元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。

文字の大きさ
5 / 5

第05話 パーティー結成と再始動

しおりを挟む
 シリル・ノーマンと出会ったのは、私が前のパーティーを追放されてから少ししてのことだった。

 冒険者互助組合——ギルドで次の所属先を探していたところ、馴染みの受付嬢から「それならこの子はどうかしら」と、新米の彼を紹介されたことがきっかけだ。

​「は、初めまして、シリルと申します!  職業は戦士です。田舎から出てきたばかりでまだ右も左も分からないですが、や、やる気だけは人一倍あります! ええと、あと趣味や特技は——」

​ 初対面の印象は、どこにでもいる普通の少年。
 どうやら年上の女性である私に緊張しているようで、最初はどこか態度がぎこちなかった。
 まあ、私自身も突然の追放で余裕を失っていたし、人相も少しは険しくなっていたのかもしれないけれど。

​ とりあえず簡単な自己紹介をし終えたあと、彼の剣の腕前を見せてもらった。今はまだダイヤの原石に過ぎないけれど、なかなかどうして、その太刀筋には将来性を感じさせられた。

​「ええ、思い切りがよくて、見ていて気持ちのいい剣筋だわ。長年冒険者を見てきた私には分かるの、こういう子は伸びるのが早いわよ」

​ 多少の励ましを交えつつ、素直に良いと思った部分を褒めると、純真そのものな彼は花の咲いたような笑顔を浮かべた。
 
「ほ、本当ですかっ!? レアーヌさんみたいな熟練のメイドさんにそう言ってもらえると、なんだか僕、自信がついちゃいます。……あ、あの! レアーヌさん、でしたらぜひ——」

​ ちょうどその頃、シリルも専属のメイドを探していたらしく、とんとん拍子でまず私たちが組むことになった。
 そこまではいいのだが……彼のパーティーには、他の冒険者の姿が一切見受けられなかった。

​ 当然、継続して仲間探しをするのかと思いきや、どういうわけか彼は「他に冒険者を引き入れるつもりはない」と言う。

​ つまり、非戦闘職であるメイドの私を除き、たった一人でダンジョンの奥深くに巣くう魔物と戦うというのだ。
 けれどそれは、自殺行為と言っても過言ではない。

​ そもそも、冒険者家業は命懸けの男社会だ。
 本来、前衛で戦うのは男性の役割であり、メイドの女性は彼らの衣食住を支える代わりに護られる立場にある。
 
​ そのため通常は複数の戦士や魔法使いが組み、中央にメイドを据えて護りながらダンジョンを攻略するのが定石だ。
 戦士一人の背中に、非力な私の命まで預けるというシリルの宣言がいかに困難な道のりであるかは、想像に難くない。

​ こうした事情もあり、所属先探しに奔走するメイド連中からも彼はそっぽを向かれていたらしい。
 非戦闘職の私たちが安心して命を預けられる相手ではないと判断されたのだろう。

​「レアーヌさん……やっぱり、僕一人じゃ、無理でしょうか……」

​ 捨て置かれた子犬のような瞳で私を見つめる少年。
 さしもの私も最初は躊躇した。けれど、彼の必死な様子が無下に捨てられた自分と重なって見えたのだ。
 それに、どうせ居場所を失った中年メイドの再出発だ。後進の育成に精を出すなら、一人が限界だった。
 
 どこかで人知れず死なれても目覚めが悪いし……何より、この純粋な瞳を曇らせたくないと思ってしまった。

​「いいわ。貴方がそのつもりなら、私が最後まで支えてあげる」
「……! ありがとうございます、レアーヌさん! 僕、一生懸命頑張ります!」

​ そういうわけで、私たち二人だけのパーティー、『栄光への二人三脚《アライアンス・パートナー》』は始動したのであった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

「あなたは強いから大丈夫よね」、無自覚に人生を奪う姉

恋せよ恋
恋愛
「セリーヌは強いから、一人でも大丈夫よね?」 婚約破棄され「可哀想なヒロイン」となった姉カトリーヌ。 無自覚で優しい姉を気遣う両親と『私の』婚約者クロード。 私の世界は反転した。 十歳から五年間、努力で守ってきた「次期後継者」の座も。 自分に誂えた「ドレス」も……。「婚約者」さえも……。 両親は微笑んで言う。 「姉様が傷ついているの強いお前が譲ってあげなさい」と。 泣いて縋れば誰かが助けてくれると思っているお姉様。 あとはお一人で頑張ってくださいませ。 私は、私を必要としてくれる場所へ――。 家族と婚約者を見限った、妹・セリーヌの物語。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……

ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」 この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。 選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。 そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。 クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。 しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。 ※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

お望み通り、消えてさしあげますわ

梨丸
恋愛
一国の次期王妃と言われていた子爵令嬢アマリリス。 王太子との結婚前夜、彼女は自ら火を放ち、死んだ。 国民達は彼女の死を特に気にもしなかった。それどころか、彼女の死を喜ぶ者もいた。彼女の有していた聖女の力は大したものではなかったし、優れているのは外見だけの“役立たずの聖女”だと噂されるほどだったから。 彼女の死後、すぐさま後釜として皆に好かれていた聖女が次期王妃に召し上げられた。 この国はより豊かになる、皆はそう確信した。 だが、“役立たずの聖女”アマリリスの死後──着実に崩壊は始まっていた。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) ※この調子だと短編になりそうです。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です

しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。

処理中です...