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二学期 五章 文化祭準備
025 文化祭前の生徒会はかなりブラックである
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生徒会室に顔を出すと、姉貴が山になっている書類に目を通していた。びっしりと文字が書かれたA4の紙を、一枚あたり五秒くらいで目を通し、了承印を押していくものと、再検討のものとに分けている。
その隣では、言葉先輩がカタカタと猛スピードでパソコンに向かってキーボードを叩いている。
「すごいな……、何てスピードだ。」
速読のスキルと、高速タイピングスキルといったところか。
「あっ、弟くんだ~。部活おつかれさま~。」
俺が生徒会室に入ってきたことに気が付いた言葉先輩が、手は動かしたまま視線だけを向けてそう言った。
「いえ……、言葉先輩もお疲れ様です。何かお手伝いする事はありますか?」
「ありがとう。うーん……でも、今は大丈夫かな。伊達くんが広報を頑張ってくれて、協賛資金の関係で来週あたりから忙しくなりそうだから、その時はお手伝い御願いしていいかな?」
「はい、わかりました。」
多分手伝うことはないんだろうけど、姉貴にも一応聞いておくか。
「姉貴は、俺が何か手伝うことはある?」
「――特にないな。」
姉貴は視線を上げることなく短く答えた。
「手伝う事があったら言ってくれよ。」
姉貴は確かに異才だが、それでも文化祭の仕事は膨大なはずだ。
来客の整理、展示や出店での支払い方法、有志のステージ運営、開会式や閉会式の流れ、前夜祭や後夜祭のイベント・企画、資材搬入や印刷などの業者選定、ゴミの処理、予算の配分基準、人事配置、許可事項と禁止事項などの采配……。
総合監督たる姉貴は、全てを掌握しなければならない。本当に大丈夫だろうか。
不安げに見ていた俺の視線に気づいたのか、姉貴はようやく顔をあげた。
「心配いらん。大丈夫だと言っているだろ。各担当で会議し、決まった内容を確認しているだけだ。それに氷菓も手伝ってくれている。ノープロブレムだ。」
「わかったよ。っじゃあ、今日は手伝うことなさそうなら、俺は帰ってもいい?」
「いや、そこにいる同期の二人を手伝ってあげなさい。」
姉貴のその言葉に、俺は首を傾げた。
「はぁ? 姉貴と言葉先輩以外に、誰がいるんだよ。」
突然俺は何者かに、背後からひしっと腕を強く掴まれた。ぎょっとして振り返ると、そこには見知った男の顔があった。
やや伸びてきた坊主頭に、度のきつい丸眼鏡をかけた人物――伊達丸尾である。
「手が空いてるなら……手伝ってくれ……。」
大きなクマができやつれた表情の丸尾は、懇願するように俺の腕を掴んで言った。
「うぉっ、お前もいたのか。精気がなくなって、存在が消えかけてるから気が付かなかった。」
「生徒会がこんなブラックだとは……」
半泣きで言う次期副会長こと丸尾。
若干彼の身体が薄く透けて見える。一体どれだけ酷使されていたのだろうか。
「全く――情けないわね。」
どこからか舌っ足らずな声が聞こえてきた。視線を下げると、ちびっ子次期生徒会長こと氷菓がいた。
「うぉっ、氷菓もいたのか。背が小さくて、視界に入らないから気が付かなかった。」
「ちょっと! 理由が全然違うじゃない!」
さすが氷菓は現副会長として、多忙な生徒会の仕事にも慣れているのだろう。丸尾と違い、顔色もよくはつらつとした様子である。
ぷんぷん怒って詰め寄る氷菓の頭を片手でおさえつつ、俺は自身のスマホを確認した。メッセージを着信した音がなったからである。
メッセージの主は、先ほど文化祭実行委員に登録しに行ったちろるからであった。
“雪ちゃんせんぱい! 一学期の家庭科の成績が素晴しいってことで……私は食品担当になっちゃいました。今はまだ特に仕事がないって言われたので、今日は大人しく帰ります……ぐすんっ……。”
そうか、食品担当……。確かに料理上手なちろるにはぴったりである。
“了解、料理上手なお前にぴったりな仕事だな。また一緒に帰ろう。”
返信を送ると、すぐさま既読がついて
“わーい(*´▽`*)” と返ってきた。
全く、可愛らしい後輩である。
「それにしても、人事担当すげーな。生徒の成績まで把握して、文化祭実行委員の配属当ててるのか。ってか、生徒の成績なんて把握していいのか?」
感嘆する俺の言葉に、氷菓はなぜかどや顔で言う。
「もちろん、本人から成績開示の承諾を得てるわよ。ちなみに、人事は私が選別した次期書記ちゃんが担当してるわ。」
「次期書記?」
「一年生の長門って名前の文学少女よ。議事録の作成もすっごく早くて、正確に記録保存してくれるし、パソコン全般に長けてる最強データベースよ。すっごく無口だから、情報漏えいの心配もない。」
「なんかどっかで聞いたことあるキャラクターに聞こえるんだけど……。」
物語も終盤に近付いて、作者はこれ以上の新キャラ考えるのが面倒になったのだろうか。
「まぁまた会ったら挨拶しとくわ。」
みんなそれぞれの役割に忙しそうである。ともかくその日は、過労で消失しかねない丸尾の手伝いをすることになった。
その隣では、言葉先輩がカタカタと猛スピードでパソコンに向かってキーボードを叩いている。
「すごいな……、何てスピードだ。」
速読のスキルと、高速タイピングスキルといったところか。
「あっ、弟くんだ~。部活おつかれさま~。」
俺が生徒会室に入ってきたことに気が付いた言葉先輩が、手は動かしたまま視線だけを向けてそう言った。
「いえ……、言葉先輩もお疲れ様です。何かお手伝いする事はありますか?」
「ありがとう。うーん……でも、今は大丈夫かな。伊達くんが広報を頑張ってくれて、協賛資金の関係で来週あたりから忙しくなりそうだから、その時はお手伝い御願いしていいかな?」
「はい、わかりました。」
多分手伝うことはないんだろうけど、姉貴にも一応聞いておくか。
「姉貴は、俺が何か手伝うことはある?」
「――特にないな。」
姉貴は視線を上げることなく短く答えた。
「手伝う事があったら言ってくれよ。」
姉貴は確かに異才だが、それでも文化祭の仕事は膨大なはずだ。
来客の整理、展示や出店での支払い方法、有志のステージ運営、開会式や閉会式の流れ、前夜祭や後夜祭のイベント・企画、資材搬入や印刷などの業者選定、ゴミの処理、予算の配分基準、人事配置、許可事項と禁止事項などの采配……。
総合監督たる姉貴は、全てを掌握しなければならない。本当に大丈夫だろうか。
不安げに見ていた俺の視線に気づいたのか、姉貴はようやく顔をあげた。
「心配いらん。大丈夫だと言っているだろ。各担当で会議し、決まった内容を確認しているだけだ。それに氷菓も手伝ってくれている。ノープロブレムだ。」
「わかったよ。っじゃあ、今日は手伝うことなさそうなら、俺は帰ってもいい?」
「いや、そこにいる同期の二人を手伝ってあげなさい。」
姉貴のその言葉に、俺は首を傾げた。
「はぁ? 姉貴と言葉先輩以外に、誰がいるんだよ。」
突然俺は何者かに、背後からひしっと腕を強く掴まれた。ぎょっとして振り返ると、そこには見知った男の顔があった。
やや伸びてきた坊主頭に、度のきつい丸眼鏡をかけた人物――伊達丸尾である。
「手が空いてるなら……手伝ってくれ……。」
大きなクマができやつれた表情の丸尾は、懇願するように俺の腕を掴んで言った。
「うぉっ、お前もいたのか。精気がなくなって、存在が消えかけてるから気が付かなかった。」
「生徒会がこんなブラックだとは……」
半泣きで言う次期副会長こと丸尾。
若干彼の身体が薄く透けて見える。一体どれだけ酷使されていたのだろうか。
「全く――情けないわね。」
どこからか舌っ足らずな声が聞こえてきた。視線を下げると、ちびっ子次期生徒会長こと氷菓がいた。
「うぉっ、氷菓もいたのか。背が小さくて、視界に入らないから気が付かなかった。」
「ちょっと! 理由が全然違うじゃない!」
さすが氷菓は現副会長として、多忙な生徒会の仕事にも慣れているのだろう。丸尾と違い、顔色もよくはつらつとした様子である。
ぷんぷん怒って詰め寄る氷菓の頭を片手でおさえつつ、俺は自身のスマホを確認した。メッセージを着信した音がなったからである。
メッセージの主は、先ほど文化祭実行委員に登録しに行ったちろるからであった。
“雪ちゃんせんぱい! 一学期の家庭科の成績が素晴しいってことで……私は食品担当になっちゃいました。今はまだ特に仕事がないって言われたので、今日は大人しく帰ります……ぐすんっ……。”
そうか、食品担当……。確かに料理上手なちろるにはぴったりである。
“了解、料理上手なお前にぴったりな仕事だな。また一緒に帰ろう。”
返信を送ると、すぐさま既読がついて
“わーい(*´▽`*)” と返ってきた。
全く、可愛らしい後輩である。
「それにしても、人事担当すげーな。生徒の成績まで把握して、文化祭実行委員の配属当ててるのか。ってか、生徒の成績なんて把握していいのか?」
感嘆する俺の言葉に、氷菓はなぜかどや顔で言う。
「もちろん、本人から成績開示の承諾を得てるわよ。ちなみに、人事は私が選別した次期書記ちゃんが担当してるわ。」
「次期書記?」
「一年生の長門って名前の文学少女よ。議事録の作成もすっごく早くて、正確に記録保存してくれるし、パソコン全般に長けてる最強データベースよ。すっごく無口だから、情報漏えいの心配もない。」
「なんかどっかで聞いたことあるキャラクターに聞こえるんだけど……。」
物語も終盤に近付いて、作者はこれ以上の新キャラ考えるのが面倒になったのだろうか。
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