16 / 51
16
しおりを挟む
とうとう晩餐会の日にちがやってきた。
一家総出の招待だったけれども、本音を言えば欠席したかった。
おおかたアルフレッドに捨てられた私が出席をしても、踊る相手がいないダンスの時間にみじめな思いをするだけ。
そうでなくても他の出席者に白い目で見られ、あるいは婚約者を奪われた哀れな令嬢として同情を寄せられるのが容易に想像できたからだ。
しかし私は豚とは違う。
将来はヴァンディール公爵家を継ぐ者として、奇異のまなさじや誹りに怯えて逃げ出すなどと、それこそ貴族としての責任とプライドが問われるというもの。
だからこうして私は、地味な黒いドレスを着て王城に出向いていた。
その前にお母様が別にドレスを用意してくれると言ってくれたが、きっぱりと固辞した。
急ごしらえで用意立ててもらう手間を考慮してというよりかは、半ば意地に近かったのもある。
あくまでこのドレスは私が好きで着ているものであって、見苦しい豚に少しは華をもたせるためにお下がりを貸し与えたのだと、そう自分を納得させるために。
幸い、私と同じような格好をしている貴婦人が多かったために浮くことはなかったのだが。
すでに大広間は賑わっており、いつもなら自ら率先して挨拶まわりをしているところだが、今回ばかりはそんな気分になれない。
きっと他の貴族たちは私の話題で盛り上がっていることだろうから。
なにせ先ほどからチラチラと、こちらの様子をうかがう視線が気になるほどだ。
それでも誰も声をかけてこないのは、果たして気遣ってくれているのかそうでないのか。
とにかく居心地が悪いことだけは確かで、胸の辺りに不快感が満ちていくのが分かる。
だからせめて豚のドレス姿を思い出し、溜飲を下げることにした。
「……ぷっ」
あれは傑作だった。
私の丈周りの倍ほどもあるものだから、無理を通してやっと着たドレスの生地が伸びに伸びて、それはもう面白い有り様になっていたっけ。
おかげで胸元から脂肪の塊がこぼれおちそうになっていて、まるで露出狂のようだと思ったわ。
だというのにお母様ったら「まあアリスちゃんよく似合っているわ、綺麗よ」なんて煽てるものだから、本人も馬鹿でその気になってご満悦げに頷いていたことに笑いを禁じ得なかったわ。
しかし私が豚の恥ずかしい格好に心を弾ませていられたのはそこまでだった。
一家総出の招待だったけれども、本音を言えば欠席したかった。
おおかたアルフレッドに捨てられた私が出席をしても、踊る相手がいないダンスの時間にみじめな思いをするだけ。
そうでなくても他の出席者に白い目で見られ、あるいは婚約者を奪われた哀れな令嬢として同情を寄せられるのが容易に想像できたからだ。
しかし私は豚とは違う。
将来はヴァンディール公爵家を継ぐ者として、奇異のまなさじや誹りに怯えて逃げ出すなどと、それこそ貴族としての責任とプライドが問われるというもの。
だからこうして私は、地味な黒いドレスを着て王城に出向いていた。
その前にお母様が別にドレスを用意してくれると言ってくれたが、きっぱりと固辞した。
急ごしらえで用意立ててもらう手間を考慮してというよりかは、半ば意地に近かったのもある。
あくまでこのドレスは私が好きで着ているものであって、見苦しい豚に少しは華をもたせるためにお下がりを貸し与えたのだと、そう自分を納得させるために。
幸い、私と同じような格好をしている貴婦人が多かったために浮くことはなかったのだが。
すでに大広間は賑わっており、いつもなら自ら率先して挨拶まわりをしているところだが、今回ばかりはそんな気分になれない。
きっと他の貴族たちは私の話題で盛り上がっていることだろうから。
なにせ先ほどからチラチラと、こちらの様子をうかがう視線が気になるほどだ。
それでも誰も声をかけてこないのは、果たして気遣ってくれているのかそうでないのか。
とにかく居心地が悪いことだけは確かで、胸の辺りに不快感が満ちていくのが分かる。
だからせめて豚のドレス姿を思い出し、溜飲を下げることにした。
「……ぷっ」
あれは傑作だった。
私の丈周りの倍ほどもあるものだから、無理を通してやっと着たドレスの生地が伸びに伸びて、それはもう面白い有り様になっていたっけ。
おかげで胸元から脂肪の塊がこぼれおちそうになっていて、まるで露出狂のようだと思ったわ。
だというのにお母様ったら「まあアリスちゃんよく似合っているわ、綺麗よ」なんて煽てるものだから、本人も馬鹿でその気になってご満悦げに頷いていたことに笑いを禁じ得なかったわ。
しかし私が豚の恥ずかしい格好に心を弾ませていられたのはそこまでだった。
201
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた
堀 和三盆
恋愛
「ずるいですわ、ずるいですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な髪留めが欲しいです!」
ドレス、靴、カバン等の値の張る物から、婚約者からの贈り物まで。義妹は気に入ったものがあれば、何でも『ずるい、ずるい』と言って私から奪っていく。
どうしてこうなったかと言えば……まあ、貴族の中では珍しくもない。後妻の連れ子とのアレコレだ。お父様に相談しても「いいから『ずるい』と言われたら義妹に譲ってあげなさい」と、話にならない。仕方なく義妹の欲しがるものは渡しているが、いい加減それも面倒になってきた。
――何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので。
ここは手っ取り早く魔法使いに頼んで。
義妹が『ずるい』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる