305 / 308
カイ・リンデンバウムの恐ろしき計画
夜の国 2
しおりを挟む
『ふぅ・・・すまぬすまぬ、もう良いぞエルベルト。で、何の話じゃったか?』
「・・・カイ・リンデンバウムという名のダンジョンマスターについてです」
その蝙蝠の向こう側からは、先ほどまで聞こえていたアーデルヘイト以外の息遣いが、まったく聞こえなくなっている。
それを気にして、感情を揺らしてしまう者はきっと、ここでは生き残れないのだろう。
フィリップは僅かに呑んだ息に平静を取り戻すと、再び今回の主題について話していた。
『おぅおぅ、そうじゃったそうじゃった。その者が面白いダンジョン経営をしておるという話しじゃったな。何でも、妾がかつて行った方法とそっくりじゃとか?』
「えぇ、その通りです。人間達を、冒険者を呼び込み、それにポーションを配り持ち帰らせる。かつてアーデルヘイト様が、この国を乗っ取るために行った手法に瓜二つでございます」
カイが行った特異なダンジョン経営、それと似たような事をアーデルヘイトはかつて行ったという。
そしてそれはこの国を手に入れる上で重要な役割をしたと、彼女は語っていた。
実際にカイのダンジョン経営をその目にしてきたフィリップも、彼のそれと彼女のそれは非常に良く似ていたと分析する。
『ふぅん、確かに良く似ておるのぉ・・・それで、肝心のポーションはどうだったのじゃ?お主の事じゃ、ちゃんと持ち帰っておるのじゃろう?』
「勿論でございます。しかしこれは・・・アーデルヘイト様、自らで確認してもらった方がよろしいかと」
『そうかのぉ?お主の言葉であれば、妾も疑いはせぬが・・・まぁ、そのお主の言葉じゃ、従うとしよう。どれ、舐めてみる故、蓋を開けてくれぬか?』
「はっ」
アーデルヘイトはカイのダンジョン経営が、人々にポーションを持ち帰らせるためにあったと考えているようだった。
そう考えるのであれば、配られたポーションこそが報告の要になってくるだろう。
当然、それを持ち帰っているのだと尋ねるアーデルヘイトに、フィリップはすぐさまポーションの瓶を差し出している。
その成分の分析であれば、恐らくフィリップにも可能であったが、彼はどこか言葉濁すとアーデルヘイトに直接確認して欲しいと、その容器の蓋を外していた。
『どれどれ・・・んんっ!?これは・・・普通の治癒のポーションではないか?』
「恐らく、間違いないかと」
フィリップが差し出したポーションの瓶に、アーデルヘイトは眷属である蝙蝠を近づけてゆく。
舌を伸ばした蝙蝠がポーションの中身を掬い取ると、感覚を共有しているのか向こう側のアーデルヘイトも唸り声を上げていた。
彼女は驚いた一瞬の落差に、それが普通の治癒のポーションでしかないと不思議そうに話す。
そしてそれは、フィリップの考えている通りの結果であった。
『こちらは・・・先ほどのものより、効果の高いものか?こっちは・・・魔力の回復薬か、貴重なものじゃが・・・どれも、何も混ぜられておらぬではないか?』
思ったのとは違った最初の瓶に、アーデルヘイトは次々に新たな瓶へとその舌を突っ込んでいく。
しかし彼女が望んだ結果は、幾ら舌を突っ込もうとも得られる事はない。
どれほど吟味しても混ぜ物が入っている様子はないポーションに、アーデルヘイトは不思議そうな声を漏らしていた。
「はい、どうやらそのようなのです。彼らにはどうやら、別の狙いがあったのかと」
『別の狙いじゃと?妾のように、ポーションに血を混ぜて、国ごと転覆させようというものじゃないのか?勿論奴らは吸血鬼ではないじゃろうから、別の方法を使うのじゃろうが・・・しかし、そうじゃないとすれば、一体何が狙いじゃというのじゃ?』
アーデルヘイトはかつて、配ったポーションの中に自らの血を混入させる事で、この国を手に入れていた。
今回、同じような振る舞いを見せるカイの存在に彼女は当然、彼も自らと同じような事を企てているのだと考えていたようだった。
しかしそれはどうやら、見当違いであったようだ。
だがそうなると、カイは何故そのような事をしているのだろうか。
それが分からないと、アーデルヘイトは心底不思議そうに呟いている。
その疑問の答えを、フィリップは確かにその目で目の当たりにしてきたのだった。
「それを調べるために、少し手間取ったのですが・・・」
『うん?そう言えば予定よりも帰るのが遅かったようじゃな?して、その狙いとはなんなのじゃ?』
「彼らは勇者を招き寄せ、それを殺して聖剣をも奪ったようです」
『・・・何じゃと?』
フィリップが予定よりも帰還を遅らせたのは、手に入れたポーションに異変が感じられなかったからか。
予想していた狙いとは違う彼らの計画に、より深く情報を集めようと試みたフィリップは、あの時あの場所で起こった事を目の当たりにする。
それは勇者を殺し、その聖剣を奪い取るという場面であった。
「・・・カイ・リンデンバウムという名のダンジョンマスターについてです」
その蝙蝠の向こう側からは、先ほどまで聞こえていたアーデルヘイト以外の息遣いが、まったく聞こえなくなっている。
それを気にして、感情を揺らしてしまう者はきっと、ここでは生き残れないのだろう。
フィリップは僅かに呑んだ息に平静を取り戻すと、再び今回の主題について話していた。
『おぅおぅ、そうじゃったそうじゃった。その者が面白いダンジョン経営をしておるという話しじゃったな。何でも、妾がかつて行った方法とそっくりじゃとか?』
「えぇ、その通りです。人間達を、冒険者を呼び込み、それにポーションを配り持ち帰らせる。かつてアーデルヘイト様が、この国を乗っ取るために行った手法に瓜二つでございます」
カイが行った特異なダンジョン経営、それと似たような事をアーデルヘイトはかつて行ったという。
そしてそれはこの国を手に入れる上で重要な役割をしたと、彼女は語っていた。
実際にカイのダンジョン経営をその目にしてきたフィリップも、彼のそれと彼女のそれは非常に良く似ていたと分析する。
『ふぅん、確かに良く似ておるのぉ・・・それで、肝心のポーションはどうだったのじゃ?お主の事じゃ、ちゃんと持ち帰っておるのじゃろう?』
「勿論でございます。しかしこれは・・・アーデルヘイト様、自らで確認してもらった方がよろしいかと」
『そうかのぉ?お主の言葉であれば、妾も疑いはせぬが・・・まぁ、そのお主の言葉じゃ、従うとしよう。どれ、舐めてみる故、蓋を開けてくれぬか?』
「はっ」
アーデルヘイトはカイのダンジョン経営が、人々にポーションを持ち帰らせるためにあったと考えているようだった。
そう考えるのであれば、配られたポーションこそが報告の要になってくるだろう。
当然、それを持ち帰っているのだと尋ねるアーデルヘイトに、フィリップはすぐさまポーションの瓶を差し出している。
その成分の分析であれば、恐らくフィリップにも可能であったが、彼はどこか言葉濁すとアーデルヘイトに直接確認して欲しいと、その容器の蓋を外していた。
『どれどれ・・・んんっ!?これは・・・普通の治癒のポーションではないか?』
「恐らく、間違いないかと」
フィリップが差し出したポーションの瓶に、アーデルヘイトは眷属である蝙蝠を近づけてゆく。
舌を伸ばした蝙蝠がポーションの中身を掬い取ると、感覚を共有しているのか向こう側のアーデルヘイトも唸り声を上げていた。
彼女は驚いた一瞬の落差に、それが普通の治癒のポーションでしかないと不思議そうに話す。
そしてそれは、フィリップの考えている通りの結果であった。
『こちらは・・・先ほどのものより、効果の高いものか?こっちは・・・魔力の回復薬か、貴重なものじゃが・・・どれも、何も混ぜられておらぬではないか?』
思ったのとは違った最初の瓶に、アーデルヘイトは次々に新たな瓶へとその舌を突っ込んでいく。
しかし彼女が望んだ結果は、幾ら舌を突っ込もうとも得られる事はない。
どれほど吟味しても混ぜ物が入っている様子はないポーションに、アーデルヘイトは不思議そうな声を漏らしていた。
「はい、どうやらそのようなのです。彼らにはどうやら、別の狙いがあったのかと」
『別の狙いじゃと?妾のように、ポーションに血を混ぜて、国ごと転覆させようというものじゃないのか?勿論奴らは吸血鬼ではないじゃろうから、別の方法を使うのじゃろうが・・・しかし、そうじゃないとすれば、一体何が狙いじゃというのじゃ?』
アーデルヘイトはかつて、配ったポーションの中に自らの血を混入させる事で、この国を手に入れていた。
今回、同じような振る舞いを見せるカイの存在に彼女は当然、彼も自らと同じような事を企てているのだと考えていたようだった。
しかしそれはどうやら、見当違いであったようだ。
だがそうなると、カイは何故そのような事をしているのだろうか。
それが分からないと、アーデルヘイトは心底不思議そうに呟いている。
その疑問の答えを、フィリップは確かにその目で目の当たりにしてきたのだった。
「それを調べるために、少し手間取ったのですが・・・」
『うん?そう言えば予定よりも帰るのが遅かったようじゃな?して、その狙いとはなんなのじゃ?』
「彼らは勇者を招き寄せ、それを殺して聖剣をも奪ったようです」
『・・・何じゃと?』
フィリップが予定よりも帰還を遅らせたのは、手に入れたポーションに異変が感じられなかったからか。
予想していた狙いとは違う彼らの計画に、より深く情報を集めようと試みたフィリップは、あの時あの場所で起こった事を目の当たりにする。
それは勇者を殺し、その聖剣を奪い取るという場面であった。
0
あなたにおすすめの小説
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。
身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。
そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと!
これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。
※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。
女神を怒らせステータスを奪われた僕は、数値が1でも元気に過ごす。
まったりー
ファンタジー
人見知りのゲーム大好きな主人公は、5徹の影響で命を落としてしまい、そこに異世界の女神様が転生させてくれました。
しかし、主人公は人見知りで初対面の人とは話せず、女神様の声を怖いと言ってしまい怒らせてしまいました。
怒った女神様は、次の転生者に願いを託す為、主人公のステータスをその魂に譲渡し、主人公の数値は1となってしまいますが、それでも残ったスキル【穀物作成】を使い、村の仲間たちと元気に暮らすお話です。
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる