酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵

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令嬢

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ある日、一人の貴族令嬢が修道院を訪れた。

「初めまして、ケンイチ様。私はリディア・ローゼンフェルドと申します。」

彼女は金髪碧眼の美しい女性で、気品と強い意志を兼ね備えた佇まいをしていた。

「貴族の令嬢が俺に何の用だ?」

「エドモン侯爵の悪行を止めるお手伝いをさせてください。」

「……は?」

まさかの申し出に、俺もセラフィーナも驚いた。

「エドモン侯爵?」

セラフィーナが眉をひそめる。

「はい。彼はこの街の酒の流通を牛耳り、商人たちから莫大な通行税や酒税を搾り取っています。」

「……なるほど」

エドモン侯爵の影響で、多くの商人が困窮しまともに交易ができなくなっていたのは事実。

「俺の酒が貴族たちの間で人気になった途端、貴族の横槍が入っているのは事実だけど……」

「ええ。そして、ケンイチ様の酒をエドモン侯爵が独占しようとしているのです。」

(なるほど……それで俺の修道院にも貴族が頻繁に来るようになったのか。)

「で、お嬢様はどうして俺を助けようと?」

リディアは微笑んだ。

「だって……ケンイチ様のような素晴らしいお方を、お助けしたいのです♡」

(えっ、なんか物理的に距離近くない!?)

セラフィーナが咳払いをし、一歩前に出る。

「リディア様、そのようなことは後にして……具体的にどう手を打ちます?」

リディアは優雅に微笑みながら言った。

「ふふ……すべて私にお任せください!」

ーーーーーーーーーーーーーーー

リディアは貴族のコネを駆使し、エドモン侯爵の違法行為の証拠を集めた。

さらに、搾取されていた商人やギルドの証言を確保し、王城へと報告を上げた。

「……いや、想像以上に手際がいいな」

「これでも社交界ではそれなりにやっておりますの♡」

(また近い!!おじさんには刺激が強すぎる...)

そしてついに、エドモン侯爵は王命によって召喚されることになった。

「ぐっ……こんなこと、許されると思っているのか!」

侯爵は逆上し、突如として私兵を差し向けてきた。

「ちっ、こうなると思ったぜ」

俺はギルドの冒険者たちに協力を頼み、戦闘に備えた。

ーーーーーーーーーーーーーーー

エドモン侯爵の私兵たちは精鋭ぞろいだったが、俺の体が異常に軽い。

(なんか……動きが良すぎるんだが!?)

敵の剣を軽々とかわし、一撃で吹き飛ばす。

「うおっ!? 俺、こんなに強かったか?」

セラフィーナが呆れたように言う。

「ケンイチ、あなた最近 魔力も体力も異常に増えてますよ ?」

(酒造りで鍛えられたのか……?)

エドモン侯爵の手先を軽くあしらう。

「……これで終わりだな」

リディアが王宮に働きかけ、エドモン侯爵は正式に 国外追放 となった。

「まさか、あの侯爵がこんなに簡単に……」

ギルドの冒険者たちも驚いている。

俺たちは町の商人たちと協力し、物流を正常化させることに成功した。

「……ようやく自由に酒を売れるな」

セラフィーナもほっと息をつく。

しかし、その直後——

ーーーーーーーーーーーーーーーー

リディアが俺の前に立ち、きらきらした目で俺を見つめた。

「ケンイチ様……私は、あなたの強さと優しさに惚れました!」

「……へ?」

「どうか、私と結婚してください!」

「……いやいやいや! 俺は結婚するつもりは——」

「ならば修道女になります!」

「は?」

「……は?」

まさかの宣言に、俺もセラフィーナも硬直した。

「修道院にいれば、ずっとケンイチ様と一緒にいられますものね♡」

「え、いや、それは……」

こうして、リディアは まさかの修道女として修道院に入ることになった 。が...。

セラフィーナは顔をピクピクさせながら、俺をじとーっと見つめていた……。

(……なんでこうなるんだよ!?)
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