笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア

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とある生徒side




 突然すいません、自分は体育祭実行委員をしているしがない3年生です。急だが皆に問いたい。




 自分が崇拝している神が目の前に降臨されたらどうしたらいい?






 体育祭実行委員はこの体育祭の運営を任されているんですけど、自分は障害物競走の係なんですよ。って言ってもまあ、ゴール後の選手の着替え場所に待機して服を回収したりするだけなんだけど。




 ぶっちゃけあんま仕事ないんです。それでぼんやりしてたからもうなおさら目の前に最推し様が現れた時の衝撃と言ったら!!




 スカートからスラッと伸びた色白の長い脚と可愛らしい印象の黒を基調にした制服、そして茶髪のウィッグと完璧に調和している美しすぎるあのお方の顔!!!発狂モノですよあんなの!!!





 そう、最推し様というのは言わずもがな、風紀委員長の龍神瑚珀様です。







 自分一年の時から龍神様のファンなんですけど、いつも遠くから見るだけだったんですよね。あの美しすぎるお顔を拝見できるだけでめっちゃ満足だったんです。



 なのにこんな、こんな目の前でしかも女子高生姿の龍神様など!!!もう色んな感情混ざりすぎて自分の眼球を潰したいという意味わからん願望まで生まれてしまう!!あと龍神様の生足がエロすぎるいやらしい目で見た奴はとりあえずぶん殴るから出てこいやぁ……。


 

「着替えていいのか?」




 はわわわ龍神様が話しかけてくださっている……!

 


「は、はいぜひどうぞ!!!」





 むしろ着替えてくださいありがとうございますこれで生きていける。




 言葉にん、と頷いた龍神様は恥じらう様子もなくブレザーを脱ぎ捨ててブラウスのボタンに手を掛けた。プチ、プチと外されていくとそこから綺麗な肌がちらりと見え隠れ。誰かがごくりと唾を飲んだ音が聞こえた。




 うわわわわわわまずいまずいまずい見ちゃダメなの分かってるけどなんか目が固定されて逸らせないし色気が強すぎてこの身もろとも滅びそう無理しんどい尊い!!あと皆んな自分のことそっちのけで龍神様に釘付けだけど仕事しろ!






 下まで手が伸びて外そうとした時、龍神様はピタリと手を止めてしまった。『あ、』という声が小さく聞こえた。




「………しまった、先にスカートを脱ぐべきだったか」





 んんん゛っ!!!!





 脱ぐ順番間違えちゃったせいでブラウス脱げなかったんですねはい来た尊いいいいい!!!





 ところが。






 その場にいるほぼ全員が悶えている間に、龍神様はなんの躊躇いもなくスカートを脱いで────いやいや流石にいけません龍神様!!



「た、龍神様っ!!先にズボンをお召しになってください!!」


「……?、ああ、なるほど、そちらの方が効率が良いな。ありがとう」





 慌てて止めると龍神様は一瞬不思議そうな顔をした後納得したようにそう言った。こんなモブにもお礼まで言って下さったので、もう脳内で龍神様フィーバーが起きた。心の中で涙ながらに謝罪しましたよ。



 すみません龍神様そんな効率とかじゃなくもうあなたの色気を食い止めるためというか理性を保つためというかとにかくただの私情で発言したことをお許し下さい………。



「服は、君に渡せば良いのか?」





 我々をどきどきさせた龍神様は着替え終えたそうで、こちらに女子の制服を差し出してくださいました。あああ龍神様の着た制服……!!学園の裏に存在するオークションに出したら一体いくらで売れるんだろうこの品は。



 手を伸ばしてそのお品を頂戴するとふわりと香るいい匂いがもう満点。何かなシトラスかなとにかくいい匂いで涎出そう。そりゃもう必死に顔引き締めましたよ。



「……疲れたな」




 独り言を耳が拾いました。反射的に服を収めていた手を止めて龍神様を振り返ります。



「はうあっ!!!!」




 思わず叫んでしまった。でもこれは不可抗力!!




 少しだけ憂いを帯びた青の瞳、僅かに寄せられた形の良い眉、そしてどことなく気だるげな雰囲気。





 言いたくない、言いたくないし連想したくもないのですがこれは………!




 
「ちょっ、見てなんという色気だ風紀委員長様……」


「ふぐぅっ、やばい鼻血が止まらん……」


「あれは完全に事後………って待っ!」


「貴様っ!風紀委員長様に懸想するなど言語道断っ!!」


「神聖なあのお方になんという言葉を掛けようとしているんだ!!」





 ……締められている生徒には申し訳ないんですが先に代弁して犠牲になってくれて助かりました。彼が言わなければ言ってしまったかもしれない。危ない危ない。君のことは1分くらいは忘れない。





「龍神!!」







 なぬっ!!このお声はっ!!




 バッ、と入り口に顔を向けるのと空間に甲高い悲鳴が満ちるのは同時でした。予想通り、そこにいたのは生徒会長様で。



「お前、着替えるのにどんだけ時間かかってんだ」




 走ってきたのか額に光る汗を手の甲で拭きながら龍神様に近づく生徒会長様は、辺りを一瞥して眉を顰めました。



「この惨状はお前の仕業だな」




 惨状、というのはおそらく鼻血の海のことでしょうが、龍神様はなんのことか分からずに「は?」という顔をされている。生徒会長様はそんな龍神様にも慣れているのか溜め息をついた。




 生徒会長様……龍神様をゲットするのに相当苦戦しているのでは?





 思わず菩薩像のような顔をして微笑ましいなぁと見守っていると、生徒会長様、何を思ったかおもむろに来ていたジャージを脱ぎ始めました。





 えっまさかの、お前が脱いだなら俺も脱ぐという狂人思考?!





 予想外の行動にあばばばと口を覆って見ていたら、生徒会長様は脱いだジャージをなんと龍神様に羽織らせたではありませんか!!!







 はへっ、無理無理何この急な甘酸っぱい少女漫画展開推す。




「それ着とけ。目に毒だ」





 龍神様が可愛すぎて他の男に取られそうになって不安なんですよね分かります。



「……俺の体操服姿は毒なのか?そんなに見苦しい姿でもないと思うが。体育で何回も見たことがあるはずだろう」


「うっせ、いいから黙って着とけ。お前見て不愉快になるわけねぇだろ」


「……訳分からん」


「いいから、着ろ!」




 目をぱちくりしながらも龍神様は会長様の言う通りにジャージに袖を通します。生徒会長様の方が身長が高いので袖の長さが合わなくて萌え袖になっているのがまたクるものがありますよもう。



 そしてそんな可愛すぎる龍神様を見て口元を押さえて笑みを隠しきれていない生徒会長様も可愛いとか何事?めっちゃ嬉しそうなんですけど。何あの空間可愛すぎか??




「もう行くぞ。それ、終わるまで着とけよ」



「……なんなんだ本当に」






 こいつは俺のだ。盗られてたまるか。





 ぼそっと生徒会長様が呟きながら龍神様の手を引いて歩いて出て行ってしまうと、残された我々は堰き止めていた心の声を爆散させました。
















 
「「「一生推すわあの方々」」」

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