272 / 308
カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
カイ・リンデンバウムは何を望むのか 3
しおりを挟む
「後はこれを―――」
『ヴェロニカ。ヴェロニカよ、聞いているか?』
「は、はい!カイ様、聞こえております!何か御用でしょうか?」
残された作業のその最後を終えようとしていたヴェロニカに、どこからか声が掛かる。
それは彼女にとっては、決して聞き逃してはならない絶対の存在からの声であった。
モニターから聞こえてきた声に顔を上げれば、そこには壁へと近づきそこへと手をやっているカイの姿が映っている。
そちらへと向き直り、姿勢を正したヴェロニカは直立不動の姿勢で、彼の言葉を聞き逃しはしないとそれに集中した様子をみせていた。
『ここに魔物を寄越して欲しいのだが、すぐに出来るか?』
「なるほど・・・そういう事でございましたか。それならば控えさせていた魔物達がおります。彼らならば今すぐ向かわせられますが、いかが致しましょう?」
カイは自らがいる部屋へと、魔物を寄越して欲しいとヴェロニカに頼んでいる。
その言葉にヴェロニカはすぐに、なるほどと意味深げに頷いて見せていた。
確かにカイはあの少年を命の危機から救ったが、それだけで確かな信頼を勝ち得たとは思えなかったのだろう。
そんな彼が魔物を寄越せと頼んでくれば、それによって危機を演出し、更なる信頼を得ようと計画しているのだと、ヴェロニカは即座に判断する。
都合のよい事に、勇者を仕留めようと用意していた魔物達が、丁度近くに控えているのだ。
『・・・?そうか、それならば都合がよい。その魔物をここに寄越してくれ、出来るな?』
「えぇ、勿論でございます」
『では、頼んだぞ』
ヴェロニカが覗かせた意味深な納得に、カイは意味が分からずに首を捻っているようだった。
しかし彼女は同時に、彼の望みに都合のいい情報も齎している。
そう考えれば、そのような違和感など取るに足らないことだろう。
カイはその控えている魔物達を自分達の所へと寄越すようにヴェロニカに命令すると、そっと壁から手を離している。
そんな主人の姿を見送っているヴェロニカは、その命令を実行しようと早速とばかりに端末を操作し始めていた。
「これで、よしと・・・こちらはカイ様に任せておけば問題ないわね。後はこれを・・・」
手早く魔物の投入作業を終えたヴェロニカは、残っていた自らの作業も片付けに掛かっている。
その最後へと割り込まれた先ほどの出来事に、残された作業は僅かだろう。
事実、彼女の素早い操作速度を持ってすれば、それは数秒の内に完了するものであった。
「これで終りね。後は彼女達が・・・随分、早いわね。私もそろそろ向こうに向かった方がいいのかしら?」
必要な作業を全て終えたヴェロニカはそれをもう一度確認すると、それに抜けがない事に頷いている。
下準備を終えたのならば、後は勇者達の到着を待つだけだ。
その彼女達の現在位置へと目をやったヴェロニカは、その予想よりも速い進行速度に驚きの声を漏らすと、自らもすぐに持ち場へと向かった方がいいのかと思案していた。
「ここにいても、もうやれる事はない・・・か。そうね、向こうに向かいましょうか」
全ての準備を追え、勇者達も問題なく最終的な戦いの場所である、セッキの待つ部屋へと向かっている現状に、彼女がここで出来る事はもはやないだろう。
そう考えたヴェロニカは、急いで自らの持ち場へと向かい始める。
そこにはまだ、彼女を必要とするとても重要な役割が残されていた。
『ヴェ、ヴェロニカ?ちょっと魔物の数が多いし・・・強すぎるんじゃないか?あれ、ヴェロニカ?聞いているのか?』
ヴェロニカも立ち去り、誰もいなくなった最奥の間に、誰かの声が響いている。
それは先ほど、そのヴェロニカに偉そうに命令を下していた者の声ではなかろうか。
しかしその声に喜んで応える者の姿は、既にそこにはなく、その声はただただ空しく響くだけ。
『えっ!?い、いないのかヴェロニカ!?ちょ、マジか!?この量は洒落になってないから!!ヴェロニカー、ヴェロニカー!おーい!!』
一向に返ってくる様子のない返答に、最初は焦りをみせていたその声はやがて、哀れみすらを帯びて響き始める。
しかしどんなにその声がボリュームを上げようとも、既にその場から離れたヴェロニカにそれが届くことはないだろう。
その声の背後から聞こえてくる激しい戦闘の音と、なにやら必死に言い合っている声を聞けば、その場がどれだけ切羽詰っているかは想像に難くない。
その状況を解決する手段がここにないのならば、その声の主は自らの力でその場を切り抜けるしかない。
『くっそ、マジか!?ヴェロニカ、聞こえてるならせめて魔物の数を半分にして―――』
『―――さん、何やってるんだ!!早くこっちに!!』
『は、はい!すぐに向かいます!!うぅ、こうなったらやってやる!やってやるからなぁ!!』
僅かな可能性に懸けて張り上げた声も、その背後から掛かった声によって最後まで言い切ることは出来ない。
しかしその切羽詰った声を聞けば、そんな無駄な事に時間を取られずによかったといえるかもしれない。
もはや届かない声に、覚悟を決めたその声の主は戦意を昂ぶらせると拳を握る。
彼が最後に奮った声に、答えた声は様々だ。
しかし少なくとも、それは人間のものだけではなかった。
『ヴェロニカ。ヴェロニカよ、聞いているか?』
「は、はい!カイ様、聞こえております!何か御用でしょうか?」
残された作業のその最後を終えようとしていたヴェロニカに、どこからか声が掛かる。
それは彼女にとっては、決して聞き逃してはならない絶対の存在からの声であった。
モニターから聞こえてきた声に顔を上げれば、そこには壁へと近づきそこへと手をやっているカイの姿が映っている。
そちらへと向き直り、姿勢を正したヴェロニカは直立不動の姿勢で、彼の言葉を聞き逃しはしないとそれに集中した様子をみせていた。
『ここに魔物を寄越して欲しいのだが、すぐに出来るか?』
「なるほど・・・そういう事でございましたか。それならば控えさせていた魔物達がおります。彼らならば今すぐ向かわせられますが、いかが致しましょう?」
カイは自らがいる部屋へと、魔物を寄越して欲しいとヴェロニカに頼んでいる。
その言葉にヴェロニカはすぐに、なるほどと意味深げに頷いて見せていた。
確かにカイはあの少年を命の危機から救ったが、それだけで確かな信頼を勝ち得たとは思えなかったのだろう。
そんな彼が魔物を寄越せと頼んでくれば、それによって危機を演出し、更なる信頼を得ようと計画しているのだと、ヴェロニカは即座に判断する。
都合のよい事に、勇者を仕留めようと用意していた魔物達が、丁度近くに控えているのだ。
『・・・?そうか、それならば都合がよい。その魔物をここに寄越してくれ、出来るな?』
「えぇ、勿論でございます」
『では、頼んだぞ』
ヴェロニカが覗かせた意味深な納得に、カイは意味が分からずに首を捻っているようだった。
しかし彼女は同時に、彼の望みに都合のいい情報も齎している。
そう考えれば、そのような違和感など取るに足らないことだろう。
カイはその控えている魔物達を自分達の所へと寄越すようにヴェロニカに命令すると、そっと壁から手を離している。
そんな主人の姿を見送っているヴェロニカは、その命令を実行しようと早速とばかりに端末を操作し始めていた。
「これで、よしと・・・こちらはカイ様に任せておけば問題ないわね。後はこれを・・・」
手早く魔物の投入作業を終えたヴェロニカは、残っていた自らの作業も片付けに掛かっている。
その最後へと割り込まれた先ほどの出来事に、残された作業は僅かだろう。
事実、彼女の素早い操作速度を持ってすれば、それは数秒の内に完了するものであった。
「これで終りね。後は彼女達が・・・随分、早いわね。私もそろそろ向こうに向かった方がいいのかしら?」
必要な作業を全て終えたヴェロニカはそれをもう一度確認すると、それに抜けがない事に頷いている。
下準備を終えたのならば、後は勇者達の到着を待つだけだ。
その彼女達の現在位置へと目をやったヴェロニカは、その予想よりも速い進行速度に驚きの声を漏らすと、自らもすぐに持ち場へと向かった方がいいのかと思案していた。
「ここにいても、もうやれる事はない・・・か。そうね、向こうに向かいましょうか」
全ての準備を追え、勇者達も問題なく最終的な戦いの場所である、セッキの待つ部屋へと向かっている現状に、彼女がここで出来る事はもはやないだろう。
そう考えたヴェロニカは、急いで自らの持ち場へと向かい始める。
そこにはまだ、彼女を必要とするとても重要な役割が残されていた。
『ヴェ、ヴェロニカ?ちょっと魔物の数が多いし・・・強すぎるんじゃないか?あれ、ヴェロニカ?聞いているのか?』
ヴェロニカも立ち去り、誰もいなくなった最奥の間に、誰かの声が響いている。
それは先ほど、そのヴェロニカに偉そうに命令を下していた者の声ではなかろうか。
しかしその声に喜んで応える者の姿は、既にそこにはなく、その声はただただ空しく響くだけ。
『えっ!?い、いないのかヴェロニカ!?ちょ、マジか!?この量は洒落になってないから!!ヴェロニカー、ヴェロニカー!おーい!!』
一向に返ってくる様子のない返答に、最初は焦りをみせていたその声はやがて、哀れみすらを帯びて響き始める。
しかしどんなにその声がボリュームを上げようとも、既にその場から離れたヴェロニカにそれが届くことはないだろう。
その声の背後から聞こえてくる激しい戦闘の音と、なにやら必死に言い合っている声を聞けば、その場がどれだけ切羽詰っているかは想像に難くない。
その状況を解決する手段がここにないのならば、その声の主は自らの力でその場を切り抜けるしかない。
『くっそ、マジか!?ヴェロニカ、聞こえてるならせめて魔物の数を半分にして―――』
『―――さん、何やってるんだ!!早くこっちに!!』
『は、はい!すぐに向かいます!!うぅ、こうなったらやってやる!やってやるからなぁ!!』
僅かな可能性に懸けて張り上げた声も、その背後から掛かった声によって最後まで言い切ることは出来ない。
しかしその切羽詰った声を聞けば、そんな無駄な事に時間を取られずによかったといえるかもしれない。
もはや届かない声に、覚悟を決めたその声の主は戦意を昂ぶらせると拳を握る。
彼が最後に奮った声に、答えた声は様々だ。
しかし少なくとも、それは人間のものだけではなかった。
0
あなたにおすすめの小説
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。
身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。
そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと!
これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。
※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。
女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。
まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。
しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。
怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる