ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

文字の大きさ
151 / 308
初めてのお客様

初めての冒険とその結末 3

しおりを挟む
「何にせよ、当初の目的は達成できたようだな。色々とトラブルはあったが、存外うまくいったのではないか?あぁそうだ、道中に設置されていた宝箱はどうなったんだ?もう罠の心配はないと分かっただろうし、それも開けられたんだろう?」

 このダンジョンの最初のフロアを踏破し、最後に用意されたお宝を手に入れる。
 今回の冒険に設定されたその目標の達成に、カイは満足げな表情で頷いている。
 彼はそのついでとばかりに、回収されていなかった宝箱がどうなったのかをヴェロニカに尋ねていた。
 あの中には回復のポーション各種が詰まっており、それは今後訪れる冒険者にとって目玉の商品となる筈だ。
 そのための布石も打っているカイとしては、それもちゃんと回収して帰って欲しいというのが本音であった。

「それが、その・・・どうやら流石に彼らも疲れていたようで、それに目もくれずに帰途についたようです」
「・・・そうか。うむ、まぁそんな事もあるだろう」

 上機嫌に問い掛けてくるカイの姿に、ヴェロニカはなんとも言い辛そうに言葉を濁している。
 その彼女が口にしたのは、またもあの宝箱がスルーされてしまったという事実であった。
 彼女の言葉に、カイが落胆しながらも冷静な態度を続けられたのは、彼女がその振る舞いで結果を示唆してくれたからだろう。
 予想できた結末に、そのショックは小さい。
 しかし自らの席へと戻るカイの足取りは、自然と重いものへと変わってしまっていた。

「カイ様、お召し物でございます」
「ん?あぁ、そういえばこの姿のままだったな」

 自らの席へと戻ろうとしていたカイに、ヴェロニカが静かに何かを差し出してきていた。
 一瞬それが何なのか分からなかったカイも、その手に乗せられた衣服と自らの身体を見れば、その意味も理解できるだろう。
 スライムの姿のままであった自らの身体を見下ろして、彼女からその服を受け取ったカイは、早速いつもの姿へと変身していた。

「っ!?カ、カイ様!?」
「おおっ、悪い悪い。気が回らなくてな」

 服を受け取った瞬間に変身した都合上、ヴェロニカの目の前には全裸のカイが現れてしまっていた。
 彼女はその姿に慌てて声を上げては、急いで身体を後ろへと背けている。
 その反応に自らのうっかりを気づいたカイはしかし、軽く謝罪の言葉を告げただけで何もすることはなかった。

「・・・こんなもんかな?よし、もう大丈夫だぞ」
「さ、先ほどは申し訳ありませんでした!」
「いやなに、こちらも不用意だったからな。謝ることは何もないぞ」

 手早く着替えを済ませたカイは、馴染んだ身体と衣服の感触を確かめると、ヴェロニカへと声を掛けている。
 その声に振り返ったヴェロニカは先ほどの粗相を頭を下げて謝罪しているが、カイはこちらも悪かったのだからと軽い口調でフォローしていた。

「さて・・・当初の目的は概ね達成した訳だが、色々と懸念事項も挙がったな」

 ヴェロニカが顔を上げたのを確認したカイは、ゆっくりと自らの席へと歩いていく。
 そこへと深々と腰掛けた彼は、目的の達成を告げる。
 席へとついたカイのためにモニターの角度を調整しているヴェロニカは、彼のすぐ傍の席へと控えるとそれにはっきりと頷いていた。
 彼らの視線の先のモニターには、このダンジョンから出て行こうとしているクリス達の姿が映っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。

まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。 しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。 怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...