12 / 121
どこで間違えたか
しおりを挟む
龍神side
「委員長、どうぞ」
コトリ、とコーヒーが机の上に置かれる。ふわっと落ち着く香りが室内に漂い、自然と気分がリラックスした。俺は報告書を書いていた手を止め、コーヒーを持ってきた亘を見上げる。
「ああ、悪いな。いつもありがとう」
「いえ、お気になさらず」
温めのコーヒーに口を付けて束の間の休息に入っていると、隣でデスクワークをしていた亘がふと呟いた。
「生徒会の彼等、仕事を再開し始めたそうです」
「……そうか」
俺が転校生と生徒会連中に忠告して2日経った。
そんなに直ぐ元に戻らないかもなと思っていたのだが、リコールの一言が思ったより効いたらしい。亘によると生徒会連中は、今まで溜まっていた仕事が一気に襲ってきたことで、毎日生徒会室に篭もっているそうだ。俺は自分達が仕事をしていなかった期間は親衛隊が代わりに仕事を請け負ったりしていたことを知っているので、生徒会の復帰と同時に彼らを手伝わないようにと親衛隊員に言っておいた。
当然だ、自分の始末は自分で付けなければ意味がない。おかげで生徒会室は火の車状態だろうが、仕方ないだろう。どうしても仕事が追いつかないようなら俺が補佐するが、それは最終手段だ。
とはいえ、あれでも優秀な奴らだから、何だかんだ言ってやり切るだろう。実質俺の助けは必要ない。
「さすが委員長です。生徒会が一発で言うことを聞くとは」
「いや、俺は変われとは言ってない。あくまでもあいつらの意思であり判断だ」
救いようが無いほどの姿だったのは事実だが、今生徒会室で連日篭って仕事をしている姿もまた事実。
現に今日、珍しく教室で俺に話し掛けてきた生徒会長が放課後風紀室を訪ねると言ってきた。
西連寺が教室で話しかけてきた事など嫌味や揶揄いを除けば俺が風紀委員長になる前以来の事なのでとても驚いた。
風紀に入る前は偶に話していたんだが……どこで間違えたんだろうな。
人の縁とはよく分からないものだと思いつつ書類に目を通していると、風紀室の扉がノックされた。
「どうぞ」
ノックに返事を返すと、やや強めに風紀室の扉が開いた。チラリと見て、納得する。
「ああ、西連寺か」
入ってきたのは先程脳内で登場した生徒会長、西連寺だった。噂をすれば、というところだろうか。来ると言っていた時間より若干遅いのがこいつらしい。ただ真面目に言うと学生の内から遅刻癖をつけるのはどうかと思うぞ。社会に出たら遅刻は許されない。信用を失う行為だからな。
「んだよ、うっすい反応だな。俺を見たら大抵の奴らは騒ぐか妬むかのどっちかだぞ。ならお前もその二択から選ぶべきだろーが」
開口一番、心底馬鹿にしたように言ってくる西連寺だが、俺からすればお前が心底馬鹿だ。
「俺は別にお前に思うことは何も無いからな。騒ぐ必要も妬むべき要素もない」
そう言って馬鹿にしたような視線を涼しく流し、挑発を躱す。時間の無駄なのでそのまま間髪入れずに話を振った。
「そんな事はどうでもいい。お前は俺に提出する書類があるんだろう。それを早く出せ」
思いっきり冷たい目で西連寺を見ると、何故かあいつは黙り込んだまま動かな
い。てっきり嫌味の一つや二つでも返ってくると予測していただけに思わず怪訝な顔をしてしまった。何故何も言ってこない?
「おい」
まさか体調でも悪いのだろうかと一言声を掛けると、西連寺はやっと顔を上げて元の馬鹿にしたような笑みを浮かべ、鼻で笑った。
「ハッ、相変わらずムカつくクソ風紀だな。そんなに書類が欲しいならくれてやる」
俺の心配を返せ。
嘲笑に内心イラッとしつつも、いつもの感情のコントロールが効いて無表情を保つ。
「仕事を放り出して書類を溜めていたのはどこのどいつだ」
言いながら差し出された書類を受け取り目を通す。ミスの一つでも見つけてやろうと思ったが、そこは西連寺、書類のどこにもミスは無かった。
「……ん、ミスは無いな。」
こういう所は完璧な西連寺。仕事に関しては評価しているし、信頼している。
…………認めたくはないが。
判を押した書類を西連寺に渡す。
「特に言うことは無い。確かに処理した」
「ったりめーだろ。俺が直々に作った書類だ」
「……用が済んだら帰れ」
「てめえに言われなくても帰る。こんなとこに長々と居られるわけねえだろ、俺は忙しいんだ」
バタンッと大きな音を立てて扉が閉まる。物に当たるなと言いたい。
まったく、最後まで人を苛立たせる奴だな。
呆れて溜息を吐く。すっかり冷たくなってしまったコーヒーに再度口を付けた。
そういえば、リコールの件で忠告しに行った時、なんで西連寺だけあんなに余裕そうだったのか聞くのを忘れていた。
…………と言っても、西連寺の考えている事なんか俺に分かるはずもないが。
何が気に食わないのか分からないが、俺はそんなに西連寺のことが嫌いじゃないんだがな。コーヒーを飲み干し、休憩を終えてまた書類に向かいながらどこか腑に落ちない感情を抱く。しかし、それもすぐに振り払った。
まあ、向こうが嫌いなら距離を置くのが正解だろう。
触らぬ神に祟りなし、だ。
「委員長、どうぞ」
コトリ、とコーヒーが机の上に置かれる。ふわっと落ち着く香りが室内に漂い、自然と気分がリラックスした。俺は報告書を書いていた手を止め、コーヒーを持ってきた亘を見上げる。
「ああ、悪いな。いつもありがとう」
「いえ、お気になさらず」
温めのコーヒーに口を付けて束の間の休息に入っていると、隣でデスクワークをしていた亘がふと呟いた。
「生徒会の彼等、仕事を再開し始めたそうです」
「……そうか」
俺が転校生と生徒会連中に忠告して2日経った。
そんなに直ぐ元に戻らないかもなと思っていたのだが、リコールの一言が思ったより効いたらしい。亘によると生徒会連中は、今まで溜まっていた仕事が一気に襲ってきたことで、毎日生徒会室に篭もっているそうだ。俺は自分達が仕事をしていなかった期間は親衛隊が代わりに仕事を請け負ったりしていたことを知っているので、生徒会の復帰と同時に彼らを手伝わないようにと親衛隊員に言っておいた。
当然だ、自分の始末は自分で付けなければ意味がない。おかげで生徒会室は火の車状態だろうが、仕方ないだろう。どうしても仕事が追いつかないようなら俺が補佐するが、それは最終手段だ。
とはいえ、あれでも優秀な奴らだから、何だかんだ言ってやり切るだろう。実質俺の助けは必要ない。
「さすが委員長です。生徒会が一発で言うことを聞くとは」
「いや、俺は変われとは言ってない。あくまでもあいつらの意思であり判断だ」
救いようが無いほどの姿だったのは事実だが、今生徒会室で連日篭って仕事をしている姿もまた事実。
現に今日、珍しく教室で俺に話し掛けてきた生徒会長が放課後風紀室を訪ねると言ってきた。
西連寺が教室で話しかけてきた事など嫌味や揶揄いを除けば俺が風紀委員長になる前以来の事なのでとても驚いた。
風紀に入る前は偶に話していたんだが……どこで間違えたんだろうな。
人の縁とはよく分からないものだと思いつつ書類に目を通していると、風紀室の扉がノックされた。
「どうぞ」
ノックに返事を返すと、やや強めに風紀室の扉が開いた。チラリと見て、納得する。
「ああ、西連寺か」
入ってきたのは先程脳内で登場した生徒会長、西連寺だった。噂をすれば、というところだろうか。来ると言っていた時間より若干遅いのがこいつらしい。ただ真面目に言うと学生の内から遅刻癖をつけるのはどうかと思うぞ。社会に出たら遅刻は許されない。信用を失う行為だからな。
「んだよ、うっすい反応だな。俺を見たら大抵の奴らは騒ぐか妬むかのどっちかだぞ。ならお前もその二択から選ぶべきだろーが」
開口一番、心底馬鹿にしたように言ってくる西連寺だが、俺からすればお前が心底馬鹿だ。
「俺は別にお前に思うことは何も無いからな。騒ぐ必要も妬むべき要素もない」
そう言って馬鹿にしたような視線を涼しく流し、挑発を躱す。時間の無駄なのでそのまま間髪入れずに話を振った。
「そんな事はどうでもいい。お前は俺に提出する書類があるんだろう。それを早く出せ」
思いっきり冷たい目で西連寺を見ると、何故かあいつは黙り込んだまま動かな
い。てっきり嫌味の一つや二つでも返ってくると予測していただけに思わず怪訝な顔をしてしまった。何故何も言ってこない?
「おい」
まさか体調でも悪いのだろうかと一言声を掛けると、西連寺はやっと顔を上げて元の馬鹿にしたような笑みを浮かべ、鼻で笑った。
「ハッ、相変わらずムカつくクソ風紀だな。そんなに書類が欲しいならくれてやる」
俺の心配を返せ。
嘲笑に内心イラッとしつつも、いつもの感情のコントロールが効いて無表情を保つ。
「仕事を放り出して書類を溜めていたのはどこのどいつだ」
言いながら差し出された書類を受け取り目を通す。ミスの一つでも見つけてやろうと思ったが、そこは西連寺、書類のどこにもミスは無かった。
「……ん、ミスは無いな。」
こういう所は完璧な西連寺。仕事に関しては評価しているし、信頼している。
…………認めたくはないが。
判を押した書類を西連寺に渡す。
「特に言うことは無い。確かに処理した」
「ったりめーだろ。俺が直々に作った書類だ」
「……用が済んだら帰れ」
「てめえに言われなくても帰る。こんなとこに長々と居られるわけねえだろ、俺は忙しいんだ」
バタンッと大きな音を立てて扉が閉まる。物に当たるなと言いたい。
まったく、最後まで人を苛立たせる奴だな。
呆れて溜息を吐く。すっかり冷たくなってしまったコーヒーに再度口を付けた。
そういえば、リコールの件で忠告しに行った時、なんで西連寺だけあんなに余裕そうだったのか聞くのを忘れていた。
…………と言っても、西連寺の考えている事なんか俺に分かるはずもないが。
何が気に食わないのか分からないが、俺はそんなに西連寺のことが嫌いじゃないんだがな。コーヒーを飲み干し、休憩を終えてまた書類に向かいながらどこか腑に落ちない感情を抱く。しかし、それもすぐに振り払った。
まあ、向こうが嫌いなら距離を置くのが正解だろう。
触らぬ神に祟りなし、だ。
153
あなたにおすすめの小説
あの夏の日を忘れない ~風紀委員長×過去あり総長~
猫村やなぎ
BL
椎名由は、似てるという言葉が嫌いだった。
髪を金にして、ピアスを付けて。精一杯の虚勢を張る。
そんな彼は双子の兄の通う桜楠学園に編入する。
「なぁ由、お前の怖いものはなんなんだ?」
全寮制の学園で頑張り屋の主人公が救われるまでの話。
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
誰かの望んだ世界
日燈
BL
【完結】魔界の学園で二年目の学園生活を送るイオは、人知れず鶯色の本をめくる。そうすれば、必要な情報を得ることができた。
学園には、世界を構成するエネルギーが結晶化したといわれる四つの結晶石≪クォーツ≫を浄める、重要な家系の生徒が集っている。――遥か昔、世界を破滅に導いたとされる家系も。
彼らと過ごす学園生活は賑やかで、当たり前のようにあったのに、じわじわと雲行が怪しくなっていく。
過去との邂逅。胸に秘めた想い――。
二度目の今日はひっそりと始まり、やがて三度目の今日が訪れる。
五千年ほど前、世界が滅びそうになった、その時に。彼らの魂に刻まれた遺志。――たった一つの願い。
終末を迎えた、この時に。あなたの望みは叶うだろうか…?
――――
登場人物が多い、ストーリー重視の物語。学校行事から魔物狩り、わちゃわちゃした日常から終末まで。笑いあり涙あり。世界は終末に向かうけど、安定の主人公です。
2024/11/29完結。お読みいただき、ありがとうございました!執筆中に浮かんだ小話を番外編として収めました。
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
ひみつのモデルくん
おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。
高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎
主人公総受け、総愛され予定です。
思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。
後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。
もういいや
ちゃんちゃん
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる