123 / 144
第七章 人間界侵略回避
雪国
しおりを挟む
辺り一面銀世界。我が国でも雪は降るが、その比ではない。
ベシャッ。
「ハッ、そんなんでアーサーを守れると思ってんのか?」
「ここでくたばれ!」
メガネとマッチョが手の平サイズの雪の玉を何個も俺にぶつけてきた。俺もそれに対抗して雪玉を投げた。
「こんなんでくたばるか!」
「俺も参戦してやるぜ!」
「ジェラルド、ありがとう。エドワード、もっと大きい雪玉頂戴」
「大きけりゃ良いってもんでもないんだよ」
せっせと雪玉を作るエドワード。向こうのチームはお父さんが雪玉作り担当だ。
そんな俺達の横でアーサーとノエルは大きな大きな雪だるまを作っている。
「目はボタンで良いかな?」
「ボタンだと目が小さすぎて、こんな顔になってしまいますわ」
ノエルが大きな瞳を細めてアーサーに見せた。
「ギャハハ、ノエルまじウケる! もはや貴族令嬢の顔じゃねーぞ。もう一回やって、もう一回」
「こうでしょうか」
そして、その近くではキースとリアムが小さなイグルーを作っていた。ノエルやアーサーの前世では『かまくら』と呼んでいたらしい。
「もうちょっと大きくしないと入れないだろ?」
「これくらいで丁度良いんだよ。オリヴァー、ちょっと光魔法で中照らしてくれる?」
「良いよ」
リアムに呼ばれたので雪合戦を中断して、かまくらの中に光をポッと灯した。
「ショーン出てきて良いよ」
リアムが一声かけると、リアムの服がモコモコと動き出し、胸元からショーンがピョコンと顔を出した。そして、かまくらの中に入って丸まった。
「ほらね、丁度良かったでしょ」
「本当だな。ぴったりだ」
キースが仲間になった当初は、リアムはキースを一つの駒としか見ていなかった。しかし、今では良き仲間だ。
ほのぼのしてその様子を眺めていたら、メガネとマッチョの雪玉が俺の顔面に命中した。
「おい、決着はまだついてないゼ」
「オレ達から逃げようったってそうはいかないからな」
「ちょっと呼ばれて行ってただけじゃん!」
俺は再び雪合戦に加わった。
ちなみに、ここはハイアット王国の王城の庭。そんな所で俺達は遊んでいる。
◇
一方その頃、王城の中の一室で俺達の様子を窓から眺めている少女が二人。
「良いなぁ。私も外で遊びたい」
「あんなの楽しくないわよ。中でボードゲームでもした方がいくらかマシよ」
「でも、お姉様。みんな楽しそうよ」
「クレア、お母様よ」
二人の母は、やや怒った様子で声をかけた。
「クレア、何をしているの? あなたは体が弱いんだから、早く暖炉のそばに行きなさい」
「はーい」
「返事は短く」
「はい」
「シンシアもクレアの事気にしてあげてっていつも言っているでしょう?」
「はい、お母様」
シンシアとクレアはチラリと窓の外を一瞥し、後ろ髪を引かれるようにして暖炉の近くで本を広げた。
◇
その日の晩、王城の食堂にて。
国王、王妃、王太子、二人の王女と共に食事をしている。
王女二人は双子で、二人とも見分けがつかない程に顔がそっくりだ。銀髪の癖っ毛混じりの長い髪も同じで、前髪の分け目が姉のシンシアは左、妹のクレアは右といった具合に分け目でしか判断できない程だ。ちなみに二人共十六歳。
双子の王女はキラキラと輝き可愛らしいのに対し、王太子はパッとしない。こんなことを言うのは無礼だが、本当にパッとしない顔をしているのだ。ノエル曰くモブの中のモブらしい。そんな王太子は十八歳。
前回のブライアーズ王国よりも友好的で、俺達のことも普通に歓迎してくれている。
「キース食べないの? 体調悪い?」
隣に座っているキースだけ食事に手を付けていないのだ。心配していると、キースが苦笑を浮かべた。
「いや、テーブルマナーが分かんねぇ」
「なるほど」
今は皆正装なので、キースだけ平民なのを忘れていた。アーサーは平民と言っても公爵の家で育ち、その仲間もそれぞれ執事や何かしらの役割を担っていた。最低限のテーブルマナーは問題ないようだ。
気にせず好きなように食べてと言いたい所だが、ここは他国の王城。失礼な事は出来ない。かと言って食べないのも失礼に値する。どうしたものかと思っていたら、反対隣でノエルが大きな口を開けてステーキを頬張った。
「お兄様、久々のステーキ美味しいですわね」
「ノエル、口の中に入れたまま喋っちゃダメだよ。それに小さく切り分けてから……」
「お兄様がお母様みたいですわ」
ムッとしているノエルを見て、国王がふッと笑った。
「小さい頃のクレアを見ているようだよ」
「私はあのような事はしておりません」
「していましたよ」
王妃も淡々と言えば、クレアもノエル同様にムッとした顔を見せた。すると国王や王妃が困ったように笑い、場が和んだのが分かった。
「ノエル嬢、おかわりもあるから好きに食べなさい」
「おかわり!?」
「ノエル……」
はしたないとノエルに注意しようとしたが、皆の視線がノエルに移っている今がチャンスだ。俺は自身の目の前にある料理を一口サイズに切り分けた。そして、転移を使いながら素早くキースの料理と入れ替えた。
だって、転移を使わないと王城の食卓は広くてキースの料理まで歩かないと手が届かないのだ。気付かれないように交換するにはこれしかない。
「食べかけでごめんね。端のフォークで食べたら大丈夫だよ」
「悪いな」
それからも隙を見てはキースの料理と交換し、何とかデザートまで食べ終えることに成功。妙な達成感でいっぱいだ。
ベシャッ。
「ハッ、そんなんでアーサーを守れると思ってんのか?」
「ここでくたばれ!」
メガネとマッチョが手の平サイズの雪の玉を何個も俺にぶつけてきた。俺もそれに対抗して雪玉を投げた。
「こんなんでくたばるか!」
「俺も参戦してやるぜ!」
「ジェラルド、ありがとう。エドワード、もっと大きい雪玉頂戴」
「大きけりゃ良いってもんでもないんだよ」
せっせと雪玉を作るエドワード。向こうのチームはお父さんが雪玉作り担当だ。
そんな俺達の横でアーサーとノエルは大きな大きな雪だるまを作っている。
「目はボタンで良いかな?」
「ボタンだと目が小さすぎて、こんな顔になってしまいますわ」
ノエルが大きな瞳を細めてアーサーに見せた。
「ギャハハ、ノエルまじウケる! もはや貴族令嬢の顔じゃねーぞ。もう一回やって、もう一回」
「こうでしょうか」
そして、その近くではキースとリアムが小さなイグルーを作っていた。ノエルやアーサーの前世では『かまくら』と呼んでいたらしい。
「もうちょっと大きくしないと入れないだろ?」
「これくらいで丁度良いんだよ。オリヴァー、ちょっと光魔法で中照らしてくれる?」
「良いよ」
リアムに呼ばれたので雪合戦を中断して、かまくらの中に光をポッと灯した。
「ショーン出てきて良いよ」
リアムが一声かけると、リアムの服がモコモコと動き出し、胸元からショーンがピョコンと顔を出した。そして、かまくらの中に入って丸まった。
「ほらね、丁度良かったでしょ」
「本当だな。ぴったりだ」
キースが仲間になった当初は、リアムはキースを一つの駒としか見ていなかった。しかし、今では良き仲間だ。
ほのぼのしてその様子を眺めていたら、メガネとマッチョの雪玉が俺の顔面に命中した。
「おい、決着はまだついてないゼ」
「オレ達から逃げようったってそうはいかないからな」
「ちょっと呼ばれて行ってただけじゃん!」
俺は再び雪合戦に加わった。
ちなみに、ここはハイアット王国の王城の庭。そんな所で俺達は遊んでいる。
◇
一方その頃、王城の中の一室で俺達の様子を窓から眺めている少女が二人。
「良いなぁ。私も外で遊びたい」
「あんなの楽しくないわよ。中でボードゲームでもした方がいくらかマシよ」
「でも、お姉様。みんな楽しそうよ」
「クレア、お母様よ」
二人の母は、やや怒った様子で声をかけた。
「クレア、何をしているの? あなたは体が弱いんだから、早く暖炉のそばに行きなさい」
「はーい」
「返事は短く」
「はい」
「シンシアもクレアの事気にしてあげてっていつも言っているでしょう?」
「はい、お母様」
シンシアとクレアはチラリと窓の外を一瞥し、後ろ髪を引かれるようにして暖炉の近くで本を広げた。
◇
その日の晩、王城の食堂にて。
国王、王妃、王太子、二人の王女と共に食事をしている。
王女二人は双子で、二人とも見分けがつかない程に顔がそっくりだ。銀髪の癖っ毛混じりの長い髪も同じで、前髪の分け目が姉のシンシアは左、妹のクレアは右といった具合に分け目でしか判断できない程だ。ちなみに二人共十六歳。
双子の王女はキラキラと輝き可愛らしいのに対し、王太子はパッとしない。こんなことを言うのは無礼だが、本当にパッとしない顔をしているのだ。ノエル曰くモブの中のモブらしい。そんな王太子は十八歳。
前回のブライアーズ王国よりも友好的で、俺達のことも普通に歓迎してくれている。
「キース食べないの? 体調悪い?」
隣に座っているキースだけ食事に手を付けていないのだ。心配していると、キースが苦笑を浮かべた。
「いや、テーブルマナーが分かんねぇ」
「なるほど」
今は皆正装なので、キースだけ平民なのを忘れていた。アーサーは平民と言っても公爵の家で育ち、その仲間もそれぞれ執事や何かしらの役割を担っていた。最低限のテーブルマナーは問題ないようだ。
気にせず好きなように食べてと言いたい所だが、ここは他国の王城。失礼な事は出来ない。かと言って食べないのも失礼に値する。どうしたものかと思っていたら、反対隣でノエルが大きな口を開けてステーキを頬張った。
「お兄様、久々のステーキ美味しいですわね」
「ノエル、口の中に入れたまま喋っちゃダメだよ。それに小さく切り分けてから……」
「お兄様がお母様みたいですわ」
ムッとしているノエルを見て、国王がふッと笑った。
「小さい頃のクレアを見ているようだよ」
「私はあのような事はしておりません」
「していましたよ」
王妃も淡々と言えば、クレアもノエル同様にムッとした顔を見せた。すると国王や王妃が困ったように笑い、場が和んだのが分かった。
「ノエル嬢、おかわりもあるから好きに食べなさい」
「おかわり!?」
「ノエル……」
はしたないとノエルに注意しようとしたが、皆の視線がノエルに移っている今がチャンスだ。俺は自身の目の前にある料理を一口サイズに切り分けた。そして、転移を使いながら素早くキースの料理と入れ替えた。
だって、転移を使わないと王城の食卓は広くてキースの料理まで歩かないと手が届かないのだ。気付かれないように交換するにはこれしかない。
「食べかけでごめんね。端のフォークで食べたら大丈夫だよ」
「悪いな」
それからも隙を見てはキースの料理と交換し、何とかデザートまで食べ終えることに成功。妙な達成感でいっぱいだ。
69
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる