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勇者がダンジョンにやってくる!
ある冒険者達と商人の出会い 1
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深い森の中を二人の若者が、必死な形相で駆け抜けている。
その格好を見る限り、彼らは冒険者なのだろう。
そんな二人が何故、こんな森の中を必死な形相で駆け抜けているのか。
それは止むに止まれる事情があったのであった。
「はぁ、はぁ、はぁっ・・・さ、流石にもう振り切っただろ?」
「はぁ、はぁ、はぁー・・・そ、そうだな」
何かから逃げてきた様子の若い冒険者の一人、黒髪の青年エルトンは後ろを振り返りながら、追っ手の姿がない事を確かめている。
彼の声に自らも後ろを振り返ったもう片方の茶髪の青年、ケネスはもう追ってくる様子のない追っ手の姿に、ほっと一息をついては汗を拭っていた。
「はぁー、疲っれたぁ・・・いやぁ、びびったびびった!まさかこんな所で、オークの集団と遭遇するなんてな!」
「笑い事じゃないだろ!大体こんな事になったのも、お前が近くの村に寄らずに直接例のダンジョンに行こうって言い出したからじゃないか!」
ある酒場で冒険者の友と呼ばれるダンジョンに向かおうと考えていた二人の冒険者は、どうやら結局そこへと足を運ぶ事に決めたようだった。
ある事情によってダンジョンに赴く予定を遅らせようと考えていた彼らだが、結局興味には勝てなかったらしく、あの後すぐにこちらへと経ったようだ。
「ほら見ろ、ちょっとの手間を惜しんだ結果がこれだ!迷った挙句あんな魔物にまで遭遇して・・・下手したら死んでた所だぞ!!」
「はははっ、あの数は流石に洒落になってないよな!なんか屈強そうなオークばっかりだったし、どっか近くでオーク同士の抗争でも起きてんのかな?」
あのダンジョンの最寄の村であるアトハース村に向かえば、確実にダンジョンの詳しい情報が手に入る。
そうでもあるにもかかわらず、エルトンは先に急ぐ事を優先して、直接ダンジョンに向かおうとしていた。
その結果が、これである。
ダンジョンが見つからず森を彷徨った挙句、屈強そうなオークの集団と遭遇して、命からがら逃亡する羽目になったのだ。
それを声高に叫び非難するケネスにも、エルトンは気にした様子なく笑い飛ばしている。
彼はそんな事よりも、先ほど遭遇したオークの集団の方が気になってしょうがない様子だった。
「オークか・・・ここいら辺りでは、亜人はあまり見かけなくなったって聞いたんだけどな・・・」
「そりゃ、ガセを掴まされたんじゃないか?あの規模の集団ってたら、結構なもんだぜ?」
アトハース村の周囲では、ここ一ヶ月の間に目撃される亜人の数が激減しているという話だった。
それは噂に過ぎなかったが、ケネスがエルトンの提案に乗ってしまったのは、そういった噂の存在も影響したのかもしれない。
最も、あの規模のオークの集団と遭遇してしまえば、それもガセだったと思うしかないのだったが。
「そういう噂も、先に村に寄ってればちゃんと確かめられたんだけどな!・・・そういえば亜人の集団に遭遇しても、こちらから手を出さなければ大丈夫なんて話もあったな・・・」
不確かな噂に頼って行動してしまった自分の失態を誤魔化すように、ケネスはことさら先に村へと寄らなかった事に不満を示している。
確かに彼の言うとおり、今や冒険者達の一大拠点となっている筈のアトハース村に向かえば、そういった情報も精査する事が出来ただろう。
ケネスはそうしなかった判断を悔やみながら、もう一つ耳にした噂を口にする。
しかしそれは先ほどのものよりもずっと、ガセとしか思えない噂であった。
「何だそりゃ?それこそガセだろって・・・ケネス」
ケネスが口にしたありえない噂に、軽口を叩こうとしたエルトンはその途中に、急に声のトーンを落としていた。
それは彼が見詰める方向と、手にした得物にその答えがある。
エルトンが目を向ける茂みからは、なにやらがさがさと音が響いてきていた。
「分かってる・・・誰だ、そこにいるのは!隠れていないで、出てこい!!」
エルトンからの目配せに、ケネスは軽く頷くと自らの得物であるナイフを構えていた。
彼はそれをいつでも投げつけられるように構えると、茂みに向かって呼びかける。
迷ったり逃げたりと色々あって今の場所は定かではないが、ここが人里からそう遠くない場所なのは確かだろう。
そのため呼びかけもせずに攻撃する事は、彼らには出来なかった。
そしてそれは、その呼びかけに応えて茂みから出てきた存在によって、間違いではなかったと証明されていた。
「えーっとですね、その・・・危害を加えるつもりはないんです。何か人がいるなーって、近寄ってみただけででして・・・」
茂みから両手を掲げながら出てきたのは、脂ぎった小太りの商人風の男であった。
彼は武器を向けられる事に慣れていないからなのか、やたらと挙動不審に四方八方へと視線をやりながら、あたふたとそんな場所に潜んでいた言い訳を始めていた。
「何だ商人か。いや、何でこんな場所に商人が?怪しいな・・・」
「ま、待ってください!そんな、怪しい者では!!」
茂みから出てきたのがただの商人であったため、一度はその警戒を解こうとしたエルトンも、周りの景色を目にすればその不自然さに警戒を取り戻す。
自らの得物である剣を構えては、ジリジリと詰め寄ってくるエルトンの姿に、小太りな商人は必死に両手を振ると、怪しい者ではないと主張していた。
「いやここはあそこからも近い・・・筈。だからそれ目当ての商人がいても、おかしくはないだろ?」
「それもそうか」
ダンジョンの近くであれば、こんな場所に商人がいてもおかしくはない。
そう口にしたケネスの言葉に、エルトンはあっさり納得してその剣を収めていた。
確かに、ケネスの言葉は間違ってはいない。
ダンジョンには冒険者が集まり、それが求める物資を提供したり、それらが持ち帰るアイテムを買い取る事を求めて、商人もまた集まるものだ。
しかしどうだろう。
そんな商人達あっても、こんな場所に一人歩く事はないのではなかろうか。
人里に近く、冒険者が集まっている事で周辺の魔物もあらかた退治されたとはいえ、森に危険がなくなることはない。
まともな商人ならば、そんな森の中で少なくとも一人になる事は避けるだろう。
であれば、この目の前の商人風の男は、一体何者なのであろうか。
その疑問に、ケネスは気が動転していたためか気付く事はなかった。
その格好を見る限り、彼らは冒険者なのだろう。
そんな二人が何故、こんな森の中を必死な形相で駆け抜けているのか。
それは止むに止まれる事情があったのであった。
「はぁ、はぁ、はぁっ・・・さ、流石にもう振り切っただろ?」
「はぁ、はぁ、はぁー・・・そ、そうだな」
何かから逃げてきた様子の若い冒険者の一人、黒髪の青年エルトンは後ろを振り返りながら、追っ手の姿がない事を確かめている。
彼の声に自らも後ろを振り返ったもう片方の茶髪の青年、ケネスはもう追ってくる様子のない追っ手の姿に、ほっと一息をついては汗を拭っていた。
「はぁー、疲っれたぁ・・・いやぁ、びびったびびった!まさかこんな所で、オークの集団と遭遇するなんてな!」
「笑い事じゃないだろ!大体こんな事になったのも、お前が近くの村に寄らずに直接例のダンジョンに行こうって言い出したからじゃないか!」
ある酒場で冒険者の友と呼ばれるダンジョンに向かおうと考えていた二人の冒険者は、どうやら結局そこへと足を運ぶ事に決めたようだった。
ある事情によってダンジョンに赴く予定を遅らせようと考えていた彼らだが、結局興味には勝てなかったらしく、あの後すぐにこちらへと経ったようだ。
「ほら見ろ、ちょっとの手間を惜しんだ結果がこれだ!迷った挙句あんな魔物にまで遭遇して・・・下手したら死んでた所だぞ!!」
「はははっ、あの数は流石に洒落になってないよな!なんか屈強そうなオークばっかりだったし、どっか近くでオーク同士の抗争でも起きてんのかな?」
あのダンジョンの最寄の村であるアトハース村に向かえば、確実にダンジョンの詳しい情報が手に入る。
そうでもあるにもかかわらず、エルトンは先に急ぐ事を優先して、直接ダンジョンに向かおうとしていた。
その結果が、これである。
ダンジョンが見つからず森を彷徨った挙句、屈強そうなオークの集団と遭遇して、命からがら逃亡する羽目になったのだ。
それを声高に叫び非難するケネスにも、エルトンは気にした様子なく笑い飛ばしている。
彼はそんな事よりも、先ほど遭遇したオークの集団の方が気になってしょうがない様子だった。
「オークか・・・ここいら辺りでは、亜人はあまり見かけなくなったって聞いたんだけどな・・・」
「そりゃ、ガセを掴まされたんじゃないか?あの規模の集団ってたら、結構なもんだぜ?」
アトハース村の周囲では、ここ一ヶ月の間に目撃される亜人の数が激減しているという話だった。
それは噂に過ぎなかったが、ケネスがエルトンの提案に乗ってしまったのは、そういった噂の存在も影響したのかもしれない。
最も、あの規模のオークの集団と遭遇してしまえば、それもガセだったと思うしかないのだったが。
「そういう噂も、先に村に寄ってればちゃんと確かめられたんだけどな!・・・そういえば亜人の集団に遭遇しても、こちらから手を出さなければ大丈夫なんて話もあったな・・・」
不確かな噂に頼って行動してしまった自分の失態を誤魔化すように、ケネスはことさら先に村へと寄らなかった事に不満を示している。
確かに彼の言うとおり、今や冒険者達の一大拠点となっている筈のアトハース村に向かえば、そういった情報も精査する事が出来ただろう。
ケネスはそうしなかった判断を悔やみながら、もう一つ耳にした噂を口にする。
しかしそれは先ほどのものよりもずっと、ガセとしか思えない噂であった。
「何だそりゃ?それこそガセだろって・・・ケネス」
ケネスが口にしたありえない噂に、軽口を叩こうとしたエルトンはその途中に、急に声のトーンを落としていた。
それは彼が見詰める方向と、手にした得物にその答えがある。
エルトンが目を向ける茂みからは、なにやらがさがさと音が響いてきていた。
「分かってる・・・誰だ、そこにいるのは!隠れていないで、出てこい!!」
エルトンからの目配せに、ケネスは軽く頷くと自らの得物であるナイフを構えていた。
彼はそれをいつでも投げつけられるように構えると、茂みに向かって呼びかける。
迷ったり逃げたりと色々あって今の場所は定かではないが、ここが人里からそう遠くない場所なのは確かだろう。
そのため呼びかけもせずに攻撃する事は、彼らには出来なかった。
そしてそれは、その呼びかけに応えて茂みから出てきた存在によって、間違いではなかったと証明されていた。
「えーっとですね、その・・・危害を加えるつもりはないんです。何か人がいるなーって、近寄ってみただけででして・・・」
茂みから両手を掲げながら出てきたのは、脂ぎった小太りの商人風の男であった。
彼は武器を向けられる事に慣れていないからなのか、やたらと挙動不審に四方八方へと視線をやりながら、あたふたとそんな場所に潜んでいた言い訳を始めていた。
「何だ商人か。いや、何でこんな場所に商人が?怪しいな・・・」
「ま、待ってください!そんな、怪しい者では!!」
茂みから出てきたのがただの商人であったため、一度はその警戒を解こうとしたエルトンも、周りの景色を目にすればその不自然さに警戒を取り戻す。
自らの得物である剣を構えては、ジリジリと詰め寄ってくるエルトンの姿に、小太りな商人は必死に両手を振ると、怪しい者ではないと主張していた。
「いやここはあそこからも近い・・・筈。だからそれ目当ての商人がいても、おかしくはないだろ?」
「それもそうか」
ダンジョンの近くであれば、こんな場所に商人がいてもおかしくはない。
そう口にしたケネスの言葉に、エルトンはあっさり納得してその剣を収めていた。
確かに、ケネスの言葉は間違ってはいない。
ダンジョンには冒険者が集まり、それが求める物資を提供したり、それらが持ち帰るアイテムを買い取る事を求めて、商人もまた集まるものだ。
しかしどうだろう。
そんな商人達あっても、こんな場所に一人歩く事はないのではなかろうか。
人里に近く、冒険者が集まっている事で周辺の魔物もあらかた退治されたとはいえ、森に危険がなくなることはない。
まともな商人ならば、そんな森の中で少なくとも一人になる事は避けるだろう。
であれば、この目の前の商人風の男は、一体何者なのであろうか。
その疑問に、ケネスは気が動転していたためか気付く事はなかった。
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