ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

文字の大きさ
94 / 308
初めてのお客様

宝箱と子供達 2

しおりを挟む
「なぁ、それよりこれを見ろよ!」
「そんな事って、相手の出方を窺うのは重要な・・・何だい、それは?」

 ハロルドの疑問なんかよりも気になるものがあるらしいクリスは、もう待ちきれないという雰囲気で声を上げると、この部屋の一角を指差していた。
 そこにはしっかりとした装飾のなされた、丈夫そうな箱がポツンと鎮座している。
 クリスの発言に不満を零していたハロルドも、それを目にすると態度を変えざるを得ない。
 その周りの景色から明らかに浮いており、ダンジョンにも似つかわしくない箱は不可解で、ハロルドに新たな悩みの種を与える事となっていた。

「何って、箱だろ?なんか見た目もしっかりしてるし、良いもん入ってそうじゃね?開けてみようぜ!」
「ま、待てクリス!!早まるな!そんなの、どう考えても怪しいだろう!?」

 ハロルドの疑問の声に客観的な事実だけを返したクリスは、駆け足でその箱へと近づくと今にもそれを開こうと腕を近づけていく。
 ワクワクが抑えられないという様子の彼は、すぐにでもそれを開けてしまうだろう。
 しかしどう考えても怪しいその箱に、ハロルドは必死に待ったを掛ける。
 留まる事を知らない期待感も、流石にパーティの頭脳担当の言葉を無視するまでにはいかないのか、クリスは渋々といった様子でその箱へと掛かっていた指を引っ込めていた。

「えぇ~、そうかぁ?」
「当たり前だろ!!大体、僕らのパーティには罠があるかを調べたり解除できる人間がいないんだ。慎重になるのが当然だろう?」

 ハロルドの制止にも、はっきりとした未練を覗かせてその箱へと指を伸ばしているクリスは、ねだるような瞳を彼へと向けている。
 クリスの様子に放っておいたら無理矢理にでもそれを開けてしまうと察したハロルドは、足早に彼へと詰め寄っていく。
 彼の後ろではまたも落とされてしまった布切れを、寂しそうに絞っているアイリスの姿があった。

「どうしても駄目か?こう・・・ちょっと開けてみるとかさ。そうだ!この棒を使って遠くから開けようぜ!それなら大丈夫だろう?」
「はぁ・・・鍵が掛かってるかもしれないだろう?それにちょっと離れたぐらいじゃ、毒ガスや爆発の罠だったら避けられない。その上ここはダンジョンなんだ、それと連動して動く仕掛けがあるかもしれないだろ?僕は反対だな」

 どうしてもその箱を諦めきれないクリスは、何とかハロルドに許可を貰おうと手に持っていた木の棒を掲げている。
 キラキラと輝く瞳を向けながら、こちらにその棒の存在をアピールしてくるクリスの姿に、ハロルドは深々と溜め息を吐くと、その箱を開けてはいけない理由を訥々と語っていく。
 彼の言葉に、激しく揺すられていた木の棒はやがてその勢いをなくしていき、いつしか頭を垂れるように下を向いてしまっていた。

「どうしても、駄目?」
「・・・そんなに中身が気になるなら、帰りにでも開ければいいだろ。そうすれば多少被害が出ても、そのまま帰ればいいからね」

 流石に説得は無理だと感じ始めたのか、未練がましくその箱の縁を撫でていたクリスは、最後に一言ハロルドへと願いの言葉を投げかける。
 そんな彼の寂しげな姿に同情した訳ではないだろうが、ハロルドは溜め息混じりに妥協案を口にしていた。
 その内容は、クリスにとって意外なものであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。

まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。 しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。 怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...