117 / 144
第七章 人間界侵略回避
魔力封じの首輪
しおりを挟む
チェスターは非常に稀少な時魔法の使い手だった。
「操れるって言っても短いんだけどね。残り十秒もしたら元に戻るから、早くしないと動いちゃうよ」
それを聞いて、俺は急いで時が止まったキースに光魔法をかけた。
「わ、動いた」
「オリヴァー、それにジェラルド。あれ? エドワードはどこだ?」
「良かった。元に戻った」
「まさか、オレ……」
キースはヴァンパイア化していたことに勘付いたようだ。表情が険しくなった。
「すまん!」
「おい、キース。今はそれどころじゃない。敵がヴァンパイアだけじゃなくなった」
ジェラルドが言えば、キースがアーネット親子を見た。
二人には護衛騎士も数名ついており、一見すると領地の異常事態に駆けつけた領主そのもの。キースを助けたのも、ここにいる街の人々にそう思わせる為だろう。ただ、俺達は知っている。この二人の腹の内を。
「オリヴァー、急いで結界内に戻れ」
「うん。一旦三人で」
この際三人で結界内に戻り、仕切り直しをしよう。
「あれ?」
「どうした、オリヴァー。早くしろ」
「うん、行きたいんだけど転移出来ないんだ」
魔力切れにしては早すぎる。俺の魔力はこんな短時間では切れない。というより闇魔法はほぼ使っていない。そこで俺はアーサーの言葉を思い出した。
『チェスターの奴、魔力封じの首輪持ってんだよ』
俺は自身の首元に手をやった。
「何コレ……外れない」
奴隷の首輪のような、一見すると可愛らしいネックレス。それが俺の首についていた。
「いつの間に……」
「俺もだ」
同様にジェラルドの首にもついていた。
チェスターを見ると、心配そうな顔で俺に言った。
「まさかそれ……魔力封じの? どうして君達の首に?」
「チッ、白々しいな」
時を操ってチェスターがつけたに違いない。
ヴァンパイアを倒す上でも魔法はあった方が良い。何より、ヴァンパイア化した人を元に戻すには今のところ光魔法しか分からない。
「この街の人達を守りたくないの?」
「守りたいよ。だからこうやって様子を見にきたんだ。ね、父上」
「ああ、騎士も送り込んだから安心すると良い」
「騎士を?」
ジェラルドとキースも冷や汗を流しながら言った。
「まずいな」
「死人が出なけりゃ良いが」
心配した矢先、悲鳴が聞こえてきた。
「キャー!」
「何で騎士様が?」
「俺達悪いことなんて何も……お助け下さい」
騎士がヴァンパイア化してしまったようだ。俺はチェスターに詰め寄った。
「早くこれ外して!」
「外してって言われても……つけるのは誰でも出来るけど、外すのは魔力量の多い人だけらしいよ。ボクはそれ程の魔力はないから」
「嘘……」
だからジェラルドにも魔力封じの首輪をつけたのか。
「この街の奴らが死んじまっても良いのか? これつけたのお前だろ!?」
ジェラルドがチェスターの胸ぐらを掴めば、アーネットが嘲笑うように言った。
「国際問題にしたいのかい? 仮にもチェスターはこの国の公爵家次期当主だ」
「チッ」
ジェラルドは投げ捨てるようにチェスターから手を離した。
「とりあえずエドワードの所に行ってみようぜ」
「うん」
エドワードは俺達程の魔力量はない。しかし、ノエルの魔力量では絶対に無理だろうし、今はエドワードが頼みの綱だ。
「チェスター、私達も付いて行こう」
「ですね。魔法が使えない魔法使いなんてただの人ですからね」
◇
エドワードはヴァンパイアに囲まれていた。
「ヴァンパイアって一体じゃなかったんだ」
ヴァンパイアは六体もいた。しかも、エドワードは随分と負傷している。引っ掻き傷のような傷が全身に無数に刻まれ、かなり出血している。
「エドワード! 聖水は?」
「通りがかりに負傷者に渡しちゃった」
アーネットとチェスターも想定外だったようだ。先程までの余裕がなくなった。
「まさかこんなのがいたとは……」
「父上、普通に領地の危機かもしれませんね」
「騎士らもこいつらに操られたというわけか」
「先にこっちを片付けてから彼をゆっくり奪いましょう。騎士らによって負傷者も続出しているという情報もありますし、これくらい騒ぎになれば大丈夫でしょう」
一応、チェスター達も戦闘に加わるような口振りだ。
「ジェラルドはこれ持って待ってて」
「これに頼るしかないなんて情けねーな」
ジェラルドはニンニクを持って少し離れた場所で待機した。
俺とキースは同時に走り出し、それぞれヴァンパイアに斬りかかった。が、上空へ逃げられ、刃は当たらなかった。
ただ、キースの炎はしっかりと敵を捉えていた。ヴァンパイアは火だるまになった。
「さすがキース!」
ヴァンパイアは大きくダメージを受けているようだ。呻き声を上げながら土の上をゴロゴロとのたうち回った。
しかし、火が消えると黒焦げではあるが立ち上がり、キースに向かって爪を立てた。
「うわぁ!」
胸から腹部にかけて切り裂かれ、大量の血が吹き出した。
「キース大丈夫!? 早く治癒を……って出来ないんだった。とりあえず聖水飲んで」
「悪ぃな」
二口飲めば、キースの傷は綺麗に治った。
「強いかはさて置き、聖水の噂は本当だったんだね。これは随分と使えそうだ」
チェスターが怪しい笑みを浮かべていた——。
「操れるって言っても短いんだけどね。残り十秒もしたら元に戻るから、早くしないと動いちゃうよ」
それを聞いて、俺は急いで時が止まったキースに光魔法をかけた。
「わ、動いた」
「オリヴァー、それにジェラルド。あれ? エドワードはどこだ?」
「良かった。元に戻った」
「まさか、オレ……」
キースはヴァンパイア化していたことに勘付いたようだ。表情が険しくなった。
「すまん!」
「おい、キース。今はそれどころじゃない。敵がヴァンパイアだけじゃなくなった」
ジェラルドが言えば、キースがアーネット親子を見た。
二人には護衛騎士も数名ついており、一見すると領地の異常事態に駆けつけた領主そのもの。キースを助けたのも、ここにいる街の人々にそう思わせる為だろう。ただ、俺達は知っている。この二人の腹の内を。
「オリヴァー、急いで結界内に戻れ」
「うん。一旦三人で」
この際三人で結界内に戻り、仕切り直しをしよう。
「あれ?」
「どうした、オリヴァー。早くしろ」
「うん、行きたいんだけど転移出来ないんだ」
魔力切れにしては早すぎる。俺の魔力はこんな短時間では切れない。というより闇魔法はほぼ使っていない。そこで俺はアーサーの言葉を思い出した。
『チェスターの奴、魔力封じの首輪持ってんだよ』
俺は自身の首元に手をやった。
「何コレ……外れない」
奴隷の首輪のような、一見すると可愛らしいネックレス。それが俺の首についていた。
「いつの間に……」
「俺もだ」
同様にジェラルドの首にもついていた。
チェスターを見ると、心配そうな顔で俺に言った。
「まさかそれ……魔力封じの? どうして君達の首に?」
「チッ、白々しいな」
時を操ってチェスターがつけたに違いない。
ヴァンパイアを倒す上でも魔法はあった方が良い。何より、ヴァンパイア化した人を元に戻すには今のところ光魔法しか分からない。
「この街の人達を守りたくないの?」
「守りたいよ。だからこうやって様子を見にきたんだ。ね、父上」
「ああ、騎士も送り込んだから安心すると良い」
「騎士を?」
ジェラルドとキースも冷や汗を流しながら言った。
「まずいな」
「死人が出なけりゃ良いが」
心配した矢先、悲鳴が聞こえてきた。
「キャー!」
「何で騎士様が?」
「俺達悪いことなんて何も……お助け下さい」
騎士がヴァンパイア化してしまったようだ。俺はチェスターに詰め寄った。
「早くこれ外して!」
「外してって言われても……つけるのは誰でも出来るけど、外すのは魔力量の多い人だけらしいよ。ボクはそれ程の魔力はないから」
「嘘……」
だからジェラルドにも魔力封じの首輪をつけたのか。
「この街の奴らが死んじまっても良いのか? これつけたのお前だろ!?」
ジェラルドがチェスターの胸ぐらを掴めば、アーネットが嘲笑うように言った。
「国際問題にしたいのかい? 仮にもチェスターはこの国の公爵家次期当主だ」
「チッ」
ジェラルドは投げ捨てるようにチェスターから手を離した。
「とりあえずエドワードの所に行ってみようぜ」
「うん」
エドワードは俺達程の魔力量はない。しかし、ノエルの魔力量では絶対に無理だろうし、今はエドワードが頼みの綱だ。
「チェスター、私達も付いて行こう」
「ですね。魔法が使えない魔法使いなんてただの人ですからね」
◇
エドワードはヴァンパイアに囲まれていた。
「ヴァンパイアって一体じゃなかったんだ」
ヴァンパイアは六体もいた。しかも、エドワードは随分と負傷している。引っ掻き傷のような傷が全身に無数に刻まれ、かなり出血している。
「エドワード! 聖水は?」
「通りがかりに負傷者に渡しちゃった」
アーネットとチェスターも想定外だったようだ。先程までの余裕がなくなった。
「まさかこんなのがいたとは……」
「父上、普通に領地の危機かもしれませんね」
「騎士らもこいつらに操られたというわけか」
「先にこっちを片付けてから彼をゆっくり奪いましょう。騎士らによって負傷者も続出しているという情報もありますし、これくらい騒ぎになれば大丈夫でしょう」
一応、チェスター達も戦闘に加わるような口振りだ。
「ジェラルドはこれ持って待ってて」
「これに頼るしかないなんて情けねーな」
ジェラルドはニンニクを持って少し離れた場所で待機した。
俺とキースは同時に走り出し、それぞれヴァンパイアに斬りかかった。が、上空へ逃げられ、刃は当たらなかった。
ただ、キースの炎はしっかりと敵を捉えていた。ヴァンパイアは火だるまになった。
「さすがキース!」
ヴァンパイアは大きくダメージを受けているようだ。呻き声を上げながら土の上をゴロゴロとのたうち回った。
しかし、火が消えると黒焦げではあるが立ち上がり、キースに向かって爪を立てた。
「うわぁ!」
胸から腹部にかけて切り裂かれ、大量の血が吹き出した。
「キース大丈夫!? 早く治癒を……って出来ないんだった。とりあえず聖水飲んで」
「悪ぃな」
二口飲めば、キースの傷は綺麗に治った。
「強いかはさて置き、聖水の噂は本当だったんだね。これは随分と使えそうだ」
チェスターが怪しい笑みを浮かべていた——。
54
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる