妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。

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 人豚を喰らう成人の儀。
 もちろん王家公認のしきたりだ、それを止める手立ては元より私にはない。
 けれども、あの豚の一生は最初から決められており、そういった意味では可哀想な存在なのかもしれない。
 きっとこうなることを見越して、私たち以外の人間がこれまで裏で手を引いていたのだから。

 甘やかされて育てられ、時がきたら屠殺とさつする。
 これはとても残酷な話だと罵られるのも、実は無理らしからぬことなのかもしれない。

 しかし、だ。
 ことここに至って私もある告白をしよう。

 昔の話だ。
 私がまだ豚を人として認識していた頃、貴族の嗜みをサボり、わがままで贅沢三昧の毎日を送ることで日に日に肥え太っていくアレの姿を見て、図らずもこう思ってしまったのだ。

 ――脂が乗っていて、なんてなの。

 と。

「さようなら、アリス」

 ぽつりと、最後に豚の名前を呼ぶ。
 それから私たちはゆっくりと『ファラリウスの雌豚』に向かってトーチの炎を点火した。
 すぐに熱が全体へと伝わり、その近くに立っているだけでも熱気がすごい。

『うぎいぃぃいいぃいあついあついあついあついあついあついあついあついあついぃいいいッ! 出せ出せ出せ出せ出せ出せ出せ出せ出せ出せ出せぇえぇぇえええぇぇぇええあぁぁぁあああっ!』

 当然あの像の中にいる豚はもっと熱いようで、ガンガンガンと内側から激しく腹底を叩く音と、獣のようなくぐもった叫び声が聞こえてきた。

「ははははは、これは愉快ですなぁ。豚の鳴き声を聞きながら同時に調理ができるなどまさに一石二鳥ではありませんかな。のファラリウス王は大変聡明であったと見られる」

「ええ、最高の見世物だわ! これは今宵の席にご招待してくださったアルフレッド王子と人豚をご献上なされたヴァンディール公爵家の方々には感謝いたしませんと」

「ほらもっと鳴かぬか! 人豚が熱さに苦しんで苦しんで苦しみ抜いて鳴き叫ぶ声が聞きたくて、儂は王家に協力してきたのだからな!」

「ああなんて野蛮な……。私にはあまりに刺激的過ぎて、なにかに目覚めてしまいそう。ですからもっとよく眺めさせてくださいませ……!」

 焼き上がりまで会話を弾ませながら見守る貴族たちの反応はいずれも好意的で、なるほど時代を重ねても彼らの根底には、公開処刑を娯楽として享受できる感性があるようだった。
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