趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚

文字の大きさ
62 / 74

毒沼ブラザーズ3

しおりを挟む
「……読む力が、勝ちを拾う」

 以前、シンがレオンに対して告げた言葉。
 実際にはローヴァンからシンに向けて送られたものであったが、レオンから教えを請われて困ったシンは、あたかも自分の経験かのように伝授したのだ。
 とはいえ、その言葉は本物であり、恩人の口から発せられたならなおさら効力を発揮する。
 レオンは毒沼ブラザーズと相見えてから今までのことを、詳細に、しかし瞬時に思い出していた。

『俺たちは毒沼ブラザーズッ!』
『俺たちのコンビネーションの前に跪きなぁ!』
『俺たちは本当の兄弟じゃない。だが、互いがどう動くのかは考えずとも理解できるのさ』
『俺たち毒沼ブラザーズのコンビネーションには遠く及ばない』

 二人の言葉の中に糸口があるのではないか。
 活性化した脳細胞が、彼に閃きをもたらした。

(……上手くいくか分からないけど、やってみるしかない)

 決意したレオンが放った言葉。
 その一言が、場の空気を変えた。

「お前たちは……嘘をついてるな」

 抽象的すぎる指摘。
 何についての、どんな嘘なのか。
 恋人が浮気している気がするけど、具体的な証拠がない。そんな時に繰り出されるブラフのような、中身のない攻撃。
 しかし毒沼ブラザーズは――びくりと肩を振るわせた。

「ほ……ほぉ!? おおお俺たち毒沼ブラザーズが嘘をついてるって!? そそそそんなハズねぇだろ! なぁ兄弟!?」
「ももももちろんだぜ! 俺たちは盗賊だが嘘はつかない! 身から出た錆は一文にもならねぇからな!? なぁ兄弟!?」

 あらかさまを通り越し、もはや演技なのではないかと疑ってしまうほどの反応。

「い、一体どんな嘘をついてるってんだ!? 俺たちがよォ!」
「そうだぜ言ってみろ! な、舐めなこと言ったら引き摺り込んでやるからな!? 毒沼とかによぉッ!」

 突然の展開にイーリスは戸惑っていたが、動くことはしない。
 兄の次の一手を待っている。
 そして、レオンはもったいぶって深呼吸すると、先ほど自分たちが向けられていたような、勝ち誇った笑みを浮かべた。
 
「悪いけど……俺とイーリスの方が、兄妹として上なんだよ」
「……ふぅ…………何?」

 何かに安堵したゼーレが、続けて片眉を上げる。
 優位を確信していた顔が、わずかに動揺で歪んだ。

「は、はは……何を言いだすかと思えば、本物の兄妹だからって? くだらねぇな」
「違う。そういうことじゃない」

 レオンはゆっくりと剣を構え直す。
 毒沼の縁に立ちながらも、恐れの色はない。

「お前たちの連携はすごい。正直、驚いた」
「ほう? なら何が不満なんだよ」

 ダリオが笑みを浮かべる。
 だが、その笑いは先ほどのように軽くはない。
 顔に張り付くような笑みだ。

「お前らの連携は、言ってみれば訓練の賜物だ。綿密に練り上げられた戦術……それは確かに強い。だが、俺たち兄妹は信頼で繋がってる」
「信頼? は、はははっ、なんだそりゃ! 俺たちに信頼がないとでも? 兄弟、なんか言ってやれよ!」
「あぁ、もちろんだぜ! クソガキが、今さら精神論で勝てると思ってんのか?」
「精神論なのはお前たちだ」

 レオンは揺れず、淡々と言葉を続ける。

「考えてみれば、お前たちは最初からコンビネーションにこだわりすぎてる。『俺たちのコンビネーションはすごい』とか『動きが手に取るように分かる』とかな。それが何を意味してるか、教えてやろうか」
「そ、それは……俺たちの絆の深さだよな?」
「それだ、それ以外にあるわけがねえ」

 互いに頷きあう毒沼ブラザーズ。

「いや、違うな。確かにコンビネーションは凄い。だけどお前たちには……兄妹に対するコンプレックスがあるッ!」
「「なっ……!」」

 衝撃を受けて固まる二人の男。

「事あるごとに自分たちの繋がりをアピールして……本当は自信がないんじゃないのか? 『本当の兄妹には負けるんじゃないか』って。俺たち兄妹は――別々に戦っても強い絆で結ばれている!」

 この場で唯一、イーリスだけが、三人がアホだということに気付いていた。
 そして、レオンの主張が支離滅裂だということも。

(……兄さんは、どうにか奴らを分断しようとしている)

 イーリスの読みは当たっていた。
 経験で劣っているのなら、せめてタイマンでの勝負に持ち込む。
 その方が勝てる確率が上がるし、自信がある。それは分かる。
 問題があるとすれば、レオンは舌戦に向いていないということだ。
 自らが敬愛しているシンの「やり方」を模しているのだろう。
 だが、それにしては論法が稚拙すぎる。

(別々に戦っても絆が強いって何!? もっと違う道筋があったでしょ!?)

 これではレオンの魂胆が丸見え。
 むしろ分断作戦が難しくなってしまう。
 そのはずだったが――。

「――俺たちだって、できるに決まってんだろッ!」
「おうよ兄弟ッ! 俺たちは別々に戦っても最高のコンビネーションよッ!」

 ――盗賊達はレオンのペースに呑まれてしまっていた。
 額に青筋を浮かべたゼーレが毒沼に身を沈める。
 次の瞬間には、レオンの真後ろから跳び出してくるだろう。

「兄弟、任せたぜ!」

 ゼーレの叫びに、ダリオが答える。

「ああ、好きにやれ! 俺はこっちの小娘と遊ばせてもらう!」

 その瞬間、自然と戦場が分断される。
 レオンとゼーレ。イーリスとダリオ。
 二対二の戦いは、二つの一対一へと変化していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!  杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。 で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか? 異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕! 異世界帰りのハーレム王 朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

処理中です...