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プロローグ
別れを告げる者達 1
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部屋の中に自然と出来ていた道を通り、自らの席へと腰を下ろしたカイは、それがすぐさま塞がれるさまを目にして、僅かに肩を震わせていた。
見れば、皆一様に真剣な表情をしている。
彼らの顔を一通り眺めたカイは、誰も口火を切ろうとしない状況に、渋々ながら重たい口を開く。
「えー・・・それじゃあ、誰から話してもらおうか。そうだな―――」
「私からでよろしいでしょうか、リンデンバウム様?」
「あぁ・・・メルクリオ、君からか。どうぞ」
身に着けている物がその人を現すならば、横並びに整列した集団から一歩前に進み出てきたその男が、この中で一番裕福であり美的センスにも優れていることだけは分かる。
メルクリオと呼ばれた背中に翼を生やした男は、上等な衣服を身に纏っている者が多いこの場にあって、はっきりと違いが分かるほどに上質な物によってその身を固めていた。
彼は笑顔を作ることによってずれてしまったメガネを、そっと元の位置に戻すと、再びカイに対して笑いかけていた。
「リンデンバウム様。大変申し訳ないのですが、私はここに残らさせてもらいます。理由としましては―――」
「あぁ、それは言わなくてもいい。君は元々、稼げそうだからと私の下に来たのだったな。それがあんな辺境にまでついて来る訳はない、当然の判断だよ」
鳥人の男、メルクリオを凄腕の商人であった。
元々、鳥人は亜人の一種として人類の圏内で生活しており、主にその翼を生かして空輸業を営んでいた。
彼らの生業はその速度と確実性から、政府間のやり取りなど重要な物品を多く扱っていたが、そこに目をつけたメルクリオは、その情報を一手に握ることで莫大な富を築く事に成功する。
しかしそんなことがいつまでもうまくいく筈もなく、彼らの情報を悪用していることがばれた鳥人達は、人類圏から排斥されてしまう。
メルクリオはそんな鳥人達を保護する立場の男だ、それがカイについて辺境にまで足を運ぶ訳にもいかない。
「ご理解いただき恐縮でございます。つきましては、魔王様への口添えも遠慮願えればと。私にも、それなりの伝手がございますので」
「そうか。分かったよ、メルクリオ。今まで良く仕えてくれた」
カイに付き従うことを拒んだ挙句、その最後の思いやりを拒んだメルクリオに周りの者達、特にヴェロニカが彼を睨みつける。
それも彼の言葉を快く受け入れた、カイの声が響くまでだ。
それによって多くの者が表情を和らげる中、ヴェロニカだけが厳しい表情を崩すことはなかった。
「こちらこそ。良い商売が出来ましたこと、お礼申し上げます。それでは、私はこれで失礼いたします」
「あぁ・・・いつかもう一度君と取引できるよう、向こうに行っても努力しなくてはな」
「ふふふ・・・その時を、楽しみにしております」
ダンジョンが順調に発展し、そこで取れたものを使って商売するという、ささやかな未来を思い描きカイは去り行くメルクリオに声を掛けていた。
その言葉に扉に手を掛けたまま振り向いたメルクリオは、妙に意味ありげな微笑を浮かべて退室していく。
その仕草に、カイはただただ首を捻るばかりであった。
見れば、皆一様に真剣な表情をしている。
彼らの顔を一通り眺めたカイは、誰も口火を切ろうとしない状況に、渋々ながら重たい口を開く。
「えー・・・それじゃあ、誰から話してもらおうか。そうだな―――」
「私からでよろしいでしょうか、リンデンバウム様?」
「あぁ・・・メルクリオ、君からか。どうぞ」
身に着けている物がその人を現すならば、横並びに整列した集団から一歩前に進み出てきたその男が、この中で一番裕福であり美的センスにも優れていることだけは分かる。
メルクリオと呼ばれた背中に翼を生やした男は、上等な衣服を身に纏っている者が多いこの場にあって、はっきりと違いが分かるほどに上質な物によってその身を固めていた。
彼は笑顔を作ることによってずれてしまったメガネを、そっと元の位置に戻すと、再びカイに対して笑いかけていた。
「リンデンバウム様。大変申し訳ないのですが、私はここに残らさせてもらいます。理由としましては―――」
「あぁ、それは言わなくてもいい。君は元々、稼げそうだからと私の下に来たのだったな。それがあんな辺境にまでついて来る訳はない、当然の判断だよ」
鳥人の男、メルクリオを凄腕の商人であった。
元々、鳥人は亜人の一種として人類の圏内で生活しており、主にその翼を生かして空輸業を営んでいた。
彼らの生業はその速度と確実性から、政府間のやり取りなど重要な物品を多く扱っていたが、そこに目をつけたメルクリオは、その情報を一手に握ることで莫大な富を築く事に成功する。
しかしそんなことがいつまでもうまくいく筈もなく、彼らの情報を悪用していることがばれた鳥人達は、人類圏から排斥されてしまう。
メルクリオはそんな鳥人達を保護する立場の男だ、それがカイについて辺境にまで足を運ぶ訳にもいかない。
「ご理解いただき恐縮でございます。つきましては、魔王様への口添えも遠慮願えればと。私にも、それなりの伝手がございますので」
「そうか。分かったよ、メルクリオ。今まで良く仕えてくれた」
カイに付き従うことを拒んだ挙句、その最後の思いやりを拒んだメルクリオに周りの者達、特にヴェロニカが彼を睨みつける。
それも彼の言葉を快く受け入れた、カイの声が響くまでだ。
それによって多くの者が表情を和らげる中、ヴェロニカだけが厳しい表情を崩すことはなかった。
「こちらこそ。良い商売が出来ましたこと、お礼申し上げます。それでは、私はこれで失礼いたします」
「あぁ・・・いつかもう一度君と取引できるよう、向こうに行っても努力しなくてはな」
「ふふふ・・・その時を、楽しみにしております」
ダンジョンが順調に発展し、そこで取れたものを使って商売するという、ささやかな未来を思い描きカイは去り行くメルクリオに声を掛けていた。
その言葉に扉に手を掛けたまま振り向いたメルクリオは、妙に意味ありげな微笑を浮かべて退室していく。
その仕草に、カイはただただ首を捻るばかりであった。
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