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一学期 三章 球技大会の幕開け
017 青葉雪は、可愛い後輩からの言葉に気合を入れ直す
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球技大会の初戦、ぞろぞろと男子生徒たちが校庭の中央に集まり、試合の始まるホイッスルの音が鳴った。
“ピッーーーーー!”
最初から全力でボールを追いかける者、一応は参加するふりだけする者、端の方で気だるそうにつったっている者、球技大会へのモチベーションは三者三様である。しかし、一番多いのは、クラスの女子にいいところを見せようと、必死な男子が大多数だ。
試合開始とともにボールには人が集中し、団子状態になっていた。その様子を青葉雪は、少し距離をとって眺めていた。
野球部らしい坊主頭クラスメイトが、この団子状態を打破しようと、いい場所でフリーになっている青葉へとパスをだした。想い人にボールが渡り、ちろるの目は俄然と釘付けになる。
“あっ、雪ちゃん先輩にパスが渡った。わぁぁ、ドリブルしてる!かっこいい~。よしっ、一人抜いた。さすが雪ちゃん先輩!”
サッカー部らしい洗練された青葉のボールさばきに感動しながらも、ちろるは青葉のプレーに対してあきらかな違和感を感じた。
”あれ……? いつもより切れが悪いような……。相手が初心者の人だから、少し手加減してるのかな。あっ、いつもならシュート打ちに行くのに、チームの他の子にパスだした! うぅ……せっかくなら思い切りシュートしたらいいのに!”
「次の文を、桜木……おい、桜木!」
「えっ!? あっ、はい!?」
その後も青葉は、ボール回しやパスの中継役に徹し、一応はサッカー部としてそれなりな活躍はしていたが、どこか気の抜けた様子で試合の前半は0対0のままで終了した。
授業の終わりのチャイムが鳴った瞬間、ちろるは教室を跳びだしてグランドに向かった。
「こらっ、廊下を走るな桜木!」
「すみませーん!!」
階段を勢いよくかけおり、グランドへ通じる通用口へ向かう。通用口を抜けると、グランドの端の手洗い場で、水を飲んでいる青葉の姿を見つけた。
「ちょっと先輩! 何してんですかっ!?」
「おぉ……ちろるじゃないかっ。水飲んでるんだけど。」
「そうじゃなくてっ!」
「えっ、なんで怒ってんの?」
「さっきの試合なんですか!? ずっと見てましたけど絶対手を抜いてるでしょ。」
「えっ……そりゃ、サッカー部が初心者の人相手に本気出すのはよくないだろ……。っていうか、お前授業中だったろ。ちゃんと授業受けろよ。」
「ぐぬ……、そんなことはいいんです! 本気で……全力でプレーしてくださいっ!」
いきなり現れた後輩に、「全力を出せ」と言われ、青葉は困惑した表情になった。
「いや、別にクラスに貢献したいとか思わないし、交流目的の球技大会で、初心者相手に本気出してケガとかさせたくないしなぁ……。」
クラスには貢献しろよと思いつつ、それでも確かな正論である。自分が言っていることは、ただ好きな人が頑張っている姿を見たいという、我がままかもしれない。
ちろるは思わず黙って下を向いた。その様子を青葉は困ったように眺めた。
「……先輩のカッコいいところ、もっと見たいんです。」
ちろるは俯いたまま、小さな声でそういった。その台詞は言う方も恥ずかしいが、聞いてる方も恥ずかしく、二人は思わず顔を赤く染めた。
「なんか……言ってくださいよ。恥ずかしいじゃないですか!」
ちろるはだんまりの青葉に、半泣きになって顔をあげた。
「そうだな……。まぁ、可愛い後輩が応援してくれてるからってことなら……本気でやってもいい……かも。」
「……えっ! ほんとうですか!?」
ちろるは嬉しそうに目を輝かせた。幼い子供のようにコロコロと表情が変わるちろるを見て、青葉もまた笑みを浮かべる。
「あぁ。でも、ちゃんと授業受けなよ?」
「ふふっ! 先輩がちゃんとプレーしてくれるならいいですよ!」
キーンコーンカーンコーン……
「あっやば! 次の授業音楽の移動教室だ……。」
「この試合が終わった後もまだ何試合もあるから、また休み時間にでも観においでよ。」
「はい、頑張ってくださいね!」
「おう!」
石段を二段飛ばしで登っていく後輩の姿を見送り、青葉は気合を入れ直した。授業そっちのけで応援してくれる人がいる。その子にいいところを見せるためなら、多少大人げないと言われても、本気を出す理由にはなる。
「よしっ、いくか。」
前半とは打って変わり、青葉雪は気合いを入れて第一試合の後半に出場した。
“ピッーーーーー!”
最初から全力でボールを追いかける者、一応は参加するふりだけする者、端の方で気だるそうにつったっている者、球技大会へのモチベーションは三者三様である。しかし、一番多いのは、クラスの女子にいいところを見せようと、必死な男子が大多数だ。
試合開始とともにボールには人が集中し、団子状態になっていた。その様子を青葉雪は、少し距離をとって眺めていた。
野球部らしい坊主頭クラスメイトが、この団子状態を打破しようと、いい場所でフリーになっている青葉へとパスをだした。想い人にボールが渡り、ちろるの目は俄然と釘付けになる。
“あっ、雪ちゃん先輩にパスが渡った。わぁぁ、ドリブルしてる!かっこいい~。よしっ、一人抜いた。さすが雪ちゃん先輩!”
サッカー部らしい洗練された青葉のボールさばきに感動しながらも、ちろるは青葉のプレーに対してあきらかな違和感を感じた。
”あれ……? いつもより切れが悪いような……。相手が初心者の人だから、少し手加減してるのかな。あっ、いつもならシュート打ちに行くのに、チームの他の子にパスだした! うぅ……せっかくなら思い切りシュートしたらいいのに!”
「次の文を、桜木……おい、桜木!」
「えっ!? あっ、はい!?」
その後も青葉は、ボール回しやパスの中継役に徹し、一応はサッカー部としてそれなりな活躍はしていたが、どこか気の抜けた様子で試合の前半は0対0のままで終了した。
授業の終わりのチャイムが鳴った瞬間、ちろるは教室を跳びだしてグランドに向かった。
「こらっ、廊下を走るな桜木!」
「すみませーん!!」
階段を勢いよくかけおり、グランドへ通じる通用口へ向かう。通用口を抜けると、グランドの端の手洗い場で、水を飲んでいる青葉の姿を見つけた。
「ちょっと先輩! 何してんですかっ!?」
「おぉ……ちろるじゃないかっ。水飲んでるんだけど。」
「そうじゃなくてっ!」
「えっ、なんで怒ってんの?」
「さっきの試合なんですか!? ずっと見てましたけど絶対手を抜いてるでしょ。」
「えっ……そりゃ、サッカー部が初心者の人相手に本気出すのはよくないだろ……。っていうか、お前授業中だったろ。ちゃんと授業受けろよ。」
「ぐぬ……、そんなことはいいんです! 本気で……全力でプレーしてくださいっ!」
いきなり現れた後輩に、「全力を出せ」と言われ、青葉は困惑した表情になった。
「いや、別にクラスに貢献したいとか思わないし、交流目的の球技大会で、初心者相手に本気出してケガとかさせたくないしなぁ……。」
クラスには貢献しろよと思いつつ、それでも確かな正論である。自分が言っていることは、ただ好きな人が頑張っている姿を見たいという、我がままかもしれない。
ちろるは思わず黙って下を向いた。その様子を青葉は困ったように眺めた。
「……先輩のカッコいいところ、もっと見たいんです。」
ちろるは俯いたまま、小さな声でそういった。その台詞は言う方も恥ずかしいが、聞いてる方も恥ずかしく、二人は思わず顔を赤く染めた。
「なんか……言ってくださいよ。恥ずかしいじゃないですか!」
ちろるはだんまりの青葉に、半泣きになって顔をあげた。
「そうだな……。まぁ、可愛い後輩が応援してくれてるからってことなら……本気でやってもいい……かも。」
「……えっ! ほんとうですか!?」
ちろるは嬉しそうに目を輝かせた。幼い子供のようにコロコロと表情が変わるちろるを見て、青葉もまた笑みを浮かべる。
「あぁ。でも、ちゃんと授業受けなよ?」
「ふふっ! 先輩がちゃんとプレーしてくれるならいいですよ!」
キーンコーンカーンコーン……
「あっやば! 次の授業音楽の移動教室だ……。」
「この試合が終わった後もまだ何試合もあるから、また休み時間にでも観においでよ。」
「はい、頑張ってくださいね!」
「おう!」
石段を二段飛ばしで登っていく後輩の姿を見送り、青葉は気合を入れ直した。授業そっちのけで応援してくれる人がいる。その子にいいところを見せるためなら、多少大人げないと言われても、本気を出す理由にはなる。
「よしっ、いくか。」
前半とは打って変わり、青葉雪は気合いを入れて第一試合の後半に出場した。
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