42 / 308
ダンジョン経営の始まり
アトハース村の事情 4
しおりを挟む
「あー・・・実はですね、皆さん。こんなものが、そのダンジョンから―――」
「夢みたいな事ばかり言ってるんじゃない!!そんなのは元々栄えていた街が、ダンジョンによってさらに発展したって話でしかないだろ!!こんな辺境で、それと同じ事が出来る訳がないだろうが!!」
ポーションの入った瓶をチラ見せしながら、ダンジョンの魅力をアピールしようとしていたカイの試みは、突如響き渡った大声によって掻き消されてしまう。
それは先ほどまで疲れた顔をしていた男が、若者の浮かれた発言にぶち切れて怒鳴り散らしたものであった。
彼は若者が語った内容など、夢物語に過ぎないと切り捨てる。
現実として、それは正しいだろう。
こんな辺境の村に、ダンジョンで村がうまく回せるようになるまで持たせる体力などない。
そんな状況でダンジョンを使った村興しなど、夢のまた夢でしかない筈だ。
そのダンジョンが、何故か異常なほど人間に協力的なダンジョンでなければ。
「そ、そんな事!やってみないと分からないだろ!!」
「分かるさ。大体冒険者を呼ぶといっても、その金はどうやって用意するつもりだ?いつものゴブリンを蹴散らしてくれというのとは訳が違う。未調査のダンジョンに挑んでもらうとなれば、危険な仕事だ。当然依頼料も莫大なものとなるが・・・当てはあるんだろうな?」
「うっ、それは・・・」
未調査のダンジョンの探索などという仕事は、当然相応の危険が付き纏う。
そのためそれらの仕事には実力のある冒険者が派遣される事になるが、その依頼料は安いものではない。
彼らが普段依頼するような、弱い魔物の撃退ならば駆け出しの冒険者やそれに毛が生えた程度の冒険者でもよく、依頼料も安いものであったが今回のケースはそうもいかない。
財政難という現実を男に突きつけられた若者は、反論の言葉を見つけられずに言葉を詰まらせてしまっていた。
「アダムスさんの話じゃ、今度鉱山復興に賛同してくれる人を連れてきてくれるらしい。ダンジョンについては、その後でもいいだろう?今は、実際に危険が降りかかるまで見て見ぬ振りをするしかないんだ」
「ちっ!分かったよ・・・」
男は若者の言葉に理解を示しながらも、今は鉱山復興を優先するべきだと語りかける。
その言葉は重い現実を背負い続けた、諦めが滲んでいた。
彼の言葉に舌打ちを漏らした若者は、それでも渋々ながらその言葉を受け入れると、どっかりと席に腰を下ろしていた。
「・・・キルヒマンさんと言ったか?そういう事だから、あんたには悪いがダンジョンの事は黙っていてくれないか?この村は、今大事な時期なんだ。頼む、この通りだ」
「え、えぇ?・・・その、えっと。は、はぁ・・・」
自らに向かって深々と頭を下げ、真摯にダンジョンの事を黙っていてくれと頼む男の姿に、カイは戸惑うことしか出来ない。
いい感じの流れとなり、このままダンジョンを中心とした村の発展という、理想の展開へと持っていけることを期待していたカイは、思わぬ展開に思わず呆けてしまっていた。
「それ、あんたの商品かい?悪いが、この村にそんな高級そうな品を買える人はいないと思うよ」
取り出したポーションを掲げたまま呆けていたカイに、男はそれへと目線をやっていた。
彼はその商品はこの村では売れないというアドバイスを残すと、そのまま立ち去ろうとしていく。
「ま、待ってください!これはですね、実はダンジョンから―――」
「悪いが、もうダンジョンの話はしないでくれ。皆も聞きたくないだろう」
「あ、はい」
このアイテムの価値をアピールして起死回生を図ろうとしたカイの試みは、死んだ魚の目をした男によって阻まれてしまう。
彼は静かだが断固とした口調で、ダンジョンの話はもうするなとカイに警告する。
その迫力に、カイはただただ頷く事しか出来なかった。
「えぇー・・・なんで。なんで、こうなるの?」
激しい口論に居辛くなった為か、先ほどまであれほど屯していた客達は、いつの間にかその姿を消していた。
寂れた酒場には、食器磨きを再開した酒場の主人とカイだけが佇んでいる。
客達が去り、その使っていた食器を洗うのに夢中な酒場の主人は、カイが思わず零してしまった絶望の呟きを聞き逃す。
食器を磨く乾いた音が響く酒場に、カイはしばらく呆然と立ち尽くしてしまっていた。
「夢みたいな事ばかり言ってるんじゃない!!そんなのは元々栄えていた街が、ダンジョンによってさらに発展したって話でしかないだろ!!こんな辺境で、それと同じ事が出来る訳がないだろうが!!」
ポーションの入った瓶をチラ見せしながら、ダンジョンの魅力をアピールしようとしていたカイの試みは、突如響き渡った大声によって掻き消されてしまう。
それは先ほどまで疲れた顔をしていた男が、若者の浮かれた発言にぶち切れて怒鳴り散らしたものであった。
彼は若者が語った内容など、夢物語に過ぎないと切り捨てる。
現実として、それは正しいだろう。
こんな辺境の村に、ダンジョンで村がうまく回せるようになるまで持たせる体力などない。
そんな状況でダンジョンを使った村興しなど、夢のまた夢でしかない筈だ。
そのダンジョンが、何故か異常なほど人間に協力的なダンジョンでなければ。
「そ、そんな事!やってみないと分からないだろ!!」
「分かるさ。大体冒険者を呼ぶといっても、その金はどうやって用意するつもりだ?いつものゴブリンを蹴散らしてくれというのとは訳が違う。未調査のダンジョンに挑んでもらうとなれば、危険な仕事だ。当然依頼料も莫大なものとなるが・・・当てはあるんだろうな?」
「うっ、それは・・・」
未調査のダンジョンの探索などという仕事は、当然相応の危険が付き纏う。
そのためそれらの仕事には実力のある冒険者が派遣される事になるが、その依頼料は安いものではない。
彼らが普段依頼するような、弱い魔物の撃退ならば駆け出しの冒険者やそれに毛が生えた程度の冒険者でもよく、依頼料も安いものであったが今回のケースはそうもいかない。
財政難という現実を男に突きつけられた若者は、反論の言葉を見つけられずに言葉を詰まらせてしまっていた。
「アダムスさんの話じゃ、今度鉱山復興に賛同してくれる人を連れてきてくれるらしい。ダンジョンについては、その後でもいいだろう?今は、実際に危険が降りかかるまで見て見ぬ振りをするしかないんだ」
「ちっ!分かったよ・・・」
男は若者の言葉に理解を示しながらも、今は鉱山復興を優先するべきだと語りかける。
その言葉は重い現実を背負い続けた、諦めが滲んでいた。
彼の言葉に舌打ちを漏らした若者は、それでも渋々ながらその言葉を受け入れると、どっかりと席に腰を下ろしていた。
「・・・キルヒマンさんと言ったか?そういう事だから、あんたには悪いがダンジョンの事は黙っていてくれないか?この村は、今大事な時期なんだ。頼む、この通りだ」
「え、えぇ?・・・その、えっと。は、はぁ・・・」
自らに向かって深々と頭を下げ、真摯にダンジョンの事を黙っていてくれと頼む男の姿に、カイは戸惑うことしか出来ない。
いい感じの流れとなり、このままダンジョンを中心とした村の発展という、理想の展開へと持っていけることを期待していたカイは、思わぬ展開に思わず呆けてしまっていた。
「それ、あんたの商品かい?悪いが、この村にそんな高級そうな品を買える人はいないと思うよ」
取り出したポーションを掲げたまま呆けていたカイに、男はそれへと目線をやっていた。
彼はその商品はこの村では売れないというアドバイスを残すと、そのまま立ち去ろうとしていく。
「ま、待ってください!これはですね、実はダンジョンから―――」
「悪いが、もうダンジョンの話はしないでくれ。皆も聞きたくないだろう」
「あ、はい」
このアイテムの価値をアピールして起死回生を図ろうとしたカイの試みは、死んだ魚の目をした男によって阻まれてしまう。
彼は静かだが断固とした口調で、ダンジョンの話はもうするなとカイに警告する。
その迫力に、カイはただただ頷く事しか出来なかった。
「えぇー・・・なんで。なんで、こうなるの?」
激しい口論に居辛くなった為か、先ほどまであれほど屯していた客達は、いつの間にかその姿を消していた。
寂れた酒場には、食器磨きを再開した酒場の主人とカイだけが佇んでいる。
客達が去り、その使っていた食器を洗うのに夢中な酒場の主人は、カイが思わず零してしまった絶望の呟きを聞き逃す。
食器を磨く乾いた音が響く酒場に、カイはしばらく呆然と立ち尽くしてしまっていた。
0
あなたにおすすめの小説
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。
身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。
そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと!
これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。
※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。
女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。
まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。
しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。
怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる