ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

文字の大きさ
230 / 308
カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

揃う役者達 3

しおりを挟む
「知ってっか、エヴァン。それ、ゴブリンの肉が入ってんだぜ」
「む?そ、そうなのか?さっきは勢いでああ言ってしまったが、流石にゴブリンの肉は食べたくないぞ?」

 固くて臭く、不味い事で有名なゴブリンに肉でも食べてみせると豪語したエヴァンに、クリスがニヤニヤと笑みを浮かべながらちょっかいを掛けている。
 それはそういったやり取りに慣れている者であるならば、一目で冗談と分かる口調であろう。
 しかしそんな扱いを受けた事のないエヴァンは、思わずそれを真に受けて青ざめた表情を作ってしまっていた。

「だ、大丈夫ですよー、エヴァン様!そもそもお肉が足りなくて、全然入ってないですから!」
「・・・それはそれで、ちょっと残念なのだ」

 折角楽しみにしていた食事が、もはや手をつけるのも躊躇う代物に変わってしまい、しょんぼりと肩を落としているエヴァンの姿に、アイリスが慌ててフォローを入れている。
 しかしそのフォローは、クリスのものとは違った意味でエヴァンをガッカリさせるものであり、彼のしょんぼりとした表情を変わらせる事は出来ずにいた。

「ちょ、ちょっと二人とも!もっと言葉遣いを・・・」
「別に私は構わないぞ?ハロルドももっと気軽に話すのだ!」
「そ、それはちょっと・・・」

 同年代であったためか、僅かな時間の間にすっかり仲良くなった様子のクリス達とエヴァンのやり取りに、ハラハラと表情を乱しているハロルドはもう少し言葉遣いを改めるように呼びかけている。
 それは彼らの身分の違いを考えればもっともな忠告であったが、それを当人であるエヴァンが気にしないと宣言すれば、意味のない気遣いとなってしまう。
 むしろエヴァンからもっと気軽に接してくれと話しかけられ、ハロルドはその顔に困り果てた表情を浮かべていた。

「はははっ!子供達の順応性の早さというものは、何度見ても驚かされますな!」
「そうでございますね。坊ちゃまも同年代のご友人ができ、大変よろしゅうございました」

 子供達の微笑ましいやり取りに軽快な笑い声を上げたカイは、それを嬉しそうにアビーへと語りかけている。
 警戒している相手からの言葉でも、目の前の光景は喜ばしい事である事は間違いない。
 アビーはその固い表情に僅かに笑みを浮かべると、しみじみと喜びの声を漏らしていた。

「コープさんやーい!わしのご飯はまだかいのぅ」
「あ、すいませんローチさん!今、代わります!!」

 昼食の時間でも、ギルドの出張所を完全に閉めてしまう訳にはいかない。
 そのため元々そこの職員であったローチとアシュリーは、変わりばんこに食事を取っていたのだが、和やかな時間に彼女はそれを忘れてしまっていた。
 空腹に耐えかねたローチが彼女に声を掛けたのは、そんな事情が故であり、なにもボケてしまった訳ではなかった。

「ほら、ローチさん。向こうで食事を取ってきてください、ここは私がやっときますから!」
「おぉ、そうかそうか。ではわしは、向こうでご飯を取ってくるとしようか」
「だから、向こうですって!向こう!」
「おぉ、そうだったそうだった!」

 駆け足で出張所へと戻ったアシュリーは、急いでローチと受付を交代している。
 彼女は建物の外へと出たローチに村人用の炊き出しの列を示すと、そちらへと向かうように促している。
 ローチはそんな彼女の指示にも見当違いの方向へと向かおうとしていたが、それは彼女の懸命な声によってすぐに正されるだろう。

「・・・おらぁ!!てめぇら、何どさくさに紛れて割り込もうとしてやがんだ!!後ろに並べ、後ろに!!」

 アシュリーがローチの誘導に気を取られている隙に、受付へと並ぶ列に割り込んだ人の姿を、彼女は見逃してはいない。
 ローチと話している時の穏やかな表情を、彼女が脱ぎ捨てるには数秒の間で十分だろう。
 そうして牙を剥き出しにした彼女は、割り込んだ男達へと怒鳴り声を上げると、さっさと後ろに回れと叫び散らしていた。

「な、なぁ・・・あれって、アシュリーちゃんだよな?」
「・・・多分ね。なんていうか、彼女も成長したんだよ。色々と、ね」

 街のギルドで新人受付嬢としておどおどとした可愛らしい姿を見ていた二人からすれば、アシュリーの今の振る舞いは衝撃的なものであった。
 強面の冒険者達に向かって、牙を剥くように犬歯を剥き出しにして吠えている彼女の姿を指差す、エルトンの手は震えている。
 どこかそれを否定して欲しいように迷いながら呟くエルトンに対して、ケネスははっきりと事実を告げていた。

「そ、そうだな!そう思うことにしよう・・・」

 それは残酷な現実だろうか。
 ケネスの言葉に納得を示しながらも、どこかそれを受け入れがたく感じているようなエルトンは、今も吠え続けているアシュリーの姿を微妙に視界に入れないように顔を背けていた。
 それぞれが空いている席に着き、配られた器に穏やかな食事が始まっていく。
 その向こう側からは、アシュリーの叫び声がいつまでも響き続けていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します

三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。 身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。 そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと! これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。 ※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。

女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。

まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。 しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。 怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...