25 / 121
8
しおりを挟む龍神side
「うわああああああ、ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!」
「落ち着け、これは事故だ」
突然だが、事故が起きた。
……ああ、すまない、俺も少し混乱しているようだ。説明不足だったな。
とりあえず目の前にいる生徒を宥めて落ち着かせる。自分より取り乱している人がいると案外冷静になれるものだ。
「でっでも……僕のせいで風紀委員長様がっ!」
涙目になってこちらを見る彼は強く責任を感じているらしく、なかなか引かない。視線は俺のつけている腕輪。
そこには、捕縛の完了を知らせる赤色のランプを灯す銀の腕輪がある。彼がつけている腕輪も、同様の色をしていた。
何が起こったのか、順を追って説明しようか。
俺はあの後鬼ごっこに集中し、他の人に見つからないように静かに歩いていたのだが、ちょうど階段を上っていた時、この今対面している彼と鉢合わせてしまった。向こうも俺に驚いたらしく足を滑らせて階段から落ちてしまったので、反射的に俺が抱きとめたらセンサーが反応してしまった、というわけだ。
たまたま、逃げる側の生徒だったらしい。
よって俺と彼はペアになってしまい、彼は今その責任を感じて項垂れている。
「いいか、俺は別に新歓ではなくとも君を助けていた。つまりこれは当然のことであり、君が責任を感じることじゃない」
だから気にするな。
そう伝えると彼は呆然として
「ほ、ほんとに噂通りの人だ……」
と呟いた。噂とは……?例の笑わない云々のことだろうか。
「ところで、君の名前を聞いてもいいか。いい加減二人称で呼ぶのも失礼だ」
「は、はひ!いいい一年Sクラスの、み、三浦尋と申しますっ!!」
……三浦?
「ああ、転校生と懇意にしている生徒というのは、君のことか」
俺が呟くと三浦はビクッと肩を震わせて恐る恐る頷いた。
なるほど、道理で見た事のある顔だと思ったわけだ。
しかし、彼を捕まえたということは、俺が三浦に何か願いを言わなければならないということだよな……。
参ったな、誰も捕まえないつもりだったんだが……まあ、新歓が終わるまで気長にゆっくり考えるとしようか。
それに、
「君を捕まえたことで皆も俺を追い掛けないだろうしな」
「へ?」
「君も可愛らしい顔立ちをしているし、俺といる方が安全だろう。行こうか」
「えっ?!」
悪いが少しだけこの状況を利用させてもらうぞ。
ぼやっとしている三浦の手を引いて校内を歩く。堂々と歩けるようになって安心した。
「はっ!!ちょっっと待ってくださいっ!無理です無理です殺されちゃいます!」
唐突に我に返り真っ青な顔をした三浦が焦ったようにこちらに訴えた。
「何でだ?」
首を傾げると三浦はうっ、と呻いて怯んだが、すぐにまた喚いた。
「おかしいです僕が風紀委員長様みたいな人気者とペアになるなんて!!ここは普通王道転校生のポジションのはずなのに僕がここに収まったら腐男子受けみたいでまずいです!」
ん??
「悪い、半分くらい単語が分からなかった」
「だから、僕は萌えの傍観者でありたいのであって、主人公にはなりたくないんです!」
何となく既視感を覚えて首を捻ると、該当する人物の顔が浮かんだ。響だ。
もしかすると彼は響と同類なのだろうか。心無しか同じものを感じるが…………。
「とにかく!ダメなんです!風紀委員長様とペアなんて僕制裁受けちゃいますよ!!!!!」
………………制裁?
「俺に親衛隊はいないが……もしそれが本当ならそれは絶対に防いでみせる。それが俺の仕事だ」
「ああああ!違うんですぅうううう!!」
これではその証明が不十分ということだろうか。根拠がない、と?
ふむ。
少し考え込み、三浦の手を取ると彼は突然のことに慌てふためいた。
「俺が必ず守る。これでもダメか…………?」
背の低い三浦の為に屈んでそう口にすると、三浦は顔を真っ赤にして狼狽した。
「なっ、なっ、なあああ……」
返事はない。ということは、了承と取っていいのだろうか。そう思って顔を覗き込んでみた。
「三浦?」
「も、もう、良いですから……ペアで良いです……」
蚊の鳴くような声でそう返され、俺は満足して頷く。そうと決まれば俺がエスコートしなくては。
「三浦、行こう」
今度こそ、三浦は俺の手を取って歩き始めた。
110
あなたにおすすめの小説
あの夏の日を忘れない ~風紀委員長×過去あり総長~
猫村やなぎ
BL
椎名由は、似てるという言葉が嫌いだった。
髪を金にして、ピアスを付けて。精一杯の虚勢を張る。
そんな彼は双子の兄の通う桜楠学園に編入する。
「なぁ由、お前の怖いものはなんなんだ?」
全寮制の学園で頑張り屋の主人公が救われるまでの話。
誰かの望んだ世界
日燈
BL
【完結】魔界の学園で二年目の学園生活を送るイオは、人知れず鶯色の本をめくる。そうすれば、必要な情報を得ることができた。
学園には、世界を構成するエネルギーが結晶化したといわれる四つの結晶石≪クォーツ≫を浄める、重要な家系の生徒が集っている。――遥か昔、世界を破滅に導いたとされる家系も。
彼らと過ごす学園生活は賑やかで、当たり前のようにあったのに、じわじわと雲行が怪しくなっていく。
過去との邂逅。胸に秘めた想い――。
二度目の今日はひっそりと始まり、やがて三度目の今日が訪れる。
五千年ほど前、世界が滅びそうになった、その時に。彼らの魂に刻まれた遺志。――たった一つの願い。
終末を迎えた、この時に。あなたの望みは叶うだろうか…?
――――
登場人物が多い、ストーリー重視の物語。学校行事から魔物狩り、わちゃわちゃした日常から終末まで。笑いあり涙あり。世界は終末に向かうけど、安定の主人公です。
2024/11/29完結。お読みいただき、ありがとうございました!執筆中に浮かんだ小話を番外編として収めました。
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
目立たないでと言われても
みつば
BL
「お願いだから、目立たないで。」
******
山奥にある私立琴森学園。この学園に季節外れの転入生がやってきた。担任に頼まれて転入生の世話をすることになってしまった俺、藤崎湊人。引き受けたはいいけど、この転入生はこの学園の人気者に気に入られてしまって……
25話で本編完結+番外編4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる