笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

文字の大きさ
100 / 122

23

しおりを挟む




 その後も俺はずっと西連寺と藍野のことが気になって、見回りもどこかうわの空だった。


 今更かもしれないが、西連寺はどうして俺が好きなのだろうか。最初は、絶対に藍野のことが好きだったはずなのに。


 
「どうした、んなしけた面して」


 

 見回りを終えて帰ってきた俺に西連寺が怪訝そうな顔をした。よほど俺が変な顔をしているのだろう、何やら心配そうにこちらを覗き込んでくる。その顔は本当にこちらを案じていて、俺はついそのまま呟いてしまった。

 

「お前は………藍野が好きではないのか?」


「は?」



 ぐっと西連寺の眉間の皺が深くなる。不穏な空気に、まずいと思って少し後ずさるがもう遅い。苛立たしげに目を眇めて俺を引き寄せ、間近で睨んだ。


「夏に、俺はお前になんて言った?」


「………………………俺が、好きだと」


「ああそうだ、俺が好きなのはお前だ。純のことは……正直言うと最初っから利用しかしてねぇよ。悪かったとは思ってるがそれ以上の気持ちはない」



 分かったか?と瞳を見つめてくる西連寺に気圧されてこくこくと頷くと、西連寺は満足そうに口角を上げて、突然前触れも無くキスしてきた。

 

「っん!?」

「「「きゃぁあああああああああ!!!!」」」




 あの夏とは違って触れるだけの軽いものだったが、免疫のない俺は唇を離した西連寺に呆然とした顔を向けた。背後でこちらの様子を見ていた生徒たちが黄色い悲鳴をあげたところでようやく何が起こったか理解して、一気に顔に熱が集中した。




 こ、いつっ………本当に、っ………! 



 
「分かったら二度と同じ質問すんな。次は本気で食うからな」




 涼しい顔で俺の安否に関わることを警告し、真っ赤な顔で震える俺にふっ、と笑う。



 
「俺がんなことすんのも言うのも、もうお前だけだ」




 その艶やかな笑みを見て、こいつのこういう顔に親衛隊はやられたのだろうかと思った。俺は親衛隊ではないのに、その顔を目にすると知らず引き込まれてしまう。そのせいでなんで俺のことが好きなのか、という問いは結局聞けずじまいで、代わりに俺は弱々しく睨んで反抗した。


「お前は、俺の返事を待つ側のはずだろう!」



 なのに、待つどころか日に日に急接近している。反則だ、ルール違反だ。



 しかし西連寺は俺の睨みなど全く気にせずに、意地悪く含み笑いをした。



 
「待ってる間に誘惑するのは全然アリだろ?こうでもしねぇと盗られちまうかもしんねぇからな。それに、俺がお前に待っとけっつっただけで、俺自身は別に待たなくていーんだよ」



 

 横暴すぎる。俺だけこいつを待って、こいつはただ仕掛けて来るだけだなんて。そんなの喰われるのをじっと待つだけじゃないか。



 だが、おそらくこいつに何を言ってもうまく言い逃れされてむしろ打ち負かされるだけなので黙り込む。また調子を狂わされたら堪ったものじゃない。



 
「それで?なんで急にんなこと聞いてきたんだ?」



 


 騙せなかったらしい。ちゃんと覚えていた西連寺が俺の手を握って聞いてきた。視線を外す。


「何でもない、少し気になっただけだ…………ところで、もう一ついいか。『推し』とは何のことか分かるか?」




 俺が誤魔化そうとしていることに気がついた西連寺が即座に口を開きかけたが、その前に話題を転換する。西連寺は怪しむような視線を向けながらも、俺の問いにはしっかり反応した。


 

「『推し』………?あの、推薦とかの意味のあれか?」




 眉を顰めて首を傾げるあたり、西連寺も知らない言葉のようだ。こいつが知らないということはやはりマイナーな情報で、気にする必要はないのかもしれない。そう思ってふと周りに目をやって、ギョッとなった。



「うっ腐腐腐、腐腐っ………会長との生キス、尊い……イチャラヴ最高」


 

 いつの間にそこにいたのか、直立不動でそばに立った響が鼻血を出しながら何かを呟いていた。ちょっと狂気を感じる。同じように俺の視線を辿り響を発見した西連寺もドン引きした顔で響を見た。


 
「おい……保健委員長が保健室行きの状態になってんだが」

 
「響、とにかく鼻血を拭いた方がいい」

 



 二人して残念なものを見る目でいると、響が一人でに悶絶した。


 
「完全に夫婦………」



 

 どこが夫婦だ。



 思わず心の中で突っ込む。西連寺がポツリとこぼした。


 

「残念な息子を持っちまったな……」


「ねぇやめてなんか悲しい」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

なぜ同じ部屋になるんだ!

猫宮乾
BL
 王道学園、非王道のお話です。生徒会顧問×風紀委員会顧問。告白されて、付き合うまで。片思いのお話です。

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

誰かの望んだ世界

日燈
BL
 【完結】魔界の学園で二年目の学園生活を送るイオは、人知れず鶯色の本をめくる。そうすれば、必要な情報を得ることができた。  学園には、世界を構成するエネルギーが結晶化したといわれる四つの結晶石≪クォーツ≫を浄める、重要な家系の生徒が集っている。――遥か昔、世界を破滅に導いたとされる家系も。  彼らと過ごす学園生活は賑やかで、当たり前のようにあったのに、じわじわと雲行が怪しくなっていく。  過去との邂逅。胸に秘めた想い――。  二度目の今日はひっそりと始まり、やがて三度目の今日が訪れる。  五千年ほど前、世界が滅びそうになった、その時に。彼らの魂に刻まれた遺志。――たった一つの願い。  終末を迎えた、この時に。あなたの望みは叶うだろうか…? ――――  登場人物が多い、ストーリー重視の物語。学校行事から魔物狩り、わちゃわちゃした日常から終末まで。笑いあり涙あり。世界は終末に向かうけど、安定の主人公です。  2024/11/29完結。お読みいただき、ありがとうございました!執筆中に浮かんだ小話を番外編として収めました。

俺を注意してくる生徒会長の鼻を明かしてやりたかっただけなのに

たけむら
BL
真面目(?)な生徒会長×流されやすめなツンデレ男子高校生。そこに友達も加わって、わちゃわちゃの高校生活を送る話。 ネクタイをつけてこないことを毎日真面目に注意してくる生徒会長・伊佐野のことを面白がっていた水沢だったが、実は手のひらの上で転がされていたのは自分の方だった? そこに悪友・秋山も加わってやいのやいのにぎやか(?)な高校生活を送る話。 楽しんでいただけますように。どうぞよろしくお願いします。

ひみつのモデルくん

おにぎり
BL
有名モデルであることを隠して、平凡に目立たず学校生活を送りたい男の子のお話。 高校一年生、この春からお金持ち高校、白玖龍学園に奨学生として入学することになった雨貝 翠。そんな彼にはある秘密があった。彼の正体は、今をときめく有名モデルの『シェル』。なんとか秘密がバレないように、黒髪ウィッグとカラコン、マスクで奮闘するが、学園にはくせもの揃いで⁉︎ 主人公総受け、総愛され予定です。 思いつきで始めた物語なので展開も一切決まっておりません。感想でお好きなキャラを書いてくれたらそことの絡みが増えるかも…?作者は執筆初心者です。 後から編集することがあるかと思います。ご承知おきください。

先輩たちの心の声に翻弄されています!

七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。 ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。 最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。 乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。 見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。 **** 三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。 ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️

灰かぶり君

渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。 お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。 「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」 「……禿げる」 テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに? ※重複投稿作品※

推しを擁護したくて何が悪い!

人生2929回血迷った人
BL
所謂王道学園と呼ばれる東雲学園で風紀委員副委員長として活動している彩凪知晴には学園内に推しがいる。 その推しである鈴谷凛は我儘でぶりっ子な性格の悪いお坊ちゃんだという噂が流れており、実際の性格はともかく学園中の嫌われ者だ。 理不尽な悪意を受ける凛を知晴は陰ながら支えたいと思っており、バレないように後をつけたり知らない所で凛への悪意を排除していたりしてした。 そんな中、学園の人気者たちに何故か好かれる転校生が転入してきて学園は荒れに荒れる。ある日、転校生に嫉妬した生徒会長親衛隊員である生徒が転校生を呼び出して──────────。 「凛に危害を加えるやつは許さない。」 ※王道学園モノですがBLかと言われるとL要素が少なすぎます。BLよりも王道学園の設定が好きなだけの腐った奴による小説です。 ※簡潔にこの話を書くと嫌われからの総愛され系親衛隊隊長のことが推しとして大好きなクールビューティで寡黙な主人公が制裁現場を上手く推しを擁護して解決する話です。

処理中です...