
「何でもない」
俺も始めはジェラルドと同じことを思った。しかし、三人の顔が良いせいで、女性は皆ニンニクをまるでプレゼントかの如く喜んで受け取った。
ただ、問題は男性だ。嫌がる男性に対しては、その目力というか威圧というか……とにかくジェラルドが睨みつければ突き返す人はいなかった。
エドワードが十字架を男性に手渡しながら思い出したように言った。
「なんか、ヴァンパイアってコウモリとか小さくもなれるって聞いたことあるよ」
「そうなの? コウモリだったらさっき見かけたような」
「あ、俺も。あっちの方にいたよな」
「もしかしてコイツか?」
「キ、キキ」
キースがコウモリを鷲掴みにしていた。
「キース、凄いね……噛まれないようにね」
「あ……」
「え? もしかして噛まれた? 言った矢先に噛まれたの?」
俺は焦ってキースの元に駆け寄った。指に血が滲んでおり、コウモリは上空へパタパタと飛び上がった。
「わッ! キース?」
キースの目が赤く光り、剣を振るってきた。しかも、魔石入りの剣だから炎まで出てきた。
「そいつが本体のようだな。って、キース邪魔すんなよ!」
ジェラルドがコウモリに氷魔法を放とうとすれば、キースがジェラルドに向かって剣を振るった。それをエドワードが水魔法を付与した剣で受け止め、炎を相殺した。
「オリヴァー、キースを先に元に戻そう」
「うん……出来るかな」
一般人を浄化していくのとは訳が違う。キースは普通に強いのだ。魔石入りの剣だけでも厄介なのに、カウンターまで使われたら勝てない。
「動きさえ止められたら元に戻せるんだろ?」
「うん」
「俺がキースの相手するからエドワードはコウモリ追ってくれ」
「分かった!」
エドワードはヴァンパイアを追って走って行った——。
「ジェラルド大丈夫? エドワードがキースの相手した方が良かったんじゃない?」
キースの剣を水魔法を付与した剣で受け止めた方が良いのではと思っていたら、ジェラルドがニヤリと笑った。
「安心しろ。これなら多分大丈夫だ」
ジェラルドは何もないところから氷の剣を作り出した。
「わ、ジェラルド格好良い!」
「だろ? 見直したか?」
「うん。見損なったこともないけどね。けど、ジェラルドも剣扱えたんだね!」
「んな訳ねーだろ。お前の聖剣に魔力込める時しか剣なんて握ったことねーよ」
「……え」
俺はジェラルドの氷の剣を奪い取った。
「ちょッ、何すんだよ」
「周りに人がいるのに、慣れてない人が振り回すものじゃないよ。剣は俺がやるから、ジェラルドはキースの足元氷で固めて」
俺は氷の剣を構え、ジェラルドは不貞腐れながらもキースの足元を狙って氷魔法を放った。
足場は氷漬けになったが、キースはいとも簡単に跳んで避けた。そして、俺に斬りかかってきた。
氷の剣も炎を相殺してくれた。しかも強度も十分にあるようだ。氷の剣に亀裂が入ることもない。ただ欠点が一つ。
「冷たすぎ! こんなの持てないよ!」
「我慢しろよ。お前がやるっていったんだぞ」
「そうだけど……」
自分の聖剣に変えようとも考えたが、キースが隙を与えてくれない。受け止めるので精一杯だ。
「熱ッ、冷たッ」
「どっちだよ」
「どっちもだよ」
キースの火の粉が飛んできて熱い反面、手はずっと冷たいのだ。
「オリヴァー、まずいぞ。あっちからヴァンパイアにやられた奴らがやってきてる」
「本当だ。早くキースをどうにかしないと」
辺り一面氷漬けになっているのに、キースは一向に捕まらない。苦戦していると、あまり聞きたくない声が聞こえてきた。
「襲撃は本当だったのか」
「父上、警戒体制を取らなかった我々のミスですよ」
「アーネット公爵に公爵子息。何故ここに?」
アーネットとチェスターは反省した様な素振りを見せるが、焦った様子は見受けられない。
「自分の領地の危機だからね。そりゃ来るよ」
ジェラルドが俺の前に来て、キースの剣をシールドで防ぎながら言った。
「チッ、こんな時に来やがって。オリヴァー逃げろ。ここは俺がどうにかするから」
「どうにかって、キースは光魔法じゃないと元に戻らないのに」
いっそ操られたキースごと転移させようか。剣を受け止めた瞬間なら出来そうだ。そう思って氷の剣をギュッと握りしめた時、チェスターが言った。
「オリヴァー君、あいつの動きを止めたら良いの? 時よ汝の時間を止めよ時間停止」
すると、キースがピタリと止まった。
「あいつ何しやがった?」
「今の詠唱ってまさか……」
驚いていると、アーネットがご機嫌に笑った。
「凄いだろう? 我が息子は時を操れる」
「これ本当に効果あんのか?」
「でも、これ身につけた人はヴァンパイアに襲われていないのは確かだよね」
「ただ、本体が見当たんねーな」
そう、ヴァンパイア自身が見つからないのだ。ヴァンパイアを倒さないことにはこの作業は一時凌ぎにしかならないというのに。
「十字架ならともかく、よくこんな臭ぇもん嫌がらずに受け取ってくれるな」
「ジェラルド……自覚ないんだ」
「何がだ?」
「何でもない」
俺も始めはジェラルドと同じことを思った。しかし、三人の顔が良いせいで、女性は皆ニンニクをまるでプレゼントかの如く喜んで受け取った。
ただ、問題は男性だ。嫌がる男性に対しては、その目力というか威圧というか……とにかくジェラルドが睨みつければ突き返す人はいなかった。
エドワードが十字架を男性に手渡しながら思い出したように言った。
「なんか、ヴァンパイアってコウモリとか小さくもなれるって聞いたことあるよ」
「そうなの? コウモリだったらさっき見かけたような」
「あ、俺も。あっちの方にいたよな」
「もしかしてコイツか?」
「キ、キキ」
キースがコウモリを鷲掴みにしていた。
「キース、凄いね……噛まれないようにね」
「あ……」
「え? もしかして噛まれた? 言った矢先に噛まれたの?」
俺は焦ってキースの元に駆け寄った。指に血が滲んでおり、コウモリは上空へパタパタと飛び上がった。
「わッ! キース?」
キースの目が赤く光り、剣を振るってきた。しかも、魔石入りの剣だから炎まで出てきた。
「そいつが本体のようだな。って、キース邪魔すんなよ!」
ジェラルドがコウモリに氷魔法を放とうとすれば、キースがジェラルドに向かって剣を振るった。それをエドワードが水魔法を付与した剣で受け止め、炎を相殺した。
「オリヴァー、キースを先に元に戻そう」
「うん……出来るかな」
一般人を浄化していくのとは訳が違う。キースは普通に強いのだ。魔石入りの剣だけでも厄介なのに、カウンターまで使われたら勝てない。
「動きさえ止められたら元に戻せるんだろ?」
「うん」
「俺がキースの相手するからエドワードはコウモリ追ってくれ」
「分かった!」
エドワードはヴァンパイアを追って走って行った——。
「ジェラルド大丈夫? エドワードがキースの相手した方が良かったんじゃない?」
キースの剣を水魔法を付与した剣で受け止めた方が良いのではと思っていたら、ジェラルドがニヤリと笑った。
「安心しろ。これなら多分大丈夫だ」
ジェラルドは何もないところから氷の剣を作り出した。
「わ、ジェラルド格好良い!」
「だろ? 見直したか?」
「うん。見損なったこともないけどね。けど、ジェラルドも剣扱えたんだね!」
「んな訳ねーだろ。お前の聖剣に魔力込める時しか剣なんて握ったことねーよ」
「……え」
俺はジェラルドの氷の剣を奪い取った。
「ちょッ、何すんだよ」
「周りに人がいるのに、慣れてない人が振り回すものじゃないよ。剣は俺がやるから、ジェラルドはキースの足元氷で固めて」
俺は氷の剣を構え、ジェラルドは不貞腐れながらもキースの足元を狙って氷魔法を放った。
足場は氷漬けになったが、キースはいとも簡単に跳んで避けた。そして、俺に斬りかかってきた。
氷の剣も炎を相殺してくれた。しかも強度も十分にあるようだ。氷の剣に亀裂が入ることもない。ただ欠点が一つ。
「冷たすぎ! こんなの持てないよ!」
「我慢しろよ。お前がやるっていったんだぞ」
「そうだけど……」
自分の聖剣に変えようとも考えたが、キースが隙を与えてくれない。受け止めるので精一杯だ。
「熱ッ、冷たッ」
「どっちだよ」
「どっちもだよ」
キースの火の粉が飛んできて熱い反面、手はずっと冷たいのだ。
「オリヴァー、まずいぞ。あっちからヴァンパイアにやられた奴らがやってきてる」
「本当だ。早くキースをどうにかしないと」
辺り一面氷漬けになっているのに、キースは一向に捕まらない。苦戦していると、あまり聞きたくない声が聞こえてきた。
「襲撃は本当だったのか」
「父上、警戒体制を取らなかった我々のミスですよ」
「アーネット公爵に公爵子息。何故ここに?」
アーネットとチェスターは反省した様な素振りを見せるが、焦った様子は見受けられない。
「自分の領地の危機だからね。そりゃ来るよ」
ジェラルドが俺の前に来て、キースの剣をシールドで防ぎながら言った。
「チッ、こんな時に来やがって。オリヴァー逃げろ。ここは俺がどうにかするから」
「どうにかって、キースは光魔法じゃないと元に戻らないのに」
いっそ操られたキースごと転移させようか。剣を受け止めた瞬間なら出来そうだ。そう思って氷の剣をギュッと握りしめた時、チェスターが言った。
「オリヴァー君、あいつの動きを止めたら良いの? 時よ汝の時間を止めよ時間停止」
すると、キースがピタリと止まった。
「あいつ何しやがった?」
「今の詠唱ってまさか……」
驚いていると、アーネットがご機嫌に笑った。
「凄いだろう? 我が息子は時を操れる」
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