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しおりを挟む龍神side
「委員長、お怪我はありませんか」
廊下に出るなり亘は焦ったように俺に聞いてきた。先程藍野に絡まれたことを心配してくれているらしい。可愛いやつだ。
「ああ、問題ない」
淡々と答えると、亘は不満そうな顔をした。
「見せてください」
「……ん?」
「腕、見せてください」
俺は大丈夫と言ったはずだが……。
戸惑う俺に痺れを切らした亘が制服を捲りあげた。
「やっぱり、痕になってるじゃないですか」
亘の言う通り確かに腕は赤くなっていて、じんわりと熱を持っていた。爪が食い込んでいたようで、制服との摩擦で少し擦れているようだ。
「保健室に行きましょう」
「待て、少し赤くなったくらいで……」
「少しじゃないです!」
大袈裟な、と思ったが亘が睨んできたので仕方なく腕を引っ張られて保健室に行った。
「お?またお前かよ」
「この人をお願いします」
にっこり笑って亘が椅子に座って迎えた真島先生に俺を差し出した。渋々腕を出す。
「んー?これどした?」
「仕事で少し」
適当に答えると真島先生は呆れたような顔をしながら軽く消毒した。
「喧嘩かあ?」
「警告です」
「はあ、まあなんでもいいが、あんま怪我すんなよ」
仕事が増えるからか…?
ペタ、と湿布を貼った真島先生はそう言うと、首を傾げる俺に顔を近づけた。腕に這わされた手がつー、と動いて擽ったい。息が耳に掛かる。
低い、少し掠れた声が耳朶を打った。
「お前は俺のお気に入りなんだから」
は?
俺が、?真島先生の、何だと?
囁かれた言葉に軽く混乱して固まっていると、亘が割り込んで俺と真島先生を引き離した。
「おいおい、嫉妬か?副委員長」
「真島先生、委員長に手を出さないでください。セクハラで訴えますよ」
はっとして仰ぎ見ると、亘が強い怒気を孕んで真島先生を睨んでいた。
「そらおっかねぇな。ま、今日のところは諦めるか。じゃーな、風紀のお二人さん」
亘の鋭い眼光を前に、言葉とは裏腹に余裕そうな真島先生はくるりと体を机に向けた。珍しく仕事をするらしい。
よく分からないまま保健室を出ようとする途中小さい声で、委員長、と呼ばれて振り返ると顔だけこちらに向けた真島先生が、声は出さず唇を動かした。
ま、た、な、こ、は、く。
「っ?!」
今、確かに、俺の名前を……
驚き目を見開く俺の前で、亘によって扉が閉められた。
あれは、俺の見間違いか?
……………きっとそうだろうな。そうに違いない。
混乱する脳内で無理やり一人自己完結し頷くと、亘がため息を吐いた。
「はあ……」
半眼でこちらを見る。
「委員長はもっと危機感と自覚を持ってください」
言っても無駄でしょうけど、と亘は続ける。
危機感と自覚?
「風紀としての自覚を持てと?これでも充分持っているつもりだし、見回りでも警戒は怠っていないが……」
このしっかりした後輩が言うなら足りていないのだろうか。
「いえ、そう言う方面の自覚ではないです」
ぴしゃりと否定してそのまま、帰りますよと腕を引かれる。
これ以外の方面って何だ……?
と思ったが、とても質問できる雰囲気ではなかったので黙ってされるがままにした。
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