酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵

文字の大きさ
1 / 63

おじさん異世界へ

しおりを挟む
俺は酒井健一。51歳独身。

酒類マスターの称号を持ち、世界各国のホテルや資産家のもとを周りその場面に合うお酒をチョイスする仕事をしていた。
50歳になったことをきっかけに、世界を回るのをやめ日本へ戻った。
その後は、造酒の資格をとり世界一のお酒作りに励んだ。

造酒作りがスランプになり今日は、久し振りにお昼からの飲み歩くことにした。

気になっていたピザのお店に行く。
赤ワイン白ワイン。チーズの甘さと合うこのぶどうの酸っぱさがとても美味しい。

お腹も膨れ、近くのお店を転々とはしごした。
日本酒が美味しいお店。色々な国のビールが飲むことができるお店。カクテルを即興で作ってくれるお店。地酒の店。

今日もまだ見ぬ美味しい酒に出会うことができた。
でも、いつもより飲み過ぎた気がする。

すごくふらふらする。

「今日飲んだ日本酒も美味しかったな。次はどのあたりの店を攻めようかな。」

ガン!

という大きな物音と共に突然歩道に車が突っ込んできた。

深酒しているふらふらの体では交わすことができなかった。



やばい…体の感覚がない…

救急車を呼ばないと………

だめだ…手が思うように動かない…

あぁ…もうダメなのか…

こんな何も無い人生…

もっと色々なことをやりたかったな…


ーーーーーーーーーーーーーーー

目を覚ますと知らない場所に横たわっていた。体を起こすと、俺以外にも若い男の子と若い女の子もいた。
確か、一緒に事故に巻き込まれていたような。

にしても、まるでゲームやアニメに出てくる宮殿みたいだ。

「ここどこ?ナオ君…こわいよ…」
「大丈夫だ…何かあれば僕がさなを守る。一体ここはどこなんだ!!僕たちは死んだのか…?」

こんな見知らぬ場所に突然きたのだ。若い子達が怖がるのも無理はない。

玉座に座っている王らしき人が話し出した。
「我はクレヴィニア王国17代国王 クレヴィニア・ルーラルだ。あなた方勇者にこの国を救って頂きたくお呼びいたしました。」

「クレヴィニア?」
全く俺の知らない国だ。

「救うってどういうことなんだ!!僕たちにそんなことできるわけ…」

「この世界は魔王軍、魔獣によって攻撃されて衰退してしまっているのです。民も安心して眠ることができないのです。どうか勇者様方にはこの国、世界を救って頂きたいのです。」

「質問なのですが、俺たちは帰ることができるのでしょうか?」

「言い伝えですと、勇者がこの世界に安寧をもたらした時帰還のゲートが開くとあります」

「それなら…」

若者達はとても不安そうだ。女の子にいたってはずっと涙ぐんでいる。
考えてもしょうがない…

「とりあえず俺たちはこれから何をすればいいんだ」

後ろからローブに包まれた老人が現れた。
見るからに賢者っぽいな…

「まずは勇者様方はこちらをつけてくだされ。特殊なブレスレットで勇者様専用装備でございます。『ステータス』と唱えると本人にしか見えない窓が現れると伝承にはありますじゃ。何か、書かれていませぬか?」

「僕は…スキル勇者…」

「おお!!本当に!あの伝説の勇者が!なんと喜ばしいことか!!」

周りにる兵隊も驚いているようだ。

「私は…大賢者です…」

「大賢者ですと!? 大賢者は全ての属性を使うことができ、我々人間には使用することができない神の魔法をも使うことができると言われている…なんと素晴らしい!!」

「「「ウォーー!!」」」
周りの歓声が次第に大きくなっている。

そろそろ俺も確認してみよう。

「ステータス」

ーーーーーーーーーーーーーーー

【酒井健一】 Lv.1 職業:なし
体力 :6
筋力 :5
耐久力:5
敏捷性:5
魔力 :1

【スキル】
なし
【特殊スキル】
『酒聖しゅせい』
ーーーーーーーーーーーーーーー

なんだこれ。

「俺は酒聖ですが」

歓声が湧かなかった。

「酒聖何て聞いたことがあるか?」
「俺は一度も聞いた事ないぞ」
「いやそもそも、伝承では勇者は2人だったはずだが?」
「ハズレだったんじゃないか?」
「それもそうだ。俺達よりもおっさんだぞ?」

周りの小言が耳に痛い。
俺だってガッカリしているさ。昔読んだ漫画の主人公に俺だってなれるかも、なんてお前らに言われなくても少しは考えたさ。

「さてさて勇者様方にはこの世界のことと、これからについてお話があります。まずは休息とってくだされ。大臣。2人を。」

王がそう言うと若者2人が連れて行かれる。

「あ、あのー王様?。俺は?」

「忘れとったは。お主は見るからに勇者ではないだろ。帰っていいいぞ」

「先ほど帰還のゲートの話をしていたじゃないですか…」

「そーだったの。だが帰還のゲートを使えるのは勇者のみ。お主は勇者では無いのじゃろ?」

「そんな…じゃあ!どうしたらいいんですか!」

「ええい!うるさい!もう出ていくが良い!兵よ、奴をつまみだせ!」

「待ってくれよ!俺はどうやって過ごしたら……」

ーーーーーーーーーーーーーーー

問答無用に追い出された。

「おいおい、本当にどうしろって言うんだ…」

ステータスを何度見てもパッとしない。酒聖なんて一体なんなんだ?酒の聖なんて…

街の中をひたすら探索することにした。
看板を見ても何を書いているか全くわからない。が、街の人たちが話している言葉はわかるのは唯一の救いだろう。
外国に地に言葉もわからず放置されるのは辛すぎるからな。この状況でもだいぶ辛いが。

半日ほど街中を歩いたが、なんの状況の変化もない。
お金なんて持っていないからしょうがない。

暗くなる前に街の外も見ることにしよう。

近くには草原と背の高い木々が並ぶ森があった。

森に木の実があることを信じて向かうことにした。

木々が太陽を隠しとても暗い。
木の実どころか食べることができそうな物はどこにもない。
奥に進んでも景色は全く変わらない。

目の前の茂みが大きく揺れた。

「熊じゃないよな…」

現れたのは、ゲームでよく見るゴブリンだ。

俺は素手。ゴブリンは鉈を持っている。

「どう考えてもまずい気が…」

唸りながら近づいてくる。

街の方へダッシュした。こんなにも全力で走ったのは何年振りだろうか。
何とか捕まらず帰ってこれた。

「なんでこんな目に…腹へったな…喉も乾いた…」

蛇口どころか休めそうな公園なんて見つからない。

「あのー。大丈夫ですか?」

綺麗な金髪のシスターが話しかけてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...