ダンジョン経営から始める魔王討伐のすゝめ 追放された転生ダンジョンマスターが影から行う人類救済

斑目 ごたく

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カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画

夜の国 2

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『ふぅ・・・すまぬすまぬ、もう良いぞエルベルト。で、何の話じゃったか?』
「・・・カイ・リンデンバウムという名のダンジョンマスターについてです」

 その蝙蝠の向こう側からは、先ほどまで聞こえていたアーデルヘイト以外の息遣いが、まったく聞こえなくなっている。
 それを気にして、感情を揺らしてしまう者はきっと、ここでは生き残れないのだろう。
 フィリップは僅かに呑んだ息に平静を取り戻すと、再び今回の主題について話していた。

『おぅおぅ、そうじゃったそうじゃった。その者が面白いダンジョン経営をしておるという話しじゃったな。何でも、妾がかつて行った方法とそっくりじゃとか?』
「えぇ、その通りです。人間達を、冒険者を呼び込み、それにポーションを配り持ち帰らせる。かつてアーデルヘイト様が、この国を乗っ取るために行った手法に瓜二つでございます」

 カイが行った特異なダンジョン経営、それと似たような事をアーデルヘイトはかつて行ったという。
 そしてそれはこの国を手に入れる上で重要な役割をしたと、彼女は語っていた。
 実際にカイのダンジョン経営をその目にしてきたフィリップも、彼のそれと彼女のそれは非常に良く似ていたと分析する。

『ふぅん、確かに良く似ておるのぉ・・・それで、肝心のポーションはどうだったのじゃ?お主の事じゃ、ちゃんと持ち帰っておるのじゃろう?』
「勿論でございます。しかしこれは・・・アーデルヘイト様、自らで確認してもらった方がよろしいかと」
『そうかのぉ?お主の言葉であれば、妾も疑いはせぬが・・・まぁ、そのお主の言葉じゃ、従うとしよう。どれ、舐めてみる故、蓋を開けてくれぬか?』
「はっ」

 アーデルヘイトはカイのダンジョン経営が、人々にポーションを持ち帰らせるためにあったと考えているようだった。
 そう考えるのであれば、配られたポーションこそが報告の要になってくるだろう。
 当然、それを持ち帰っているのだと尋ねるアーデルヘイトに、フィリップはすぐさまポーションの瓶を差し出している。
 その成分の分析であれば、恐らくフィリップにも可能であったが、彼はどこか言葉濁すとアーデルヘイトに直接確認して欲しいと、その容器の蓋を外していた。

『どれどれ・・・んんっ!?これは・・・普通の治癒のポーションではないか?』
「恐らく、間違いないかと」

 フィリップが差し出したポーションの瓶に、アーデルヘイトは眷属である蝙蝠を近づけてゆく。
 舌を伸ばした蝙蝠がポーションの中身を掬い取ると、感覚を共有しているのか向こう側のアーデルヘイトも唸り声を上げていた。
 彼女は驚いた一瞬の落差に、それが普通の治癒のポーションでしかないと不思議そうに話す。
 そしてそれは、フィリップの考えている通りの結果であった。

『こちらは・・・先ほどのものより、効果の高いものか?こっちは・・・魔力の回復薬か、貴重なものじゃが・・・どれも、何も混ぜられておらぬではないか?』

 思ったのとは違った最初の瓶に、アーデルヘイトは次々に新たな瓶へとその舌を突っ込んでいく。
 しかし彼女が望んだ結果は、幾ら舌を突っ込もうとも得られる事はない。
 どれほど吟味しても混ぜ物が入っている様子はないポーションに、アーデルヘイトは不思議そうな声を漏らしていた。

「はい、どうやらそのようなのです。彼らにはどうやら、別の狙いがあったのかと」
『別の狙いじゃと?妾のように、ポーションに血を混ぜて、国ごと転覆させようというものじゃないのか?勿論奴らは吸血鬼ではないじゃろうから、別の方法を使うのじゃろうが・・・しかし、そうじゃないとすれば、一体何が狙いじゃというのじゃ?』

 アーデルヘイトはかつて、配ったポーションの中に自らの血を混入させる事で、この国を手に入れていた。
 今回、同じような振る舞いを見せるカイの存在に彼女は当然、彼も自らと同じような事を企てているのだと考えていたようだった。
 しかしそれはどうやら、見当違いであったようだ。
 だがそうなると、カイは何故そのような事をしているのだろうか。
 それが分からないと、アーデルヘイトは心底不思議そうに呟いている。
 その疑問の答えを、フィリップは確かにその目で目の当たりにしてきたのだった。

「それを調べるために、少し手間取ったのですが・・・」
『うん?そう言えば予定よりも帰るのが遅かったようじゃな?して、その狙いとはなんなのじゃ?』
「彼らは勇者を招き寄せ、それを殺して聖剣をも奪ったようです」
『・・・何じゃと?』

 フィリップが予定よりも帰還を遅らせたのは、手に入れたポーションに異変が感じられなかったからか。
 予想していた狙いとは違う彼らの計画に、より深く情報を集めようと試みたフィリップは、あの時あの場所で起こった事を目の当たりにする。
 それは勇者を殺し、その聖剣を奪い取るという場面であった。
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