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勇者がダンジョンにやってくる!
変化を求める部下達にカイ・リンデンバウムは戸惑う 4
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「そうさなぁ・・・わしが思うに、冒険者共に持ち帰らせているポーションに利用してはどうじゃろうか?あれに毒を入れるもよし、依存性のある薬物を混ぜるもよし。そうすればより広範な範囲に影響を与えられるじゃろう?」
「ここで生産されているポーションは、皆我先にと争って持ち帰っていくものね。それを利用しようというの・・・流石はダミアン、素晴らしい提案だわ」
ダミアンはヴェロニカと違い、冒険者を直接狙わずに彼らが持ち帰っているポーションを利用しようと考えていた。
彼はそこに毒や、依存性ある薬物を混入させては、徐々に人間達を弱らせる方策を提案する。
確かにこのダンジョンが提供しているポーションは品質が高く、その即効性から求める者は多い。
それは冒険者を直接狙うよりも、より広範な範囲に影響を与えられるだろう。
ダミアンのその提案には、ヴェロニカも賞賛の声を上げている。
しかしその唇は、どこか挑戦的な角度でつり上がっていた。
「でもポーションの供給は今でもギリギリで、これ以上は増やすのは難しいのよ?この状況では、その案もそれほどうまくいくものかしら?」
ダミアンの提案を素晴らしいと賞賛したヴェロニカはしかし、その計画の欠点を指摘してはほくそ笑んでいる。
ダンジョンの経営を一手に握ってるといってもいいヴェロニカからすれば、ダミアンの提案など絵空事でしかないと言いたいのだろう。
実際、ポーションの生産はすでに限界といってもいい状態であり、これ以上増産する事は不可能に近い。
その状況で新たに毒物の類まで生産しようなど、土台無理な話であった。
「何、ダンジョンの経営には迷惑は掛けんよ。そういった薬の類ならわしでも調合出来るしの。それにこの案は、先を見据えた戦略。一朝一夕に成果を求めるものでもないじゃろうて」
「あら?私の考えが短絡的だとでも言いたいのかしら?私達がこのダンジョンに赴任して、もう一ヶ月以上も経っているのよ?そろそろ結果を出さなければ上から何を言われるか・・・早急に成果を求めるのは、当然の事ではなくて?」
ヴェロニカの苦言にも、ダミアンはその長年培ってきた経験から自ら毒物を調合し、ダンジョンには迷惑は掛けないと宣言していた。
彼はポーションの増産も必要ないと語り、暗にヴェロニカが成果を焦りすぎだと示唆してすらいる。
しかしヴェロニカにも言い分があった。
彼女はダンジョンの経営だけではなく、上から圧力に対しても考えを巡らせていたのだ。
彼らがこのダンジョンに赴任してから、既に一ヶ月以上の時が経過している。
カイはここへの赴任を栄転だと捉えていたが、実際には追放に過ぎない。
上の者達は目障りなカイを追放しただけでは飽き足らず、何かと理由をつけて処分しようとするかもしれない。
そう考えるヴェロニカは、一刻も早くはっきりとした成果を上げる必要性を感じていたのだった。
(な、何か難しい話をしだしたぞ・・・え?俺ってそんなに危ない立場だったの?そんなに早く成果上げないと何か不味いのか?あぁ・・・でも成果って、それってつまり人間達に害を為せって事だよなぁ・・・うぅ、やりたくない、やりたくないぞぉ!)
ヴェロニカ達の提案を何とか躱そうと思考を巡らせていたカイは、何一つ思いつかないそれに思考を放棄して、彼女達のやり取りに耳を傾けていた。
彼はヴェロニカの言葉に、初めて自分が危ない立場かもしれないと耳にして、大いに驚いている。
自らの立場が危ういかもしれないと聞けば、当然保身を図りたくなるが、それはつまり人類に害を為すという事である。
それだけは絶対にやりたくないカイは心の中だけで、はっきりと拒絶の言葉を叫んでいた。
「はぁ・・・これ以上、私達で話し合っても平行線が続くだけね」
「そうさな。ここは・・・」
「えぇ。カイ様、ご裁可をお願いします」
カイの胸の中で渦巻く不安など露知らず、永遠と続きそうなやり取りに不毛さを感じ取り、溜め息を吐いたヴェロニカが彼へと裁可を求めてくる。
それにはダミアンも同意しているようで、先ほどまで言い争ってい二人が、その二対の瞳を真っ直ぐカイへと向けてきていた。
「あーっと・・・その、なんだ。こう・・・もうちょっと、手心というかだな」
しかし人類に害を為す事など考えられないカイからすれば、二人の提案などどちらも受け入れる訳がない。
だからといって彼に、彼らの提案に代わる考えなど示せる訳もなく、結果的に彼はただ歯切れ悪く、誤魔化すような言葉を吐き続ける事しか出来なくなってしまっていた。
「カイ様!お悩みなられるのも分かります!しかしもう時間がないのです、お早いご決断を!」
「やれやれ・・・ヴェロニカはこう申しておりますが、上の連中などには好きに言わせておけばよいのです。それよりもご想像ください、冒険者が持ち帰ったポーションによって毒されていく人間共の姿を。そして奴らが倒れた後、無人の街を支配する自らのお姿を」
カイの歯切れの悪い言葉に二人が納得する訳もなく、彼らはカイの方へと詰め寄ってきては、それぞれの意見を主張し始める。
ヴェロニカはとにかく一刻も早く成果を出すべきだと主張し、ダミアンは焦る事なく大きな事をなしなさいと諭す。
それぞれに嗜好の違った選択肢に、そこにカイが望むものが含まれているのならば、どちらかを選ぶ事も出来ただろうが、残念ながらそうはならない。
彼らの主張は、その長短に違いがあろうとも、どちらも人類に仇なす事なのは間違いがなく、カイにはどちらも選びようがないものであった。
「ここで生産されているポーションは、皆我先にと争って持ち帰っていくものね。それを利用しようというの・・・流石はダミアン、素晴らしい提案だわ」
ダミアンはヴェロニカと違い、冒険者を直接狙わずに彼らが持ち帰っているポーションを利用しようと考えていた。
彼はそこに毒や、依存性ある薬物を混入させては、徐々に人間達を弱らせる方策を提案する。
確かにこのダンジョンが提供しているポーションは品質が高く、その即効性から求める者は多い。
それは冒険者を直接狙うよりも、より広範な範囲に影響を与えられるだろう。
ダミアンのその提案には、ヴェロニカも賞賛の声を上げている。
しかしその唇は、どこか挑戦的な角度でつり上がっていた。
「でもポーションの供給は今でもギリギリで、これ以上は増やすのは難しいのよ?この状況では、その案もそれほどうまくいくものかしら?」
ダミアンの提案を素晴らしいと賞賛したヴェロニカはしかし、その計画の欠点を指摘してはほくそ笑んでいる。
ダンジョンの経営を一手に握ってるといってもいいヴェロニカからすれば、ダミアンの提案など絵空事でしかないと言いたいのだろう。
実際、ポーションの生産はすでに限界といってもいい状態であり、これ以上増産する事は不可能に近い。
その状況で新たに毒物の類まで生産しようなど、土台無理な話であった。
「何、ダンジョンの経営には迷惑は掛けんよ。そういった薬の類ならわしでも調合出来るしの。それにこの案は、先を見据えた戦略。一朝一夕に成果を求めるものでもないじゃろうて」
「あら?私の考えが短絡的だとでも言いたいのかしら?私達がこのダンジョンに赴任して、もう一ヶ月以上も経っているのよ?そろそろ結果を出さなければ上から何を言われるか・・・早急に成果を求めるのは、当然の事ではなくて?」
ヴェロニカの苦言にも、ダミアンはその長年培ってきた経験から自ら毒物を調合し、ダンジョンには迷惑は掛けないと宣言していた。
彼はポーションの増産も必要ないと語り、暗にヴェロニカが成果を焦りすぎだと示唆してすらいる。
しかしヴェロニカにも言い分があった。
彼女はダンジョンの経営だけではなく、上から圧力に対しても考えを巡らせていたのだ。
彼らがこのダンジョンに赴任してから、既に一ヶ月以上の時が経過している。
カイはここへの赴任を栄転だと捉えていたが、実際には追放に過ぎない。
上の者達は目障りなカイを追放しただけでは飽き足らず、何かと理由をつけて処分しようとするかもしれない。
そう考えるヴェロニカは、一刻も早くはっきりとした成果を上げる必要性を感じていたのだった。
(な、何か難しい話をしだしたぞ・・・え?俺ってそんなに危ない立場だったの?そんなに早く成果上げないと何か不味いのか?あぁ・・・でも成果って、それってつまり人間達に害を為せって事だよなぁ・・・うぅ、やりたくない、やりたくないぞぉ!)
ヴェロニカ達の提案を何とか躱そうと思考を巡らせていたカイは、何一つ思いつかないそれに思考を放棄して、彼女達のやり取りに耳を傾けていた。
彼はヴェロニカの言葉に、初めて自分が危ない立場かもしれないと耳にして、大いに驚いている。
自らの立場が危ういかもしれないと聞けば、当然保身を図りたくなるが、それはつまり人類に害を為すという事である。
それだけは絶対にやりたくないカイは心の中だけで、はっきりと拒絶の言葉を叫んでいた。
「はぁ・・・これ以上、私達で話し合っても平行線が続くだけね」
「そうさな。ここは・・・」
「えぇ。カイ様、ご裁可をお願いします」
カイの胸の中で渦巻く不安など露知らず、永遠と続きそうなやり取りに不毛さを感じ取り、溜め息を吐いたヴェロニカが彼へと裁可を求めてくる。
それにはダミアンも同意しているようで、先ほどまで言い争ってい二人が、その二対の瞳を真っ直ぐカイへと向けてきていた。
「あーっと・・・その、なんだ。こう・・・もうちょっと、手心というかだな」
しかし人類に害を為す事など考えられないカイからすれば、二人の提案などどちらも受け入れる訳がない。
だからといって彼に、彼らの提案に代わる考えなど示せる訳もなく、結果的に彼はただ歯切れ悪く、誤魔化すような言葉を吐き続ける事しか出来なくなってしまっていた。
「カイ様!お悩みなられるのも分かります!しかしもう時間がないのです、お早いご決断を!」
「やれやれ・・・ヴェロニカはこう申しておりますが、上の連中などには好きに言わせておけばよいのです。それよりもご想像ください、冒険者が持ち帰ったポーションによって毒されていく人間共の姿を。そして奴らが倒れた後、無人の街を支配する自らのお姿を」
カイの歯切れの悪い言葉に二人が納得する訳もなく、彼らはカイの方へと詰め寄ってきては、それぞれの意見を主張し始める。
ヴェロニカはとにかく一刻も早く成果を出すべきだと主張し、ダミアンは焦る事なく大きな事をなしなさいと諭す。
それぞれに嗜好の違った選択肢に、そこにカイが望むものが含まれているのならば、どちらかを選ぶ事も出来ただろうが、残念ながらそうはならない。
彼らの主張は、その長短に違いがあろうとも、どちらも人類に仇なす事なのは間違いがなく、カイにはどちらも選びようがないものであった。
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